ソーシャルグラベルイベント、REBOUND【リバウンド】って何だ?サイスポチームが実走取材!
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その日、地球上全てがコースになる。自由参加型のソーシャルグラベルライドイベント「REBOUND(リバウンド)」が2025年も開催された。自由すぎるリバウンドを、どう楽しむか? 我らがサイスポチームがお送りするのは、河川敷グラベルを織り込んだ25kmのアーバンライドだ。
アンバウンドの裏で開催される、世界最大規模のソーシャルグラベルライドイベント
日本では富士ヒル、北米ではアンバウンド。界隈がビッグイベントで盛り上がる週末、筆者ナカタニは都内の河川敷にいた。目の前にはスカイツリーが、曇り空を割って伸びている。東京のランドマークたる鉄の塔を、土の上から眺めていた。自転車って自由だ、ふとそう思った。
世界最大級のグラベルレースである「アンバウンド」は憧れの檜舞台だけれど、いまだ憧れのままだ。移動コストにスケジュール確保に、とにかく参加ハードルが高すぎる。でも代案はある。日本にいるままアンバウンドの熱を感じる試み、それが今回特集するイベント「リバウンド」である。エントリーは専用ページをポチるだけだ。
参加者に与えられたルールは以下の通り。
・2025年5月31日、朝6時以降にスタートすること
・参加費無料。制限時間なし。サポートなし
・最短25kmから最長570kmまで、6つのカテゴリーから選択
・出発地点は自由。自宅からでOK
・ライド後はパーティーで締めること

サイスポ・エリグチのエントリータグ
一見すると自由づくしな、謎のイベントだ。グラベルもコース内に一部あればOKらしく、参加条件はかなり緩い。会場もエイドも決まったコースも一切ないから、とんだ放任主義である。その代わり(?)ゴール後の景品は豪華ラインナップだ。シマノのシューズやアイウェアなど、当たれば嬉しいものばかり。極めつけは、来年度のアンバウンド出場権が当たるチャンスもあるという!
ではどこを走ろうか? 阿蘇や御荷鉾(みかぼ)など行きたいグラベルは数あれど、今回は「自宅から行けるご近所グラベル」というテーマに着地した。コースはサイスポ副編集長でありグラベルを愛するエリグチに一任することに。すると、八重洲出版のオフィスを出発、江戸川グラベルを目指す片道25kmのコースを提案してくれた。また、ライド後にパーティー必須という条件を思うと2人はちと寂しい。そこでカメラマン船生(ふにゅう)氏、編集部新人バイトの井上君を加えた4人チームで決行となった。
コース前半はエリグチ氏の通勤コースをなぞる。東京でもすっかりお馴染みとなった青い矢羽に導かれ、クルマの群れをかき分けてゆく。彼にはおなじみの景色も、東京東側に縁のない筆者には新鮮に感じた。シティライドにつきものの信号も、良い塩梅でサドルトークの隙間になってくれる。急ぐことはない。喧騒を横目にゆったりと流していった。
いくつもの橋を越え荒川に進むと、最初のグラベル区間へ入る。スカイツリーを西に臨む隠れたビューポイントだ。撮って進んで、ちょっとした下町風情の「立石仲見世通り」や、裏道を小気味良く繋いでいく。レトロな石畳通り残る「柴又帝釈天(しばまたたいしゃくてん)」を横目に、プチ・サイクルツーリズム気分で道を楽しんだ。
一行は江戸川を小舟で渡る「矢切の渡し」へ。無人の船着場で立ち往生していると、アヤしげな船頭さんが背後からヌルリとやってきた。柴又の寅さんよろしく、軽妙かつ延々と川のエピソードを船上で披露してくれた船頭さん。わずかな距離だが、船のあるライドは思い出に残りがちだ。渡った先に本日のメインディッシュが待っている。
いざ、江戸川グラベルへ
江戸川の左岸は森だった。河川敷なのに川が見えないほど緑深い木立が並び、野生の匂いを嗅ぎ取る。さっきの船頭さんは「きたない”動物の森”」と揶揄していたが、果たして。都市生活で忘れがちな緑と土の匂いを全身に浴び、粒の細かな砂利路に切り込む。イージーな路面が果てしなく真っ直ぐ続き、グラベル初体験の井上君もご満悦のようだった。江戸川グラベルはキャッチーで、ビギナーにぴったりのコースだった。何でもエリグチ曰わく、「この先の江戸川左岸にそして利根川に、このままずーっと砂利道が続いているので、アンバウンドグラベルよろしく100マイルだってそれ以上だってグラベルを走り続けることができるんですよ」。とのこと。冒険心がくすぐられてしまうではないか。
ひとまず今回の折り返し地点は、東京と埼玉の県境にある水元公園だ。都内で唯一の水郷景観を持つ公園らしく、自然観察のグループと多くすれ違う。天まで伸びるメタセコイアの森はまさにオアシスのようで、ベンチは満員御礼。草むらをかき分けて、ポツンと佇む静かなベンチを陣取り「ここをパーティー会場とする」。持参した保温ポットからお湯を注いで、ささやかなアフタヌーンティーを囲んだ。ここまでたったの25km、されど楽しさの凝縮された道のりだった。
後からストラバを確認すると、29万人ものエントリーがあることに気がついた。3年ほど続いているリバウンド企画だが、バーチャルでつながるワンデーイベントとしては世界屈指の規模ではなかろうか(最も、景品目当てのチョイ走り参加も大歓迎なのだ)。アンバウンドをきっかけにグラベル探索に挑んでみないか? そんな主催者の想いは無事達成されていると言っていいだろう。
とにかく自由なリバウンドは、グラベル黎明期の原点を強く残している。コースも難易度も自分次第でどうとでも決められるし、何より未舗装路はやっぱり楽しい。アンバウンドは世界最大のレースへと上り詰めたが、僕たちにはリバウンドがある。優しく分け隔てなく、全てのライダーをグラベルファミリーに迎えてくれるイベントとして、リバウンドがますます広がって行くのだ。