【53歳、移住&工房開設!?】自転車フレームビルダー北島有花の新挑戦記 その1

53歳で仕事を辞め、工房開設という夢に踏み出す!サイスポ本誌で連載を持ち、東京サイクルデザイン専門学校でも講師として活躍したフレームビルダー北島有花さん。彼女の人生の選択と自転車への想いを綴る新連載が始まります。

仕事を辞めたい、でも生活どーするよ?

皆さまこんにちは、フレームビルダーの北島有花です。
本誌では「あの年あの時あの瞬間」と題し、サイクルスポーツのバックナンバーを振り返り考察するという趣旨の連載をしています。
京都でガンウェルというブランドのフレーム作りをした後、東京サイクルデザイン専門学校で講師をしておりましたが、この春に退職しました。
今回この連載のタイトルにもしたように、夢を叶えるべく工房開設を思い立ったからです。

ある朝目覚めたとき、今まで経験したことがないような体調不良に見舞われ、病院では嫌でも自分の老化と不摂生を自覚させられました。
53歳一人暮らし。このまま仕事と家の往復で、気が付いたら動けないなんてイヤ!と強烈に思い、老後の夢を前倒しすることにしました。
私の父は「老後は軽井沢の山荘で陶芸生活やそば打ちをしたい」と言っていましたが、いざ定年すると「寒いししんどいしヤル気がしない」となり、軽井沢の山荘は空き家状態。パッケージツアーで気候が良い地域ばかりを旅行し、土をこねることもそばを打つこともなく亡くなりました。
体力を必要とする趣味は老後にとっておいてはダメ、当時の私は強く思いました。ですが日々忙殺されていると、老後に~とか、時間ができたら~とか、とかく先送りにしてしまいます。
そこで思い切って学校を辞め、夢を叶えることにしました。
この連載を読んで、現実の良さに気づくもよし、勢いにまかせて趣味道に突っ走るもよし、皆さまの心に響くものがあれば嬉しいです。

さて、仕事をしていれば誰しも「あー仕事やめてぇー」という瞬間はあるでしょう。
若いときは勢いで転職できていても、年齢を重ねるとそうはいきません。まして私は53歳。あと7年ガマンすれば定年です。
とはいえ、年間230日出勤するとしたらあと1610回イヤだイヤだという朝を迎えるのです。う~ん、長い……。

そんなある日、鉄子の私は鹿島臨海鉄道を目的に茨城県まで行きました。終点の鹿島神宮駅から何となくふら~っと隣の潮来(いたこ)市まで足をのばします。ある年齢以上ならご存知の橋幸夫が歌う「潮来の伊太郎~ちょっと見なれば~」の潮来市です。
抜ける青空、広がる水田、穏やかな陽光。その景色に魅了され、帰宅後色々と調べました。一番驚いたのは、早朝から深夜まで10分~20分に1本東京行きのバスが出ていることでした。東京駅から約90km。ここは通勤圏だったのです。

 

あやめ園

あやめ園
毎年5月下旬から6月下旬はあやめ祭りが開催され多くの人でにぎわう

白鳥の里

白鳥の里
霞ヶ浦の隣にある北浦は白鳥の飛来地として有名

北斎公園

北斎公園
葛飾北斎が描いた潮来の景勝地にちなみ名付けられた

 

よし、正社員を辞めて非常勤になって、週の半分はここでフレームを作る生活はどうだろう? そんな思いが頭をよぎり、早速市役所へメールをしました。
「移住して自転車工房を開きたいのですが、何か使える制度はありますか?」と。

市役所の反応は想像を超えるものでした。簡単に書くと
・直接的な助成金はないが、市では自転車による町おこしを計画しており、移住するならバックアップする
・地域おこし協力隊という制度があるので、3年間ではあるが金銭的保障がある
・市が把握している物件を紹介できる
・市を通じて色々な人や機関とつなげられる
というものでした。

東京へは高速バスで1駅80分。東関東自動車道は混まない。圏央道も近い。成田空港も30分。駐車場が無料の茨城空港もある。大洗から北海道へのフェリーもある。土浦へも自転車ごと乗れるフェリーが出ている。自転車にまつわる交通やツアーには好条件だらけです。
さらに太平洋、霞ヶ浦、利根川、と江戸時代から水運で栄えた地域だけあって、モンベルのフレンドタウンになるほどのウォーターヒーリング天国。
漫画「サーキットの狼」博物館は隣の神栖市、映画「トラック野郎」にトラックを提供した椎名急送さんは川を挟んだお向かいの香取市。(完全に個人的趣味)
鹿島神宮は鉄に縁が深い神様。150社を超す企業が集まる鹿島の工業風景も萌える。
米どころで農産物も豊富なため、食費が安く済む上に美味しい。(これ大事)
住民税や水道料金も田舎にありがちなほど高額ではない。
北関東とはいえ、南端のため降雪は東京と同レベル。それでいて猛暑日も少ない。
東京では平均130mに1ヶ所はあった大量の信号が1/5ぐらいしかない!
もうこれって私のための場所じゃない? 心は潮来へ一直線です。
夢の工房開設。果たしてどうなっていくでしょう!?

 

愛友酒造

愛友酒造
老舗の酒蔵。美味しい米があるということは旨い酒がある

あやめ園に立つ伊太郎の像

あやめ園に立つ伊太郎の像
橋幸夫の歌碑もあり、ここから舟にも乗れる

潮来のオックス

サーキットの狼のキャラ「潮来のオックス」
高速の潮来ICを降りたらすぐにオックスが迎えてくれる

潮来のオックスバスターミナル

潮来のオックスバスターミナル
ついにバスターミナルの名称も潮来のオックスに!

植栽されたりんりんロード

植栽されたりんりんロード
こんなにきれいに整備された道が貸し切り状態!

 

ではまた次回!
次回は「早くも暗雲?現実はそんなに甘くない」です(笑)

 

著者プロフィール

北島有花

元本誌編集スタッフ。ガンウェルのチーフビルダーとして競輪フレームはもちろん、ツーリング車など多様なフレームを製作してきた。2026年春より茨城県潮来市に移住して工房の立ち上げに奮闘中。