これ知ってる? ロード用700×25C超軽量クリンチャータイヤ【マキシス】
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多種多様、群雄割拠のロードタイヤは、今、最も興味深いパーツのひとつ。そんな中にあってMAXXIS(マキシス)が超軽量モデルの「HIGH ROAD SL」(ハイロードSL)を進化させてきた。今回はヒルクライムのシチュエーションを中心に、ラインナップの中で最軽量となる700×25cのクリンチャーモデルを試乗した。
マキシス・ハイロードSL クリンチャー仕様の特徴

マキシス・ハイロード SL クリンチャー仕様 ●価格/1万780円 ●サイズ/700×25C(今回試乗するサイズ)、700×28C ●実測重量/174g(700×25C)

製品パッケージ
今でこそ北米やアジアのブランドが席巻し、古くからの欧州至上主義が崩れたロードバイクシーン。しかしながらロードタイヤでは未だ欧州ブランドの人気が根強い。それだけに「マキシス」の名はマニアックな存在かもしれない。しかし同社は、MTB界において世界のトレンドを牽引する絶対的な人気ブランドとして知られている。
同社のこれまでのロードバイクタイヤを振り返ると、自動車タイヤでは常識であるラジアル構造を採用した「ラディエール」を投入したり、チューブレスタイヤにもかなり早い段階で着手していた。
さて、前置きが長くなってしまったが、現在マキシスのロードタイヤで最高峰となるのが「ハイロード」であり、本作「ハイロードSL」はその軽量版となる。今回試乗するモデルはチューブド(いわゆるクリンチャー)の700×25C。カタログ重量で180gという超軽量さが大きな注目点である。現在のロードクリンチャータイヤの重量を俯瞰すると25Cクラスで200gを切る製品は稀有であり、主流は200~230gなので、ハイロードSLの軽量性はことさら際立っていると言えよう。
この超軽量さに加えて転がり抵抗を低減した専用の「HYPR-S」トレッドコンパウンドをまとうことで走りの軽さを演出。軽量モデルで心配される耐パンク性能も、トレッド下に独自開発の耐パンクベルト「K2」を挿入して武装する。
軽量性に特化しながらロードバイクタイヤに求める要素を的確に盛り込んだ「ハイロードSL」。ヒルクライムにおけるパフォーマンスは果たしていかなるものか。

専用の「HYPR-S」コンパウンドは、ハイロードに採用されグリップ性能に優れる「HYPR」を基に、転がり抵抗を12%低減。パターンはオーソドックスなスリックタイプ

ナイロン製ケーシングは150TPIのレベルで軽さとしなやかさを追求。トレッド下に仕込まれた独自の耐パンクベルトは、一般的なケブラーやベクトランよりも強じんだという
他に28Cとチューブレスレディ仕様もラインナップ

チューブレスレディ仕様

ハイロード SLのラインナップ表
ハイロードSLシリーズは、今回試乗するクリンチャー仕様の他にもチューブレスレディ(TLR)もそろえる。軽さを追求したモデルとあって、幅はそれぞれ25Cと28C。チューブドモデルの軽量性は際立っているとはいえ、TLRにおいても重量面のビハインドはなくトップレベルにある。TLRタイヤユーザーで、軽さを求めるのなら候補に入れたいモデルだ。海外ブランドとしては価格が抑えられているのもうれしいところ。
マキシス・ハイロードSL 700×25C クリンチャー仕様をインプレッション!

インプレッションライダー:自転車ジャーナリスト・吉本 司 フリーの自転車ジャーナリスト。40年におよぶ自転車歴において数々の車種に乗り、多様な楽しみ方を経験。そのキャリアを基に機材、競技、市場動向に至るまで、スポーツバイクシーンに幅広い見解を持つ
プライベートでの使用はもとより、試乗でも最近は28C以上のタイヤ幅に乗ることがほとんどの筆者。手に取った700×25CのハイロードSLは、久しぶりに体験する質量の軽さである。見た目も触感も薄さが伝わるケーシングは、まさしく軽量タイヤというしつらえだ。実測重量は174gで、カタログ値よりも軽い。今回は内幅21mmのカーボンホイールに装着して試乗するが、指定空気圧の下限(6.3BAR)を充てんした際のタイヤ幅の実測値は27.2mm(48時間経過時)だった。
タイヤサイドに刻まれる適正空気圧は6.3~8.4BAR。こちらも久しぶりに目にする数値だ。筆者は軽快感よりもグリップ力と安定性を重視するので、本作は下限となる推奨空気圧にして峠へ足を向けた。
あらゆる局面で走りの軽さが際立つ
走りは「軽い!」のひと言に尽きる。先にも述べたとおり普段は25Cよりも太幅のタイヤを履いているので、感覚に多少のバイアスはかかるかもしれないが、ハイロードSLがビンビンと伝える軽快さは、実に気持ちがいい。リムブレーキ時代の細幅タイヤの走りの軽さを思い出させる。
この軽く鋭い走りは軽量性と細幅だけに起因するものではない。トレッドやケーシングとの相乗効果である。細幅で軽量なだけのタイヤは直線の等速巡航での走りは軽いが、高い負荷やねじれの負荷が入ると鈍くなる。しかし、ハイロードSLはそうしたそぶりを見せない。タイヤの無駄な変形を感じにくく(25Cというのもあるが)、しかもこれは固いわけではなく、荷重でつぶれてもその戻りが的確な速度だからだ。加えて、トレッドコンパウンドも走行抵抗が小さく、これらの集合体として真円度が高いものがとても滑らかに、そして軽やかに転がる感覚に長けている。
それはヒルクライムにおいてもアドバンテージを生み出す。シッティングでは後輪荷重が平地よりも増し、ダンシングでは前輪荷重が強くなり、さらにハンドルの操舵というねじれがタイヤに加わるので、無駄な変形を感じやすい軽量タイヤは、平地以上に走りの鈍さが増長されるのだが、それもない。転がりの軽さはもとよりトラクションも十分に発揮され、バイクに推進力を与えてくれるのでむだ脚を使うことも少なく安定したペースを刻んでいけるのだ。
重量の軽さによって失う性能がない
軽量で25C細幅のクリンチャータイヤというと、乗り心地やコーナリングでのグリップ感を疑いたくなることだろう。それは28C以上のタイヤに慣れているとことさらだ。しかしハイロードSLは、このタイヤ幅としては相当に高次元な性能によって、それらのネガティブな点を感じさせない。走りの軽さに加えて路面との接触感はもちっとした雰囲気があり、さらに先述したようにケーシングは荷重に対して従順に動き、素早く戻ってくるので、実際のタイヤ幅以上の乗り心地の良さがあり、フラットな感覚で走り続けることができる。
この特性は、コーナリングやダウンヒルにおいても効果的で、グリップ感は素直でつかみやすく、下りでも安定感が得やすい。加えてこの安心感に細身のタイヤ幅が上手く作用して、コーナリングで曲がる方向に体を入れると素直に、素早くバイクが傾くのでコーナリングの走りもシャープだ。同サイズのチューブレスモデルと同じとは言わないが、それでもグリップ感、乗り心地と安定感は、かなり迫る次元にあるのではなかろうか。
ロードバイクの走りの醍醐味が楽しめる
試乗前は、いまどき25Cのチューブドタイヤなんてヒルクライムぐらいしか使えないだろうと高をくくっていた。もちろん快適性は28C幅のレベルにはないので、ロングライドやデイライドを安楽に楽しみたいなら別の選択肢となるだろう。しかしながらハイロードSLには、ロードバイクの醍醐味ともいえるシャープにして軽やかな走りが濃縮されている。自分の限界に挑戦するヒルクライムや、路面の良好なサーキットコースでのロードレースやクリテリウムなら、ライダーの走りを押し上げてくれる。またレースライドだけでなく、快適性よりも走りの軽さの快感を満喫したいサイクリストであればデイライドも楽しめるはずだ。今回の試乗は25Cのみだったが、軽量タイヤが持つネガティブな要素が見られない25Cの高次元な走りを体感すると、俄然28Cサイズとチューブレス仕様の性能が気になるのだ。
筆者はこれまで数百本は下らないロードタイヤを試乗してきた。当然そこにはマキシスも何本か含まれているのだが、ハイロードSLの走りを楽しむと、同社のレベルが相当に高次元にあることを再認識させられた。ロードタイヤは欧州ブランドの人気が根強いが、ハイロードSLはそうした先入観にとらわれず選んでほしい。絶対に損はさせないパフォーマンスを持つと断言できる。
Brand Info〜MAXXIS(マキシス)について
1967年に台湾で創業した総合タイヤブランド。1985年には