マウンテンバイク プッシュ・プルの基本/パンプトラックの遊び方【MTBはじめよう! Vol.16】

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マウンテンバイク プッシュ・プルの基本/パンプトラックの遊び方【MTBはじめよう! Vol.16】

撮影場所協力:フォレストバイク

マウンテンバイク(MTB)トレイルライド&グラビティライド(下り系の走り方)の基礎が学べるシリーズの16回目。今回は重要な必須スキルである「プッシュ・プル」動作の基本と、それが磨ける「パンプトラック」の遊び方について特集しよう。

 

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プッシュ・プルができればジャンプにつなげられる

今回も教えてもらうのは、プロMTBライダーでインストラクターとして活躍する、板垣奏男さんだ。

板垣奏男さん

板垣奏男(いたがき かなお)さん。東京サイクルデザイン専門学校を卒業後に本場カナダへ渡り、高度なライディングスキルからトレイルビルディングに至るまでを習得。現在はプロライダー/インストラクターとして活躍している。Instagram:kanao_i_into_the_ride  YouTube:kanao itagaki

 

「プッシュ・プルはかなり重要なテクニックで、これができればほぼあらゆる“縦の動き”に対応できます(対して、コーナリングなどを“横の動き”と言う)。また、ゆくゆくはジャンプに挑戦するときの基本動作にもつなげられます」。

プッシュ・プルの一連の流れ

プッシュ・プルの一連の流れ

 

「プッシュ・プルの動作とは、究極的にはニュートラルポジションを取る動作とレディポジションを取る動作の切り替え、つまりニュートラル/レディの切り替え動作です。

コブに上るときにニュートラルポジションを取り、その勢いを殺さないようにコブの頂上でレディポジションを取ります。これがプルです。プル=引くという意味なので、イメージしづらいかもしれませんね。

そして、コブを越えたあとの坂を下るときにレディポジションで地面に向かって荷重するようにして加速し、坂を下りきるあたりで地面を蹴るように伸び上がってニュートラルポジションを取り、次のコブに上るためのさらなる加速をします。これがプッシュです。

しかし、いきなりパンプトラックでこれに挑戦しても、動きが複雑なので混乱してうまくできるようにはなりません。なので、ここで必要になるプッシュとプルの動きそれぞれをばらして習得していく必要があります」と板垣さん。

なるほど。パンプトラックを走るとき、だんだん失速してうまく走れないという人は、これらの動きがうまくできていないことになるわけだ。詳しく教えてもらおう。

 

プッシュの動きの練習方法

プッシュの動きを習得するための練習法

プッシュの動きを習得するための練習法

 

「今回は分かりやすいように、MTBホッパーという製品を用いて大きなコブを作り、それで説明します。ただ、これを一般のマウンテンバイカーの皆さんが用意するのは難しいので、実際にパンプトラックで練習するときは、何か一つ大きめのコブに目標を定めて実践してみると良いです。

コブを上り、後輪が頂点を越えて下りが始まるまでずっとニュートラルポジションを取り続けてください。後輪が頂点を越えて下りが始まったら、レディポジションを取ります。

下りでレディポジションを取るだけで、自転車が地面に押し付けられてぐっと加速するのが感じられるはずです。

この練習では、レディポジションのまま坂を下りきってください」。

プッシュのよくある失敗例その1

プッシュのよくある失敗例その1。コブを超える前にプッシュをしてしまい、推進力が殺されてしまう

 

「ここでよくあるのが、プッシュのタイミングが早すぎる失敗例です。後輪がコブの頂点を超える前にレディポジションを取って加速しようとしているので、勢いがここで殺されてしまうわけです」。

 

プルの動きの練習方法

プルの練習法

プルの練習法

 

「次は、同じくニュートラルポジションでコブに侵入しますが、コブの頂上を越えるあたりですばやくレディポジションを取ります。これによってコブを上るときの推進力を殺さないようにしつつ、自転車がコブの頂点を通過するようにさせます。

あとは、そのままレディポジション取りながら前の練習方法と同じように坂を下りきっていってください」。

よくあるプルの失敗例

よくあるプルの失敗例

 

「ここでよくある失敗例が、プル=引くという言葉に惑わされて、ハンドルを上に向かって引っ張り上げるような動作を取ってしまうことです。こうするとコブを上るときの推進力が失われてしまいます」。

悪いプルにひもづくプッシュの失敗例

悪いプルにひもづくプッシュの失敗例

 

「また、先ほど説明したプルの悪い例にひもづいて起こるよくあるプッシュの失敗例もあります。プルがうまくできずに失速しコブの頂点を越えられないから、ハンドルを前に押し出すようにしてコブを越えようとすることです。これでは、坂を降りるときにうまく加速できなくなります。

ここで紹介したこれらの悪い例は、プッシュ・プルをいきなり連続して行おうとするとやってしまいがちです。プッシュ・プルができないから、無理やり“前後の動き”でごまかそうとしてしまうのです。

繰り返しになりますがいきなり連続してはできないので、プッシュならプッシュ、プルならプルだけに集中して練習しましょう。あくまでも“縦の動き”として行うことが大切です」。

 

プッシュ・プルを組み合わせた動きの練習方法

プッシュ・プルを一連の流れで行う練習方法

プッシュ・プルを一連の流れで行う練習方法

 

「プッシュとプルの動きをそれぞればらして練習して、それぞれできるようになってきたらプッシュ・プルを組み合わせて連続して行う練習をします。

ここに移行する目安としては、プッシュならコブの頂点を越えたあとに加速する感覚が得られるようになったか、プルならコブを上って頂点を越えるまでに失速しなくなったか、です。

また同じように何か一つ大きめのコブに狙いを定めて、ニュートラルで侵入→コブの頂点を越えるときにレディで失速しないように通過→坂を下るときに加速→最後に坂を下りきるあたりで自転車を地面に向かって突き放すようにグン!とニュートラルポジションに戻る動作を加えます。すると、次のコブを上るときの加速になります」。

 

パンプトラックの走り方

ここでようやくパンプトラックを連続して走ることに挑戦だ

ここでようやくパンプトラックを連続して走ることに挑戦だ

 

「ここまでできるようになったら、パンプトラックを連続して走れるように練習していきます。

パンプトラックの何が難しいかといったら、コブが連続している、ということです。プッシュ・プルを入れるタイミングに気をつけながら、一つひとつ丁寧にこなしていくことが大切です。

最初のうちは、例えば前半のコブは全てプッシュの動きだけひたすらやる、後半のコブは全てプルの動きだけひたすらやる、というように分けて行っていくと感覚がつかみやすいでしょう。

段々と失速していってしまうという人は、先に説明したようにプッシュを入れるタイミングが早すぎる状態になっていることが多いです。そういう人は、レディポジションをとって坂を下っているときにグンと加速する感覚が得られているかに注意を払いましょう。それが感じられるポイントが、プッシュを入れるタイミングとなるポイントです。

動画を撮って自分の動きを確認してみると一目瞭然です。動画を撮れば、タイミングがどうずれているのか、分かりやすいです」。

さあ、あなたも早速パンプトラックのあるパークに行って、チャレンジしてみよう!