選び方のコツから注目モデルまで グラベルバイクが欲しい!!

目次

グラベルバイクが欲しい
  • text 鏑木裕
  • photo 茂田羽生/島田健次/佐藤竜太

最新グラベルバイクの勢いが止まらない。エンデュランスバイクを脅かすほどに高性能化したモデルが次々と登場し、”究極の一台”と言われることも少なくない。 どこでも走れる、どこまでも走れる。 遊び方は無限だ。

 

アスファルトだけじゃない 。あの道のその先へ

今、グラベルバイクが熱い。パーツメーカーからは専用のタイヤやホイール、コクピット部品やコンポーネント発売され、バイクメーカーも量産に力を注いでいる。もちろんこの〝グラベルムーブメント〞が起こった理由はいくつかある。 

空力や応力解析、カーボンの造形技術やアイデアなど、先鋭化されたロードバイクのノウハウが注ぎ込まれてきた。結果、グラベルバイク自体の守備範囲が広くなり、走りの質がレベルアップしたこと。 

サイクリングが世界的なムーブメントとなり、アスファルトを楽しむユーザー層が増えたこの数年。次のフィールドを見たい、という欲求が増加したこと。 

ロードバイクの細分化が進み、専門化されすぎてしまった反動。そんなアンチテーゼとともに、自転車の楽しさとは何か、サイクリングの喜びとは何かを、少なくない自転車愛好家が見直そうとしていること。

アスファルト路面ではエンデュランス系ロードバイクに迫る軽快さを示し、グラベル路面ではシクロクロス車と同等のスピードを実現。荷物の積載や快適性ではトラディショナルなランドナー車を超える。しかも最新の技術で軽量な仕上がり。 

そう。もはやグラベルバイクを選ばない理由を探すほうが難しいのだ。この一台があれば、サイクリングの世界が広がる。今こそ、あの道のその先を見てみないか?

 

最新グラベルバイクって何がすごいの?

Point 1 ホイール&タイヤが充実して、走りの幅が広がった!

Point 2 グラベル専用コンポーネントで走りのレベルアップ!

Point 3 カーボンやアルミ合金の積極採用で、バイクが軽量化

Point 4 各社のラインナップ増加でユーザーの選択肢が充実中

 

自分の欲しいタイプが分かる グラベルバイク性能分布図

一口に”グラベルバイク”といっても、モデルによってメインの使用目的や価格帯は異なる。ここでは今一度グラベルというカテゴリーを整理して間違いのないバイクを選んでいこう!

グラベルバイクが欲しい

 

グラベルバイクが、自転車メーカーによって明確にカテゴライズされ始めたのは2013年頃から。実は歴史はまだ浅い。 

とはいえ、それ以前も実質的にグラベルバイク的なモデルは存在していた。CX(シクロクロス)バイクをツーリング向けにアレンジしたモデルが、グラベルバイクの前身に相当するだろう。フレームのディメンションなどは今のグラベルバイクに酷似しており、低めのBB位置/長めのヘッドチューブ/安定性強めのハンドリング/十分なタイヤクリアランスの確保、といったことが既に実現されていた。競技用のCXバイクが、障害物の回避性を向上させるためにBB位置を高くして、クイックなハンドリングを求めるのとは大きく異なる。 

ただし、現在のグラベルバイクと比べると、ブレーキがまだカンティなどリム制動だったことは大きな違いだ。加えて、初期においてはバイク重量は二の次にされ、『レース向けではないから重くてもOK』『カーボンは使わず、金属製フレームで価格を抑える』というような、ツーリング車に向けられた既成概念も払拭できていなかった。 

現在のグラベルバイクは、ツーリング向けのCXバイクのブレーキをディスク化して、荷物の積載方式や車体重量の削減など、高性能化を推し進めたバイクなのである。 

そんなグラベルバイクを使い、北米では早々にロングライドイベントが実施されるようになり、その一部はグラベルグラインダーとして、レーサー化していくことになる。グラベル=砂利、グラインド=削るという言葉が示すように、林道などのオフロードを延々とつなぎ合わせて、 タイヤで砂利を削るように走り続け、 順位やタイムを競うのだ。 

グラインダーのようにアスリート的な走り方が楽しまれる一方で、キャンプ用品や調理道具を積載しての長距離ツーリングも見直された。無骨なフレームに太いタイヤ、キャリヤ&バッグ類を組み合わせたアドベンチャースタイルだ。 

両者の違いは、許容するタイヤの太さ、組み合わされるハンドル幅、ロー側のギヤレシオや変速段数、荷物やフェンダーを取り付けるための台座(ダボ穴)の数などに表れる。 

グラインダーでは極端に車重が重くなることは避けられ、エンデュランス向けロードバイクに近いスタイルになりつつある。アドベンチャーではきゃしゃな脚まわりは避けられ、 本格的なブロックタイヤのようにMTBの要素が取り入れられることも珍しくない。もちろんこれらの二極化が進んでいるわけではなく、無数のモデルがグラデーションのように存在しているのだ。

 

欲しいモデルはどう決める? グラベルバイクの選び方

エンデュランス系バイクとは何が違うのか。コンベンショナルなCXバイクと比べると!? ホイールサイズやハンドルバーといったハード面のみならず、ポジション&フィッティングのソフト面を含めて、グラベルバイクの細部にフォーカス!

Point 1 グラベルバイクのジオメトリの特徴

一般的なロードバイクと比べると、グラベルバイクに求められるのは、高めの安定性と前傾になりすぎない乗車姿勢。このためジオメトリ面では、①ヘッドアングルは小さめ、②フロントセンターが長め、③BBドロップが大きめ(以上でハンドリングが安定)、④スタックが高め、⑤リーチが短め(以上でアップライトな姿勢を取りやすい)に、それぞれなっている。

BB Drop

太めの大径タイヤが組み合わされることを想定して、BBドロップ(ハンガー下がり)は大きめ。足着き性も向上

Front Center

フロントセンターやホイールベースは長めになる。全ての乗り物は、ホイールベースが長いほど挙動が安定するのだ

Stack

上半身のアップライトな乗車ポジションを出しやすいようにスタックは高め。このためリーチも短めになることが多い

Head Angle

ロードバイクに比べると、約1度寝ている。これに伴い、フォークのオフセット量の大きめのものがチョイスされる

Point 2 ハンドルの高さで、まず基本姿勢を調整

グラベルバイクが欲しい

Point 3 グラベルバイクを楽しむキーアイテム

KeyItem/1 フレアハンドル

グラベルバイクが欲しい

●正面から見たときの開き具合が”フレア角”。グラインダーではフレア角は小さめ、アドベンチャーでは大きめになる

 

グラベルバイクが欲しい

●従来のハンドルでは、幅/ドロップ/リーチでサイズが表されていた。今後はフレア角が加わることになる

フレアハンドルって?

フレア(flare)とは、”広がっている”ということ。ドロップハンドルでも、最近は”フレア角”が表記されるようになっている。ロードバイク用のハンドルでは、フレアは0~5度。それがグラインダー系は5度を超え、さらにアドベンチャー目的 では15°を超えることもある。

通常のロードハンドルと比べたときの メリット・デメリット

メリット デメリット

ブラケットポジションで手首が開き、
リラックスしやすい

エンド幅が広くなるため
障害物等のすり抜けがしにくい

下ハンの幅が広いので、
荒れた路面でハンドリングが安定

下ハン部が肩幅より広くなるため、
スプリントがしにくい

ドロップが浅めになるため、
下ハン位置が下がりすぎない

絶対幅の広さにより、
強度が求められて重くなりがち

 

アイテムによって広さが違う

グラベルバイクが欲しい

●ハンドル幅は肩部分で表記するメーカーがほとんどとなっている。当然ながらフレア角が大きくなるほどエンド幅は広くなり、フレア角をθとすると、近似値は[ハンドル幅]+[ドロップ]×tanθ×2で求められる


フレアハンドルはどうやって選ぶ?

グラベルバイクが欲しい

基本は、ロードバイクと同じ幅をチョイスしたい。それだけで、(フレア角の分だけ)ブラケット位置は少し広がるはずだ。通常のグラベルならフレア角は15度前後がスタンダード。勾配のキツイ山道を楽しく下りたいのなら、より大きなフレア角が有効になる。

KeyItem/2 650Bホイール

グラベルバイクが欲しい

650Bホイールって?

元々は、トラディショナルなツーリング車に採用されていたのが650B。リム径584mmで、ロード用700C(同622mm)よりも小さくなる。しかし右にあるように、700Cの細身タイヤと650Bのやや太めタイヤは、タイヤ外径がほぼ同じ。このため、エアボリュームと接地面を求めて、650Bが組み合わされることも多いのだ。

700Cホイールと比べたときの メリット・デメリット

メリット デメリット

太いタイヤを組み合わせやすいので、
乗り心地アップ

タイヤやチューブが重い傾向なので、
バイクが重くなる

タイヤグリップや耐パンク性も向上し、
悪路の走破性向上

空気圧を上げられないので
アスファルトでの機敏性は低下

バイクが振動しにくくなるので、
積載した荷物も安定する

バイクによっては、
フレームとタイヤが擦ってしまう


同じタイヤ外径なのに、こんなに太くなる!

グラベルバイクが欲しい

●タイヤが太くなるほど外径も大きくなる。そしてタイヤ外径が変わると、ハンドリングや足着き性も変化してしまうのだ。そんなライドフィーリングをそのままに、空気量やタイヤグリップを稼げるのが650Bホイール

 

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