女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル2025結果

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サイクルロードレースの女子リーグ「クイーン・リーグ(Qリーグ)」、中学生リーグ「ニュー・エイジ・リーグ(Nリーグ)」第6期 2025-2026シーズン第2戦となる「そうまタイムトライアル2025」が6月7日(土)、梅雨前の晴天のなか福島県相馬市の大洲松川ラインにおいて開催された。

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

松川浦大橋を背景に次々と個人タイムトライアルのスタートを切るリーグ選手達(Photo:井上和隆)

 

今大会はLink TOHOKU主催で個人は距離別、チームはクラス分けされたロードタイムトライアルレースのみが行われる珍しい大会。2011年の東日本大震災で大きな被害を被った松川浦漁港が新しく生まれ変わり、今は多くの漁船が係留され人気の釣り場でもあり、近くの「浜の駅・松川浦(相馬復興市民市場)」では、地元で水揚げされた「常磐(じょうばん)もの」と呼ばれる新鮮な魚を中心とした美味しい海産物も手に入る。そんな新漁港から長く伸びる大洲松川ラインを利用した片道・約5kmのコースを往復しタイムを競った。

レースクラスは 10km・21.2km・43.6kmの距離別となる個人タイムトライアルとチームタイムトライアルに分かれており、リーグ対象レース初の個人タイムトライアルに組み入れたのは距離21.2kmの個人タイムトライアル。これは近日、6月29日に開催される「第28回全日本選手権個人タイムトライアル・ロードレース大会」での男子U23が36.5kmとなっているので、妥当な距離設定だ。

前回シリーズ戦のレポート末尾に、この「そうまタイムトライアル2025(以下:そうまTT)」の参戦対策として、タイムトライアルバイクやTTバーなど専用機材の用意を一番に考えるかもしれないが、先ずは独走で淡々とペースを崩さずに走ることが大事なポイントと書いた。

大会当日の天候は曇りのち晴れで路面はドライ。平坦で起伏がほぼ無い大洲松川ラインはきれいな路面で広さもあるが、コース横は松川浦が広がり海風の影響を直接に受ける。この日は北東風で風速は2mから3m。往路が追い風、Uターンした後の復路が向かい風。長い平坦を高速走行することとコースが若干、折れ曲がり完全な直線路でないため、選手らは常に正面から風を受ける感覚もあってペースの配分に苦慮したようだ。

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

最終組スタートのチームタイムトライアルは最大8人で出走でき、チーム2人目のタイムで競う(Photo:井上和隆)

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

コース横の松川浦は広い砂浜もあり釣りや海水浴で楽しめるので、レース後には遊ぶ選手達の姿も。(Photo:井上和隆)

 

このような時は、しっかりと普段より低い姿勢にして頭の位置も下げることが大事。さらに向かい風を強く感じる時はあまり踏み込みすぎないようにペースをコントロールし、Uターンでは速度を落としながら落ち着いて転回。そして追い風を感じたら若干、風を背中で受けるように少し立ててペダルの回転数を上げながらスピードを乗せていく。ゴール手前の1kmぐらいからはロングアタックで最後のタイムを詰める追い込みをかける。序盤で出し切らないように、かつ最後の追い込みに備えられるペース配分を考えながら、己と向き合って闘うことがタイムトライアルでは必須となる。また横風はもちろんだが、何よりも正面からの空気抵抗に対する準備が一番対策しやすいので、ヘルメットの被り方やウエアをダブダブに着ないことだけでも十分にタイムアップに繋がる。

 

QNリーグ初の個人タイムトライアル開催

では、当日のレース写真を交えながら解説をしていこう。当日のレーススケジュールは午前中で全て終了する内容。9時40分から個人タイムトライアルの10km、そして43.6kmと続き、21.2km個人タイムトライアルは11時40分から第1走者がスタートとなった。

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

先ずは第1走者となったQリーグ現ポイントリーダーの岡本彩那(SPECIALIZED UTSUNOMIYA)。

TTバイクでなくノーマルのロードレーサーではあるが、普段から空気抵抗を考慮して少しハンドルブラケットを内側に入れ込んでいるのは、最近のトレンドでもある。最初の写真では手をハンドルの内側に入れているが、これは姿勢を楽にしながらも空気抵抗を防いでいた模様。グローブをR×LのFITグローブにするなど小物も工夫し、さらにハンドルの下を持つことで安定した低いポジションをキープしながら、強いペダリングを実現し33分49秒341という女子では2番時計を出すことができた。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

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続けてスタートとなったNリーグ対象となる中学生のブロック。6番目スタートとなった茂木陽向(#1-PRIMERA-)は現在JBCFのYクラスタのランキングトップでもあり、おんたけヒルクライムで優勝しペースキープも得意。ヒルクライムに強い選手は個人タイムトライアルも好成績を上げているという裏付けは、今回の走りにも如実に出ていた。

さらにQリーグ岡本と同じくノーマルロードレーサーで出走しているが、キチンと低いポジションをキープし頭を下げているのもタイムアップに繋がっている。結果、中学生ではトップの30分32秒250で、21.2kmクラス総合でも6位という素晴らしいタイムを叩き出した。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

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続くのは渡邉公太(ブラウ・ブリッツエン U15)。この時点でNリーグ中学生男子Nポイントリーダーとしてバトルマリンジャージを着用してのスタート。「タイムトライアルは苦手」と聞いてはいたが、ハンドルは下を持っているものの低いポジションを維持するのが辛かった様子。体は大きくなっているので、そのパワーを活かして踏み込みを直進力に繋げるような走りに期待したい。タイムは32分47秒162で中学生では4位に。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

髙橋琉登(Komami.Racing)は前シリーズ戦「しもふさクリテリウム 5月」で中学生2位となり、目の前で優勝したブラウ・ブリッツェン渡邉にバトルマリンジャージを奪われるという形となった。

今回は前回のロードクリテリウムレースと違い、個人タイムトライアルで自分との闘いとなったことについてレース後に聞くと「最初は初めてのTTだったので非常に緊張もして自信がなかったのですが、終わってみたら凄く良いタイムが出ていたので良かったです」とコメント。自分の予想よりも良いタイムで本番に強いところも見せた。

実際に井上和隆カメラマンの写真を見返すと、ノーマルロードレーサーではあるものの、エアロタイプのフレームに前後ディープホイールと機材を工夫。ヘルメットもTT仕様でエアロワンピース着用と準備を整えたうえで、走行中は低いポジションをキープ。31分14秒784というタイムで中学生2位という好結果にも繋がった。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

中学生男子のスタートに続いて、Nリーグ中学生女子NWの選手達がスタート。

現在、NWポイントリーダーの岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエン U15)は、ノーマルロードレーサーにTTハンドルを取り付けた装備で参戦。TTハンドルを付けることでさらに低いポジションをキープしやすくなり空気抵抗を減らせる。頭を入れ込む姿勢もできており、ヘルメットも深めにかぶるなど工夫も良い。タイムはQリーグ岡本に続く34分53秒335でうまくまとめた走りができたようだ。

ただ 1つ、苦言を呈するなら岡本も同じなのだが、タイムトライアルでは長い髪をなびかせずに、まとめてヘルメットの下に収めると良い。国内外で女子選手は髪を長く伸ばしている傾向が多いが、髪の毛の処理を工夫すると暑さもそうだが空気抵抗を減らすこともできる。速度系のレースでは髪を編み込むなど試してほしい。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

途中で緩やかに「く」の字に曲がる大洲松川ラインを利用した片道・約5kmのTTコース。冷静に空気の流れを読んで、今後も工夫をしながらタイムアップを狙ってほしい(Photo:井上和隆)

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル
女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

写真左は東北・宮城県から参戦の板垣春希(BELLEEQUIPE)で中学1年生、写真右はブラウ・ブリッツェン U15の⻑⾕川誠。お互いに成長途中の小さい体ながらも、しっかりとハンドル下を握って低いポジションをキープしている。この頃から低い姿勢を維持し効率良いペタリングで走り抜けるトレーニングをしておくことはロードレースでも活かせる重要なポイントだ。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル
女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

同じ20km個人タイムトライアルに参戦していた、フルTT機材の参戦選手から2人をピックアップ。ベテラン女子選手である前島律子(写真右)は TT専用機材一式を持ち込み、今月には還暦となる年齢を思わせない素晴らしい走りを見せた。

渡邉正光(写真左)は現役の競輪選手。先日、青森競輪場で開催された全日本プロ選手権自転車競技大会の4000mチームパーシュートで優勝した北日本チーム(窪木一茂、佐々木雄一、須永優太、渡邉正光)の一員で走ったこともあり、正に堂に入ったTTポジションと最高の機材で出走。目指す形の 1つとして今後の参考にしてほしい。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

昼までには全てのレースが終わり、午後1時から各クラス別の表彰式とリーグのポイントリーダー授与式が行われた。

アスリチューン賞Qリーグのポイントリーダー防衛に成功した岡本は「タイムトライアル自体が得意ではないのですが、なかなか TTを走ることがないので貴重な機会を与えていただきありがとうございました」と、そうま TTの開催に感謝。この後の次戦抱負として「そでがうら(サマーサイクルロードフェスタ)はレディースで優勝します!」と強く宣言をしてくれた。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

アールエル賞 Nリーグ中学生男子Nのポイントリーダーに輝いた髙橋は、大会主催の LinkTOHOKU代表・鵜沼誠氏から手渡され初めて袖を通したバトルマリンジャージに「着心地は最高です!」とご満悦の表情。今後は7月後半に再び福島県でのレースと続くシリーズ戦について「このジャージをずっと維持できるように頑張りたいと思います」と地元・福島県で獲得したジャージに、一層強い想いをコメントしてくれた。

現在、中学3年生で Nリーグ最後の年の今シーズンを大切にしたいということもあり、次戦の「そでがうらサマーサイクルロードフェスタ」に向けての抱負として「この前のしもふさ(クリテリウム)ではスプリントで負けたので、そのためにスプリントを鍛えてきました。今度こそスプリントで勝ちたいと思います」と作戦も教えてくれた。

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

ちょうど良い機会だったのでレース後、このリーグをどこで知ったのか教えてもらったところ「インスタグラムでNリーグのバトルマリンジャージを着ている選手を見て、凄いな!カッコイイな!と思って、いろいろ調べて登録しました」とのこと。そのカッコイイと憧れたバトルマリンジャージを手に入れて緊張の面持ちではあったが、この後も活躍してジャージを守ってほしい。

最後に中学3年生ということで、同じリーグでも年下で活躍している選手に向けて「年長としても頑張って負けないようにしたい」とも語ってくれた。現在、同ポイントでランキング2位となっている渡邉とともに、年長選手として力強い走りも見せてほしい。

 

 

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

EXLUB賞 Nリーグ中学生女子 NWポイントリーダーは岡田が防衛に成功。「自分の目標にしていたタイムより上回ったので良かったです」と笑顔でコメントしくれた。

コースについては「風が強くて(計測開始前にある)トンネルを抜けてからキツかったです」とのことだが、しっかりと低いポジションを取っていたことで良いタイムを出せたようだ。この後の抱負として「もっと持久力をつけて頑張りたいと思います!」とコメント。今大会から新たなライバルも増え、今後の中学生女子 NWのランキングにも注目いただきたい。

 

各リーグ ポイントリーダー

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

<写真左よりQ リーグ岡本、N リーグ髙橋、NW 岡田の各ポイントリーダー>

 

今大会のポイントリーダー授与式では、Bioracerより「アメジストジャージ」「バトルマリンジャージ」各リーダージャージが提供された。また、Qリーグは株式会社隼より「アスリチューン Qリーグポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生男子Nは武田レッグウェアー株式会社より「RxL Nリーグ中学生男子ポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生女子NWはアイリス株式会社より「EXLUB Nリーグ中学生女子 NWポイントリーダー賞」として、それぞれ賞品が提供された。

 

Qリーグポイントリーダー:アメジストジャージ
Nリーグポイントリーダー:バトルマリンジャージ
提供:Bioracer

アスリチューン賞Qリーグ(高校生以上女子)
ポイントリーダー:岡本 彩那(SPECIALIZED UTSUNOMIYA)・40p
ランキング2位:佐藤 直美(Yahoo! JAPAN Cycle Racing team)・8p
ランキング3位:根本 香織(Team 一匹狼)・6p

RxL賞Nリーグ・N(中学生男子)
ポイントリーダー:髙橋 琉登(Komami.Racing)・40p
ランキング2位:渡邉 公太(ブラウ・ブリッツエンU15)・40p
ランキング3位:茂木 陽向(#1-PRIMERA-)・28p

EXLUB賞N リーグ・NW(中学生女子)
ポイントリーダー:岡田 愛裕來(ブラウ・ブリッツエンU15)・43p
ランキング2位:板垣 美希(BELLE EQUIPE)・10p

年間総合ポイントリーダー特別賞:Airfly(株式会社ジゴスペック)

※ランキングにおいて同点者が出た場合、最新のレース着順が優位の選手を上位とする。

※最終戦終了時において、同点者が出た場合は、最終戦直前のランキングで優位の選手を上位とする。

※最終戦については、ポイントテーブルに5 点ずつ加算した点数を付与する(最終戦ボーナス)。

女子Qリーグ、中学生Nリーグ2025-2026シーズン第2戦:そうまタイムトライアル

授与式後に松川浦を背景に各リーグポイントリーダー集合写真をパチリ!左から NリーグN髙橋、Qリーグ岡本、NリーグNW岡田。初めてリーダージャージを着る髙橋の表情がチョット硬い一方で、リーダージャージ防衛に何度も成功している女子2人の笑顔が素敵!(Photo:井上和隆)

 

次戦は来月7月19日(土)開催の「そでがうらサマーサイクルロードフェスタ」。梅雨明けで暑さが本格的になると思われるので、今から少しずつ暑熱順化をしておくのが大事だ。今大会でも暑かったため出走前に氷や掛け水で体を事前に冷やす工夫も見られたので、クーラーボックスの用意なども必要だろう。またレース後に体をクールダウンしたり、水分補給をおこなうことで疲労を早く取り除くこともできる。引き続きリーグ登録の選手達には、SNSなどを通じて情報提供していきたい。

<レポート概要>
写真撮影:井上和隆
テキスト:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
協力:Link TOHOKU

 

*そうまタイムトライアル 2025公式ホームページ
https://link-tohoku.co.jp/news/soma-tt-2025-info/

現時点の 2025-2026シーズン Qリーグ・Nリーグ対象レーススケジュールはこちらから。
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/race-profile.html

次戦の第3戦は7月19日(土)「そでがうらサマーサイクルロードフェスタ」
https://summer-sodegaura.powertag.jp/

Qリーグ・Nリーグの登録はこちらから。各対象レース開催日の 3日前まで登録完了すればポイントランキングに反映。今後も女子とジュニア中学生が活躍するリーグにご声援のほどよろしくお願いします!
https://moshicom.com/122291/

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