クイーンステージのツール・ド・フランス2020 第17ステージはロペスが区間初優勝

第107回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、グルノーブルからスキーリゾート地のメリベルにあるカテゴリー超級のローズ山山頂までの170kmで、今大会のクイーンステージとなる第17ステージを競い、コロンビアのミゲルアンヘル・ロペス(アスタナプロチーム)が独走で区間初優勝した。

ツール・ド・フランス2020

クイーンステージはツール初出場のロペスが制した(©Bettiniphoto)

マイヨ・ジョーヌを着たスロベニアチャンピオンのプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ・ヴィスマ)は、15秒遅れの区間2位でゴールし、総合首位の座を守った。ログリッチはこのステージで総合2位のタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)に15秒のタイム差を付けただけでなく、6秒のボーナスタイムも獲得。総合でのタイム差を57秒に広げた。

区間優勝したロペスは総合3位に順位を上げたが、ログリッチとのタイム差は1分26秒開いている。

ツール・ド・フランス2020

クイーンステージでマイヨ・ジョーヌを守ったログリッチ

 
ベルナルが不出走

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●第17ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

アルプス山岳2日目の第17ステージは152選手が出走。前日のステージを27分27秒遅れのグルペットでゴールしていたディフェンディングチャンピオンのエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアズ)がスタートしなかった。

ツールはこの日、イゼール県からサボワ県へと移動し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して強い警戒が必要とされるレッドゾーンから離れた。そのため、ゴールのローズ山では観客の規制は行われなかった。前日から大会に復帰していたクリスティアン・プリュドム総合ディレクターが乗る真紅の先導車には、この日フランスのエマニュエル・マクロン大統領が乗車していた。

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クイーンステージはマクロン大統領が観戦した

スタートからトマス・デヘント(ロット・スーダル)がアタックを続け、24km地点で21人が逃げ出し、そこからさらにジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアズ)、レナート・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)、ゴルカ・イサギレ(アスタナプロチーム)、ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネイション)が先行。35km地点で25秒差を付けた。総合を脅かす選手は入っていなかったため、集団はこの逃げを追わず、ペースを落とした。

45.5km地点の中間スプリントはアラフィリップが1位で通過。集団は3分10秒後にマイヨ・ベールのサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭で通過した。前半は平坦だった為、最初の1時間の平均時速は49.5km/hだった。

標高2000mでカテゴリー超級のマドレーヌ峠のふもとで、逃げる5人とチームユンボ・ヴィスマがコントロールする集団のタイム差は6分に開いていた。登坂が始まると、集団はバーレーン・マクラーレンが列車を作って先頭を引き始め、ナイロ・キンタナ(チームアルケア・サムシック)が遅れてしまった。

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アラフィリップがこの日の逃げに加わっていた

先頭の逃げグループは、山頂まで残り12kmで前日区間優勝したケムナが脱落し、4人になった。集団はバーレーン・マクラーレンが引き続け、山頂まで残り3kmでタイム差は2分に縮まっていた。集団からは次々と選手が遅れ始め、マイヨ・ブランのポガチャルは、チームメートがダビ・デラクルス(UAEチーム・エミレーツ)しか残っていなかった。後方では、スペインのミケル・ニエベ(ミッチェルトン・スコット)がレースを棄権した。彼がグランツール途中で止めたのは、これが初めてだった。

カテゴリー超級のマドレーヌ峠山頂は、前日に敢闘賞を受賞して赤ゼッケンを付けていたカラパスが先頭で通過。1分25秒後にメイン集団はポガチャルが先頭で通過して、8ポイントを獲得。彼はこの時点で山岳賞総合トップになった。これで地元フランスのブノワ・コスヌフロワ(AG2R・ラモンディアル)は、第2ステージから着続けたマイヨ・アポワを遂に手放す事になった。

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先頭の逃げは、マドレーヌ峠のダウンヒルでマーティンが遅れて3人になった。アラフィリップ、イサギレ、カラパスの3人は、ゴールまで残り21.5kmでローズ山の登坂がスタートした時、メイン集団にまだ1分52秒差を付けていた。


ローズ山の死闘

嵐の前の静けさのように、序盤のローズ山はアタックもなく進んでいった。集団は変わらずバーレーン・マクラーレンが引き続け、逃げをじわじわと追い詰めていった。ゴールまで残り13kmで、タイム差は1分に縮まっていた。先頭では、カラパスの加速に付いていけなくなったアラフィリップが最初に脱落した。

ゴールまで残り9kmで集団とのタイム差は25秒になった。ここでイサギレも力尽き、先頭はカラパス一人になった。マイヨ・ジョーヌ集団はまだバーレーン・マクラーレンが引き、すでに13人にセレクトされていた。赤ゼッケンのカラパスは区間優勝を目指して逃げ続け、残り4kmでタイム差を44秒にまで広げた。

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カラパスが2日連続で逃げた

しかし、ここでマイヨ・ジョーヌ集団はデラクルスが先頭に立って引き始め、ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)、リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)、アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が付いて行けなくなった。デラクルスはわずかな間しか働けなかったが、この動きでマイヨ・ジョーヌ集団は5人に絞られた。

ゴールまで残り3.5kmでロペスが攻撃を開始し、リッチー・ポート(トレック・セガフレード)も脱落。メイングループはマイヨ・ジョーヌのログリッチとセップ・クース(チームユンボ・ヴィスマ)、ロペス、ポガチャルの4人になった。

クースが引くマイヨ・ジョーヌのグループは、先頭を走り続けていたカラパスをあっさり追い抜き、残り3kmに突入。そこからクースがアタックして先行したが、すぐにロペスが追いついた。クースは後方を振り返り、ログリッチを待つ事にした。

ログリッチは観客が溢れかえる残り2km地点でクースに合流し、2人で先頭のロペスを追った。わずかに遅れたポガチャルは、単独で観客の波をかき分ければならなかった。ロペスはそのまま逃げ切り、ツール初出場で初区間優勝を果たし、マクロン大統領の目前でフィニッシュラインを通過した。

21歳のポガチャルは、前日に続いてロズ山でも予告していたようなアタックはできず、逆にログリッチに15秒差を付けられてゴールした。しかし、彼は山岳賞で総合首位に立ち、アルプス最終日をマイヨ・アポワで走る事になった。

■ツール初出場で初区間優勝したロペスのコメント
「とても嬉しい。自宅で家族、妻、息子と一緒に仕事をしたから、感傷的になった。この勝利は彼らに捧げる。今自分がいる場所に到着するのは容易ではなかった。自信はあった。自分の地形に居た。標高2000mで、家にいるように感じる。チームは最初から最後まで素晴らしい仕事をしてくれた。この区間優勝は、我々のボスであるアレクサンドル・ヴィノクロフの誕生日を祝うのに最高の方法だ。パリに到着する事を目標にして、初めてのツールに参加した。最後まで日々精進し続けるよ」

■スロベニア対決で勝てなかったポガチャルのコメント
「数秒失ってしまった。とても急な坂だったよ! ベストを尽くしたが、ロペスとログリッチにちょっとタイムを失った。でも、バッドデーではなかった。それにまだ終わった訳ではない。明日はまた難しいステージだ。それはまた別の激しい戦いになるだろう。表彰台の場所を失う可能性もまだある。とにかく、最後までトライするつもりだ」

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ポガチャルが山岳賞首位になり、マイヨ・アポワを獲得した


■第17ステージ結果[9月16日/グルノーブル~メリベル・コル・ド・ラ・ローズ / 170km]

1. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM) 04h 49′ 08”
2. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) + 15”
3. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 30”
4. SEPP KUSS (TEAM JUMBO – VISMA / USA) + 56”
5. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 01′ 01”
6. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 01′ 12”
7. MIKEL LANDA (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) + 01′ 20”
8. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 01′ 20”
9. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 01′ 59”
10. TOM DUMOULIN (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 02′ 13”
11. RICHARD CARAPAZ (INEOS GRENADIERS / ECU) + 02′ 41”
12. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 02’ 48’’
46. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 25’ 17’’

■第17ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) 74h 56’ 04’’
2. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 57’’
3. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM / COL) + 01′ 26’’
4. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 03’ 05’’
5. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 03’ 14’’
6. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 03’ 24’’
7. MIKEL LANDA (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) + 03’ 27’’
8. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 04’ 18’’
9. TOM DUMOULIN (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 07’ 23’’
10. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 09′ 31”
15. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 30’ 51’’

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):SAM BENNETT (DECEUNINCK – QUICK – STEP / IRL)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
■新人賞(マイヨ・ブラン):TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
(※第18ステージはENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP)が着用)
■チーム成績:MOVISTAR TEAM (ESP)
■敢闘賞:JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA)


第18ステージはアルプス山岳最終日

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●第18ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

9月17日はメリベルからラ・ロッシュ・シュル・フォロンまでの175kmで、アルプス山岳最終日となる第18ステージが行われる。カテゴリー1の峠が2カ所、カテゴリー2の峠が1カ所あり、終盤にはカテゴリー超級のプラトー・デ・グリエール山も越えるが、ゴールは峠を下った先にある。

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