“手の届くピナレロ” 「ニューF7」は買いか? 完成車の実力に迫る
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ピナレロのハイエンドモデル「ドグマF」のDNAを色濃く受け継ぐFシリーズが誕生したのは2023年シーズンのこと。昨年、そのドグマFがフルモデルチェンジを果たし、その最新テクノロジーを反映すべく、Fシリーズも2026年モデルで大幅に刷新された。ここに紹介するのは、コンポーネントにシマノ・アルテグラを採用した「ニューF7」である。

ピナレロ・ニューF7とは

ピナレロ・ニューF7 ●試乗車サイズ:515 ●試乗車カラー:アラバスター ホワイト シャイニー
ピナレロのロードバイクのラインナップは2023年シーズンに刷新され、レーシングモデル「F」シリーズとエンデュランスモデル「X」シリーズの二本立てとなった。他のブランドの多くが、レーシングモデルをエアロロード系や軽量クライミング系といったように細分化後、近年になってその役割を集約させつつあるのに対し、ピナレロはオールラウンダーとしての性能を磨き続けてきた。だからこそFシリーズへの一本化が可能だったのだ。
ニューFシリーズは、ドグマF(2025年モデル)で採用されたテクノロジーのいくつかが採用されている。ハイライトはE-TiCRと名付けられたヘッドセットで、ヘッドチューブの幅を狭くするためにフォークコラムを従来の真円から横方向に広い楕円断面に。これによって生まれた前方のスペースにケーブルを通しているのだ。
ヘッドチューブの横幅が狭くなったことで、これにつながるダウンチューブのナロー化にも成功。さらに、エアロキール(船底)と呼ばれるアワーレコード用バイク発祥の空気抵抗軽減デザインをBBエリアに取り入れた。なお、タイヤクリアランスは従来の30mmから32mmに拡大されており、よりワイドなホイールやタイヤが選べるようになったのも朗報だろう。
日本で展開されるのは、上からF9(デュラエース)、F7(アルテグラ)、F5(105 Di2)、F1(105機械式12S)の4モデルで、F1のみフレームは従来型の金型を使用。F9とF7はトレカ・T900カーボン、F5はT700カーボン、F1はT600カーボンを採用している。
ここに紹介するのはニューF7で、タロン・ウルトラファーストと名付けられた一体型ハンドルが標準装着されている(ニューF9も同じ)。ドグマFのために開発されたもので、単品で19万3600円というプライスタグを付けている。これを含んでの完成車価格が105万円と聞けば、決して高いとは言えないだろう。

スレッド式のイタリアンBBを採用。他ブランドがBBエリアを拡幅して剛性を高める中、ピナレロは狭さによる空気抵抗軽減に重きを置いているようだ。さらにニューFシリーズではエアロキールというデザインを付加し、ドグマFよりも容積を削減しつつ剛性を高めている

コラムをクランプするのではなく、後方からウスを押し付けて固定するタイプのタロン・ウルトラファースト一体型コックピット。ハンドル幅/ステム長の組み合わせは40cm/80mmから46cm/140mm(ハンドル幅は外-外)まで16種類がオプションで用意されており、全てのサイクリストに完璧なポジションを提供するというピナレロのフィロソフィーが、こういったところにも反映されている。下ハンの絶妙なアールと断面形状による握りやすさにも注目を

アシンメトリーなデザインのチェーンステーとドロップドシートステーで構成されたリヤ三角。タイヤクリアランスは30mmから32mmへとワイド化。チェーンステーの長さはフレームサイズごとに410mm、411mm、413mmの3種類を使い分ける

ニューF7に標準装着されるホイールはフルクラム・レーシング800 DB(前後セットで1960g)だ。ピナレロではお買い得なホイールアップグレードプログラムを用意しており、そのランナップは現状で24種類もある。例えばカンパニョーロのボーラウルトラWTO 45 C23(同1325g)を選択した場合、完成車価格は168万円となる。これはホイールを通常販売価格で購入するより11万3600円もお買い得となるのだ
ピナレロ・ニューF7 スペック
●価格:105万円
●フレーム&フォーク素材:カーボン
●メインコンポーネント:シマノ・アルテグラDi2
●ホイール:フルクラム・レーシング 800 DB
●タイヤ:モスト・コンペティション 700×30C
●ハンドルステム:モスト・タロン ウルトラ ファスト TiCR
●サドル:モスト
●シートポスト:専用カーボンシートポスト
●サイズ:430、465、500、515、530、545、560、575、595
●カラー:スターリー レッド シャイニー、アラバスター ホワイト シャイニー、ヴィクトリア ブルー シャイニー
ピナレロ・ニューF7を試乗〜ゾーンへと導かれる独特の乗り味

インプレッションライダー/自転車ジャーナリスト・大屋雄一 モーターサイクルにも造詣が深いフリーランスライター。ロードレース、ヒルクライム、エンデューロ、ブルベ、シクロクロス、MTBレース、ママチャリ耐久、仮装レース、バイクパッキングなど、自転車遊びを一通り経験して現在に至る
9種類もの豊富なフレームサイズを展開するニューF7。今回持ち込まれた試乗車は下から6番目の515サイズで、トップチューブセンターは545mm、リーチは388.3mmだ。これらは筆者が普段乗っているロードバイクに極めて近い数値であり、体格に合ったサイズを用意してくれたことにまず感謝したい。
実のところ、筆者はこれまでピナレロのロードバイクに触れる機会がほとんどなかった。執筆ログを遡っても、試乗経験はグラベルバイクのグレヴィルプラスのみ。ゆえに、このイタリアンブランドに対する先入観はほぼなく、その意味でも今回の試乗には大きな期待を抱いていた。
このニューF7、標準装着ホイールがフルクラムのレーシング800 DBということもあり、完成車のデフォルトは決して軽いとは言いがたい。ハンドルとサドルを持って車体を振ると、明らかに末端の重さが体に伝わってくる。これはホイールだけでなく、30Cのチューブドタイヤの影響もありそうだ。
そんなネガティブな印象から始まった試乗だが、走り出してすぐにそのイメージが好転した。ペダリングのひと踏みごとに骨太な推進力が立ち上がり、力強く、かつ滑らかに速度を上げていく。これまでに味わったことのない独特の加速フィールだ。少なくとも平坦路であればレーシング800 DBの転がりも良好で、マイナス要素として意識されにくい点も好印象につながっている。
登坂路では、単にフレーム剛性が高いというより、BB周辺が常に「あるべき位置」に留まり続ける感覚が際立つ。シッティングでもダンシングでも入力ロスが極めて少なく、踏力がそのまま前進力へと変換される。もちろん脚力や脚質、好みにもよるが、軽量クライミングバイクとは異なるベクトルの楽しさがあり、とりわけ低ケイデンスでトルクをかけた際の充実感は格別だ。
ハンドリングも優秀である。一言で表現するなら「ニュートラルで扱いやすい」となるが、どの速度域でも狙ったラインをトレースしやすいだけでなく、強めのブレーキングからの倒し込みに絶大な安心感がある。これは一体型ハンドルを含むフロントエリアの剛性バランスの妙によるものだろう。トップモデルのドグマFで、トム・ピドコックがあれほど果敢にダウンヒルを攻められる背景には、こうしたピナレロの設計思想が確かに息づいている。
一方で、レーシング800 DBは速度域が上がるにつれてジャイロプレセッション(回転軸に力を加えると直角方向に旋回を起こす特性)が高まり、ホイールの存在感が前面に出てくる。加えて、登坂時には後方へ引かれるような重さも感じられた。前後で1960gという重量はエントリーモデルに標準装着されるホイールと同等レベルであり、パフォーマンス的にも100万円オーバーの完成車には似つかわしくない。購入時にはホイールアップグレードプログラムも視野に入れた予算計画を検討したいところだ。
ニューF7に試乗したことで、ピナレロがベテランサイクリストに高く評価されている理由の一端を垣間見ることができた。上位にドグマFが存在するとはいえ、パフォーマンスとしては紛れもなくハイエンドの領域にある。加えて、ライダーを自然と“ゾーン”へ導くような没入感のある走りは、他のブランドにはない魅力だ。ここに一人、ピナレロファンが誕生したことは言うまでもない。
Brand Info〜PiNARELLO(ピナレロ)について
プロロード選手だったジョバンニ・ピナレロ氏が立ち上げたイタリアンブランド。本拠地はトレヴィーゾにあり、高級レーシングブランドとして名を馳せる一方で、エントリーグレードのモデルもラインナップする。1960年からプロチームへの供給を開始し、グランツールでの総合優勝は30回を数える。最強チームの一角であるイネオス・グレナディアーズとのパートナーシップは、すでに2028年まで継続することが決定している。














