注目のロード用カーボンホイール「ハイパー」シリーズをインプレ

目次

ルンホイール・ハイパーシリーズ

  • text 大屋雄一
  • photo 小見哲彦/佐藤竜太
  • movie 小見哲彦/佐藤竜太

Presented by WINSPACE JAPAN

カーボンパーツの製造を得意とするウィンスペース。そのホイール部門が2020年から「ルン」というブランド名で歩み始めた。中国語でホイールを意味する「Chelun」から命名されており、ラインナップの旗艦であるハイパーシリーズは、チューブレスレディのカーボンリムやカーボンスポーク、自転車専用のセラミックベアリングを採用しながら、前後セットで17万3800円という驚くべく価格に設定。3種類のハイト別のインプレッションをお届けしよう。

ルンホイール・ハイパーシリーズ

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ルンホイール・ハイパー38mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー38mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー38mmディスクブレーキホイールセット

ハイパーシリーズは2020年に登場。ホイールを構成する全てのパーツをトータルで設計したルンのフラッグシップだ。商品名の数字はリムハイトを表しており、38mmはシリーズの中で最も低く、最も軽量なのがポイントだ。リムはカーボン製で、表層の美しい模様は単なる意匠ではなく性能追求を目的としたもの。ニップルホールを中心に、両側から補強するようにカーボン繊維が巻き付けられている。スポークもカーボン製で、断面形状はエアロプロファイルを採用。スポークパターンは前後とも2:1とされる。このカーボンスポークを採用するにあたりハブも専用設計とされ、最適なスポーク角度を実現するためにフランジはラージサイズに。ベアリングには自転車専用のセラミックを採用する。公称重量は1374g±3%だ。

横風による影響も考慮して設計されたリム。取り扱いショップによると、リムの精度が高いため振れ取りがしやすいという。ハイパーのロゴはリムと同色のため主張は控えめだ

横風による影響も考慮して設計されたリム。取り扱いショップによると、リムの精度が高いため振れ取りがしやすいという。ハイパーのロゴはリムと同色のため主張は控えめだ

専用設計のハブは自転車専用のセラミックベアリングを採用。クイックリリースと12mmスルーアクスルの両方に対応。フリーボディはシマノ11Sが標準で、スラムのXDRにも対応

専用設計のハブは自転車専用のセラミックベアリングを採用。クイックリリースと12mmスルーアクスルの両方に対応。フリーボディはシマノ11Sが標準で、スラムのXDRにも対応

1本あたり2.6gと非常に軽量なカーボンファイバースポーク。ハブ側には金属パーツが組み合わされており、そこにカーボンを貫通させることで抜けにくい構造となっている

1本あたり2.6gと非常に軽量なカーボンファイバースポーク。ハブ側には金属パーツが組み合わされており、そこにカーボンを貫通させることで抜けにくい構造となっている

強度的に不利になりがちなニップルホール。ここを補強するようにカーボン繊維が巻き付けられている。この特殊な製法をルンホイールでは「バタフライエフェクト」と呼称する

強度的に不利になりがちなニップルホール。ここを補強するようにカーボン繊維が巻き付けられている。この特殊な製法をルンホイールでは「バタフライエフェクト」と呼称する

外幅は26mm、内幅は19mmのフック付きで、23~45mm幅のタイヤに対応する。ニップルホールがあるので、クリンチャー、チューブレスレディともリムテープが必要となる(同梱)

外幅は26mm、内幅は19mmのフック付きで、23~45mm幅のタイヤに対応する。ニップルホールがあるので、クリンチャー、チューブレスレディともリムテープが必要となる(同梱)

spec
価格:17万3800円
スポーク本数:21本(F)、21本(R)
タイヤシステム:クリンチャー(チューブレス)
リム高:38mm
リム外幅:26mm
参考ペア重量:1374g
対応スプロケット:シマノ、スラム、カンパニョーロ

ルンホイール・ハイパー50mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー50mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー50mmディスクブレーキホイールセット

ハイパーシリーズにおけるオールラウンダーがこの50mmだ。バタフライエフェクト製法を採用したカーボンリム、エアロプロファイルのカーボンスポーク、そしてセラミックベアリング採用の専用ハブなど、リムハイトとスポーク長を除いた基本仕様は38mmに準じている。この50mm、エアロダイナミクスに優れることから、時速30kmを出すのに必要な出力が他社の80mmハイト並みに少なく、さらに50mmクラスでは最も軽量な部類であることから、双方のバランスに秀でているというグラフを公式サイトに掲載している。なお、リムはフック付きなので、クリンチャーも含めてタイヤ銘柄を選ばないというのもユーザーにとってはうれしい要素だろう。

38mmと50mmの違いはリムハイト(とスポーク長)のみ。横から見たときのリムの面積が広くなる分だけ、バタフライエフェクト製法による独特な模様のインパクトが大きくなる

38mmと50mmの違いはリムハイト(とスポーク長)のみ。横から見たときのリムの面積が広くなる分だけ、バタフライエフェクト製法による独特な模様のインパクトが大きくなる

spec
価格:17万3800円
スポーク本数:21本(F)、21本(R)
タイヤシステム:クリンチャー(チューブレス)
リム高:50mm
リム外幅:26mm
参考ペア重量:1455g
対応スプロケット:シマノ、スラム、カンパニョーロ

ルンホイール・ハイパー65mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー65mmディスクブレーキホイールセット

ルンホイール・ハイパー65mmディスクブレーキホイールセット

平坦基調のロードレースやタイムトライアルで威力を発揮するのがこの65mmだ。リムの画像からも分かるように、この65mmだけバタフライエフェクト製法を採用していないが、コンセプト通りの性能が担保されているという。エアロプロファイルのカーボンリムはクリンチャーとチューブレスレディタイヤに対応し、カーボンスポークやセラミックベアリング採用のハブといった基本仕様は38mmや50mmと共通。公称重量は1608g±3%となっている。

バタフライエフェクトではなく一般的な製法で作られた65mmハイトのリム。仕上がりは実に美しく、これで17万円台とは思えないほど。それ以外の基本仕様は38mm/50mmに準じる

バタフライエフェクトではなく一般的な製法で作られた65mmハイトのリム。仕上がりは実に美しく、これで17万円台とは思えないほど。それ以外の基本仕様は38mm/50mmに準じる

spec
価格:17万3800円
スポーク本数:21本(F)、21本(R)
タイヤシステム:クリンチャー(チューブレス)
リム高:65mm
リム外幅:26mm
参考ペア重量:1608g
対応スプロケット:シマノ、スラム、カンパニョーロ

リムブレーキ仕様もラインナップ

ルン・ハイパーシリーズ・リムブレーキ

ハイパーシリーズはリムブレーキ対応モデルもラインナップ。リムハイトのバリエーションはディスクブレーキ対応モデルと同じ38mm、50mm、65mmの3種類で、38mmと50mmにバタフライエフェクト製法を導入したり、セラミックベアリングを採用するなど、基本的な仕様も共通している。大きく異なるのはスポークパターンで、フロントが16本のラジアル組みとなる。気になる重量は、38mmの場合でディスクブレーキ対応モデルの1343gに対して1267gを公称する。付け加えると日本国内での販売比率はディスクとリムで5:5とのこと。

spec
価格:17万3800円
スポーク本数:21本(F)、21本(R)
タイヤシステム:クリンチャー(チューブレス)
リム高:38mm、50mm、65mm
リム外幅:26mm
参考ペア重量:1267g (38mm)、1349g (50mm)、1498g (60mm)
対応スプロケット:シマノ、スラム、カンパニョーロ

ルンホイール・ハイパーシリーズをインプレッション

インプレッションライダー/大屋雄一。モータースポーツにも造詣が深く、モーターサイクル用の最新フルカーボンホイールの試乗経験もあるフリーライター。今回のテストでは3セット合計で200kmほど乗り込んでいる

インプレッションライダー/大屋雄一。モータースポーツにも造詣が深く、モーターサイクル用の最新フルカーボンホイールの試乗経験もあるフリーライター。今回のテストでは3セット合計で200kmほど乗り込んでいる

2018年にデビューし、ディスクブレーキモデルの追加やカーボンの仕様変更などブラッシュアップを繰り返して現在に至る。エアロロードながらMサイズで1050g±30gという軽さと、21万7800円という価格は実に魅力的だ。リムブレーキモデルはダイレクトマウントを採用する。ウィンスペース・ T1500(フレームセット価格:21万7800円)

今回の試乗にはウィンスペース・ T1500を使用。2018年にデビューし、ディスクブレーキモデルの追加やカーボンの仕様変更などブラッシュアップを繰り返して現在に至る。エアロロードながらMサイズで1050g±30gという軽さと、21万7800円(フレームセット)という価格は実に魅力的だ。リムブレーキモデルはダイレクトマウントを採用する。

試乗車に装着されているのはステム一体式のウィンスペース・ゼロカーボンハンドルバー。スプリンターがもがいた際に前腕がショルダーに干渉しにくい形状とされ、さらに空力と剛性を高次元で両立している。仮想ステム長は85/95/105/115/125mm、ハンドル幅は380/400/420/440mm(C-C)から選べる。

試乗車に装着されているのはステム一体式のウィンスペース・ゼロカーボンハンドルバー(4万2900円)。スプリンターがもがいた際に前腕がショルダーに干渉しにくい形状とされ、さらに空力と剛性を高次元で両立している。仮想ステム長は85/95/105/115/125mm、ハンドル幅は380/400/420/440mm(C-C)から選べる。

昨今のカーボンホイールのトレンドを受けてか、リムサイドの同色ロゴはサイズこそ大きいものの主張は控えめ。だが、38mmと50mmに採用されるバタフライエフェクトは、自然光を受けると規則的に交差して巻かれたカーボン繊維が浮かび上がり、独特の雰囲気を漂わせる。いわゆる化粧カーボンとは異なるため、機能美といって差し支えないだろう。

リムハイト別に38mm、50mm、65mmの3種類をラインナップするハイパーシリーズ。印象として共通するのは、回転体としての精度の高さだ。目視では分からないほどにリムの振れがなく、リムそのものも精巧に作られている。足を止めて惰性で進んでいる際の速度低下が少なく感じられるのは、おそらくこの精度の高さによるものだ。そして、これには摩擦抵抗の少ないセラミックベアリングも少なからず寄与していると思われる。

最も好印象かつオールラウンドに使えると感じたのは50mmだ。信号発進から時速40km付近までの加速に淀みがなく、ペダリングの力を躍動的に駆動力へと変換してくれる。高速巡航性は、エアロフレームとの相乗効果もあってか明らかに高く、向かい風の中でも失速しにくい。上り勾配でのダンシングでは、車体をロール方向に振ったときに意外にも重さを感じにくく、素直に前へと進んでいく。そして、シッティングのまま急斜面から緩斜面に入ると後ろから押されているような感覚すらあり、ここでも回転体としての精度の高さを実感できる。

これに対して38mmは、走る・曲がる・止まるといった運動性能が、それぞれ0.5〜1ランクずつアップする。ペダルへの入力に対してタイムラグなしに反応し、時速40km付近までの体感加速は50mmを上回る。一方、そこから先の領域や高速巡航性は50mmの方に軍配が上がるので、うまく差別化を図っていると言えるだろう。コーナリングは明らかに軽く、高速域でも狙ったラインをスパッとトレースできるのは、横剛性が十分以上に確保されているからだろう。また、慣性モーメントが小さい分だけ減速方向にも威力を発揮する。ヒルクライムだけでなく、加減速の多いクリテリウムなどにも合いそうだ。

65mmは、50mmのメリットをより強調したようなイメージだ。ゼロ発進から時速40km付近までの体感加速は重量が増えた分だけ遅くなるが、そこから上では伸び上がるような印象すらあり、明らかにスイートスポットが高い速度域にある。リムハイトが増えた分だけ横風の影響を危惧したが、65mmという数値から受ける印象ほど大きくはない。平坦基調のロードレースやタイムトライアルで威力を発揮するだろう。

注目のカーボンスポークについては、この部分のみ金属製との違いを感じ取ることは難しいが、タイヤの空気圧が高めでも振動減衰がいくぶん高く感じたのは、これによる影響かもしれない。

このハイパーシリーズは全てのリムハイト、そしてブレーキの仕様を問わず価格は17万3800円で統一されている。これほどの性能でこのプライスは驚きであり、個人的にも購入したいと思うほど心を動かされている。

 

オンライン購入→実店舗受け取り&アフターサービスが受けられる

ルンホイールは公式サイトから通信販売で入手可能。送料無料のEMS(国際スピード郵便)のほか、FedExやDHLへのアップグレードもできる。このほか、忙しくて宅配便を受け取る時間がない、実店舗でアフターケアを受けたい、などという人のために店舗受け取りサービスもスタート。全国に6店舗あるテストドライブショップの中から希望のお店を指定すると、そこに商品が送られるというシステムだ。オーダーについては24時間いつでもオンラインショップから受付中。なお、受け取り店舗からの配送は別途1万円(税込)が必要となるのでご注意を。

【詳しくはルンホイールHPをチェック】
https://www.winspacejp.cc/

ウィンスペースとルンホイールについて

ウィンスペースは2008年に日本の大阪で生まれたバイクブランドで、現在は大手ブランドのフレームやホイールのOEM生産で技術力を高めた中国の企業で設計生産をしている。世界各国の優秀なエンジニアが開発に寄与しており、今ではUCIコンチネンタルチームをサポートしたり、中国に300店舗ものディーラーを持つまでに成長した。日本ではT1500に代表されるようにプライスパフォーマンスに優れたフレームメーカーとして認知されている。ホイールも以前からラインナップしていたが、2020年に新たに「ルン」ブランドが設立され、今後はこちらでラインナップを展開する。