スペシャライズドの定番タイヤ「ターボ」の新作3本

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スペシャライズド新型ターボ3本

世界トップのレースシーンにおいて数多くの勝利を挙げているスペシャライズド。そんなスペシャライズドよりSワークスターボシリーズの新作タイヤが発表された。今回発表されたのはチューブレス対応の『ラピッドエアー』『2BR』と、クリンチャー用のノーマル『ターボ』の3種類。実際に地面に触れる”たった2.5㎠”を意識して作られたタイヤは走行可能距離、耐パンク性の向上そして軽量化を果たしている。

地面と接触する唯一のパーツだからこそ、タイヤには高いグリップと耐久性を重視する平塚吉光が、製品の特長をインプレッションと共に紹介していく。

スペシャライズドターボ平塚吉光

デュアルコンパウンドの採用

今作ではT2とT5という自社開発コンパウンド2種類を採用。それぞれのコンパウンドはリバウンド(反発)速度に違いがあり、その特長を活かした組み合わせとなっている。

スペシャライズド新型ターボコンパウンド

スペシャライズドではT2、T5、T7、T9の4つのコンパウンドを使い分けており、T2とT5はそれぞれリバウンドが1番速いものと2番目に速いものになる。

タイヤセンターにT2を、サイドにはT5を採用し、路面の凹凸やペダリング時に発生する振動などを効率よく吸収し、より路面を追従できるようコントロールされている。路面追従性能が上がったことで、滑らかな走行を可能にし、グリップ力の向上にもつながっている。

スペシャライズド新型ターボコンパウンド

またトレッドパターンはスリックではなく、テクスチャーを持たせ、これが路面の凹凸を捉えることで路面追従性能がアップされており、さらに安全に走行できるタイヤになっている。

 

半分の薄さで高い耐パンク性を発揮する新ブラックベルト

製品の耐久テストにもさまざまな方法が用いられている。実際の走行テストはもちろん、5mmのブレードを突き刺すテストやサンドペーパーに擦り付けるテスト、バウンドのテストなど、各方面から幅広いテストにより確かな性能を作り上げている。

開発・テストの繰り返しにより走行可能距離が今までに比べ1000kmも伸びたことで交換頻度が減るということはユーザーとして特に嬉しいところだ。

また、トレッドの下にケブラーを織り込んだ新しいブラックベルトプロテクションを採用。厚みが半分になった新ブラックベルトは5gの軽量化を成功させたが、それでもなお耐パンク性の向上も成功させている。

 

フックレスにも対応のチューブレスレディータイヤ

チューブレス対応の『ラピッドエアー』『2BR』では、TSS(Tubeless Straight Side)規格のフックレスシステムを採用したホイールにも対応する。スペシャライズド製ホイールではフックレスシステムを採用していないが、フックレス対応ホイールを使うユーザーもスペシャライズド製タイヤの選択をすることができるよう、フックレス対応となっている。

そんなフックレスに対応可能にするにあたり、ビードの素材にザイロンを追加し、タイヤが外れるリスクをさらに抑え込んだ。それにより通常規定空気圧の110%まで圧力対応できれば良いのに対し、スペシャライズドの商品においては200%の圧力まで対応できる強さを手に入れている。走行時に段差などで突発的に空気圧が上がることも想定したものであり、安全に対する強いこだわりを見ることができる。それによってタイヤが嵌めにくくなりそうだが、作業性は落ちていないという。

なお、現状スペシャライズドからフックレス対応ホイールが発表になる予定や情報はなく、あくまで”他社のフックレスにも対応”できる仕様ということだ。

 

2層構造採用の決戦用タイヤ『ラピッドエアー』

スペシャライズド新型ターボ

そんな新作タイヤにおいて、究極の決戦用タイヤとしてレース使用を想定して作られているラピッドエアー。26Cのみのラインナップになっている。今までチューブラーやオープンチューブラーに使われていた、2層構造のケーシングが採用された。

従来の3層ら2層に減ったことによりタイヤの変形量が変わり、結果ヒステリシスの軽減=転がり抵抗の軽減にもつながった。また純粋に1層減ったことで軽量化にもつながり走りの軽さも実現させている。もちろん、新ブラックベルトによる対パンク性のおかげで2層になってもパンクのリスクは高くない。

スペシャライズド新型ターボ

タイヤの構造についての解説。一番右がラピッドエアー

ラピッドエアーの印象は

実際に使用してみたが、T2コンパウンドによるリバウンドの速さと2層ケーシングによる軽さが相まってすとてもクイックな動きをする印象だ。上りやコーナー立ち上がり時の軽さが特徴で切れ味の良い加速をしてくれる。

メーカー推奨の5.0barより低い4.3barが好みであったが、リバウンドの速さを出すために全体的に張りがあるタイヤであるため、変なしなりを感じる事なくレースでも力を発揮してくれるだろう。さらに、常に動くホイールのさらに外にあるタイヤが軽くなるということは大きい力を必要とせずに動かすことができる為、パワーが出にくい軽量級ライダーのサイクリングやポタリング時にもお勧めだ。

スペシャライズドターボ平塚吉光

 

全ての性能が高水準な『2BR』

スペシャライズド新型ターボコンパウンド

純レースタイヤとして無駄を削ったラピッドエアーに対し、乗り心地の良さや耐久性をさらにアップさせたのがターボ2BRだ。従来通り、3層構造のケーシングと新ブラックベルトの重なりで、さらに強い耐パンク性を手に入れた。

バランスのよい2BR

3層ケーシングにより重量は増すが、T2/T5の性能で走行の軽さを維持している。ラピッドエアー比で30g(26C)重たいが走行時にはほぼ感じることが無い。また、クッション性がとても高く、荒れた路面やベルト状に舗装された道路の滑り止めを走行時の路面追従性をしっかり感じることができた。

石畳のクラシックレースなど激しいレースも想定した耐久性により消耗も少なく路面追従など高性能な2BRはチューブレスの恩恵を余すことなく受けられる。26C、28C、30Cと3種類のラインナップが選択肢を広げ、さらに流行りのタンサイドも用意されている。好みやシチュエーションに合わせたタイヤ選びができる事も含め、良いタイヤと言えるだろう。

 

汎用性重視の『Turbo』

スペシャライズド新型ターボ

チューブレスの人気が上がり続ける昨今だが、クリンチャータイヤを使うユーザーも少なくない。そんなユーザーの心には、整備性能の楽さが大きな理由の一つであろう。

チューブレスシステムはエアー漏れを許さない事から多くの場合脱着時に大変苦労する。取り扱いの数を増やし、コツをつかめばさほど苦にならないチューブレスの扱いだが、一般ユーザーが数をこなすはなかなかのハードルといえる。

また、ホイールを買い替える必要もあり、さらにハードルが高いのが現実。そんなクリンチャーを使い続けるユーザーに向けたのが『ターボ』だ。チューブレスに比べ構造上、空気圧が高くなってしまうクリンチャーは多少乗り心地が悪くなることは否めない。他の2作同様にT2/T5コンパウンドや新ブラックベルトにより軽量化に成功しつつ耐パンク性能をアップさせている。

慣れた機材の良さ

テストの際、唯一前作との比較をできたのがこの商品でもある。前作と比べて軽くなったタイヤは明らかにキレが増した印象。チューブレスより硬い=ネガティブ要素と捉えがちであったが、的確に反応してくれるタイヤはとても気持ちが良い。昔ながらの良いところと新しいシステムの組み合わせはクリンチャーを使いたい欲に刺激を与えてくれた。やはりメンテナンスの事も考えると選択肢の一つになりそうだ。

 

新型ターボシリーズラインナップ

スペシャライズド・Sワークスターボ ラピッドエアー
TPI:120TPI
チューブレスレディ(フックレス対応)
サイズ:700×26C
重量:230g
価格:1万2100円

スペシャライズド・Sワークスターボ 2BR
TPI:120TPI
チューブレスレディ
サイズ:700×26C、700×28C(タンサイドあり)、700×30C
重量:260g(26C)、280g(28C)、300g(30C)
価格:1万450円

スペシャライズド・Sワークスターボ
TPI:120TPI
クリンチャー
サイズ:700×24C、700×26C、700×28C、700×30C
重量:200g(24C)、220g(26C)、240g(28C)、260g(30C)
価格:9350円

 

同時発表、ロヴァールのホイールにセカンドグレード登場

ロヴァールセカンドグレード

3種類のタイヤとは別に、セカンドグレードのタイヤ『ターボプロ』と、同社ホイールブランドのロヴァールのラピーデシリーズ(写真左)のセカンドグレード『ラピーデCL』が発表された。

ターボプロはT5コンパウンドのみのシングルコンパウンドだが、新ブラックベルトの採用と制作時の型の精度アップによりこちらも軽量化に成功している。

ラピーデCLにおいては横風対策に力をいれ、蛇行せずに走れるようサポートしてくれるリム形状になった。かつてのTT用100mmハイトホイールと比べても誤差ほどしか差が出ない推進力を手に入れたホイールだ。

横風、特に突風が吹いた際にまっすぐ走れる=煽られにくくなったという事で、突風による転倒や煽られた際の他者(他車)との接触なども回避してくれることが期待される。