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CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2015年10大ニュース・プロダクツ編

2015年もいよいよラストウィーク! ということで恒例の10大ニュース・プロダクツ編をお届けします。ああ、そんなことがあったなと振り返ってみましょう。

 
text:ナカジ photo:Graham Watson、岩崎竜太

第2世代エアロロード登場

スペシャライズド・ヴェンジヴァイアス
スペシャライズド・ヴェンジヴァイアス
トレック・マドン
トレック・マドン
ロードバイクメーカー各社はラインナップに快適性重視、重量重視、空力重視と大きく3つの柱を持っている。そのなかでも空力を重視したモデル=エアロロードがさらなる進化を遂げた。

スペシャライズドはエアロロードである「ヴェンジ」の空力性能をさらに追求した「ヴェンジヴァイアス」を発表。フレームだけではなく、専用のブレーキ、ハンドル、ステム。そしてこのバイクのために開発されたロバールCLX64ホイール。さらには、ヘルメット、エアロスーツ、シューズも合わせて、40km走ったときに同社の従来品と比べて約5分早くタイムを短縮できるパッケージを発表した。

最大のライバルメーカーであるトレックもマドンをエアロロードに進化させて発表。ステム一体型の専用ハンドルに、ブレーキもセンタープルタイプのやはり専用品。ワイヤ類を完全にフレーム内蔵するために、ヘッドチューブ下側にベクターウイングという開閉する機構を設けている。

 
スコット・新型フォイル
スコット・新型フォイル
リドレー・ノアSL
リドレー・ノアSL
ヴェンジヴァイアス、マドンは独自規格を満載した2台だが、独自規格を最低限に抑えつつ空気抵抗低減を目指したモデルがスコット・フォイルとリドレー・ノアSLだ。

どちらもエアロロードというカテゴリーが確立される前からエアロロードをラインナップしている2社。そんな彼らが用意したエアロロードは、あえて汎用性の高いパーツだけで組み上げられている。

スコット・フォイルはステム一体型の専用ハンドルこそ採用されているが、ブレーキやホイールは専用品ではない。ノアSLについてはハンドル、ステム、ブレーキなども汎用品を使うことができる。どちらのモデルも風洞実験とCFD解析を行い空気抵抗低減を実現している。

 

スラム無線コンポーネント「レッドeタップ」登場

2015年のユーロバイクショーで発表されたレッドeタップ
2015年のユーロバイクショーで発表されたレッドeタップ
かつて他社が無線で変速操作を変速機に伝えるコンポーネントを販売したこともあったが、他の電子機器との混信による誤作動などの問題から広く普及するには至らなかった。そんな無線コンポーネントの世界をスラムがレッドeタップによって切り開くことになるかもしれない。

バッテリーは前後ディレーラーと変速レバーそれぞれに搭載され、通信規格はスラムが独自開発した方式を使用するため混信のリスクが非常に低い。昨今のロードバイクやTTバイクはワイヤリングが複雑化しているモデルが増えてきた。レッドeタップなら、ブレーキケーブルのみの取り回しを考えればいいので、組み付けのしやすさ、軽量化、見た目のスマートさなどのメリットが上げられる。

すでにプロレースでは実戦投入されているので、国内での市販化も楽しみなアイテムだ。
 

XTがモデルチェンジ

新型クランクのFC-M8000。写真はフロントシングル仕様
新型クランクのFC-M8000。写真はフロントシングル仕様
サイドスイングタイプのフロントディレーラー
サイドスイングタイプのフロントディレーラー
シマノMTB用コンボーネントXTが9世代目となるM8000シリーズへとフルモデルチェンジを行い。最上位グレードのXTRの設計を受け継ぐ内容に刷新された。

まずフロントチェーンリングにシングルが選択できるようになり、リヤスプロケットも11速化された。これにより、XCでは主流となっているフロント1×リヤ11速の組み合わせが選択できるようになった。もちろんフロント2枚、3枚のクランクセットもそろっている。

フロントディレーラーはシマノが提案した「サイドスイング」タイプがXTR同様にラインナップされる。従来のフロントディレーラーは、動作させるためのワイヤがディレーラーに対して上もしくは下から取り付けられるようになっていた。対してサイドスイングは横から取り付けられることになる。

これによって、シフターからフロントディレーラーまでの間でワイヤのカーブが緩やかになり、かつより少ない力で変速操作ができるようになる。そして、ディレーラー自体がコンパクトになるので、リヤタイヤとのクリアランスが大きくなり、泥詰まりなどのリスクを低減できる。対応するフレームが必要になるが、得られるメリットは大きい。
 

ファットバイクもバリエーション豊に

スペシャライズド・スタンプジャンパーFSRコンプ シックスファッティー(左)と、フューズプロシックスファッティー(右)
スペシャライズド・スタンプジャンパーFSRコンプ シックスファッティー(左)と、フューズプロシックスファッティー(右)
27.5インチのホイールに、3.0インチ幅のタイヤが組み合わされる
27.5インチのホイールに、3.0インチ幅のタイヤが組み合わされる
インパクト絶大な見た目とその走破性の高さ、独特の乗り心地にファンがいるファットバイク。とはいえ、あくまでもマニアックな存在である。

だが2015年はファットバイク市場のバリエーションが広がった。基本は26インチホイールに3.0インチ、4.0インチの極太タイヤが装着されるが、よりホイール径の大きな27.5インチや29インチにファットタイヤを組み合わせたバイクが登場。さらにはフルサスバイクや小径車までそろってきた。

写真はスペシャライズドのスタンプジャンパーFSRコンプ シックスファッティー(左)と、フューズプロシックスファッティー(右)。27.5インチのホイールに3.0インチ幅のタイヤを装着した「27.5+」規格をいち早く取り入れている。

ソフト面ではスイスでファットバイクによる雪上ステージレースが開催されたり、国内でも選手権が開催されるなど、ファン層の拡大を感じさせる。2016年はどのような展開を見せるか楽しみだ。
 

ディスクブレーキロード

2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージでディスクブレーキロードを使用するトレックファクトリーレーシングのM・イリサル
2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージでディスクブレーキロードを使用するトレックファクトリーレーシングのM・イリサル
昨年も10大ニュースのひとつとして挙げたディスクブレーキロードだが、やはり今年も挙げておきたい。

2015年は限定的とはいえUCIレースでの使用が認められた。結果的にはごく一部の選手が使用しただけにとどまったが、2016年は全UCIレースでディスクブレーキの使用が解禁される。ロードレースの機材が新時代へと移行していく年になるだろう。

女性選手の活躍、マーケットの拡大

リブの世界初の女性専用トライアスロンバイクAVOW(アヴォウ)
リブの世界初の女性専用トライアスロンバイクAVOW(アヴォウ)
萩原麻由子のジロ・ローザステージ優勝は日本自転車界において大きなニュースだった。

プロダクトにおいても2015年は女性モデルに力を入れ出すメーカーがいくつも現れた。特にジャイアントは女性向けモデルを「リブ」という別ブランドとして展開。カラーリングなど今までになかったようなスタイルが与えられている。

女性向け記事をまとめたページはこちら→0(ゼロ)から始める美しき「ロードバイク女子」生活

電動アシストユニットをロードバイクに搭載

電動アシストといえば日本ではママチャリに付いているもの。だが、海外ではすでにスポーツバイクに搭載したモデルが多数展開されている。MTBに搭載して上りをラクに、その分下りをたくさん楽しむというスタイル。また、デザイン性を重視したモデルも多い。

そんな状況をヤマハ・YPJの登場が変えた。ロードバイクフレームのダウンチューブにバッテリーを、BB付近に電動アシストユニットを搭載し、シマノ・105を組み合わせたモデルだ。

また、いくつものデザインアワードを獲得した台湾メーカー「ベスビー」も本格上陸する。生涯スポーツとして楽しまれるスポーツバイクが、電動アシストの登場によりさらに幅広い層の人たちが楽しめるものへと広がりを見せるきっかけになるだろう。
ヤマハ・YPJ-R ダウンチューブの黒いボックスがバッテリーだ
ヤマハ・YPJ-R ダウンチューブの黒いボックスがバッテリーだ
ベスビー・PS1は、2014年度グッドデザイン賞 BEST100 を受賞
ベスビー・PS1は、2014年度グッドデザイン賞 BEST100 を受賞

オンライントレーニング元年

室内トレーニングをローラー台で行うときの問題点と言えば単調でつまらないこと。それを打開するサービスがスタートした。「ズイフト」はオンラインで世界中にいるユーザー同士が一緒にサイクリングできるアプリだ。各社のローラー台やパワーメーターとPCやスマートフォンにインストールしたアプリを連携させることで利用することができる。

国内での発表会の模様はこちら→オンラインで世界中のサイクリストとトレーニング!ズイフト試乗会

高機能テールライトでライドをより安全に

スポーツバイクユーザーの増加に伴い、安全なライドへの関心もより高まってきた。それに応える形でテールライトをただ光るだけではない高機能なモデルがいくつか登場してきている。

ボントレガーは「フレアR」というデイライトを発表。テールライトは夜間走行のみ使用するイメージがあったが、昼間から点灯することによって後方から追突されるリスクを減らす。モーターサイクルは昼間でもテールライトを点灯していることを考えると自転車に同じ機能が付いていることは理にかなっている。

ライトにくわえて、万が一のアクシデントの瞬間を記録しておけるようにテールライトとカメラを一体化したのが「フライ6」だ。走行中を検知してオートオンオフ機能があり、さらに転倒するなど衝撃を感知すると自動的に撮影がストップ。ドライブレコーダーとしても機能してくれるという優れものだ。
 

ウエアラブルギア

レコンジェット。手前の白い部分が本体。反対側にバッテリーが搭載される
レコンジェット。手前の白い部分が本体。反対側にバッテリーが搭載される
ポラール・A360。カラーバリエーションも豊富
ポラール・A360。カラーバリエーションも豊富
ライド中に使いやすい高性能なウエアラブルギアの発表が相次いだ。ポラール・A360は腕にはめるタイプのハートレートモニター。他のメーカーからもこのタイプの製品は発表されているが、ポラールが長年培ってきた心拍数の解析ロジックが搭載されているのが魅力。

レコンジェットからはアイウエアにサイクルコンピュータ機能を搭載したモデルが登場。かつてのSF映画に登場するようなギアが現実のものとなったのだ。目元に小さな液晶画面がついており、サイクルコンピュータの画面を見なくても少ない視線移動で情報を得ることができる。操作はボディー外側をかるくなでるだけ。インストールするアプリ次第で、バイクはもちろんラン、ウォーキングなどさまざまなスポーツに対応する。