【折りたたみ自転車で行く東京を感じるサイクリングコース】田園調布から公園と坂めぐり
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誰もが一度は訪れたい観光名所、歴史を動かしてきた旧街道の数々、自然を感じられるたくさんの公園、水面と橋が爽やかに共演する河川沿い、街の日常に出会える商店街、そして東京には洋上の離島もある。そこで、折りたたみ自転車で行くサイクリングに魅力的な東京のコースを提案。今回は、都内屈指の高級住宅街として有名な田園調布。大田区と世田谷区にまたがるエリアへ走り出そう。

現役の田園調布駅は地下にあり、東急東横線と東急目黒線が乗り入れている。その地上に旧駅舎が保存されている。大正時代の初期、理想の街を追求して開発された田園調布のシンボルだ。扇状に延びる街路の要となる位置にある
「崖線」を行き来するeバイク向けルート
田園調布駅から時計回りに大田区と世田谷区の人気公園を網羅。洗足池まで足を延ばしているが、eバイクでなければシンドイかもしれない。自由が丘あたりでサイクリングを終えても満足できる。なお、等々力渓谷公園は令和7年度まで伐採工事のため通行禁止。
今回使用したバイク BESV PSF2
価格:32万8000円
問・ベスビージャパン
走るたびに進化する折りたたみeバイク
スタイリッシュなミニベロeバイクとして人気のPSシリーズに、「ラーニングスマートモード」を搭載した折りたたみモデル、PSF2が登場した。リアフレームとフロントフォーク、そしてハンドルをたたむという基本構造はそのままに、電装システムを刷新することでいちだんと滑らかなアシスト力を発揮してくれる。注目のラーニングスマートモードは、AIによって乗り手のペダルトルクと回転数、スピード、勾配などを分析し、その蓄積によって走るたびに賢くなるという新時代の制御技術である。乗れば乗るほど、自分好みのアシスト感になってくれるのが魅力だ。なお、コストパフォーマンスに優れた従来モデルのPSF1(価格29万8000円)も継続して販売される。
公園と住宅街を暮らすように走る
東急の田園調布駅には、1923年の開業から街を見守ってきた旧駅舎が復元・保存されている。赤いマンサード屋根で、童話に出てくるような建物だ。この駅舎を見るために田園調布を訪れる価値がある。しばし眺めたら、放射状に延びる駅前通りの一本を進んでいこう。イチョウ並木が見事だ。
崖下の多摩川台公園には古墳がある。多摩川堤に沿って進むと、等々力渓谷公園、玉川野毛町公園が現れ、いずれにも古墳がある。水辺が近い高台というのは、東急グループだけでなく古代人にとっても魅力的だったのだろう。ほどなくして、東急田園都市線をくぐって兵庫島公園に出る。野川が多摩川に注ぐ地点だ。水辺を気持ちよく走ることができる。
しばらく野川に沿って水道みちまでさかのぼったら、岡本公園へ向けて北上しよう。保存されている古民家は一見の価値がある。そして、岡本公園と砧公園の間に、地元では有名な富士見坂、通称「岡本3丁目の坂」が壁のように現れる。迂回もできるが、どこかで坂を上らないと砧公園には入れないので、思い切って岡本3丁目の坂を上ってしまおう。距離100mで標高差20mを駆け上がるので、人力のみではかなりキツい。eバイクなら笑顔だ。
砧公園は戦前に大緑地として計画され、1957年に開園した歴史ある公園だ。一周1.75kmのサイクリングコースは緑陰が濃く、野山を駆けている気分になる。
環八通りに面した正門から砧公園を出る。そのまま直進すれば「サザエさん通り」がある桜新町に直行できるが、用賀の「いらかみち」を経由しよう。瓦をあしらったモニュメントや句碑が現れて面白い緑道だ。桜新町からは、呑川(のみがわ)親水緑地に沿って進むと比較的交通量が少ない。駒沢通りに出れば、駒沢オリンピック公園はすぐ。ここにも長いサイクリングコースがあるので、気の向くままに走ってみよう。
駒沢オリンピック公園からは、住宅街をさまようように南下して、九品仏(くほんぶつ)をめざす。その道中にこれといったスポットがあるわけではないのだが、住宅街にそこはかとなく気品が感じられ、さすが世田谷区だなと思わせる。もっとも、大正時代の初期に現在の東急グループのルーツとなる田園都市株式会社がこのあたりを開発するまでは、「東京のチベット」などと呼ばれるほど不便な農村地帯だったという。
駅名にもなっている九品仏は、浄真寺の門前町として栄えた。往生の仕方に九種あり、それにあわせて九躰(九品)の阿弥陀佛(あみだぶつ)像を江戸時代の初めに造立したのだという。山門から延びる参道を進んでいくと心地よい。
九品仏から洗足池公園をめざす。途中、自由が丘を通るが、駅周辺は再開発中で雑然としている。それを過ぎて奥沢の路地裏に進むと、やはり東急のお膝元らしい閑静な住宅街が現れる。
洗足池公園は、江戸時代の浮世絵にも描かれた景勝地だ。日蓮聖人が足を洗ったという言い伝えが残る池は大田区のオアシスになっている。ひとしきり風情を味わったら、目の前の中原街道で田園調布に戻ろう。アップダウンと交通量が多い幹線道路だが、時折現れる旧道区間に入ると静かだ。沼部駅の手前では、福山雅治が歌った「桜坂」も現れる。どこまでも坂が多いコースだが、それが多摩川に面した地域の特徴だ。
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