猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第54回

目次

灼熱の外練100km走。実はこれが一番ダメージがあった……


坂バカ俳優、猪野学(いの まなぶ)。NHK BS1の番組「チャリダー★」で活躍する姿は、多くのサイクリストが知るところだ。Cyclist(サイクリスト)で連載中だった「猪野学の坂バカ奮闘記」が、サイト閉鎖にともないサイクルスポーツへお引越し。さらなる活躍をレポートしていく。今回は、グラベルクラシックやくらいに向けたトレーニング編だ(編集部)。

前回のお話(やくらい試走編)

 

地獄のタバタ

人は50歳を過ぎても速くなれるのだろうか?

グラベルクラシックやくらい打倒竹谷賢二企画で私はその難題と向き合うことになる。私にとって自転車は奇跡を起こす乗り物だ。いつか必ず速くなり、念願の表彰台に上がれる気がする。

もともと腰が悪く左脚は力強く踏めない。腰が治れば……いつか治る……そう思えてならない。そう! まだ伸び代はある!と全く根拠のない自信が私はまだ走り続けている。

今回私を強くしてくれる方々はアクティバイクのコーチ陣だ。オンライン会議で週にどれだけトレーニングできるのか? トレーニングの内容と頻度を決めていく。

ローラーは週に3回。週に1日は外で暑いなか100km走る。これは暑熱順化が目的だ。ローラーはベース作りのSST。20分走を2本。徐々に強度を上げていくバースト。

あとこれが今回の肝となる週に一度の高強度! 地獄のタバタインターバルだ!

やはり高強度をやらないと強くはなれないのだ。強くなるには無酸素の領域の滞在時間を長くする必要がある。むかし富士山に登頂したときに「ここは日本一空気が悪い場所です! とっとと下山して下さい」と山小屋の主人に言われたことがある。空気が悪いというのは空気が薄いという意味なのだろう。

富士山山頂でタバタをやれば話は早いのだろうが……ローラー台を背負って富士山を登るのは現実的ではない。自宅で無酸素状態を作るのは「追い込むしかない」。30秒ほどフルもがきすれば富士山に行かなくてもあっという間に無酸素状態になる。

私の場合は30秒320W。15秒レスト。これを10回繰り返す。5分休んだらまた10回繰り返す。これを4本やるわけなのだが……まさに地獄である。

 

糖質ドーピング

しかし私は今回この地獄のメニューを完遂することができた! それは「補給」のおかげなのだ。

私はこれまでトレーニングは「水」でやってきた。しかしコーチはトレーニングからしっかり糖質を取りながらやって下さいと指摘された。昨今のプロのロードレースでレーススピードが上がっているのは良質な「糖質」を摂取するすることが可能になったからだ。

確かにレスト中に糖質を摂取すると「力」がわいてくる気がする。320Wのタバタを40本もできてしまうのだ! これには驚いた……人間、気持ちだけでは追い込めない! まさに糖質ドーピングなのである。

地獄のタバタにより230Wくらいでキツかったのが250Wでも耐えられるようになってきた!!

 

タバタインターバルのデータ

地獄のタバタインターバル。後半でも何とか高いパワーを維持できているのは糖質のおかげだ

パワーゾーンの時間

無酸素領域に8分近く滞在したのは人生で初めてである

 

そして外での100kmトレーニングでも如実に効果が出た。コーチからは外練では補給のトレーニングもして下さいと念を押された。ドリンクにも糖質を入れてさらにジェルでも補給。すると最後まで「踏める」ではないか!! 「水」だけだと後半どうしても脚に力が入らなくなって失速していたが。 最後まで補給をすることで踏めるではないか! しっかり最後まで糖質を取り「踏める脚」を作るわけだ!

「踏める脚」何てすてきな響きだろうか……。最後まで踏めればあの竹谷さんにも勝てるかも知れない……少し勝機が向いてきたような気がした……しかしそれは安い熊よけスプレーのようにあっという間に消え失せるのであった。

しかし! これだけは言える。私は50歳を過ぎても速くなれている。パワーがそれを示している。食事をしっかり3食べて「補給」によりトレーニングの質を上げれば人は速くなれる。

それを世間に知らしめる絶好のチャンスで私は前代未聞の失態を犯してしまったのだ……。あの日……いったい何がいけなかったのだろうか? やくらいで起こった悲劇は今でも脳裏から離れない。

次回はいよいよ猪野学! 最後の最後でやらかした!! レース本番編である。