「若者×挑戦」を掲げ、MTB業界を変える。フカヤレーシングの2年目が始動!

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2020年1月25日(土)、東京・飯田橋にてMTBクロスカントリーのチーム「フカヤレーシング」の2年目の体制発表が行われた。昨年は松本佑太、竹内遼の2選手、クリエーターの山﨑勇輝の3人での活動だったが、今年はあらたに女子有力選手の川口うららが加入した。XCの若手選手が集うこのチームが他と違うのは、選手である松本氏がチームマネージャーも務めているという点だ。チームの結成から今後の活動について聞いた。

フカヤレーシング2年目

新体制となったフカヤレーシング。左から松本佑太、新加入の川口うらら、竹内遼

 

このチームのコンセプトと結成までの経緯を教えてください。

松本:[若者が世界に挑戦する]というのがこのチームのメインコンセプトです。チームの始まりは自分が竹内に話を持っていったこと。中学のころから一緒に走ってきた彼は、高校を卒業しプロへの道を選みましたが、結果を出せずにいました。成績が落ち、モチベーションがなくなっていく彼を見ていたころ、山本幸平選手からギリシャ遠征のお誘いをいただき、竹内にも声をかけました。ジュニアの時に世界を目指していた彼が、国内の雰囲気に慣れてしまい成績も出ない状況。何かリフレッシュになれば、また世界で戦っている山本幸平選手との触れ合いも刺激になると思っていました。 遠征を終えて、目的通り彼は目標を再確認できました。そして、それを見て世界に挑戦するための基盤が必要であると感じました。

フカヤレーシング2年目

会場には40人ほどのファンやメディアが訪れ、若いチームの希望に耳を傾けていた

-それがフカヤレーシングの結成につながるんですね?

松本:はい。ギリシャ遠征は自分にとっても新しい発想を与えてくれる素晴らしいものでした。これから日本人選手を強化していくに当たり、日本人選手が安定して海外に行けるチームが必要であることを感じていました。英語もできたので、海外に行くことにも抵抗はありませんでした。 問題はどうやってそんな環境を作るかということでした。当時存在していたプロチームはほぼ全て、日本国内のみに製品を展開している企業が保有するチームで、選手が海外に行きたくても、セールスに繋がらないこと、金銭的な負担の大きさから実現が難しいものでした。「ないなら作るしかない」と思い、頭を巡らせました。企業が主導でチームが作られており、企業にとってのプラスマイナスで活動の是非が決まっているならば、選手が主体となり、海外の本場に挑戦したいという望みを持った状態で、それに賛同してもらえるスポンサーを集めれば良いと考えつきました。海外に行くお金については、常時スタッフなどをつけずに、自分たちがマネージメントをする事で大幅なコストカットができるとわかりました。

そんなアイデアを竹内がシクロクロスでお世話になっていた株式会社フカヤの社長さんに提案しに行き、応援していただけることになりました。もともとMTBを盛り上げたいという気持ちのあるフカヤさんと話を続けることで、「若者の挑戦をサポートしたい」と言っていただけるようになったのはとてもありがたいです。その他の企業にもご賛同、ご支援をいただき、昨年、チームがスタートしました。

フカヤレーシング2年目

チームを支える株式会社フカヤ近藤正勝氏「川口選手が加入することで、女性にもMTBを楽しんでもらえる環境づくりがよりできていけばいい」

-昨年はどのような活動を行い、どのような成果が得られましたか?

松本:昨年多くの海外レースを転戦しましたが、国内のプロチームと同等か、それ以下の予算で活動を行うことができました。ともかく新しいことを積極的にやっていくことを心がけました。情報発信に重きをおき、SNSでの積極的な発信や映像制作を行いました。その甲斐もあり、多くの人にマウンテンバイクの魅力が発信できたかと思います。知らない人に様子を知ってもらえる動画の力は改めて驚かされました。海外遠征では選手のモチベーションを高めるキッカケになったり、自立心が芽生えたりと、ただレースをするだけではない効果が見られました。川口については、今シーズンのこの部分の進化に期待しています。

 

2020シーズンはどのような活動を行っていきますか?

松本:川口の加入により、新たな視点が増えて、より一層クリエイティブで、野心的な雰囲気になりました。今シーズンは昨シーズン以上に海外のレースに出場し、経験を重ねていきます。2人にはワールドカップや世界選手権での成績が出せるようにサポートしていきます。トップレベルのワールドチームのようにトレーニングやセッティングを科学的なアプローチで行えるチーム体制を整えて行ければ良いと考えています。目標は3人揃って全日本チャンピオンになることです。

また、今年からはマスコットキャラの作成や、個人スポンサーの募集も開始しました。 選手が世界を目指しているようにこのチームも世界を目指しています。どれだけ優れた選手でも、その基盤がなければワールドカップや世界選手権での活躍は難しいと思います。遠く離れたヨーロッパの地でヨーロッパのチームに所属するという手もあります。ですが、各チームにはその地元があり、その地元の選手とアジアの選手を比べれば、地元の選手を選ぶというのは自然なことです。選手が目指すなら経営サイドも世界を目指すという考え方です。このチームの目標は、日本発のワールドチームになることです。

フカヤレーシング2年目

チームが駆るのはギザロのフルサスバイク。チーム専用バイクとして作られたこのバイクの販売予定はない。イタリア製

フカヤレーシング2年目

[愛されキャラ]の竹内選手には大人だけでなく子供のファンも多い

フカヤレーシング2年目

映像、写真の撮影を行うチームクルーの山﨑氏。情報発信が必須となった現在において、クリエーターの存在は欠かせない

 

松本、竹内、川口各選手の今シーズンの目標

フカヤレーシング2年目

松本佑太

「このチームをワールドチームレベルまで大きくすること。数字を交えるならば活動予算1億円を達成することです。自分はあくまでサポートに徹するという覚悟を決めたので、その次の優先度ではXCEの優勝を狙っていきたいと思っています。」

主な戦績
2019年 全日本選手権XCE3位
2018年 世界大学選手権17位
2017年 国内ランキング26位

フカヤレーシング2年目

竹内遼

「チームの雰囲気 選手、マネージャー、カメラマン、各分野で熱い想いを持ってやっている仲間と活動出来ていることが嬉しいです。チーム内で目指すところに対して意識のズレがなく、ストレスなく活動させてもらっています。スポンサーやサプライヤーを始め、本当に多くの方に支えていただいて実現している体制だなと改めて感じています。エリートカテゴリー1年目となる今年は、ワールドカップを始め、ヨーロッパのレースで結果と内容を求めていきます。10月の全日本選手権も重要なレース。狙っていきます。 僕個人が長期目標とするのは2024年のパリ五輪です。全然時間はないので、日々の積み重ね、レースの一つひとつを大事にしていきます。そこを目指すことで結果的にチームも成長し、国内のマウンテンバイクシーンが盛り上がり、良い方向に向かうのが理想だと考えています。」

主な戦績
2019年 全日本選手権XCO3位(U23)、世界ランキング 日本人4位
2018年 全日本選手権XCO3位(U23)
2017年 全日本選手権XCO2位(U23)
2015年 アジア選手権1位(ジュニア)

フカヤレーシング2年目

川口うらら

「今年の目標は世界選手権での10番台でのゴールです。過去に2回世界選手権に出場しましたが、目標としていた順位に届かず、結果として残せていません。2回とも悔しい気持ちで終わっています。今年はきちんと結果として残すのが1番の目標です。 また、海外遠征が今までより増えるので、海外での大会までの過ごし方や走り方、コースの攻略など、海外でうまく環境に順応できるよう試行錯誤しながら経験を積んでいきたいです。 今後の大きな目標はパリ五輪でのXCOとロードレースの2種目でのオリンピック出場、さらには結果も求めていきたいと思っています。そのために常に向上心を持ち、夢を現実に変えていきます!」

主な戦績
2019年 アジア選手権3位(U23)
2018年 アジア選手権1位(ジュニア)、世界ランキング3位(ジュニア)
2017年 アジア選手権1位(ジュニア)、全日本選手権1位(ジュニア)