エトナ山頂上ゴールのジロ・デ・イタリア2020 第3ステージはカイセドが区間初優勝/トーマス落車

イタリアで開催中の第103回ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)は、10月5日にシチリア島のエンナから標高1793mでカテゴリー1のエトナ山までの150kmで、頂上ゴールの第3ステージを競い、エクアドルチャンピオンのジョナタン・カイセド(EFプロサイクリング)が独走で逃げ切り、UCIワールドツアーで初優勝となる区間優勝を果たした。

ジロ・デ・イタリア2020

雨のエトナ山頂上ゴールはエクアドルのカイセドが制した

区間2位にはシチリア出身のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザプ・KTM)が入り、3位はベルギーのハルム・ヴァンハウケ(ロット・スーダル)だった。

総合首位には初日の個人タイムトライアルで区間2位になっていたポルトガルのジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が浮上し、マリア・ローザに初めて袖を通した。区間優勝したカイセドとアルメイダは総合成績で同タイムだったが、個人タイムトライアルで計測された僅かなタイム差でアルメイダが上回った。

ポルトガル出身の選手がマリア・ローザを着用したのは、1989年にイタリアのカレラジーンズに所属していたアカシオ・ダシルバが初めて獲得して以来、31年ぶりの快挙だった。22歳のアルメイダは新人賞のマリア・ビアンカも獲得している。

カイセドはマリア・ローザこそ逃したが、カテゴリー1のエトナ山で山岳ポイントを稼ぎ、マリア・アッズーラを獲得した。

ジロ・デ・イタリア2020

ポルトガルのアルメイダが総合首位に立ち、マリア・ローザを獲得した


総合優勝候補のトーマスが落車

第3ステージはオフィシャルスタート前のエンナの町中のニュートラルゾーンで、総合優勝候補の1人だった英国のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアズ)が、コース上に転がったボトルが原因で落車する事故が発生した。

この落車で負傷したトーマスは、エトナ山の登坂がスタートする前にメイン集団から遅れ始め、マリア・ローザを着ていたチームメートのフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアズ)が付き添ったが、結局12分以上遅れてゴールし、総合優勝争いから早くも脱落してしまった。

ジロ・デ・イタリア2020

ニュートラルゾーンで落車していたトーマスは集団から遅れ、マリア・ローザを着たガンナに引かれてゴールを目指した(©Bettiniphoto)


シチリア出身のヴィスコンティが逃げた

第3ステージは173選手が出走。シチリア島出身のヴィスコンティを含めた6人がオフィシャルスタートと同時にアタックし、13km地点でカイセドが合流した。この逃げグループは、91km地点で集団に最大5分23秒差を付けていた。

ゴールまで残り30kmを切り、トレック・セガフレードが引く集団と逃げのタイム差は3分半に縮まっていた。スタート前のニュートラルゾーンで落車していたトーマスは集団の後方で苦しみ始め、マリア・ローザのガンナが引いたが、結局集団から遅れてしまった。

エトナ山の登坂は残り18.8kmからスタート。山頂は雨が降っていた。逃げグループは遅れる選手が出始め、14kmでヴィスコンティがアタックすると、付いてこられたのはカイセドだけだった。ミゲル・ビェアウ(UAEチーム・エミレーツ)が一度は追いついたが、先頭はすぐにヴィスコンティとカイセドに戻った。

ジロ・デ・イタリア2020

シチリア島出身のヴィスコンティ(右)が区間優勝を目指して逃げた

メイン集団はボーラ・ハンスグローエが引き始め、総合優勝候補の1人だった英国のサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が遅れてしまった。先頭では、ゴールまで残り5kmでカイセドがアタックし、単独でゴールを目指しはじめた。

カイセドはそのまま逃げ切り、昨年エクアドル人として初めてジロで区間優勝したリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアズ)に続き、2人目のエクアドル人区間優勝になった。

メイン集団では終盤にアタックが続き、誰もコントロールできない無法状態に陥り、ハルム・ヴァンハウケ(ロット・スーダル)やウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)が抜け出してゴールを目指した。

ジロ・デ・イタリア2020

エトナ山で総合争いの激しいバトルが早くも始まった

今年の総合争いを占う選別は、エトナ山で勾配の最もキツいエリアで行われた。メイン集団で生き残ったのは、イタリアのヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)、デンマークのヤコブ・フルサン(アスタナプロチーム)、ポーランドのラファウ・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)だった。2016年のジロで活躍したオランダのスティーフェン・クラウスウェイク(チームユンボ・ヴィスマ)とアルメイダは、わずかに遅れて彼らを追っていた。

ビッグフォーは区間優勝したカイセドより51秒遅れでゴール。サイモン・イェーツは4分22秒遅れてゴールし、総合争いに加わるのは難しくなった。今年のジロは、3日目で早くもマリア・ローザを狙える選手が絞り込まれてしまった。

■区間初優勝して山岳賞のマリア・アッズーラを獲得したカイセドのコメント
「夢が実現した。プロ選手としてまだ2年目で、とてもハードだった。今朝は逃げようという思いを持って目覚めて、トライして区間優勝した。やり遂げて、とても満足している。最後の数kmは、苦しみと感動と痛みが入り混じっていた。良い順位に居るから、総合争いを続けるつもりだ」

■マリア・ローザを獲得したアルメイダのコメント
「マリア・ローザを持っている感覚は表現できない。夢が叶った。上り始めから、全くスピードが速かった。多かれ少なかれ、タイム差を聞かされていた。トーマスが脱落したのは知っていたが、とてもパンチ力があるサイモン・イェーツの事が心配だった。でも彼も脱落した。

ボクは自分のペースで状況をコントロールした。頂上まで残り3〜4kmは、風がとても強かった。ボクはできる限りのことをした。フィニッシュラインまではとても苦しんだ。可能な限り長く、マリア・ローザをキープしようと思う」

ジロ・デ・イタリア2020

カイセドは山岳賞のマリア・アッズーラを獲得した

■第3ステージ結果[10月5日/エンナ~エトナ/150km]
1. CAICEDO Jonathan (EF PRO CYCLING / ECU) 4:02:33
2. VISCONTI Giovanni (VINI ZABU KTM / ITA) +21
3. VANHOUCKE Harm (LOTTO SOUDAL / BEL) +30
4. KELDERMAN Wilco (TEAM SUNWEB / NED) +39
5. FUGLSANG Jakob (ASTANA PRO TEAM / DEN) +51
6. MAJKA Rafal (BORA – HANSGROHE / POL) +51
7. NIBALI Vincenzo (TREK – SEGAFREDO / ITA) +51
8. CASTROVIEJO NICOLAS Jonathan (INEOS GRENADIERS / ESP) +51
9. POZZOVIVO Domenico (NTT PRO CYCLING / ITA) +51
10. KRUIJSWIJK Steven (TEAM JUMBO – VISMA / NED) +56
11. ALMEIDA João (DECEUNINCK – QUICK – STEP / POR) +1:03

31. YATES Simon Philip (MITCHELTON – SCOTT / GBR) +4:22
69. THOMAS Geraint (INEOS GRENADIERS / GBR) +12:19
97. GANNA Filippo (INEOS GRENADIERS / ITA) +19:47
114. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN – MCLAREN / JPN) +21:29

■第3ステージまでの総合成績(マリア・ローザ)
1. ALMEIDA Joao (DECEUNINCK – QUICK – STEP / POR) 7:44:25
2. CAICEDO Jonathan (EF PRO CYCLING / ECU)
3. BILBAO Pello (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) +37
4. KELDERMAN Wilco (TEAM SUNWEB / NED) +42
5. VANHOUCKE Harm (LOTTO SOUDAL / BEL) +53
6. NIBALI Vincenzo (TREK – SEGAFREDO / ITA) +55
7. POZZOVIVO Domenico (NTT PRO CYCLING / ITA) +59
8. MCNULTY Brandon (UAE TEAM EMIRATES / USA) +1:11
9. FUGLSANG Jakob (ASTANA PRO TEAM / DEN) +1:13
10. KRUIJSWIJK Steven (TEAM JUMBO – VISMA / NED) +1:15
11. MAJKA Rafal (BORA – HANSGROHE / POL) +1:26
25. YATES Simon Philip (MITCHELTON – SCOTT / GBR) +3:46
53. THOMAS Geraint (INEOS GRENADIERS / GBR) +11:17
116. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN – MCLAREN / JPN) +25:49

[各賞]
■ポイント賞(マリア・チクラミーノ):ULISSI Diego (UAE TEAM EMIRATES / ITA)
■山岳賞(マリア・アッズーラ):CAICEDO Jonathan (EF PRO CYCLING / ECU)
■新人賞(マリア・ビアンカ):ALMEIDA João (DECEUNINCK – QUICK – STEP / POR)
(※第4ステージはVANHOUCKE Harm (LOTTO SOUDAL / BEL)が着用)
■チーム成績 : DECEUNINCK – QUICK – STEP (BEL)

ジロ・デ・イタリア2020

総合優勝候補だったトーマスはこのステージで12分以上遅れてしまった (©Bettiniphoto)

ジロ・デ・イタリア公式サイト