五輪を目指す、ヒルクライムの女王・金子広美選手インタビュー

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ヨネックス金子広美

今年の全日本選手権で2位となったイナーメ信濃山形の金子広美さん。昨年からヨネックスの「CARBONEX」に乗り、そのロードバイクとしての性能の高さを実感したという。来年の東京五輪に向けた思いとともに、バイクの性能について語る。

ヨネックス金子広美

運動は苦手。でも、負けず嫌いだった

Q:撮影、お疲れ様でした。

金子:なんだか普通の服での撮影って、緊張して疲れました。やっぱり毎日着慣れているジャージが一番しっくりきますね(笑)。

 

Q:自転車のキャリアとしては、MTBから始まるんですよね。

金子:結婚して旦那さんがMTBに乗っていたのですが、レースを見ているだけではつまらなくて自分も乗るようになりました。でも、子供の頃から運動は苦手でした。ただ、走るのは得意で、中学生の頃には地区のマラソン大会に駆り出されていました。その頃から負けず嫌いで、地区のみんなをまとめて朝練したほどです。

 

Q:MTBでは、乗り初めから強かったんですか?

金子:いえいえ、最初はヒルクライムレースに出ても後ろから回収車が迫って来るぐらいでした。でも始めたからには途中で投げ出すことが嫌で。とことんやってダメなら諦める事はできるんですが、それまではとにかくやり通したいという気持ちが強いんですね。

 

Q:その負けず嫌いが、成績にも繋がってくるわけですね。

金子:2004年からMTBに乗り始めて、Mt.富士ヒルクライムにMTBで出場して優勝しました。ただ、ロードで強い選手がいたり、スピード感もそうですが、華やかに見えたんですね。それで2008年からロードに切り替えました。

自分に何が足りないのかを考え続ける

ヨネックス金子広美

Q:ロードに乗り換えてからは、どんな練習をしていたのでしょうか。

金子:強くなりたいと思うんですが、どうやって強くなればいいのか練習方法もわからず、誰かに聞いたり、あとは雑誌の記事を見ながら学んでいました。ただ、練習量としては結構乗っていました。ローラー踏んでから仕事に行って、帰宅後にご飯を用意したり家事をするという生活で、考えてみると結婚してからずっと練習していますね(笑)。

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Q:現在の平均的な1日の過ごし方は、いかがですか?

金子:朝6時に起きて朝食を作り、洗濯したり掃除機をかけるなど家事全般を終えて、9時頃に練習に出ます。強度を上げる日は4時間ほど、回復走でも2時間は気持ちよく乗って、家に帰ってきて必ずストレッチなど体のケアをして夕飯の支度をしてという流れですね。

 

Q:強化指定になったのが2011年ですが、どんな変化がありましたか?

金子:四日市市に越してきたのも同じ年なんですが、色々と変わりました。まず、この土地が走りやすいんです。上りも平地もあって、練習環境が良すぎるほどで、結果も出るようになりました。

もちろん強化指定になったことも、かなり大きいですね。ヒルクライムでは成績を残していたんですが、上りが強いだけではロードレースでは勝てなくて。強化指定になったことで、合宿や海外のレースにも参加できるようになり、特に海外で走ったことで、このままではいけないという刺激になりました。


Q:研究熱心ですよね。

金子:そうですね。常に自分に何が足りないのかを考えていますし、勝つために何をしたらいいのか、それを突き詰めるのが好きなんですね。あと筧五郎さんにもレースでの心理戦に始まり、レース中のかなり細かな動きなど実践的なことも色々と教えてもらいました。

最高の相性を感じたヨネックス「CARBONEX」

ヨネックス金子広美

Q:2018年からはヨネックスの機材提供を受け、「CARBONEX」に乗られています。最初の出会いはいつだったのでしょう?

金子:私が所属しているイナーメ信濃山形のチームメイトでもある森本誠さんがヨネックスに乗っていて、「ヨネックス、すごくいいよ」ということは聞いていました。気にはなっていて、そうしたらヨネックスでも女子選手を探していたそうで、レース会場のブースでお話をさせていただきました。ただ、乗るまでは決められなくて。硬いフレームだと一瞬で脚が無くなってしまったり、合う合わないがあるので。

ヨネックス金子広美

ところがCARBONEXを試乗したら、すごく印象が良かったんです。進むんですよ。特に私が得意とする上りのフィーリングがすごくいいんです。上りは、こう踏んだら、こう進むっていう感覚があるんですが、その感覚がすごくぴったり合いました。それに上りだけじゃなく、平地も進みますし、下りでもコーナーで安定して曲がることができるんです。私自身、実は機材は詳しくはないですし、強いこだわりはないんです。でもフレームに関しては、合わなければお返しすることがあるくらい、フィーリングの良し悪しがあります。

 

Q:長距離を走った時の感想はいかがでしょう。

金子:後半でもバテないですし、踏んでいられます。それでも踏み込んだときの瞬発力もあるんです。今年6月の全日本選手権では、2位を争って最後3人でスプリントだったんですが、観ている方みなさん、私の旦那さんまで「負けた!」と思ったらしいんです。ところが、最後で伸びて、僅差でしたけど、勝てました。そこにはCARBONEXの力もありますね。

ヨネックス金子広美

写真左から樫木祥子(チームイルミネート)、牧瀬翼(IKEUCHI EXIT)、そして金子広美(イナーメ信濃山形)

Q:来年はいよいよ東京オリンピックですね。

金子:そうですね。最近は、自分のことが分かりだした感じがします。レースに向けた調整でも、何をしたらどう疲れるのか、何をすれば上がってくるのか。そこが分かりだしてからは、レースで最高のパフォーマンスを出せるようになりました。どうしても焦ってしまう時があるんですが、そういう時でも自分を客観的に見て、気分転換をしたり、焦っている自分を笑ってみたりするんです。そうやってある程度落ち着いて見られるのも、年齢的なメリットかもしれません。あとは、どこまで自分を追い込んでいけるかですね。オリンピック目指して、もっと練習します!