2023年の自転車活用推進功績者と自転車通勤優良企業 1個人・5団体と3団体が表彰

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2023年の自転車活用推進功績者と「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトの「優良企業」の合同表彰式が、2023年5月31日(金)に国土交通省で行われた。自転車活用推進功績者には、佐藤信哉さん、神岡・町づくりネットワーク、市民自転車学校プロジェクト、太陽誘電、西日本鉄道、BASE TRES(ベーストレス)の1個人と5団体が、「自転車通勤推進企業宣言」プロジェクトの「優良企業」には、シチズンカスタマーサービス、松本市、ライトウェイプロダクツジャパンが選ばれた。

 

2023年の自転車活用推進功績者

自転車活用推進功績者は、自転車活用推進法15条に基づき、自転車の活用の推進に関し特に顕著な功績があると、自転車活用推進本部長(国土交通大臣)が認めた個人または団体のことだ。

2023年自転車活用推進功績者表彰式

佐藤信哉さん(福岡県)

国際自転車競技連合(UCI)コンチネンタルチームのクラブチーム「VC FUKUOKA」を運営。練習環境の整備や経済的な支援によって、パラアスリートの育成及びパラリンピックメダルの獲得に寄与し、また、障害の有無に関わらず参加者が交流できるイベントの運営などにより、多様性社会の実現に貢献している。

佐藤さんのコメント:
「私自身としては自転車界に貢献したという実感はなく、自転車をスポーツとして向き合い、その現場で様々なアスリートと共に汗をかいただけに過ぎず、まずはそうした選手たちとその場を与えてくださった方々に感謝いたします。地域事業についても、ご推薦頂きました福岡県のみなさまをはじめ、多くの方々のご協力により成し遂げられたものであり、こうしてお世話になりましたみなさまと共にこの喜びを共有できたらと思います」

神岡・町づくりネットワーク(岐阜県)

廃線となった神岡鉄道のレール上に市販のMTB2台を固定し運転するアクティビティーを展開。2022年には6.5万人の誘客を実現し、2023年5月には累計乗車数は50万人に達している。その他、地域商店街の活性化や地域イベントに貢献しており、東日本大震災では復興支援のため「レールマウンテンバイク」の貸出を実施している。

神岡・町づくりネットワークのコメント:
「全国で相次ぐローカル鉄道廃線の中、私たちの活動に高い評価をいただき大変光栄に思います。これからも、全国の同業者と力を合わせながら、地域はもちろんのこと多方面にも貢献できるよう活動を続けていきたいと強く感じております」

市民自転車学校プロジェクト(京都市)

未就学児向けの「キックバイクを用いた子ども自転車教室」をはじめ、各地で多様な自転車教室を開催しながら、国内外から幅広い自転車関係者が参加する「自転車利用環境向上会議」において教育手法について情報発信しているほか、障害者児童向けのワークショップを実施するなど、「インクルーシブ・サイクリング」の普及にも注力している。

市民自転車学校プロジェクトのコメント:
「自転車というツールが持つポテンシャルを活かし、豊かな生活をエンジョイするため、ライフステージや発達に応じた自転車の楽しみ方・教育の開発・啓蒙・実践を通じ、人々が交わり、心の通う社会への一助としてこれからも努めて参ります」

太陽誘電(群馬県)

電子部品メーカーとして事業を営みつつ、「市民モニタリング実証実験」、「シェアサイクル事業“コグベ/あかぎコグベ”」用に自社開発の回生(発電)ユニット搭載の電動アシスト自転車150台を無償提供し、前橋市の自転車を活用した“まちづくり”、シェアサイクル事業の推進に貢献。また、公用自転車として群馬県に回生電動アシスト自転車を寄贈及び無償貸与し、地域職員の公務における自転車活用にも寄与している。

太陽誘電のコメント:
「太陽誘電は群馬県内に多くの拠点を持つ電子部品メーカーで、環境に優しく、健康増進や安心/安全走行に貢献する回生電動アシストシステムなどのソリューションも創出しています。今後も安全・安心で快適・便利な暮らしを支え、社会課題の解決に取り組んでいきます」

西日本鉄道(福岡市)

大手民鉄では初めて、大都市部本線の営業列車でサイクルトレインを実施しており、スマホアプリを活用した予約・自転車台数管理・決裁システムなどの導入などによる、サイクルトレインの実施に係る追加負担の抑制や、シェアサイクル・鉄道・バスのMaaS(マース)連携など、モデル的・先駆的な取組を行う。また、鉄道会社の広告媒体を活用し、着地サイクリングルートの案内を実施している。

 

西日本鉄道の藤浩士営業部長

西日本鉄道の藤浩士営業部長

 

表彰式に出席した西日本鉄道の藤浩士営業部長は、「(サイクルトレインは)コロナ禍で皆さまが出控えているなかで、観光需要を喚起しようということから始まっています。鉄道の本線で、しかも特急電車を利用した形でやっているところ、具体的に言いますと、福岡都市圏から福岡県南部の久留米であるとか、柳川とか大牟田とか非常にサイクルツーリズムには適した地域なので、そういったところの街の観光を盛んにしていくことが当社の強みだと考えています。サイクルトレインを他の路線にも伸ばすということではないのですが、さらによりご利用いただけるような形で、例えば駅の拡大であるとかそういったことは検討していきたいなと思っています」と話した。

西鉄天神大牟田線サイクルトレイン西日本鉄道のページ
区間:全線 ※西鉄福岡(天神)・薬院・大橋・西鉄二日市・西鉄久留米・花畑・大善寺・西鉄柳川・新栄町・大牟田のみ乗降可
期間:通年 ※平日・GW・年末年始を除く
時間:6時30分〜16時/西鉄福岡(天神)発、10時25分〜21時25分/大牟田発 ※特急のみ
予約:必要 ※ラインアプリでの事前予約
持ち込み料金:300円

ベーストレス(静岡県)

西伊豆の炭焼き道・生活道を蘇らせる「西伊豆古道再生プロジェクト」を開始し、古道やその周辺森林の整備により、MTB トレイルツアーを提供しながら、森林整備で発生した木材を、自社で運営のする宿泊施設のリノベーションや熱エネルギーへの利用、地域文化の継承に活用するなど、持続可能でありながら成長を続けられる観光サービスを提供している。また、地元中学生を対象にMTBを活用した体験学習を受け入れるなど、地域活性化に貢献している。

ベーストレスのコメント:
「古道の再生からはじめたMTBツアーや、わたしたちが取り組む自然資源を利用した観光事業をこのような形で評価いただき感謝いたします。これからも環境整備に取り組みながら、世界に通用するような価値のあるツーリズムを展開していこうと考えております」

 

2023年の「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクト「優良企業」

自転車通勤を積極的に推進する企業、団体を認定する「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトでは、2023年4月末時点で「宣言企業」に57社が認定されている。そのうち、特に優れた企業、団体は「優良企業」として認められる。

「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクト優良企業表彰式

シチズンカスタマーサービス(東京都足立区)

社内の自転車安全教育指導員と警察による指導に加え、自転車関連事故の相手方となり得る自動車(東京都トラック協会)側の視点も取り入れた危険箇所マップを活用し、自転車安全利用講習等の安全教育に注力するほか、天候に応じた通勤手当の支給など、柔軟な通勤方法を認めている。

シチズンカスタマーサービスのコメント:
「弊社は、従業員の健康や安全、環境への配慮を重要視して活動して参りました。今回の受賞を励みにし、今後も従業員並びに地域の方々が安心安全に過ごせるよう、継続的な活動をしていきたいと思います」

松本市(長野県)

通勤実態を踏まえた自転車ネットワーク整備路線の選定や駐輪場整備に加え、市が民間事業者とともに実施しているシェアサイクル事業により地域全体の自転車通勤を促進している。

松本市のコメント:
「今後も、市民の皆さまに安全で安心して自転車を利用いただける環境づくりに取組むとともに、市職員が率先して通勤や公務において自転車を利用する姿勢を示し、地域の自転車利用促進に努めて参ります」

ライトウェイプロダクツジャパン(東京都豊島区)

ライトウェイプロダクツジャパンは、フェルト、GT、自社ブランドなど、自転車やパーツの製造、輸入および卸売を行っている。柔軟な通勤手当の実施に加え、自転車通勤を検討している企業に対し、規約づくりや安全講習、ヘルメットの貸出しといったサポートプランを無償で提供し、他企業の自転車通勤をも促進している。

 

ライトウェイプロダクツジャパンの髙島義人社長

ライトウェイプロダクツジャパンの髙島義人社長

 

ライトウェイプロダクツジャパンの髙島義人社長は、「自転車に携わっている会社なので当たり前かもしれないですけれど、自転車に対して良い取り組みをしていると言っていただけるのは本当にありがたいなと思います」と、優良企業として認められた感想を話した。

その取り組みは、自転車通勤を検討している他企業だけでなく、自転車通勤を勤務先に認めさせたい個人のサポートにもなる。
「(通勤で自転車に)乗りたいという人に対して、どうぞどうぞと言うのは他の企業にもやってもらいたいというのも含めて力を入れているところかなと思います。
公共交通機関で会社に通勤せよみたいなところが当たり前のラインじゃないですか。当たり前のラインっていうのは企業にとって居心地がいいというか、今までそうだったからそのままでいいやっていう意味では普通なんですよね。でも、個人ベースだと、今これだけクロスバイク、ロードバイクが街中で見えるようになって、自転車で通勤したい人は過去よりも増えていると。にも関わらず、個人で企業に自転車通勤を認めてもらうというのはなかなか難儀ではないかなというのをかなり前に思いました。
面倒くさいから変えないところも少なからずあると思うんですよ。だからその辺りの考え方や制度は、弊社がしていること、こういう考えでこうできますよということをお話しし、社員の方が1人でお話しするよりは(変わる)可能性があるかもしれない、そういうお手伝いもします」。