ジャイアント・プロペル マルチなエアロロードに進化

目次

プロペルアドバンスドSL

ジャイアントはエアロロードバイク・プロペルシリーズのフルモデルチェンジを行い、2023年モデルとして発表した。アドバンスドSL、アドバンスドプロ、アドバンスドの3グレードからなり、どのグレードも先代モデルと比べて空力性能と効率性を改善し、コックピットまわりのポジション調整が容易な2ピースタイプの新型エアロハンドル&ステムを組み合わせるなど、レーシングバイクとして全方位的に進化を遂げている。

 

チーム・バイクエクスチェンジがツールで2勝を挙げ、戦闘力を証明

新型プロペルシリーズのフラッグシップモデル・プロペルアドバンスドSLは、風洞実験施設と公道での実走によるテストを繰り返し、開発に数年間をかけて誕生。ツール・ド・フランス2022でチーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコのメインバイクとして初披露された。

早速、スプリンターのディラン・フルーネウェーヘンが第3ステージで優勝。さらに、過酷なアップダウンが続く第14ステージで、マイケル・マシューズが単独アタックによる劇的な勝利を収めたことによって、新型プロペルはその高い戦闘力を証明した。

 

ツール・ド・フランス2022第14ステージで優勝したマイケル・マシューズ

ツール・ド・フランス2022第14ステージで優勝したマイケル・マシューズ Photo: Dion Kerckhoffs/Cor Vosⓒ2022

 

新型プロペルは、完成車状態での風洞実験で先代モデルに対して有意な差を示し、優れた空力性能を証明。フレーム単体の重量もより軽くなり、剛性も向上し、レーシングバイクの性能の重要な指標である重量剛性比も高まっている。平地での高速巡航や、タイトターンの連続する下り、厳しい登坂路など、様々な状況で卓越した速さと意のままに操れるコントロール性能を兼ね備えたオールラウンダーに進化した。

さらにより細身になったシートステーや新開発のベクターシートポストによって快適性も向上。滑らかな舗装路、荒れた道といったさまざまな路面状況を問わず優れたライドクオリティをもたらす。

なお、ベクターシートポストは、アドバンスドSLグレードが採用するフレーム一体型と、アドバンスドプロおよびアドバンスドグレードが採用する一般的な別体式ポストの2種類が用意される。

 

フレーム一体型ベクターシートポスト

フレーム一体型ベクターシートポスト

別体式ベクターシートポスト

別体式ベクターシートポスト

 

新型プロペルは、プロロードレーサーはもちろん、アマチュアライダーやトライアスリートなど、速さを求めるすべてのライダーに幅広く適応する。その理由を「空力性能」、「ライドクオリティ(重量・剛性・快適性)」、「ポジション調整の自由度」という3つの重要なキーワードに分けて紹介しよう。

 

空力性能:トランケイテッド・エリプス形状のフレーム断面

新型プロペルの設計指針は、「エアロシステム・シェーピング・テクノロジー」。開発チームは、まずコンピューターでのCFD(数値流体力学)解析によって気流のシミュレーションを行い、まずチューブの形状や角度、接合部の形状などを最適化した。

続いてドイツ・インメンシュタットのGST風洞施設でエアロダイナミクス研究の権威との協働で風洞実験を実施。ここでは現実世界でのライダーが乗車した状態を極力再現しながら空力性能を煮詰めるため、風洞実験中にマネキンがペダリング動作を行う動的マネキンを使用している。この手法は10年以上前に初代プロペル開発時にもジャイアントが行ったプロセスだ。今回はボトルを付けた状態で風洞実験を行うなど、より実際の走行環境に近い状況を再現した実験が行われた。

 

GST風洞施設

GST風洞施設

 

この結果、フレーム前部のヘッドチューブやダウンチューブ、シートチューブなどフレームのキーとなる部分に楕円の後部を切り取った「トランケイテッド・エリプス」という新しい翼断面形状を採用。さらに先代と比べてチューブの太さも細くなっている。これにより、あらゆる方向からの優れた空力性能と軽量化を両立することに成功している。

 

プロペルアドバンスドSLの前面

 

空力性能:エアロハンドル&ステム、エアロホイール、専用ボトルケージなどで空力性能追求

空力性能の向上に関しては、フレーム単体で成し遂げたものではない。新型のハンドルバーとステムからなるコックピットまわり、50mmハイトの新型エアロホイールとエアロタイヤを組み合わせた足まわりとの相乗効果によるものだ。また、空気抵抗を最小化するための対策として、ダウンチューブとシートチューブに装着する専用のボトルケージも開発されたこともトピックだ。

 

プロペル専用ステムとハンドル プロペル専用ボトルケージ

 

新型プロペルアドバンスドSLを先代モデルの完成車状態での空力性能を比較すると、新型は空気抵抗を6.21W低減可能だという。これは同じパワーで40kmの距離を走行した場合に27 秒短縮することに相当する。

 

ライドクオリティ(重量・剛性・快適性):軽さと剛性がもたらす高いパワー伝達性、快適性も兼ね備える

新型プロペルは、軽さと剛性を両立し、高いパワー伝達を可能とすることを目指し、ヘッドチューブ、ダウンチューブ、ボトムブラケット周辺の改良を行った。

ジャイアントが行ったテストによると、新型は先代モデルよりも 9.9% 高いフレーム剛性を備え、BBまわりの剛性は 7.5%向上しているという。フレームとフォークを含むフレームセット全体の剛性は9.2% 高くなり、重量剛性比も26.4%向上している。

新型プロペルは乗り心地も重視して再設計されている。これは「フレームセットを超高剛性にするだけでは必ずしも速くなるとは限らず、現実世界の条件で全体的なパフォーマンスを最適化するには、柔軟性とコントロール性も重要」と考えに基づく。

リヤトライアングルを形成するシートチューブやチェーンステー、ISPを再設計し、先代プロペルより径の細いチューブを採用している。その結果、快適性が向上するだけでなく、軽量化にもつながり、軽快なハンドリングも実現している。

 

プロペルアドバンスドSL

 

快適性を物語る数値として、新型プロペルアドバンスドSLは、先代モデルと比較してリアエンドの柔軟性を85%も向上させている。これはシートチューブの途中にシートクランプのないISPによる効果も大きいというが、通常のシートポストを採用するアドバンスドプロ、アドバンスドグレードのモデルも快適性を向上させている。乗り心地が硬めのバイクが多いエアロロードでありながら、長時間のライドでの疲労を最小限に抑える設計になっている。

また、フレームとフォークのクリアランスを拡大したことで、最大30mm幅のタイヤの装着が可能になっているのもポイント。ワイドなタイヤがもたらすコーナーでの安定感や、エアボリュームの多さによる快適性の高さが、乗り心地だけでなく全体的なライドクオリティを底上げする。

 

ポジション調整の自由度:より簡単なポジション出しを可能にする新型のコックピット

コックピットまわりも一新されている。新しく開発されたエアロハンドルバーとエアロステムは、それぞれ別々に交換することが可能な2ピースタイプ。より細やかで正確なポジション出しを可能にする。もちろんハンドルバーとステム内にケーブル内装用のルートが設けられていて、ケーブルの完全内装が可能だ。近年のロードバイクに多く採用されるステム一体型のハンドルの弱点であるポジション調整の制約を克服しながら、ケーブル内装による空力性能アップを実現しているのが特徴だ。また、ポジション調整時に部品を変える際の出費も最小限に抑えられるのも魅力だ。

ハンドルバーとステムを内装したケーブルは、新たに設計されたD型断面のフォークコラムの前を通ってフレームに内装される。スペーサーもエアロ形状の専用品が用意される。ハンドルバーとステム、スペーサー、フォークコラムからなる新しいケーブル内装のテクノロジーは、「オーバードライブエアロシステム」と名付けられ、新型プロペルの重要テクノロジーのひとつになっている。先代モデルではステム上部からステアリングコラムの後ろを通ってケーブルがフレームに内装されていたが、それに比べて空力性能を向上させ、ポジション調整を容易にする効果がある。

 

プロペルのハンドルまわりのケーブルルーティング

 

ハンドルとステムは、それぞれカーボン製で軽量なSLRグレードとアルミ製でコストパフォーマンスに優れたSLグレードが用意され、完成車ではグレードによってアッセンブルされるハンドルやステムのグレードが異なる。新しいコンタクトエアロカーボンハンドルバーは、空力性能を高めつつ、手を置いた際の快適性を高めるフラットトップ形状を採用。また、スプリント、コーナリング、下りでのコントロールに最適なドロップを備える。

 

2種類のフレーム、3つのグレード、7つの製品を展開

新型プロペルは、3つのグレードを展開。チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコが使うフラッグシップモデル・アドバンスドSLは、ジャイアントが誇る超軽量・高剛性のアドバンスドSLフレームを採用し、ベクターシートポストはフレーム一体型。ミドルグレードのアドバンスドプロシリーズ、エントリーグレードのアドバンスドシリーズは、コストパフォーマンスに優れるアドバンスドフレームを採用し、ベクターシートポストは一般的な別体式となる。

ラインナップは次の通り。価格はいずれも税込。

 

プロペルアドバンスドSL0

 

プロペルアドバンスドSL0
価格:159万5000円

 

プロペルアドバンスドSLフレームセット

 

プロペルアドバンスドSLフレームセット
価格:55万円

 

プロペルアドバンスドプロ0アルテグラDi2

 

プロペルアドバンスドプロ0アルテグラDI2
価格:82万5000円

 

プロペルアドバンスドプロ0フォースeタップ

 

プロペルアドバンスドプロ0フォースeタップ
価格:94万6000円

 

プロペルアドバンスドプロフレームセット

 

プロペルアドバンスドプロフレームセット
価格:33万円

 

プロペルアドバンスド1

 

プロペルアドバンスド1
価格:66万円

 

プロペルアドバンスド2

 

プロペルアドバンスド2
価格:41万8000円

 

完成車に採用されるホイールやハンドル、ステムも単品販売

新型プロペルシリーズに採用されるホイールやハンドル、ステムは、単品でも販売される。

ラインナップは次の通り。価格はいずれも税込。

 

SLR1 50ディスクフックレスホイールシステム

 

SLR1 50ディスクフックレスホイールシステム
価格:フロント8万8000円、リヤ12万1000円

 

SLR2 50ディスクフックレスホイールシステム

 

SLR2 50ディスクフックレスホイールシステム
価格:フロント7万1500円、リヤ8万2500円

 

コンタクトSLRエアロドロップ(2023モデルプロペル用)

コンタクトSLRエアロドロップ(2023モデルプロペル用)
コンタクトSLRエアロドロップ(2023モデルプロペル用)

 

コンタクトSLRエアロドロップ(2023モデルプロペル用)
価格:4万9500円

 

コンタクトSLエアロドロップ(2023モデルプロペル用)

コンタクトSLエアロドロップ(2023モデルプロペル用)

 

コンタクトSLエアロドロップ(2023モデルプロペル用)
価格:1万6500円

 

コンタクトSLRエアロステム(2023モデルプロペル用)

コンタクトSLRエアロステム(2023モデルプロペル用)
コンタクトSLRエアロステム(2023モデルプロペル用)

 

コンタクトSLRエアロステム(2023モデルプロペル用)
価格:4万4000円

 

コンタクトSLエアロステム(2023モデルプロペル用)

 

コンタクトSLエアロステム(2023モデルプロペル用)
価格:1万4300円