自転車の並走推奨?e-BIKEを規制?日本とは異なるスペインの自転車事情

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自転車協会 eバイク

現在、日本の公道上では原則として、自転車の並走は認められていません。レースなど特殊な状況を除いて、自転車の並走は危険運転であるというのが日本における常識ですが、国が変われば常識も変わります。自転車の並走が「安全のために推奨されている」という、スペインの自転車事情を紹介します。

 

サイクリストを守るための先進的な法律が施行

自転車協会が運営するスペシャルサイト「ENJOY SPORTS BICYCLE」では、スポーツ用自転車ライフに役立つ情報を幅広く掲載しています。シリーズコラム『スペインの自転車事情』は、日本とは異なるさまざまな規定や文化を、スペイン在住の對馬由佳理さんが解説します。自転車スポーツ先進国のひとつであるスペインの事例を知ることで、改めて日本の自転車環境を考える機会になるのではないでしょうか。

『スペインの自転車事情』記事一覧

 

コラムの第1回「法律面から見た車と自転車との関係とは」では、自転車に関する特徴的なスペインの法律を紹介。この数年でサイクリストを守るための法律が急速に施行されているスペインですが、その中でも有名なものが2022年3月に施行された「ディスタンシア・ラテラル・1.5m」です。これは道路で自動車が自転車を追い抜くとき、自転車と自動車の横の車間距離を最低でも1.5mは開けなくてはならないというもの。さらに自動車がサイクリストを追い越すときには、法定速度から時速20kmの減速をすることも規定されています。

一方でサイクリストが守るべき規定として、「自転車走行中の携帯電話の使用禁止」などがあり、プロ自転車選手が罰金を支払った事例もあるそうです。サイクリストが道路で列をなさず無秩序に集団で走ることも、交通違反として罰金の対象になるそうです。

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スペインでは集団走行時に2列並走が推奨される

 

コラムの第2回「需要激増のe-BIKE、一方で規制強化の動きも」では、スペインのe-BIKE事情を紹介。2021年にスペインで販売された自転車のうち、e-BIKEの割合は台数ベースで14%と、MTBと子供車に次いで3番目に多い車種となっています。e-BIKEのレースなどイベントも増える一方で、一部の地域ではe-BIKEが山の中を走ることを禁止する条例が制定される可能性が報道されてもいます。e-BIKEの利用は今後も拡大が予想されるなかで、走行環境や取扱いに関して、スペインにおいても試行錯誤が続いているようです。

 

2列走行の方が「安全」?

コラム第3回「スペインは自転車の並走推奨!?その合理的で安全な理由とは」では、グループ走行で基本2列走行が推奨されているという、スペインでの自転車走行の規定を紹介。幹線道路においては特に2列走行が推奨され、列を作らず無秩序に走った場合は、100ユーロの罰金が科せられます。2列走行推奨の理由は「サイクリストの安全のため」。なぜ2列走行が安全なのか、そしてクルマ側にも生まれるというメリットについて解説します。

とはいうものの、スペイン人はどこで2列の集団走行を学ぶのでしょうか。その答えが、子供たちが習い事の一つとして通う自転車学校です。コラム第4回「スポーツ自転車の安全走行テクニックは子供時代のクラブ活動で学ぶ」では、自転車学校において子供たちが、遊びを通じて自転車のコントロールを学ぶ様子を紹介しています。スポーツとしての自転車に触れることは、大人になって自転車に乗らなくなったとしても、また違った効果が期待できるそうです。

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ゲームを通じて自転車を操る技術を学んでいく

 

そしてコラム第5回「身近にあるロードレースとスポーツ自転車への市民の理解度」では、全国各地で数多くの公道レースが行われているスペインにおいて、主催者がいかに地元の理解を得る工夫をしているのかを紹介しています。毎年11月にマドリード北部のラス・ロサス市で開催される自転車イベント、「メモリアル・マリア・イサベル・クラベーロ」の開催風景から、地域に根ざした自転車スポーツイベントの姿が見えてきます。

サイクリスト人口が多く、自転車スポーツが市民に根付いているスペインの自転車事情は、これから自転車の幅広い活用を推進していく日本にとっても、とても参考になるのではないでしょうか。

 

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