太平洋岸自転車道 じてんしゃ旅 九日目 御前崎(静岡県)〜浜名湖(静岡県)

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サイクルショップ(ストラーダバイシクルズ)とツアーイベント会社(ライダス)の経営者(井上 寿。通称“テンチョー”)と自転車メディア・サイクルスポーツの責任者(八重洲出版・迫田賢一。通称“シシャチョー”)の男2人、“令和のやじきた”が旧街道を自転車で巡る旅企画の番外編となる「太平洋岸自転車道編」。千葉県銚子から神奈川県、静岡県、愛知県、三重県の各太平洋岸沿いを走り和歌山県和歌山市に至る1400kmの長旅が始まった。九日目は御前崎(静岡県)から浜名湖(静岡県)へ。

 

八日目はこちら

 

御前崎からの太平洋岸自転車道

御前崎からの道はまさに太平洋岸自転車道というべきものだった

 

これぞ太平洋岸自転車道

今回のロケも今日が最終日、梅雨は明けきっていないのだがどうやら今日も晴天の様子。さすが晴天率の高い静岡県だ。シシャチョーの情報では、コースの一部が長期間工事に入っているらしく、迂回をしないといけないとのこと。いつもどおりの行き当たりばったりな旅だからひょっとすると時間がかかるかもしれない。次回のロケのスタート地点を考えると、ひとまず浜松までは必ず着いておきたい。余裕があれば浜名湖まで足を伸ばしておきたい。そうすると県境まで辿り着けるのでキリがいい。ホテルの窓から見える空を見ながらぼんやりと考えつつ出発の準備を整えた。

太平洋岸自転車道はここからしばらく農園の中を走っていく。緑の中をうねうねと蛇行しながら走る。緑の先に風力発電機の白い大きなプロペラが見えてくる。それを追っていくと、目の前に風力発電機が幾重にも重なって現れた。遠くの機体はプロペラのほんの上端だけが見えているものもある。風力発電機の大きさと機体ごとの距離を考えると、相当遠くまで連なっているのが分かる。北海道の天塩町周辺や愛媛県の佐多岬に連なる風力発電機の様子を、サイクリングしながら写真に収めたことがあるが、ここの風力発電機の壮大な様子には驚きを隠せない。

農園地帯を過ぎるといよいよ海辺にでた。
「うわー!! 井上はん! 海や!!」
少し前を走っていたシシャチョーが大声で叫んでいる。

太平洋岸自転車道のロケで、海は飽きるほど見ているのに何を叫んでいるのかと近づいてみると……。

シシャチョーの叫びの意味が分かった。この辺りは延々と続く砂丘地帯。その中に今までの海よりはるかに大洋感のある遠州灘が広がり砂浜に白波を立てている。右側には農園地帯の緑が続き、その中に白い道路外側線を引いた自転車道が真っ直ぐと伸びている。そしてさらには白い風力発電機が延々と続いているのだ。
朝の光のコントラストもあって幻想的な風景となって見えた。

「こ、これは……まさに太平洋岸自転車道」。
どちらが声を発したか忘れてしまったが、そんな言葉を発していた……。

 

太平洋岸自転車道の看板

幹線道路から外れていった先に見つけた太平洋岸自転車道の看板

林の中に続く自転車道

林の中に続く自転車道に朝日の中で不思議な雰囲気を感じた

風力発電の風車

林立(りんりつ)する風力発電の風車。スケール感に圧倒される

車が1台もいない道を快調に走るシシャチョー

車が1台もいない道を快調に走るシシャチョー

 

日本ばなれした景観の中を走る

この砂丘地帯は天竜川が上流から運んできた良質な砂が遠州灘に運ばれ堆積したものだという。南遠大(なんえんだい)砂丘と呼ばれている。その成り立ちは人工的なものらしく、集落に飛散する砂を避けるために海辺に人工的に丘を作り上げ砂防丘にしたものだという。それにしても延々と続いている。これを人工的に作り上げるというのは相当に難しいことだったのではないだろうか。

そんな先人の苦労の上を我々サイクリストは道を独占して走ることができる。
感謝しなければ……。
そんな思いを抱きつつ今回のロケのメインディッシュともいうべき道を楽しんだ。途中工事区間がいくつもあり、迂回を余儀なくされたが、この迂回路も農村地帯を縦横無尽に走るもので、いろいろな情景が目まぐるしく変わっていく姿は存外楽しかった。

 

延々と続く自転車道

延々と続く自転車道。これぞ太平洋岸自転車道だ!

通行止

残念ながら工事区間が多かったが、海沿いの道がさらに良くなることを期待したい。 ※浜松御前崎自転車道のこちらの区間(静岡県のページのPDF)において、防潮堤整備の影響により、当分の間、全面通行止めとなっているが迂回路の案内はしっかりしているため、道に迷うことはない

潮騒橋

高所恐怖症のシシャチョーが渡ることを拒絶した潮騒橋

太平洋岸自転車道のシンボルマーク

太平洋岸自転車道のシンボルマークが映える

青い海、白い砂浜、グレーの道のコントラスト

青い海、白い砂浜、そしてグレーの道のコントラストが美しい

中間地点ポスト

通行止区間だが2024年3月までは閲覧可能と聞き、探しに行ったが見つけられなかった磐田市鮫島海岸近くにある中間地点ポスト(写真提供:静岡県西部地域局地域課)

 

やはり旧東海道がいい……

ようやく浜松の街に入った。このまま駅に向かい新幹線に乗るかどうか迷ったが、やはり次回のロケを考えて浜名湖まで足を伸ばすことにした。
都市部はやはり幹線道路を走ることになってしまい車が多くなる。しかも例の如く自転車は邪魔者扱い。せっかくの砂丘も終わってしまった。しばらく我慢が続くのかと思っていたら浜松にも砂丘が。しかし実際は砂丘は走ることができず、幹線道路を使って浜名湖まで行かねばならないようだ。

しかしこの道は危なかった。砂丘側には道路植栽が植えられており、それが勢いよく伸びていて青い矢羽根の上を隠すぐらいにまで成長している。それを避けて走ると右を走るダンプカーから嫌がらせのように大音響でクラクションを鳴らされる。振り返ってみるとダンプカーはまだ100mぐらい後ろにいる。先行する車両の方が優先なのになぜクラクションを鳴らされなくてはいけないのだ!!

ヒヤヒヤしながら走る。車はまた大きな相対速度で抜いていく。焦ってこちらもスピードアップ。時速35kmを超えている。

「井上はん、これはアカンわ! 浜名湖の近くやから舞阪(まいさか)宿辺りでしょ? 旧東海道をいきましょ!」
シシャチョーの意見に同意して太平洋岸自転車道から外れ、旧東海道に出た。
懐かしい舞阪宿の街並み。ご飯を食べた小さな食堂、脇本陣での撮影、港町の情景。あれはもう4年前のことだ。一つひとつシシャチョーと思い出しながら走った。

ほどなく浜名湖に到着。車にあおられたおかげか予定より早く到着したので、例によって風呂に入り、さっぱりした気分で帰路についた。

 

中田島砂丘

浜松で再び砂浜に出る(中田島砂丘)

旧東海道舞阪宿の脇本陣前

懐かしい。旧東海道舞阪宿の脇本陣前を通り過ぎる

浜名湖の弁天島

浜名湖の弁天島に辿り着いた

 

今回の走行距離:御前崎〜浜名湖(70km)

 

十日目に続く