ロヴァールのホイール「ラピーデ」「アルピニスト」がチューブレスレディに

目次

ロヴァール・CLX2

スペシャライズドのコンポーネントブランドRoval(ロヴァール)から、新型ホイール「RAPIDE CLX II (ラピーデCLX2)」「ALPINIST CLX II(アルピニストCLX2)」「ALPINIST CL II(アルピニストCL2)」 が発売された。世界最多の勝利を収めてきたホイールが、1年9か月の開発期間を経て、既存の安全基準のほぼ2倍を達成したフックドリムのチューブレスレディとなった。フックドリムの採用により、タイヤとその幅の選択肢が広がるだけでなく、110psiまでの空気圧に対応。速度が出る形状、軽量で優れた反応性といった従来の特長を引き継いだまま、スピードとグリップに優れたチューブレスのメリットも兼ね備える。

 

勝利を積み重ねた前作

2020年に発売されたラピーデアルピニストの開発で掲げた目標は、どんなシチュエーションにも対応できる、最速で最高のハンドリング性能を持つホイールを作ること。2020年と2021年には、ラピーデとアルピニストは他のどのホイールよりも多くのワールドツアーで勝利しており、155勝を積み重ねた(プロサイクリングスタッツ調べ)。石畳のモニュメント、グランツールのステージ、山岳ルート、スプリント、そして世界選手権と、由緒正しいレースでの勝利ばかりだ。

レースシーン

 

チューブレスレディに進化

ロヴァール・CLX2のリム

ラピーデCLX2とアルピニストCLX2はチューブレスレディになり、チューブレスがもたらすより低い転がり抵抗、高いハンドリング性能、耐パンク性能が加わった。2022年シーズンはすでに29勝を含む80回の表彰台入りを達成し、ラピーデ2とアルピニスト2の進化を証明している(2022年4月18日現在、プロサイクリングスタッツ調べ)。

レースシーン

また、ラピーデCLX2の開発では、これまでで最も厳格かつ広範囲にわたる開発とテストを実施。その耐衝撃基準は業界基準のほぼ2倍でありながら、可能な限りの軽さを実現している。さらに、ラピーデCLX2とアルピニストCLX2は、最大空気圧110psiまでに対応したフックドリムを採用。これにより、タイヤのビードが確実に保持され、チューブレス化やタイヤの着脱が今まで以上に簡単になった。

 

チューブレスが速い理由

タイヤの断面図

チューブレスにすると、チューブの分だけ内部摩擦が減少し、スピードとグリップが向上する

 

タイヤが接地面を転がると、タイヤのケーシングは必ず変形する。これが内部摩擦を生じさせ、転がり抵抗を増やし、前進に使われるはずのエネルギーが消費される。つまり、内部摩擦が少ないほど、スピードとグリップが向上する。なお、チューブを使うと変形する要素が増えるため、より多くの摩擦が発生し、より多くのエネルギーが失われる。

チューブレスは変形する要素がタイヤのみになり、内部摩擦と失われるエネルギーが軽減し、前進するためのエネルギーをより多く残せる。変形する要素がシンプルになるということは、タイヤが路面の凹凸に応じた形に添いやすくなり、グリップと快適さが向上し、常にバイクの挙動を把握した状態で走れるということだ。これらのメリットは速度や地形に関係なく常に得られるため、タイヤが転がっている間はチューブレスの方が速い。

「転がり抵抗の低減は平均8%。高性能レースタイヤで時速40kmで走行したと仮定すると、タイヤ1本あたり1.7W、バイク1台あたり3.5Wの節約になります」と、スペシャライズド・タイヤ開発マネージャーのオリバー・キゼル氏は話す。

 

開発ストーリー

ペテル・サガン

スペシャライズドがチューブレスタイヤ「Turbo RapidAir(ターボラピッドエアー)」を開発し、2019年にこのタイヤで、ツアー・オブ・カリフォルニアのステージとツール・ド・フランスの複数のステージを制した裏にはロヴァールの協力があった。しかし、2020年と2021年のシーズンで最速だったのはチューブドだった。このシステムが155勝を挙げる間、ロバールは次世代チューブレスホイールの開発に勤しんでいた。

「ペテルがホイールを壊した……」

ロヴァールはプロライダーと製品を共同開発しており、プロライダーはいくつものプロトタイムに乗り、良かった点や改善点などをフィードバックする。

2019年12月、新しいホイールをテストしていたボーラ・ハンスグローエのチームキャンプから あるメッセージが届いた。土曜日の午前6時、ベッド脇のテーブルに置いたiPhoneが鳴り始め、ロヴァールチームの全員に「ぺテル(・サガン)がホイールを壊した」とのメッセージが送られてきた。その一文には、亀裂の入ったアルピニストCLXと、外れたタイヤの写真が添付されていた。開発チームはすぐに、そのホイールをカリフォルニアの本社で調査した。

サガンが使った製品には独特の負荷が掛かる。ジャンプしたり、ドリフトしたり、舗装路を外れてオフロードを走ったりと、ロードレーサーらしからぬ走り方もするからだ。破損したのは、ラウンドアバウトを飛び越えて縁石にぶつかったからだという。サガンは、さすがにホイールはその衝撃に耐えられないものの、タイヤはリムから外れないだろうと思っていた。

ラボで原因究明

ロヴァールの開発チームがその破損したホイールを検査したところ、リムベッドに小さな亀裂を発見。このホイールは、UCIのタイヤ未装着状態での40ジュール落下テストなど、あらゆる認証機関の基準を余裕でクリアしていた。しかし、チューブレスホイールは、他のシステムとは異なる壊れ方をする場合がある。リムベッドの亀裂がリムの空洞部にまで広がると、漏れ出た高圧の空気によってリム全体が破損する可能性があるのだ。なお、チューブを入れた状態で同じテストを繰り返すと、損傷度合いは低くなる。チューブは亀裂に掛かる圧力を分散させ、高圧の空気を徐々に放出するからだ。

ワールドツアーでの反乱

この開発中のホイールは、チューブを入れることですべての関連基準をクリアし、さらにはそれらを上回る性能を発揮していた。しかし、開発チームはさらに高い社内基準、つまりは既存のチューブレスシステムのほぼ2倍の耐衝撃性を実現したいと考えた。ライダーがバイクから振り落とされずに済む程度の衝撃なら、タイヤはリムから外れず、構造的に問題がなく、たとえリムに亀裂が入っても安全に停止できて当然。これが、彼らが目指した耐衝撃性だった。

リエージュ~バストーニュ~リエージュ

ラピーデとアルピニストの開発が続行されることになり、チームには引き続き2019年のシーズン開幕からCLX32、50、64を使用することが伝えられた。しかし、彼らはすでにラピーデとアルピニストに惚れ込んでおり、これらをレースでも使いたいと申し出た。旧モデルのCLXクリンチャーとチューブラーではなく、新しいラピーデやアルピニストとスペシャライズドのターボクリンチャータイヤをチューブドでレースすることを望んだのだ。彼らはこのセットアップこそ、軽量性、空力性能、安定性を兼ね備えた最高の組み合わせであり、史上最速であると確信していた。

ロヴァールはラピーデとアルピニストをチューブドで提供。彼らが勝ち始めたことにも後押しされ、ロヴァール史上最大のテストと開発が開始された。

テストに次ぐテスト

シャープエッジストライカーを使った衝撃試験

シャープエッジストライカーを使った衝撃試験

 

UCIの40ジュール落下テストだけではライダーの安全を十分に保証できないと開発チームは考えた。そこで、ライダーが受ける衝撃の大きさを予測し、それに耐え得るチューブレスホイールとタイヤシステム全体のテスト基準を作った。

ラボでのテストが本当に実際の状況を再現しているかどうかを確かめるため、エンジニアは屋外でテストを実施。しかし、ホイール、タイヤ、カーボンフレーム、ライダーといった、あらゆる不確定要素を含む衝突エネルギーをどう再現するのかという問題が出てきた。衝撃であちこちが揺れ動いてしまい、正確な結果を得られない。その解決策はシンプルだった。測定するのはライダーではなくバンプ。ライダーにセンサーを付ける代わりに、バンプそのものを衝撃を受けるたびに測定し、正確な力の掛かり方を解明した。

こうして生まれたのがラボでの衝撃試験の新基準。従来のテスト基準だった40ジュールのほぼ倍のエネルギー量を設定し、ホイールだけでなくシステム全体をテストの対象とした。

まず、時速32kmで高さ5cmの障害物に衝突したときの約30ジュールよりもはるかに大きなエネルギー量からテストを開始。シャープエッジとラウンドの2種類の形状ストライカーを使用し、40ジュールから70ジュールまでをテストした。70ジュールにもなると、ハンドルバーから手が弾かれてしまうほど大きな衝撃だ。

40ジュール/シャープエッジストライカー:破損する可能性はあるも、ライドやレースを問題なく完走可能。
50ジュール/シャープエッジストライカー:ホイールは破損する可能性があるも、タイヤはリムに収まったまま、システムは無傷であり、安全に停止可能。
55ジュール/ラウンドストライカー:破損なし。
60ジュール/ラウンドストライカー:破損する可能性はあるも、ライドやレースを問題なく完走可能。
70ジュール/ラウンドストライカー:ホイールは破損する可能性があるも、タイヤはリムに収まったまま、システムは無傷であり、ハンドルバーにつかまっている限りは安全に停止可能。

膨大な数のプロトタイプを作製

ロヴァール・CLX2

エンジニアは、ライダーに伝わる衝撃と実際の衝突エネルギーに合わせた新基準を設け、まったく新しいストライカーと衝撃の与え方を利用した確実なテスト手法を実現した。あとはラピーデとアルピニストに、チューブレスシステムのあらゆるメリットを加え、製造するだけ。

新しいホイールに課された目標は次の2つだ。60ジュールでラウンドストライカーを当てても破損せずに耐えられる強度を構造全体に持たせること。70ジュールでラウンドストライカーを当てても、リムベッドやサイドウォールに入った亀裂はそれ以上広がらず、衝撃をスポークベッドに伝えること。この衝撃を受けるとリムはもう使えなくなるだろうが、タイヤをビードに収めたまま、ホイールの構造は無傷で安全に停止できる。

これらの問題に対する解決策もシンプルなものだった。アルピニストとラピーデのリムの形状は変える必要はない代わりに、レイアップと素材を見直したのだ。両モデルで150種類のレイアップを用意し、1000本以上のホイールをテストした。

1年9か月をかけて完成したリムは、これまでで最も強く軽いものになった。このリムで組んだホイールは、自社で設けた厳格なテスト基準をクリア。さらに、チューブレスシステムを実現し、ラピーデやアルピニストチューブドホイールを超える性能を発揮した。

 

ラピーデCLX2:完成された速さ

ラピーデCLX2

チューブレスになったラピーデCLX2。カラーはサテンカーボングロスホワイト

 

リムハイトの高いタイムトライアル用ホイールの空力性能と、リムハイトの低いヒルクライムホイールの軽量性に、チューブレスの優れた効率性と卓越したハンドリング性能を融合させたのがラピーデCLX2だ。ラピーデCLXは、フロントリムが51mmハイトで外幅35mm、リヤリムが60mmハイトで外幅30mmと、前後に異なる特性を持たせて最適化。その結果、リムハイト65mmのほとんどのホイールよりも速く、強風下ではCLX50よりも25%安定したという。

 

ステアリングエラーのグラフ

ライダーが過剰に反応してしまう0.5~2秒の突風での安定性にフォーカスを当ててリム形状を開発

ラピーデCLXの空力グラフ

ラピーデCLXは、リムハイト100mmのTT用ホイールと比較してもそのCdA値は許容誤差の範囲に収まっている

 

フックドリム採用でチューブレスレディとなったラピーデCLX2は、外径寸法を変更し、タイヤのビードに1.4mm余裕を持たせているため、ライド中のパンク修理を含むタイヤの着脱をより簡単に行える。また、エアロフランジハブは、新しいSINCセラミックベアリングと、より軽量でシンプルなラチェットシステムを採用したDTスイスのEXPフリーハブを搭載。剛性とラチェットの信頼性を高め、フリーハブボディーの交換を簡単にする、ベアリングの間隔を広げたデザインとなっている。

エアロフランジハブ

RAPIDE CLX II

価格:14万8500円(フロント)、20万3500円(リヤ)

カラー:サテンカーボングロスブラック、サテンカーボングロスホワイト

リム:
リムハイト51mm、外幅35mm(フロント)
リムハイト60mm、外幅30mm(リヤ)
内幅21mm(前後とも)
チューブレスレディ

重量:1505g(リムテープとバルブを含むと1520g)

ハブ:エアロフランジハブ、DTスイス・EXPインターナル、SINCセラミックベアリング

スポーク:DTスイス・エアロライトスポーク、フロント18本、リヤ24本

最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110psi

耐荷重:125kg

 

アルピニストCLX2:ライドをさらなる高みへ

アルピニストCLX2

チューブレスになったアルピニストCLX2。カラーはサテンカーボングロスホワイト

 

アルピニストCLX2は、ロヴァール史上最も軽量でハンドリング性能に優れたクリンチャーホイールだ。反応性の高い加速、吸い付くようなコーナリング、舗装の悪さを感じさせない走りはそのままに、チューブレスシステムを新たに採用した。リムが軽量なだけではなく、ホイールセットをスペシャライズドのチューブレスタイヤと併用するシステムとしてデザインし、エンジニアがハブ、リム、スポーク、組み方のすべてを管理およびテスト。その結果、前後で1250gの軽さとなった。

ラピーデと同様に、リムの外径寸法を変更し、タイヤのビードに1.4mm余裕を持たせているため、ライド中のパンク修理を含むタイヤの着脱をより簡単に行える。回転の肝は新開発のライトAF ハブで、新たなロープロファイルのハブボディと切削ローターマウントにより、前作のアルピニストCLXハブから50gの軽量化を達成。DTスイス・EXPインターナルとSINCセラミックベアリングを採用し、滑らかな回転が生む効率性と優れた耐久性を実現している。

ライトAFハブ

ALPINIST CLX II
価格:14万3000円(フロント)、19万8000円(リヤ)
リム:リムハイト33mm、内幅21mm、チューブレスレディ
カラー:サテンカーボングロスブラック、サテンカーボングロスホワイト
重量:1250g(リムテープとバルブを含むと1265g)
ハブ:LFDハブ、DTスイス・EXP インターナル、SINCセラミックベアリング
スポーク:DTスイス・エアロライトスポーク、フロント21本、リヤ24本
最大空気圧:26mmタイヤのチューブレス仕様で110psi
耐荷重:125kg

 

アルピニストCL2

アルピニストCL2

ロヴァール・アルピニストCL2

 

アルピニストCL2は、アルピニストCLX2と同じリムを採用したホイールだ。ハブはDTスイス・350で、インターナルにスターラチェットを採用し、信頼性とメンテナンス性に優れている。このハブを前後ともDTスイス・コンプレースストレートプルスポークとアロイ・プロロック・ニップルで組み上げており、信頼性をより高めるとともに入手もしやすい。重量は前後で1375gだ。

 

ALPINIST CL II
価格:8万8000円(フロント)、12万6500円(リヤ)
リム:アルピニストCLXと共通
カラー:サテンカーボングロスブラック
重量:1360g(リムテープとバルブを含むと1375g)
ハブ:DTスイス・350、DTスイスシールドカートリッジベアリング
スポーク:DTスイス・コンペティションレースストレートプル、フロント21本、リヤ24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110psi
耐荷重:125kg