パールイズミ×日本大学自転車部 part2 風洞試験で知るウェア作りにかけた思い

目次

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

およそ60年もの長い間、関係が続くパールイズミと伝統のピンク色のジャージを着用する日本大学自転車部。

今回は、日本大学自転車部に所属する2人の選手の風洞試験にパールイズミの担当者が立ち会いながら、ウェア製作時の秘話や今後の課題についても語ってもらった。

 

日本大学の空気抵抗試験にパールイズミが同行

2月上旬、静岡県沼津市にあるコンパクトな風洞試験施設、日本風洞試験 富士エアロパフォーマンスセンターに、日本大学自転車部のメンバー2人と我妻敏監督とスタッフの皆さんに加えて、日本大学自転車部のジャージを手がけるパールイズミから清水秀和さんとウェア開発を担当する佐藤充さんが訪れた。

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

今回の目的について、我妻監督はこう語る。

「選手自身が空気抵抗の少ないフォームを模索することが第1テーマです。第2テーマとしては、風洞実験を担当される日本風洞試験さんとパールイズミさんと日本大学で連携しながら、選手を見つつ、新しいイノベーションみたいなものが生まれればと考えています」

被験者として、日本大学自転車部に籍を置きつつJCL TEMA UKYOで今季から活動する鎌田晃輝選手と、次年度上級生としてチームをまとめる北嶋桂大選手が、シーズンイン前に実際に使うフォームの空気抵抗の値を数値化し、空気抵抗の少ないフォームを見つける作業を行った。

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

U23全日本チャンピオン仕様のジャージを着用して試験を行う鎌田選手

 

日本大学は4大会連続でU23の全日本チャンピオンジャージを獲得しており、直近2023年の全日本選手権U23カテゴリーのチャンピオンとなった鎌田選手は、日本チャンピオンカラーの日本大学ジャージを着用し、レース中の巡航速度を見越した時速45kmの風を浴びながら合計3種類のフォームを試した。

今回の実験では、3種類全てフォームで空気抵抗を示すCdAの値はほぼ変わらず、どのフォームでも実践で支障がないという結果が分かった。鎌田選手はこう話す。

「レース中に一つ目のポジションでつらくなったら、二つのポジションに移行してもデータは全然変わらないので、休みながらでも大丈夫ということですね」

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試験結果をこれからのレースに生かすことになるだろう

 

3月からイタリアへと渡り、JCLチームのメンバーに合流。今後のレーススケジュールも決まっているとのこと。今回の実験が実戦に生きることを期待したいところだ。

次の北嶋選手は、日本大学伝統のピンク色のジャージをまとい、同じくフォームに関する試験を数種類行った。

 

ウェア開発者の思いを伝える場として

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北嶋選手は日本大学ジャージを着用して試験を行った

 

試験を担当した日本風洞製作所の宝蔵蓮也さんによると、大学チームがこの施設を利用するのは初めてだったそうだ。

日本大学自転車部としては以前、国立スポーツ科学センターでも風洞試験を行ったことがあるという。しかし、その時は大学の先生との合同研究という形で、あくまで論文を書くための材料というようなアカデミックな内容がメインであったそうだ。

「今回はアカデミックでもあるんですけど、どっちかというと選手のパフォーマンス寄りに使わせていただける施設だったので」と、我妻監督は話す。

一方、空気抵抗軽減素材を採用したジャージを作るパールイズミでは、開発時、マネキンを用いて別の施設にて風洞試験を行っているそうだ。今回は実際に人間が乗り、ペダルを漕いだ状態での計測を行ったが、ウェアの開発ともなると素材の組み合わせが非常に多くあるため、人間で試験を行うと同じフォームを取り続けることが難しく、マネキンを使用しているとのことだった。

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

毛糸を使って、どのように空気が流れているか確認

 

予定していた全ての試験が終わると、最後に宝蔵さんによって毛糸を使った空気の流れの実演もあった。

それと共に開発者の佐藤さんが、日本大学で採用されているエアスピードジャージを開発するまでの経緯についても説明を行った。

「空気抵抗に対して一番数値が良さそうな素材を全体に使えば空気抵抗が低くなると思うじゃないですか。でも実際はそうならなくて。違う素材や切り返しの位置なども移動させながら何十種類も作って、今のものが出来上がっています。
縫い目の位置によって空気の剥離点が変わり、乱流が起こりやすいので、それをなるべく後ろにしてあげていて、それにより、今のウェアは縫い目を高い位置に設定しています」

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

佐藤さんがウェアを触りながら説明を行う

 

さらに、ジャージをシワなく着ることの重要性についても佐藤さんが言及すると、「今度から着方工夫しないとですね。正直ただ着ているだけだったので。こういう思いと考えがあってこのジャージになっているから、しっかりシワを伸ばして、着方も気にしないとですね」と我妻監督は、鎌田選手と北嶋選手に部内ですぐに共有しようと伝えていた。

それ以外にも、佐藤さんが最近の課題として挙げたのはシューズ周りについて。
「上半身はエアロポジションを取って、少し動くくらい。でもシューズまわりは大きく動くので、フロントフォークを通ってきた空気を足の部分でいかに綺麗に後ろに流していくかということを考えています」

ヨーロッパでは、少しでも空気抵抗を減らすべく、シューズの凹凸をなるべくなくすためのシューズだけのカバーも出てきているという。パールイズミでも試作を行っているそうだ。

それを受けて我妻監督は、「学生の意見など聞きたいということがあれば、いくらでも参加させますので!」と前のめりな姿勢を見せていた。もしかするとパールイズミが日本大学自転車部と協力して開発した製品が生まれる日も近いかもしれない。

今回の風洞実験の機会を終えて、「改めてうちの開発担当とか監督の考え方や設計のアプローチとかを手短ですけど、説明させてもらえたのが良かったです。物の重みや価値が、ちゃんと伝えられたかなと思います」と、清水さんは話した。

 

イノベーションを目指し、続く新たな試み

パールイズミ×日本大学自転車部 part2

右からパールイズミの佐藤さんと清水さん、日本大学自転車部の鎌田選手、北嶋選手、我妻監督、風洞試験プロモーターであるニシヤマの宇野さん、日本風洞製作所の宝蔵さん

 

さらに、この取材と同じ頃、パールイズミでは日本大学自転車部のメンバーのインターンを受け入れる試みも初めて行っていた。その経緯について、我妻監督はこう語る。

「大学のスポーツに何かスポンサーさんがつくとなると、周辺のアイテムスポンサーであったり、金品のスポンサーであったりのイメージがあると思うんですけど、やっぱり大学スポーツ機関は教育機関なので、教育機関としてのスポンサーのあり方をパールイズミさんが受け入れてくださった形です。こういう関係性も一つ、大学スポーツ機関としてのスポンサーとの関係性かなと思って、2年前の国体のときから清水さんと話をしていて、今回実現させてもらいました」

60年を超えるパールイズミと日本大学自転車部との関係性は、選手たちが着用するジャージを通してだけでなく、様々な体験を経て、現在進行形でより深くなっていっている。今後も、双方にとって価値のある新たな発見やイノベーションを生み出してくれるだろう。

 

 

前回の記事はこちら:
パールイズミ×日本大学自転車部 伝統と新たな挑戦