【折りたたみ自転車で行く東京を感じるサイクリングコース】番外編・伊豆大島でライド&フィッシュ&キャンプ
目次
誰もが一度は訪れたい観光名所、歴史を動かしてきた旧街道の数々、自然を感じられるたくさんの公園、水面と橋が爽やかに共演する河川沿い、街の日常に出会える商店街、そして東京には洋上の離島もある。そこで、折りたたみ自転車で行くサイクリングに魅力的な東京のコースを提案。今回は、その番外編として伊豆大島へ。走ってよし、釣りもよし、キャンプも最高のロケーションで楽しめる!
非日常感がたまらない
都区部から気軽に訪れることができる伊豆大島。一周50kmほどと手頃な広さなので日帰りも可能だが、あまりにもったいない。ぜひ一泊してのんびり走って欲しい。今回は釣りとキャンプを満喫したが、三原山や裏砂漠を歩くという楽しみもある。
今回使用したバイク Pacific Cycles birdy GV Plus
価格:37万4000円
問・パシフィックサイクルズジャパン
充実した装備でグラベルへ誘う
バーディーのラインナップに加わった新モデルが「GV」(グラベルベンチャー)。第三世代の流麗なモノコックフレームに、油圧ディスクブレーキや幅2インチのタイヤをセットしており、街乗りからグラベルまでシームレスに走ることができるタフなモデルだ。ここで紹介するPlusは可変式ステムを採用しており、乗車ポジションの調整範囲が大きく広がっている。また、新型のチェーンリングに165mm長のクランクを標準で装備し、ペダルの回転数を上げやすい現代的な仕様になっているのも特徴。オプションの前後ラックを活用すれば、キャンプ旅も余裕でこなすことができる。外遊びの頼もしい相棒だ。
折りたたみ自転車の可能性を体感
東京都には、たくさんの島がある。伊豆諸島と小笠原諸島だ。その最北に位置するのが伊豆大島。都心からは約120kmの洋上にある。周囲50kmほどの島だ。
伊豆大島の大きな魅力が、都区部からの近さと多様な移動手段である。東海汽船が大型客船とジェット船を運航している。前者は、手頃な運賃と夜行便がうれしい。夜遅くに東京・竹芝客船ターミナル(港区)を出て、翌早朝に着くので、日中まるまる遊べる。ジェット船は、最短1時間45分という速さが魅力だ。さらに、調布飛行場からの空路もある。所要時間はわずか25分だ。
これらの交通機関を利用する際は、いずれも輪行が求められる(大型客船はコンテナへの搭載も可能だが、傷がつく可能性があるので輪行が推奨されている)。だから、折りたたみ自転車なら気が楽だ。仕事帰りに伊豆大島、なんてことも気負わずに実行できる。
サイクリングは「おひとり様」でも楽しいが、仲間がいればもっと盛り上がる。そこで、旧知の折りたたみ自転車仲間である大川和信さんを伊豆大島にお誘いした。パシフィックサイクルズジャパンの代表にして、生粋の旅人である。
「伊豆大島で釣りしてキャンプしましょうよ」
「◯◯日以外ならオッケー」
メールでのやり取りは、マジでこれだけである。大川さんと伊豆大島でキャンプするのは2回目なので、何が必要だとか説明する必要がない。これが気心の知れた大人同士の遊びだと思う。
今回は23時発の大型客船を利用した。乗船したら、缶ビールで軽く乾杯。ほどなくして出航を告げるドラが響く。船中一泊、島で一泊の小旅行が始まった。
定刻6時に、船は島北端の岡田港に着いた。船を降りたらササッと輪行を解除する。キャンプ用具と釣り道具が詰まったバッグの装着などを含めても、2〜3分で走り出せる準備が整う。これが折りたたみ自転車の実力だ! と声を大にしたいほどのメリットである。
今回はセオリーどおり、時計回りで島を一周する。大島一周道路というズバリその名のとおりの道が通じているので迷うことはない。ただし、道は港の直上にあり、標高差100mほどを上らなければならない。朝イチにけっこうな急坂だ。体が目を覚ます。
伊豆大島の東岸は人家が少なく、緑陰が濃い。そして標高370mまで上る。楽ではないが、初日は島南端のトウシキキャンプ場まで距離25kmほどを走るだけなので、時間に余裕はある。釣りも十分に楽しめる。東岸といえば、泉せん津づの切通しが映える景観として人気だが、その手前の秋ノ浜に足場のよい堤防がある。早速ルアーを投げてみると、大川さんがほとんど一投目でヒット! 見事なアカハタを釣り上げた。
島の南端に現れる波は浮ぶ港は、何度訪れてもホーッとため息が出るほど美しい港だ。とりあえずキャンプ場でテントなどの設営を済ませてから、波浮港で再び投げてみる。しかし、我々の竿はぴくりともしない。残念だったが、同行のカメラマン氏がショゴを釣り上げ、夕食の楽しみを増やしてくれた。
波浮に近いクダッチという集落のスーパーで買い出しを済ませ、夕暮れ時のキャンプ場に戻る。まずは乾杯だ。それからおのおの調理したり、焚き火を育てたり、頭上の星を眺めたり……控えめに言って最高の時間だ。やはり伊豆大島は期待を裏切らない。二人して島をほめちぎり、自転車談義が尽きた頃にはビールも空になってテントに入った。
翌日は、船が出ることになった西岸の元町港(当日まで岡田港とどちらになるかわからない)まで、時間をぜいたくに使いながら走った。大川さんも筆者も満ち足りている。伊豆大島は心身の健康にいい。
復路は速いジェット船に乗りたかったが、大型客船の特2等しか切符が取れなかった。しかし、この船室はかつてのブルートレインの開放寝台のようで心が弾んだ。大川さんとは竹芝で「じゃあ、また」と別れた。次も大島を走る予感がする。それも近いうちに。
これが理想の休日だ!(個人の感想です)

一周道路の旧道区間に、泉津の切通しと呼ばれる小道がある。文字どおり岩を切り通した道は、異世界への入り口のようでもある。あたりは椿がトンネルのように生い茂り、黒潮が育む温帯性の植生が、離島であることを実感させる

波浮港のすぐ近くにあるトウシキキャンプ場。なんと無料で利用でき(要予約)、サイトは清潔でシャワーもある。ここでキャンプして星空を眺めるために、キャンプ道具をそろえる価値があると言っても過言ではない。マジで
今回の伊豆大島を紹介しているサイクルスポーツ特別編集「折りたたみ自転車で行く東京サイクリング」は好評発売中です。ほかにも、サイクリングのテーマ別に合計23コースを掲載しています。



































