はまぐりラーメンで春を感じる南房総デイキャンプツーリング【アウトドア道具好きおじさんの自転車キャンプTips 第4回】
目次
インスタントラーメンをつくって食べる。そのなんでもないことを、ちょっとだけ特別にしてくれるのが、アウトドア=お外という場所と時間だ。
今回、僕が近年ハマっているインスタントラーメン「千葉県産はまぐりだし塩らーめん」に、はまぐりをトッピングして、はまぐり感マシマシにするアイデアを思い付いた。季節は春。黄色い菜の花とピンクの桜を愛でながら、はまぐりマシマシラーメンをいただけば、きっと春気分を味わえるだろうと、バーディーのグラベルバイク「GV Plus(GVプラス)」と一緒に南房総へ向かった。

●アウトドアライター、野外道具案内人・PONCHO。登山やアウトドアの雑誌&ウェブメディアで、最新ギアのレビューや魅力的なコースについての多数執筆。折りたたみ小径車でのキャンプツーリング経験も豊富。無類のアウトドア道具好きで、その探求に明け暮れている。アウトドアでの食事が大好きで、ラーメンを食べることが多い
子供の頃から慣れ親しんだ、内房線の風景
小学2年生か3年生の頃、僕はひとり旅をした。東京と千葉を結ぶ総武線の小岩駅から千葉駅まで行き、内房線に乗り換え。五井駅からは小湊鉄道に乗り、まだダムができる前の工事中の高滝湖湖畔にあったおじさんの家で、夏を過ごした。
また家族での夏の海水浴は、内房線を南下。保田、岩井、富浦駅付近の民宿に泊まり、海を泳いだ。
あの夏を過ごしたことが、東京・下町育ちの僕をアウトドアと向かわせたのだと思う。そして幼い僕にとって、旅といえば、内房線だった。
今回、その土地を自転車で走ることにした。
小学生の頃から、約半世紀。……そう、自分自身も驚きの事実だけれども、あれから50年が経った。内房線の車両は変わったけれど、車両から見える風景は南下するほど、タイムスリップしていくように、あの時の気配を感じさせる。不思議な気分になる。
輪行で下りた保田駅はその象徴だ。開業した1917年当時から続く木造駅舎は、2026年時点で築109年。1世紀前、大正時代の雰囲気を令和に伝えている。小学生時分、昭和でも十分にレトロだったはずだけれども、そんな印象はあまりない。東京育ちだった僕は、レトロさよりも、田舎を感じていた。見るもの全てに驚いていた。
保田の駅舎は耐震性や耐火性、利便性を重視すれば、建て壊されてもおかしくはなかっただろう。実際に内房線の駅の多くは建て替えられている。
けれど、歴史や趣きを重視。産業遺産としての役割を感じた人がいたのだろう。現実的には内房線の利用者減少で建て替えよりも、修繕しかないという世知辛い理由もあったはずだ。
けれども、変わり映えのしない街の風景が増えている現在、東京から遠くない場所で100年の名残りを感じさせる、変わらない風景が、ここに残った。
今、僕はおじさんになって見た目が大きく変わったけれども、ホームから駅舎へと向かう歩道橋からの風景を見れば、旅がはじまるワクワク感は、あの頃と変わらない。
そう、保田駅からのスタートを選んだ理由は、郷愁ではないんだ。
むしろ発見が目的。子供の頃から、幾度となく訪れていても、知らない風景がある。それを見たいというのが理由だ。
日常のなかでもあるでしょ?長く暮らした街でも、何度も通っている道、行った場所でも、季節や時間、天気や気分が変わると、新しく感じられることがあるじゃない。
あぁ、僕はこういう風景を見ていなかった、見ようとしていなかった。または、見えるようになった、見るようになれたんだってことを、知りたいと思うことが、僕は旅の基本姿勢にしているんだ。
久しぶりの保田駅周辺を巡っててみれば、よりくっきりとした風景が見えるんじゃないかと思ったんだ。
実際、駅を出たら、すぐに、明らかに風景は違っていたよ。
駅前にあったのは「パクチー銀行」の看板!
こちらは2022年、コロナ禍にオープンした房総ジビエを使ったパクチー料理が楽しめるカフェ&交流スペースだそう。かつて信用金庫だった建物と、パクチーの種を融資=配布する取り組みが出合い、この愛称がついたという。
そんなことをテレビか、ネット記事で見た記憶がある。店前にはトゥクトゥクが置かれ、異国情緒とレトロな雰囲気が、保田駅前によく似合っている。
立ち寄ってみたかったのだけれども、しかし、駅到着時はオープン前。帰りに寄ることも考えたが、内房線のこの区間は1時間に一本しか電車が走っていない路線。タイミングが合わずに、今回は見送ることにした。
鋸南町のいいところ
保田駅やパクチー銀行だけでなく、ここ鋸南町は古いモノを、上手く活用していることが特長といえる町。
上画像の元小学校をリノベーションした「道の駅・保田小学校」もそのひとつ。休日ともなれば、アクアラインを通って多くの観光バスが訪れ、度々テレビでも紹介されている観光スポットだ。
飲食店の多い道の駅だけれども、もちろん地元の食材、千葉県のお土産も販売されている。僕がココに立ち寄ったのも、今回デイキャンプで食べるはまぐりだし塩らーめんにトッピングする、はまぐりを手に入れるため。
はまぐりは、外房側の九十九里が有名だけれども、南房総も産地のひとつ。だから道の駅で売られていることを期待してきた。でも、まだ時期が早かったからか、海産物は海沿いの「道の駅きょなん」とすみ分けているのか、売られていたのはパック詰めされた酒蒸しはまぐりのみ。でも、活はまぐりより持ち運びしやすいので、むしろよかった。
しかも、合わせようと思っていたインスタントラーメンと並んで売られていた。同じことを考える人が僕以外にもいるんだ!と、うれしくなった。
「はまぐりマシマシ、やっぱりありだな」。
ところでこの鋸南町、海水浴シーズン以外の期間、コンロを使えばビーチでのBBQがOKだ。
それは、今回デイキャンプをした町営の佐久間ダム親水公園にあるキャンプ場も、同様。キャンプ利用は5月1日から11月30日の期間となり、それ以外の期間は無料でBBQ利用が可能となっている。
だから、ストーブを使って簡単な煮炊きをすることも可能。周辺の市のビーチや公園では火気厳禁が大半。なので、アウトドア・アクティビティ好きにとっては、ありがたい町なんだ。
目指すは佐久間ダム! でも、その道中のなんでもない風景がいい。
保田駅から佐久間ダム湖親水公園までの道は、鴨川までを結ぶ長狭街道。江戸時代から内房と外房との物流、文化交流で多くの人が行き交ったそうだ。
長狭街道の中ほどには、房総半島の原風景を見せてくれ、日本の棚田百選にも選ばれている大山千枚田もある。が、目的地の佐久間ダム湖親水公園は、その手前で右に折れる。
保田駅から佐久間ダムまでは、わずか9kmの距離。時間にして約40分。ツーリングとしては、かなり短い。だからこそ、風景や雰囲気を深く味わえる。
道中には街道沿いに流れる保田川を利用した田んぼや畑が点在。僕が訪れた3月下旬は、田植えの準備が始まっていて、水が張られているところもあった。GW頃からは田植えもはじまり、さらに美しい里山風景が見られるだろう。
それは幼い頃から房総半島の内陸部で見てきた、静逸さと豊かさを思わせるキラキラした時間だ。
佐久間ダムの手前には、をくづれ水仙郷がある。
鋸南町は水仙の里として知られていて、水仙の日本三大群生地だという。開花時期は12月~1月のため、訪れた時には花を愛でることはできなかったが、来年は見に来たい。
水仙郷の駐車場付近は、手元のGPSウォッチで標高142m。佐久間ダムを見下ろせ、その向こうには、伊予ヶ岳のわかりやすい山姿も見通せる。高い山々に囲まれた土地とは異なる、広い空の下に広がる小さな凸凹の風景も、房総らしさだ。
お外ラーメンは、ひとつの「体験」だ!
佐久間ダム湖親水公園のキャンプ場は、早咲きの頼朝桜と呼ばれる桜のまつりが終わった直後で、犬の散歩の人くらいしかやって来なかった。
キャンプ場なので、水場もトイレもあり、ベンチやテーブルも配置されている。時刻は11時。早速、ラーメンづくりに取り掛かる。
食すのは、前述の通り、千葉県産はまぐり塩らーめんと、酒蒸しはまぐり。
はまぐり塩らーめんは、インスタントのレベルを越えた、深い旨味のはまぐりだし。僕のお外ラーメンの定番。
使用したクッカーは、前回紹介したSOTO(ソト)/チタンポット1100に、保温収納袋のコジー1100を組み合わせた。
クッカーの重量112gという軽さを優先して、装備することにした。
ラーメンを茹でる以外の調理やコーヒーも飲むなら、前回紹介したMSRやゼインアーツの方がよいが、ラーメンづくりだけなら、僕にとってのベストラーメンクッカーだ。
できあがった、はまぐりだし塩らーめんは、上画像。トッピングは、麺の茹で時間4分半の残り1分から投入した酒蒸しはまぐりと煮卵。
はまぐりだし塩らーめんを手掛けた会社の「国分」の開発担当者さん曰く、「スープの味を堪能してもらいたいので、できるだけトッピングはしないでほしい」という、自信作。
今回は、開発担当者さんには申し訳ないが、酒蒸しはまぐりをトッピングして、はまぐり感マシマシで味わった。結果、旨味とスープのやさしさが一層感じられた。マシマシ、大成功だった!
またラーメンを撮影した後に食べたのだが、クッカーを包むコジーのおかげでヌルくならずに済んだのがよかった。このコジー、僕のように撮影をせずとも、インスタントラーメンにマストのアイテムといえる。もしSOTOのこのクッカーを使わないとしても、フィットするコジーを見つけるか、アルミ保冷袋等から自作して包むことを強くオススメする。
そして今回、アウトドアでラーメンを食べてみて気が付いたのは、その調理時間に加えて、自転車を漕いでココまで来たことも含めて、お外ラーメンは「体験」的だ。
だから、「美味しい」だけでなく、「楽しい」とか「失敗した~」ということも重なって、五感を刺激する時間になるんだ。そしてこれまでを振り返ってみても、どこで、どんなラーメンを食べたのかも、明確に記憶されている。雨のなか、道志の森キャンプ場で食べた、粉っぽい棒ラーメンは残念の極致。伊豆大島・三原山の中腹のテーブルで、富士山を見ながら妻と一緒に食べたはまぐりだし塩らーめんは、一生忘れないだろう。
帰り道をGoogleが突然変更。
帰りは、再び保田駅へと戻る。同じルートではツマラナイので周回を予定していたが、そのルートをGoogleで検索したところ、自宅での計画時には挙がってこなかったルートが提案されてきた。
平日ということもあり、クルマの往来は表通りでも大して多い訳ではない。が、提案されたのは、裏道。等高線の入っていない道路地図を見ていたので当初はわからなかったけれども、どうやら山道へと入る。その先は「水仙ロード」と呼ばれる道へと続いていた。
すでに水仙の季節は終わっていたが、静かな道好きの僕は、迷いなく提案された細道へと入って行った。
しかし、房総は低い山しかないと高を括っていた僕の前に、斜度15%程度と思える坂道が断続的現れた。乗ってきた「バーディー GV Plus」のリヤ10速と僕の脚の組み合わせでは、ちょっと足りない……。
それでも振り絞って3本目の激坂を上がっていた時に、田舎道最速車のアルトワークスがウォーンと唸りながら背後から迫ってきて、僕は諦めてバーディーから下りることにした。
いや、もう、思わぬところで、大粒の汗まみれ。ヘルメットの縁から、汗がボタボタと滴り落ちてくる。でも、楽しい。ゆっくりのんびり、思い描いていた道をトレースして走るのも、もちろんいいのだけれども、旅は予定外、予想外があると、ワクワクするよね。
ちょっとツラくても、標高150mくらいしか上らないとわかっているから、ココロは折れない。それが房総半島の面白さ。
それにたった150mしか上っていないのに、景色は結構大きく変わるんだ。
江月山山頂という看板を越えると、下りがはじまる。すると、佐久間ダム湖畔では終わっていた桜が、七分咲きで迎えてくれた。
里山で「チョット来い」と甲高い声で歌う野鳥コジュケイに、「おう、来たぞ!キレイだな!」と応える。
あぁ、春だなぁ。気持ちいいなぁ。大汗をヒンヤリとした風で乾かし、流れる景色のなかに入って行くと、晴れていれば富士山を望める展望地も出てきた。残念ながら、どん曇りなので、その姿は見られなかったけれども、これは再訪の理由になりそうだ。
なんでもない里山の春。水仙の季節は終わり、静かに佇む水仙ロード。もし晴れていれば、もっと鮮やかだろう黄色とピンクの彩りは、ちょっとくすんでいて、過ぎ去っていく時間を惜しんでいるようにも見えた。
Googleは、この景色を見せたかったのだろうか?いや、そんな機能、気の利いたことではないよな。クルマでナビをしている時の、最短距離選択のアレだよな。このルート、クルマだったらすれ違いもできない細道だし……。でもクルマでの「マジかよ!?」が、自転車なら、いい意味で「マジかよ!!」になることもあるんだな。
これも発見だ! だから旅はいいね。
だから今度の休み、自転車キャンプに行こうよ!
今回の自転車デイキャンプで走らせた自転車
ワイドタイヤと油圧キャリパーブレーキを搭載した「バーディーGV Plus(field green & orange/41万8000円)」。その名の通りのグラベル仕様。
通常、グラベル仕様になると重くなるイメージだけれども、コレはバーディー「スタンダードディスク」の11.4kgに対して、10.3kgと1kg以上も軽量。だから、輪行がラク。もう本当にラクでありがたい。
さらにハンドルの高さ、角度も細かくセッティング可能。進むルート、キャンプ装備の重さや大きさに応じた最適ポジションを、パーツ交換せずに、あれこれ試せる自由さがある。
自転車キャンプで乗りたいと思わせる、旅人のための自転車だ。


































