安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.6

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安井スーパーシックスエボ6

徹底評論第13回は、近年稀に見る「衝撃のモデルチェンジ」となったキャノンデール・スーパーシックスエボである。アメリカでのローンチイベントに参加し、帰国後も日本で何度も試乗を行い、さらにこの連載のために新型エボの全モデルに(ホイールを統一して)乗った安井。新世代万能ロードに関する考察をしながら、新型エボを分析・評価する。

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ユーザビリティ評価

トップモデルは専用のハンドル&ステム(ホログラムシステムバー&ノットステム)を装備するが、一般的なハンドルとステムも使用可能。これは歓迎すべきポイントだ。ハンドルの形状や剛性感は、シューズやサドルと同様、人によって「コレじゃないとダメ」となる可能性が大きいパーツである。専用ハンドルしか受け付けない設計はメーカーの独善以外の何物でもない。機械式変速にも対応していることも美点である。ヴェンジはその点がダメだ。

また、専用ハンドルセット使用時でもケーブル類はステムの下側を通り、ヘッドチューブ上に穿たれた大きな穴からフレーム内部へと入る。ヘッド内部のスペースは余裕があり、それなりの調整幅は確保できそうだ。少なくとも「ハンドルを1cm下げるためにブレーキのオイルラインやり直し」みたいなダメ設計ではない。各ケーブルはフォークコラムの前側を通るので、コラム断面も真円のままだ。
ケーブルが通るスペースを確保するためにコラムを長方形断面やD断面にするモデルも多いが、どう考えてもコラム剛性には不利である。それらも「カムテールシートポスト&内蔵シートクランプ」同様、「得るものに対して失うものが大きすぎる設計」だと個人的には思う。新型エボはその点でも好印象だ。

安井スーパーシックスエボ6

ハンドル&ステムの調整可能角度は8度。完全一体型よりはマシだが、ヴェンジのように専用ながら調整幅無限というわけではない。また、当然ながらサイズバリエーションにも制限がある。一般的なハンドルセットも使えるので、欠点と断ずるほどではないが。
専用シートポストはオフセットが2種類用意されている。タイム・アルプデュエズ01はその点がダメだ。
総じて、新型エボのメンテナンス性・汎用性・ポジション自由度は欠点が少ないものと言える。

 

ジオメトリ&ディティール

ジオメトリも一新された。本国では48~62までの8サイズが用意される。ハイエンドだけでなく、スタンダードモッドのミドルグレードまで同じサイズ展開である。近年のカーボンフレームにしてはかなり多い。
旧型比でスタックは全サイズで数mm~1cmほど長くなり、リーチは小サイズではやや長く、ビックサイズではやや短くなっている。これにより、各フレームサイズでスタック&リーチがより比例的に増えていくジオメトリとなった。一時は粗悪なジオメトリが溢れていたロード界だが、ジオメトリの浄化は急速に進んでいる。
各所の数値はサイズによって細かく調整されており、丁寧に煮詰められている印象。統一されているのはチェーンステー長くらいのもので、ヘッド角、シート角、BBハイトなどもサイズ毎に微調整されている。コストを下げるために金型を共有した痕跡はほとんどない。
フォークオフセットも2種類あり(54以下が55mm、56以上が45mm)、トレイルは最小サイズが60mm、それ以外は58mmと正常の範囲内に収まっている。非常に良心的なジオメトリである。日本に入荷されるのは58までの6種類だが、この日本ではほとんどの体格をカバーできるはずだ。

 

ディティール

安井スーパーシックスエボ6

①ディスクブレーキ車のケーブル類はステム下~ヘッド内部の前側を通る。コラム断面も真円で安心感がある。Di2仕様は変速ケーブルも内蔵されるが、機械式の場合は外装となる

安井スーパーシックスエボ6

②フレームは全体的にカムテール形状に。シートステーは下にオフセットし、快適性&空力を向上させる。シートポストもカムテール形状の専用品で、クランプはトップチューブ下側に埋め込まれる。トップチューブ後端の積層はかなり厚くしてあるようで、クラックの心配は少ないだろう

安井スーパーシックスエボ6

③上位モデルには空力と快適性に優れた専用ハンドル&ステムが組み合わされる。ケーブル類はハンドルには内蔵されるが、ステムの下を通るため、メンテナンス性は悪くない。汎用ステムとハンドルも使用可能

安井スーパーシックスエボ6

④BB規格はPF30A。ハイモッド完成車はパワー2マックス製のパワーメーターを標準装備する。購入後に登録(有料)を行うことで全機能を使えるようになるシステムだ。ホイールは新開発のホログラムノット45

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⑤ハイモッド仕様はディスクブレーキのみとなった。前ハブにはホイールセンサーを搭載、専用アプリを通して、走行ログの記録、マニュアルの参照、メンテナンス履歴の記録などが可能

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⑥ディスク仕様はすべてマヴィックやエンヴィが提唱するスピードリリース仕様のエンドを採用する。個人的には、どうせディスクにするんだったらエンドの円が完全に閉じている通常のスルーアクスルがいいが、これはこれでメリットがある

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⑦機械式変速の場合は、変速ケーブルはダウンチューブ上面からフレームに入る。リムブレーキ仕様のブレーキケーブルはトップチューブ前端から入り後端から出る

安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.7に続く