エアロ+CULTベアリング ボーラ“ウルトラ”WTO 最高峰のホイール

目次

ボーラウルトラWTO

ロードバイクのハイエンドホイールとして君臨し続けるカンパニョーロのボーラシリーズ。ライダーを魅了し続けるこのホイールに、最新モデルが発表された。その詳細を、オンライン取材でカンパニョーロのイタリア本社に聞いた。

1994年〜2010年のボーラ 2011年〜2019年のボーラ

今年はディスクロード用ホイールの発表が続いている。ボントレガー・アイオロスRSLシリーズジップ・353NSWフルクラム・スピードシリーズ。そして、このカンパニョーロ・ボーラウルトラWTOシリーズだ。

エアロホイール「ボーラ」の初代が登場したのは1994年。それから多くのプロ選手が使い、勝利と共にロードバイク市場で輝きを放ち続けている。近年大きく変化したのは2019年モデル。前年に発表されたWTOシリーズは、ロードバイク市場のトレンドであったエアロダイナミクスを向上(WTOはWind Tunnel Optimized《風洞実験による最適化》の頭文字を取ったもの)し、同社のフルカーボンリムとしてはじめてチューブレスに対応。グラフィックも大きく変更。まさに次世代のボーラがWTOなのだ。

このシリーズに、ついに“ウルトラ”グレードが追加された。この称号は、シリーズの最高峰モデルに与えられてきたわけだが、今作もノーマルモデルよりも高効率なホイールにするための設計がいくつも組み込まれている。リムハイトは、下にある3種類。ディスクブレーキ対応のみの展開で、回転部にはベアリングの玉受けと玉押しに特殊加工が施されたCULTが使われる。

ボーラウルトラWTOのCULTベアリング

ウルトラの象徴であるCULTベアリング。シールドタイプではなくカップ&コーン構造でハブに収まる。滑らかな回転が魅力。もちろん軽量化も忘れていない。ノーマルのボーラWTOとウルトラの重量を比較してみると33が1485g→1385g(−100g)、45が1520g→1425g(−95g)、60が1590g→1530g(−60g)それぞれ軽くなっている

最上位グレードだけあって、製造はイタリア・ヴィチェンツァにある本社工場内のラインで行われる。リムの形状こそノーマルグレードと同じだが、使われているカーボン、レジン、金型はウルトラ専用。そのリム表面は非常に滑らかで美しい。

ボーラウルトラWTOのリムサイド

リムサイドは非常に美しい仕上がり。カーボンの織り目が光を絶妙に反射する

ニップル穴にも製造時に一工夫ある。これまではリムを成型後にドリルで穴を開けていたが、そうすると成型したカーボンの繊維を切断してしまうことになる。すると、本来よりも強度が落ちるので、その分多くの材料を使う必要がでてくるが、成型時にニップル穴を作るので、その必要がない。これにより、軽くて強度のあるリムに仕上げられている。ニップルは専用パーツで、リム内部に埋没する設計。少しでも空気抵抗を削減するためのものだ。

ボーラウルトラWTOのニップル

新設計のニップル「エアロMO-MAG」。リムとツライチになっている。振れ取りやスポーク交換が必要なときは、バルブ穴からマグネットでニップルを穴まで誘導する。ニップル回しなど専用工具が付属する

これらの改良により、175cm、体重70kgのライダーが平均勾配8%、距離20kmの上りを平均出力245Wで走った場合、ボーラWTO45DBチューブレスと比べて8秒、ボーラワン50DBクリンチャーと比べて36秒、同チューブラーと比べて1分25秒速く走ることができるという。トラディショナルなロードバイクの規格を好むユーザーには酷な数字だが、新製品開発のベクトルはこっちなのだ。

ボーラウルトラWTOのフロントハブ

フロントハブは、ボディから反ブレーキローター側のスポーク受けまでカーボン製。ラマート色のロゴが上品だ。形状も空気抵抗低減を考慮したもの

ボーラウルトラWTOのリム

リムセンターにある溝。タイヤの着脱時、ここにタイヤビードを落とす。幅とサイドリップの形状がはめやすさ実現している

ボーラウルトラWTOのリヤハブ

こちらはリヤハブ。フロントと違ってアルミ製である。前後共ポークパターンは同じG3組み

ボーラウルトラWTOのラインナップ

ボーラウルトラWTO33

カンパニョーロ・ボーラウルトラWTO33

ボーラウルトラWTO33
N3Wボディ価格/46万6400円
シマノHGボディ、スラムXDRボディ価格/46万7500円
前後セット重量:1385g(N3Wボディ)
リム高:33mm
リム内幅:21mm
リム外幅:27.4mm
スポーク本数:24本(前後共)
スルーアクスル:12×100mm(前)、12×142mm(後)

ボーラウルトラWTO45

カンパニョーロ・ボーラウルトラWTO45

ボーラウルトラWTO45
N3Wボディ価格/46万6400円
シマノHGボディ、スラムXDRボディ価格/46万7500円
前後セット重量:1425g(N3Wボディ)
リム高:45mm
リム内幅:19mm
リム外幅:26.1mm
スポーク本数:24本(前後共)
スルーアクスル:12×100mm(前)、12×142mm(後)

ボーラウルトラWTO60

カンパニョーロ・ボーラウルトラWTO60

ボーラウルトラWTO60
N3Wボディ価格/46万6400円
シマノHGボディ、スラムXDRボディ価格/46万7500円
前後セット重量:1530g(N3Wボディ)
リム高:60mm
リム内幅:19mm
リム外幅:26.1mm
スポーク本数:24本(前後共)
スルーアクスル:12×100mm(前)、12×142mm(後)

ボーラウルトラWTOのフリーボディ

フリーボディは、シマノ対応HGボディ、スラム対応XDRボディ、そして写真のN3Wがある。N3Wはカンパニョーロの11速~13速のカセットスプロケットに対応。11速、12速は写真の状態で使用、13速を使用する場合は、ボディのロックリング側にあるスペーサーを外す

ボーラウルトラWTOの専用工具

ニップル調整に必要な、専用工具。一番左にあるシルバーの工具を右端の黒い工具にセットし、ニップルを回転させる。センターの黒い工具はニップルをリム内部から引っ張り出すときに使う

CULTベアリングの性能グラフ

このグラフは時速78km(縦軸)までホイールを回転させてから空転させて、時速0kmになるまでに要した時間(横軸)を表したグラフ。一番左の黄色い線が一般的なシールドベアリングで30分ほど回転しているのに対して、CULTベアリングは2時間45分回転し続けるという

ボーラウルトラWTOの空気抵抗のグラフ

こちらは空気抵抗を計測したグラフ。時速45kmでの走行を想定した実験だ。一番上の白い線がエアロではないホイール。グレーの線がライバルメーカーのリムハイト48.5mmのモデル、茶色の線がボーラウルトラWTO45だ。正面から風を受けるときは差がないが、横風10度~17度あたりではボーラの方が低抵抗だ

impression:優れているのはバランス

試乗のため、茨城県の筑波山系に向かい距離72km、獲得標高1754mのルートで試乗した。このホイール一番の魅力はセラミックベアリングではなく、ましてや軽さでもない。非常に優れたホイールバランスにある。これが高いレベルで実現されている。最上位グレードらしく、ひと踏み目から滑らかに回転していくことを実感できる。硬すぎず、平地巡航で一定ペースでペダルを回しても、登坂でラフにペダルを踏み込んでも、そのリズムを邪魔しない絶妙な剛性感だ。メンテナンス台で回してみると縦方向の振動がとても小さかった。優れたホイールバランスによって、走り出しの軽さ、スムーズが実現される、速度が上がれば上がるほど安定性の高さを実感。ゆえに、距離が伸びてくれば疲れ具合にも影響する。峠を3つ越えるルートを走ったが、最後の上りまで踏める余力を残すことができた。リムブレーキチューブラーのボーラウルトラ50と比べると約200gも重いが、分かりやすい走りの軽さは、リムブレーキの頃とは違う。結果的に速く走れるホイールの解、価値観はディスクブレーキロード時代になり変わったのだ。その新時代の「良く回るホイール」として、ボーラウルトラWTOはやはり個性を放つベンチマークになるだろう。

ボーラウルトラWTO

試乗ライダープロフィール
本誌・中島丈博

使用タイヤはコンチネンタルのグランプリ5000クリンチャー。身長170cm、体重64kg