【工具1本からはじめる!自転車メンテ】第3回「チェーンカッター」

目次

一つの工具から広がる自転車メンテナンスの世界。大阪のプロショップの名物スタッフ・タカハシ氏によるプロの視点で、基礎作業を丁寧に解説。「仕組みを知って自分で触る」という自転車メンテの楽しさを伝えます。

前回(トルクレンチ)はこちら

 

TL-CN29

シマノ・TL-CN29(9~12速に対応するチェーンカッター)

 

自転車の高価格化や通販の普及によって、自分自身で整備にトライする人も増えている。しかしながら、失敗はつきもの。誰でも失敗することがあるのは仕方がないのだが、大きなトラブルになることは避けたい。この連載ではこれからDIYに挑戦する人のために、よくある失敗や小さなコツを伝えていきたい。セルフメンテナンスのための道しるべとなれば幸いだ。

もしこの連載がきっかけで自転車整備の面白さに気づく人が増えてくれたら嬉しい。あわよくば、僕のように自転車屋の仕事についてみようかなと思う人が増えてくれたら尚嬉しい。

 

第3回の工具「チェーンカッター」

第3回ということでまだまだ定番どころ。今回はチェーン交換について。「チェーン交換くらいならやってみよう」という人も多いだろう。自分で交換ができるようになれば、自転車メンテナンスの解像度は高まる。更に、小まめなチェーン交換はギアの歯の摩耗を抑えることもでき、変速もバシバシ決まる状態を維持できる。チェーン交換に欠かせない工具がチェーンカッターだが、実際の作業では長さや向きなど、工具以外の要素で失敗するケースも多い。比較的簡単とはいえ、最近は昔にはなかった細かなミスもチラホラ見受けられる。たかがチェーン交換、されどチェーン交換。よくあるミスや交換のタイミングについて触れていく。

 

3大コンポブランドのチェーン

 

チェーンの種類はたくさんある

チェーンとひとくくりにするには、あまりにも種類が多い。メーカーも増え続けているし、段数や世代によっても具合が異なる。今回は、ユーザーの多いロード用のシマノ12速チェーンを中心に紹介する。

 

その1 「長さのミス」

多様なギヤサイズ展開によって、適切なチェーン長が異なる。長すぎても、短すぎてもトラブルの元となる。ギヤサイズの変更や、フロントシングル化などでも変わってくる。近頃は、フロントをアウターリング、リヤをローギアに掛けた状態で長さを確認する方法が広く用いられている。使用するコンポーネントごとにオンラインマニュアルが用意されているので、事前にしっかりと確認しよう。

シマノオンラインマニュアルはこちら

 

チェーンが短すぎる場合

チェーンが短すぎるとトラブルリスクが高い

 

その2 「向きのミス」

シマノは10速チェーン以降、更なる変速レスポンス向上のために「向き」も定めて専用設計を煮詰めてきた。表裏が逆についていても変速はするものの、折角の変速性能をスポイルしてしまう。
チェーンピンで繋ぐ際に、アウタープレートとインナープレートの向きが逆であることにも注意が必要だ。ピンの場合、逆向きに付けるとチェーンピンが外れやすくなる。「突然チェーンが切れた」の原因は意外とこういったところに潜んでいる。
クイックリンクタイプの場合も向きの指定がある。矢印をしっかり確認して取り付けよう。シマノのチェーンピン、クイックリンクは再使用不可とされており、一度抜いたピンの再利用は推奨されない点も留意。

 

シマノ12sチェーン

シマノ12sチェーン。外側にはロゴの刻印があり、裏側にはない

シマノクイックリンク

主流となっているシマノクイックリンクは1度の使い切り。再利用はNG

 

その3「凡ミス」

チェーンを通すときに、誤ってリヤディレーラーのプレートの外側に通してしまうことがある。よくあるうっかりミスだが、意外とよくあるので注意してほしいポイントだ。

 

RDのプーリーケージの外側にチェーンが通っている例

RDのプーリーケージの外側にチェーンが通っている例

正しくチェーンが通っている状態

正しくチェーンが通っている状態

 

チェーン交換の目安

チェーンはいつ交換するべきか。一般的に3000〜5000kmと言われているが、実際にはそれよりも早く摩耗してしまうパターンをよく見る。一般的に、チェーンが消耗してくると弛んでくるので伸びたと表現されるが、実際にはローラーやプレートの摩耗によって隙間が大きくなり、ギヤの歯に掛かる感覚が変わり、伸びたような弛んだ状態となっている。オイル切れで走行した場合に、チェーンの消耗は著しく早くなってしまい、それが100km程度の走行でも自転車には大きなダメージとなる。ローラーの摩耗をチェックする人は多いが、チェーンのガタつき(プレートの摩耗)もしっかりと見ておきたい。アウター×ローというたすき掛け状態のギヤを多用する人は、チェーンのガタが出やすい。ローラーは摩耗していなくても、ガタが出て変速がもたつくようになるのはこちらが原因だ。

 

洗浄に対するスタンス

11速以降、シマノのチェーンにはSIL-TECという表面処理が追加されたモデルが出てきた。それは超低摩擦表面処理で、ノイズ低減や摩耗を抑えてくれる先進的な表面処理だが、巷では「パーツクリーナーはNG」という話も出ている。

チェーンおよびクイックリンクを適切なチェーンクリーナーで定期的に洗浄する。メンテナンスの頻度は、ライディングの状況により異なります。錆び落としなどのアルカリ性、または酸性の洗浄液は決して使用しない。これらを使用するとチェーンおよびクイックリンクが破損し、重傷を負うおそれがあります。(シマノオンラインマニュアルから引用)

シマノの説明では、アルカリ性や酸性の洗浄液を使用してはならないとしており、パーツクリーナー(有機溶剤系)は基本的には中性のため、明確には禁止されていない。有機溶剤系のクリーナーは汚れを強力に落とす反面、内部の油分も完全に洗い流してしまう。
そのため「洗浄後の再潤滑までがセット」であり、この作業が不十分な場合、むしろ寿命を縮める結果になる。
注油不足の場合、チェーンの寿命を縮めるだけでなく、走行抵抗にもなるため良いことがない。これでもかというぐらい注油した後、余分な油をふき取り、内部から染み出てくるオイルで十分なじむ程度に仕上げるのがおすすめだ。

 

チェーンを洗浄

 

変速最適化のために、チェーンも多様化が進んでいる。シマノとスラムでチェーンのローラー径が異なっているなど、同じ12速同士でも互換しなくなっている。そういった状況に合わせ、チェーンカッターにもそれぞれ対応したモデルが用意されている。規格の合わないチェーンカッターを使用するとうまくチェーンを切ることができない。チェーン交換の手間も侮れなくなってきた。

 

シマノのチェーン

 

髙橋 真吾さん

高橋 真吾(タカハシ シンゴ)
所属:Movement(大阪・天王寺)& Dugout Cycleworks
東京都出身。大阪のプロショップ「Movement」の名物スタッフであり、実業団ロードレースの経験に加え、マニアックなパーツ知識やクロモリ系バイクなど幅広い造詣を持つ。今後は自身の事務所での活動も展開予定