「ニッポンイチのグラベルここにあり」富士グラベル2025実走レポート

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霊峰の麓、極上の林道あり。5月18日、マニア待望のワンデーイベント「富士グラベル supported by Panaracer」が初開催を迎えた。イベント限定のスペシャルコースに酔いしれた、ミドルコース45kmを実走レポート。

 

富士イベントにハズレなし

サイクリストには富士ヒル、音楽好きにはロックフェス、ランナーにはウルトラトレイル。富士山といえばアウトドアイベントの聖地、ならばグラベルだって楽しいに決まっている。準備期間は2年。開催前から熱視線を集めた富士グラベルは、第1回にして見事マニア達のハートを鷲掴みにしてみせた。

ところでグラベルマニアにとって富士といえば、山梨の「北富士演習場」がよく知られたフィールドだ。一方、本イベントは林業の盛んな南麓エリア、静岡県富士市の「富士山こどもの国」を拠点に開催された。聞けば、普段は立入禁止の林道を走れるスペシャルなイベントだという。グラベルをもっと身近に、その想いがワンデーイベントとして結実した形だ。

コースは25kmのショート、45kmのミドルの2種類。どちらも未舗装路率は7割に達し、アドベンチャー感は十分以上だ。ショート50名、ミドル150名の定員はあっという間に完売。東西から満遍なく参加者が揃い、イベント初挑戦という方もちらほら。サポートライダーを合わせた約200名が会場を彩った。ファミリーで楽しめるイベントとして、バイク相撲や試乗を盛り込んだ「富士サイクルフェスティバル」も併催された。

富士グラベル 富士グラベル

五里霧中、神秘の林道に抱かれて

スタート直後、誰もが足を止めた。それまで霧隠れしていた富士山が、突如として姿を現したからだ。前日は暴風雨、当日は濃霧という自然の洗礼を前にしても、富士は悠然とそびえ立っている。勝ったも同然、心の中でガッツポーズして冒険路へと繰り出した。

前半は100m先すら見えない霧中の林道が続いた。霊峰にふさわしい神秘のグラベル、こんなライドは初めてだ。水捌けが良いのか、前日の豪雨を感じさせない固く締まったグラベルが気持ちいい。里山の林道にありがちな急登やガレガレのテクニカル区間はほとんどなく、ビギナーにとっても「すぎない」路面だ。一方、エキスパートはスピードを競える絶妙なレベルに仕上がっている。緩やかに上り、砂利のカーペットを滑り落ちる。その繰り返しで自然と一体になっていくのを感じた。

後半、ミドルコースはガイド帯同のグループライドに切り替わる。これはロスト防止とトラブル分散化に加え、絶好の社交場としても機能した。ガイドは界隈の有志が担当し、グループごとに異なるテイストでライドを盛り上げたようだ。道中のエイドではローカルグルメの「つけナポリタン」や、静岡らしい新茶とスイーツが振る舞われ、グルメ要素も100点満点だ。

富士グラベル

富士グラベル

つけナポリタン

ニッポングラベルの急先鋒なるか

グラベルイベントの最前線といえばニセコであり、現在500名規模の大型イベントに成長した。しかし、遠方ゆえに参加が難しく、コース難度の高さも否めない。その点において富士グラベルは救世主だ。東西南北どこからもアクセスしやすく、万人に親しみやすいコース難易度。もちろん富士の絶景は日本人の心の拠り所である。極め付けに地元関係者の手厚いサポート体制のおかげで、安心してライドに没頭できる。富士のポテンシャルはものすごい、そう感じざるを得ない完成度であった。

翌年は66kmロングコースの追加や、さらなる定員拡大を予定しているという。気が早いが、ニッポンのグラベルイベントの急先鋒として躍進していくことになるだろう。富士イベントにハズレなし、だ。

富士グラベル

 

パナレーサー社長 大和竜一氏コメント:地域活性と文化醸成をグラベルで叶えたい

「サイクルイベントを企画する上で大事にしたいのは「ゲストにどこを走っていただくか」です。富士エリアは豊かな自然とアクセスの良さで以前から注目していました。2年前から準備を重ねてきて、こうして笑顔をお届けできてホッとしています。

富士山は日本のシンボルであり、国際レベルのメガコンテンツです。次は海外勢を招いたり、さらに遠方から参加者を呼び込むことが目標。もっともっとビッグなイベントに育てたいですね。

パナレーサーはこれまで、ニセコや宿毛など様々なイベントを共に盛り上げてきました。その実績を評価いただき、ありがたいことに全国の地域からお声かけいただく機会が増えてきました。グラベルライドが地元の魅力を引き出すキーになる、そう確信しています。これからも仕掛けていきますよ!」

大和竜一社長

たぶちんさん、トムさんインタビュー :全員で、地域に根ざしたイベントを

TRYCLE代表 田渕君幸さん

「前日の悪天候でどうなるかと心配でしたが、こうして開催できてまずはホッとしています。安全な運営にあたって最も苦労した部分は、サポートライダーの育成ですね。ありがたいことに各地のライダーに協力をいただき、試走会を重ねてコースを見てもらいました。

1番やりたいことは「自転車遊びの提案」。ショップ立ち上げやイベント開催をきっかけに、これからもチャレンジしていきたいですね。現状日本はグラベル遊びのフィールドが限られているからこそ、自分にできることとして富士グラベル運営に貢献したいと考えました。

来年以降は200人以上の大きなイベントにしたいですが、地元を蔑ろにして拡大路線をとることはしません。地元の事業者、出展者、イベントに関わる全ての方々が納得できる運営体制をこれからも継続していきたいと思います。」

株式会社テラインコグニタ代表 トム・ボシスさん

「パナレーサーの大和社長から相談を受けて、地元の事業者として協力させていただきました。田渕さんと私で得意分野をシェアして準備を進めました。無事開催できて本当によかったです。

グラベルイベント開催において道路使用許可や各種申請は数多く、大変な作業です。今回は富士市内で完結するルートをとり、スムーズに準備が進みました。そして文化を盛り上げるためには、走る機会を提供することが何より大切です。地域の了解を得て、イベント外でも走れるコースを開けたらなとも考えています。

富士は春の新茶、秋の紅葉と四季折々の魅力が詰まったエリアです。多面的に富士グラベルというブランドを育てていきたいですね。コースの難易度も親しみやすいものとして、グラベルイベントの最初の入り口として選んでもらえたらなと思います。家族連れで楽しめるイベントとしても設計したいですね」

田渕君幸さんとトム・ボシスさん

田渕君幸さん(左)とトム・ボシスさん

 

今回の参加者スナップは、後編として当サイクルスポーツウェブ上で続報する予定だ。
またスナップとともにイベントやコースの詳報は、6月20日(金)発売の「サイクルスポーツ8月号」でも展開予定。お楽しみに!