MTBの「スタンス」を理解して練習すればコーナリングの“苦手方向”はなくなる
目次
MTB(マウンテンバイク)の基本が学べるシリーズ「MTBはじめよう!」のシーズン2。第6回となる今回は、基本中の基本にして要注意な「スタンス」について。もしコーナリングで左右どちらか片方だけ苦手意識がある人は、これを習得すればそれを解消できる!
動画で見たい人はこちら
改めて、基本中の基本である「スタンス」とは?
今回も教えてもらうのは、プロMTBライダーの板垣奏男(いたがき かなお)さんだ。

板垣奏男(いたがき かなお)さん。東京サイクルデザイン専門学校を卒業後に本場カナダへ渡り、高度なライディングスキルからトレイルビルディングに至るまでを習得。現在はプロライダー/インストラクターとして活躍している。Instagram:kanao_i_into_the_ride YouTube:kanao itagaki
「スタンスとは、MTBに乗るうえでの基本フォームの一つです。MTBでニュートラルポジションあるいはレディポジションをとっているとき、右か左のどちらかのペダルが必ず前に出ます。どちらが前に出るかは人によって異なり、一度決めたその位置を、例えばコーナリングのたびに入れ替えないようにするのが原則です。この、ライド中は(ペダリングする場合は別として)右前か左前か決めて入れ替えないようにすることをスタンスと言います」と板垣さん。

「シーズン1で簡単に紹介していましたが、実はこのスタンスがあるがために、特にコーナリングの際、左右方向で体の使い方が異なるので、どちらかに苦手意識が生じやすいのです。なので、改めて今回特集します。
まずは復習とはなりますが、なぜ前に来る足は入れ替えないかについて説明します」。

「一つは動作に悪影響を及ぼすためです。特にコーナリングについてですが、左右方向で曲がるたびに足の位置を入れ替えていると、どうやってもワンテンポ動作が遅れてしまいます。また、入れ替えている瞬間にペダルが地面や木の根、岩などにヒットしてしまう可能性もあります。
もう一つは練習効率の悪化という理由です。右か左、どちらの足が前に来てもいいようにするには、単純にそれぞれの方向で練習をしないといけなくなり、練習量が2倍になってしまいます。これではなかなか上達しません。
右前にするか、左前にするかは、“どちらを前にするとしっくりくるか”という、ご自身の感覚で決めればOKです。利き足が前にくるという法則があるわけでもなく、これは本当に個人によって異なります」。
右と左で体の使い方が異なり、苦手意識の原因になりうる

「さて、実はスタンスがあるために、コーナリングという横の動きにおいて、左右方向で体の使い方が異なってくるんです。
私は右足が前に出るタイプですが、そのタイプで説明しましょう。
第一に、荷重の仕方が変わってくるということがポイントです。
私が左コーナーを曲がるときは、前に出る右足側が“外足”になります。何も考えずに右足で外足荷重をとると、こっちが前側に出ているので、自然と前乗りになってしまうんです(重心位置が知らず知らずのうちに前に出てしまう)」。

「逆に右コーナーのときは、後ろに来る左足が外足になります。このとき何も考えずに左足で外足荷重をとると、自然と重心位置が後ろにずれてしまうわけです。
このあと説明する“閉じる”“開く”の問題もあるのですが、特に前側に来ている足が外足側になるときに曲がりにくいと苦手意識を持つ人が多いかもしれません。前荷重気味になってしまいやすいからですね。
もう一つは、“閉じる”“開く”と呼ぶべき動作が発生するので、人によってどちらかが体を動かしやすい・動かしにくいという問題が起こりやすいためです」。

「私の場合は、右コーナーのとき、体が“閉じる”動作に当たります。右脚が前に出ているのに対して、骨盤がそちらに向かって回転していくかたちとなります。右脚が前にあるため、そのぶん一定の角度までしか骨盤は回転していかないはずです」。

「逆に左コーナーのとき。骨盤の回転方向に対して遮るものがないので、どこまでも骨盤が回転していってしまいます。これは、先ほどの“閉じる”動きに対して“開く”動きと言います。人によっては、腰が際限なく動いていってしまうので感覚がつかみにくくなるようです(もちろん柔軟性の問題で際限がないわけではない)。
この、“閉じる”“開く”で人によって得意・不得意が生じることがあるので、この要素も加わって、苦手方向が生じる原因となるのです」。

得意方向・苦手方向の一例
筆者(サイクルスポーツ編集部・大宅)の場合は左足が前に来るタイプだが、“前に来る足が外足になる、つまり右コーナー”の場合がすごく苦手だ。「前荷重気味になるうえに“開く”動作に当たるので、それが原因で苦手となっていると見受けられます」と板垣さん。
いつでも・どこでもできる改善トレーニング法
「左右で苦手方向をなくすためのトレーニング法を紹介します。
まずは、左右方向で重心位置が変わってしまうのを防ぐための練習方法です」。

「平地か緩い下りである程度助走をつけて、ニュートラルポジションをとって進みます。そのあと、骨盤(腰)をひねることによって体重を片方のペダルへ乗せます。このとき、なるべく体重を乗せているペダルが下がらないようにしてください。
こうすることで体の中心軸が前か後ろのペダルに移ってしまう(重心位置が変わってしまう)ことなく、体重を片側のペダルに乗せることができます。左右どちらもできるように練習してみましょう。
なお、シーズン1でコーナリングの基本について紹介した際、ボディセパレーションについて教えました。体重を片足側のペダルにしっかりと乗せる、基本中の基本となる動作はこちらです。今回教えているのは、それとはまた違った趣旨の体重の乗せ方です。
もし、片足側にしっかりと体重を乗せる意識があやふやになってしまったなと感じたら、まずはこのボディバイクセパレーションの練習に戻ってみるといいと思います。
次に紹介するのは、“閉じる” “開く”動きで生じる苦手意識を改善するためのトレーニングです。

“閉じる”向きが得意で“開く”向きが苦手な人向けのトレーニング法
「“閉じる”向きが得意な人は、ある程度骨盤の回転角度が決まっている方が楽だと感じる人と言えるでしょう。逆に“開く”向きは自由度が高いので迷子になってしまうわけです。
まず、このタイプの人に向けたトレーニング法です。バイクに乗らずに、ニュートラルポジションをとって自分のスタンスを再現した状態で立ちます。次に、“閉じる”方向に骨盤を回転させ、どのくらいの角度まで回転するか感覚を確かめます。
そのうえで、今度はそれと同じ角度だけ、逆側の“開く”方向に骨盤を回転させてみます。この感覚をしっかりと確かめておき、実際にコーナリングする場合はこれ以上骨盤が回転しすぎないようにしていきます」。

“開く”向きが得意で“閉じる”向きが苦手な人向けのトレーニング法
「逆に“開く”向きが得意な人は、自由度が高い方が楽だと感じる一方で、“閉じる”向きで回転が阻まれる感覚を苦手と感じるタイプだと言えます。
その場合は、先ほどと逆のトレーニングをします。“開く”向きで行けるところまで骨盤を回転させてみます。その感覚を覚えておき、今度は“閉じる”向きへ、さっきと同じくらいの角度まで骨盤を回転させられないか試してみます。実際にはそこまで回らないはずですが、そのくらい大きく動かしてみる意識を養います」。
みなさんもぜひ練習してみてほしい。
撮影協力:
トレイルアドベンチャー・よこはま












