グラベルロードの先の秘湯をゆく! 日光&奥鬼怒エリアで極上ツーリングを味わおう

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日光&奥鬼怒ツーリング
  • text 江里口恭平
  • photo ライドエクスペリエンス/パナレーサー/江里口恭平

グラベルバイクだからこそ、たどり着ける秘湯へ

栃木県の日光&奥鬼怒エリアは、世界遺産の日光東照宮を有するだけでなく鬼怒川や奥日光は上質な湯が湧く温泉地として、国内でも有数の人気観光地となっている。首都圏からのアクセスも良好で、鉄道では私鉄とJRどちらも特急も運行していることもあり、行楽シーズンは国内外の多くの観光客で賑わいを見せるというエリアだ。
そしてそんな場所はサイクリストにとっても非常に魅力的な場所。「日光いろは坂」やその上った先にある中禅寺湖からの景色と言えば、サイクリストなら雑誌やSNSで目にしたことがある人も多いかもしれない。実際に自転車での温泉巡りをライフワークとする僕も幾度となく訪れてきた。
と、そんな日光エリアで今、ユニークな取り組みが始まった。先に端的に言ってしまえば、「普段は入れないグラベル林道を走行し、その先にある秘湯へ行くことができる」というものだ。

日光&奥鬼怒ツーリング

現在国内で徐々に盛り上がりを見せる「グラベルロードバイク」シーン。太幅のブロックタイヤをはけるドロップハンドルタイプの自転車は、ロードバイクと同じように舗装路を快適に走ることができるだけでなく、舗装されていない道の走破性もあわせ持つ。オフロードに特化したMTBはロードバイクに比べると長い距離を走るのはストレスとなってしまうが、このグラベルバイクなら舗装路を長距離走って、その後に待ち受ける未舗装区間も十分に楽しみながら走ることができるのである。

日光&奥鬼怒ツーリング

オンロードも軽快に走り続けることができるのが、グラベルバイクの特徴だ

そして多少の荷物はバイクに直接取り付け(バイクパッキング)し、オンロードもグラベルロードも楽しむツーリングに出かける……そんな冒険心を刺激される旅は、しかしながら国内の林道事情を鑑みると多少のハードルがあるのが現状だ。
未舗装の林道自体は国内中に無数に存在するが、そんな道の多くは一般車両が通行を禁止または制限されていることが多い。なかなかそんな林道をグラベルバイクで入っていいですよ、と公言されているコースはまだとても少ないのだ。
だけれども、やっぱりそんな遊び方に憧れるのが僕たち自転車乗りの性であるし、もしも温泉巡りをグラベルツーリングに組みわせることができればどれほど最高か……。そんな夢のような妄想が、実現する時が来たのである!

 

特別に解放される「奥鬼怒スーパー林道」

鬼怒川温泉郷を鬼怒川にそって遡ること約40km。昭和の温泉観光地という雰囲気はなりをひそめ、山深い道を進み続けた最深部に、その温泉郷はある。「奥鬼怒温泉郷」は関東圏最後の秘湯と呼ばれ、その温泉旅館群までにたどり着くには未舗装の林道が待ち構えている。その林道「奥鬼怒スーパー林道」は通常は一般車両が進入禁止となっており、奥鬼怒温泉郷に車でアクセスする人は林道の入り口にある女夫渕駐車場に車を停め、一部旅館が出している送迎用のバスを利用するか、あるいはトレッキングコースを3時間ほど歩いて向かう必要があるのだ。

奥鬼怒スーパー林道のゲート

奥鬼怒スーパー林道のゲート。ここから一般車両は通行禁止となる。今回の奥鬼怒トレイルライドイベントでは、こちらにあるボックスに申請届を出す

そして奥鬼怒スーパー林道はダート林道好きの人々には有名な完全未舗装路で、送迎用バスや機材運搬車両の通行ができるほどには整備されているものの、砂利や岩の状況からとてもではないがオンロード用スポーツバイクでは走行はできるものではない。すなわちグラベルロードにうってつけの道である。
しかし先述した通りこの林道も一般車両通行禁止で、それには軽車両である自転車も含まれていた。そんな中、この10月より奥鬼怒温泉郷の2湯であり、奥鬼怒スーパー林道の整備も担っている「加仁湯」と「八丁の湯」が共同で組合を立ち上げ、この林道を特別に自転車での通行を許可を出すこととなったのだ。
「奥鬼怒トレイルライド」と銘打たれたこの取り組みは、降雪期間を除く2021年は11月7日まで、2022年は4月29日〜11月6日まで開催される。事前に専用HPからダウンロードした申請届を提出すれば、サイクリストは誰でもこの林道を走行し、温泉に入りに行くことができるというものである。

加仁湯

 

誘惑のグラベル秘湯ツアー

そんな奥日光&奥鬼怒のグラベルライドのお披露目となるべく、紅葉がうっすらと色づき始めた10月中旬に一泊二日のメディアツアーが開催された。アテンドしてくれるのは、栃木県那須エリアでサイクリングツアーガイドを行うライドエクスペリエンス(公式サイト)の山本徹也さん。
そして同行するのは、ライドエクスペリエンスとともに「スレートエクスペリエンス」など数々のツアーを共同で開催してきた、キャノンデールの山本和弘さん。また、グラベルバイクのタイヤで人気のパナレーサーからは三上勇輝さんやラファジャパンの三井裕樹さんも参加した。もちろん今回のバイクはキャノンデールのグラベルバイク「トップストーン」シリーズが、eバイクからエントリーバイクまで勢揃いだ。

ライドエクスペリエンスのサポートカー

ライドエクスペリエンスのサポートによって、ライドに集中して楽しむことができる

キャノンデール・トップストーンシリーズ

キャノンデールのグラベルバイク、トップストーンシリーズはeバイクからレフティを採用したハイエンド、そしてアンダー20万円のアルミモデルまでが集った

グラベルキング

パナレーサーのグラベルタイヤ「グラベルキング」を装着。700×35C以上であれば、奥鬼怒スーパー林道を攻略できるだろう

ツアーの行程としては、1日目は日光駅をスタートし、名所の日光いろは坂や中禅寺湖、戦場ヶ原を経て峠アタック。そしていよいよ奥鬼怒スーパー林道を上り、八丁の湯で極上の温泉を味わう。そして2日目は加仁湯をスタートし、特別に解放された未舗装林道のアドベンチャーライドをメインとしながら奥鬼怒温泉郷や日光街道グラベルを経て、日光駅に戻るというコースだ。
両日共に100km近い行程かつ多くの未舗装率を含み、上級サイクリスト向けのタフなコースレイアウト。しかしながら、序盤から日光の裏コースとも言えるローカルの道を進み、名所を次々と走るのは、なかなか自分個人では引くことのできないコース取りで、あらゆるレベルの人が「初めての日光ライド」としても満喫できるほどの新鮮さがある。ちなみに、いろは坂はこれから本番となる紅葉シーズンには観光客の車で混み合うのは必至だが、一方通行の上り(下り)コースのため、うまく平日を活用などすれば快適なサイクリングが楽しめるだろう。
そして何より、ハイライトとなる女夫渕駐車場からの約8kmのスーパー林道のヒルクライムは、まさに僕たちの「ご褒美」。キャノンデールのレフティフォークを装着したトップストーンカーボンは、フルサスペンショングラベルバイクとしての性能を十分に発揮し、上り下り共にグラベルロードを走るワクワク感を演出してくれるのだ。
日光の美しい自然と険しい山岳だけではない、グラベルロードのヒルクライム攻略という行程を達成した後に、山奥にポツリと現れる秘湯にたどり着いた時の達成感。そこから人の気配を消した遠い環境の中で、静かに温泉に浸かるその時間の喜びと言ったら……こんな極上の体験は、いつもの自転車遊びでは到底至ることのできない快感だ。

いろは坂

延々と続くような九十九折を抜ける、いろは坂ヒルクライム

未舗装林道

未舗装林道をゆく。これぞグラベル遊びのだいご味だ

一口塩羊羹

日光の銘菓「一口塩羊羹」はサイクリストにもちょうどいいサイズ感&甘さで補給にピッタリ

八丁の湯

八丁の湯に到着! さあ秘湯の時間だ!

加仁湯

同じく奥鬼怒温泉郷の秘湯、加仁湯に投宿。八丁の湯とそれぞれ泉質が異なり、かけ流される艶やかな源泉を堪能できる

そんな今回のライドは、ライドエクスペリエンスが継続してツアーを開催予定となる。グラベルをこれから始めてみたいという人はこのツアーに参加するも良し。そしてグラベルバイク乗りが次の行き先を探しているなら、この奥日光&奥鬼怒エリアを目指せば、間違いはないだろう。
グラベルバイクという、好奇心をかき立てるどこまでも自由なバイクだからこそ、この未舗装路の先の秘湯というアドベンチャーをぜひ味わって欲しい。