「サイクルボール」のアワイチコースを平野由香里さんと試走

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日本各地の名だたる「一周」を走るサイクリング・クエスト、「サイクルボール」が8月1日からスタートする。7月の発表会では全国7つのコースが明らかになり、サイクリストに新たな目標を示した。今回はそのうちの1つ「アワイチ(淡路島一周)」約150kmを、同コースのアンバサダーを務めるサイクリングインストラクター、平野由香里さんとともに巡ってみた。

サイクルボール・アワイチ

車でも船でも、アクセス良好

サイクルボールは全国7つの一周コースを完走すると走破の証「サイクルボール」がもらえ、2021年3月28日までの期間内に7つのサイクルボールを全て集めると、輪界の女神がサイクリストの願いを1つだけかなえてくれる(豪華プレゼントがもらえる)という、期間分散型のサイクリングイベントだ。どこかで聞いたことがある設定だが、ドキドキワクワクの大冒険が待ち受けていることは間違いない。

アワイチの他にもビワイチ(琵琶湖一周)や、かすいち(霞ヶ浦一周)といった、メジャーな一周がコースに名を連ねる。どれも頑張れば一日で回りきれる距離なので、週末や休日を利用してチャレンジしやすいはずだ。ちなみにアワイチは7つのコースのうち、2番目に難易度が高いらしい。心してチャレンジしよう!

発着点は決められており、スタート/ゴールとなるのは、岩屋港の岩屋ポートビル。明石港とを結ぶ淡路ジェノバラインの高速船が就航しており、高速道路の淡路SA(ハイウェイオアシス)からも近いので、アクセスは便利だ。高速船(片道530円)には自転車をそのまま乗せられるので(別途片道240円)、本州側から自走でも訪れることも可能。各種レンタサイクルもあるので、身軽に手荷物だけで来てアワイチ、なんてこともできる。

サイクルボール・アワイチ

高速船ターミナルの岩屋港が発着点。コースアンバサダーの平野由香里さん(中央)やシクリズムアワジの北井康司さん、荻野真理子さんら、アワイチのエキスパートと走った

さていよいよスタート、とその前に、アプリ「ツール・ド」を起動して、スタートボタンを押すのを忘れないようにしよう。ちゃんとスタート地点付近にいないとスタートボタンは押せないので、出発後に「押し忘れた!」となることは避けよう。

サイクルボール・アワイチ

サイクルボールの各チャレンジにはスマホアプリ「ツール・ド」の使用が必要。やや電池の消費が多くなるので、念のためモバイルバッテリーも携帯しよう

サイクルボール・アワイチ

明石海峡大橋をバックに岩屋港をスタート。試走は梅雨の後半とあって、ばっちり雨交じりだが元気に出発!

東岸沿いはプロローグ

コースは時計回り。スタートの岩屋港がほぼ淡路島の北端なので、前半は島の東岸を南下することになる。足慣らしとばかりに7.2kmを走ると、最初のチェックポイントである「道の駅 東浦ターミナルパーク」に到着する。タコの姿焼きや、淡路島特産のキンセンカを使ったジェラートなどが人気だそうだが、島一周チャレンジのために朝早く出発なので、どこもお店が開いておらず残念。

サイクルボール・アワイチ

東浦のバスターミナル内にはシクリズムアワジの店舗があり、トレックのロードバイクもレンタルできる。レンタサイクルは岩屋港へのデリバリー・乗り捨てが可能

第2チェックポイントまでは19.7kmとやや走るが、平坦と緩いアップダウンのみなので快調だ。ビーチサイドに南国リゾートの風景が広がると、そこは次のチェックポイントの「AWAJIモニュメント」。巨大なAWAJIの文字は登ったりぶら下がったりも可能。アイデアを凝らして写真撮影しよう。

サイクルボール・アワイチ

ビーチサイドリゾート「グランアイガ」にあるAWAJIモニュメントはフォトジェニックなスポット。バックが青空でないのだけが残念!

次のチェックポイントへは6.5kmの距離。東岸は大阪や和歌山に面していて昔から開発が進んでおり、比較的にぎやかな風景が続く。やがて島中央部の洲本市へ。洲本の市街地をかすめると、淡路を代表する海水浴場「大浜海岸」のチェックポイントに到着する。もうすっかり体が暖まったところで、いよいよ中盤、コースの難所へと差し掛かっていく。次のチェックポイントへは25.7kmの距離。洲本温泉の旅館街を抜けてしまうと、その後40km少々コンビニがなく、商店もほとんど無いので、しっかり補給をしてから臨もう。

サイクルボール・アワイチ

洲本の市街地に隣接する大浜海岸。人影がほぼないのは……雨だから

難所の島南部はマイペースで

洲本を過ぎてしばらくは海沿いに南下。淡路橋立とも呼ばれる無人島・成ヶ島を左手に望みながら由良の町を過ぎると、いよいよ山岳区間が始まる。実は最初に控えるこの立川の峠が一番長い。始めに2kmくらい上って、少し下ってからまた2km弱上りが続く。まだほぼ海沿いを進んでいるはずなのに、木々に囲まれて景色はすっかり山。距離はようやく50kmで全体の3分の1。淡路島の深淵へ足を踏み入れる。

サイクルボール・アワイチ

緑の中を本格ヒルクライム。イージーだった序盤とはうって変わって、風景も難易度も一気に様変わりする。気持ちと体をしっかり切り替えて臨もう

サイクルボール・アワイチ

峠越えの途中にある、有名なナゾのスポット入口で、撮影がてら小休止。奥には秘宝館などがあるらしい。秘宝館が分からない人はお父さんに聞いてみよう。写真左は筆者

峠を下ると、海が開ける。ここから10km以上は、切り立った山と、海に挟まれた狭い一本道をひたすら西へと進む。天気が良ければ最高だが、あいにく曇り空に高い波が打ち付けていてイマイチ。路面もあまり良好とは言えない。坂がなくひたすら平坦なのが助かるが、平野さんらアワイチエキスパートの皆さんによると、ここではあまり飛ばさずマイペースを貫くのがコツだそう。省エネで走ろう。

モンキーセンターの猿たちを横目にしばらく行くと、ようやくチェックポイントの「灘黒岩水仙郷」に到着した。水仙の日本三大群生地に数えられる名所だそう。サイクルボールは期間が長いので、水仙が見頃の冬に来るべきかと一瞬思ったが、冬は海沿いの道がキツそうだ。チェックポイントには原則として公衆トイレがあるので、手早くトイレ休憩を。売店はないが自販機はあるので、ドリンク切れの場合は補給していこう。

サイクルボール・アワイチ

灘黒岩水仙郷。ドラマ化もされた船山馨の小説『お登勢』のヒロイン・お登勢が灘黒岩の出身という設定で、水仙をバックに(シーズンであれば)記念撮影できる

海沿いをさらにひた走り、土生港を過ぎると次の上り、灘の急坂が待ち受ける。さほど長くはないものの、急激に立ち上がっているので脚に来る。軽いギヤを使ってゆっくりこなそう。下ると久しぶりに町らしい景色が開ける。何度か曲がって町を抜けると今度は福良への上り。こちらも島らしく平地から急に切り立った感じの坂で、1kmほどだが10%くらいの勾配が延々続く。長くはないのでやはりマイペースが肝心。このあたりで150kmのアワイチはちょうど中間地点だ。丘を越えると福良の港町に着く。道の駅やコンビニがあるので、補給をしつつ後半戦に備えよう。

穏やかな海沿いの後半戦

福良を過ぎてしばしアップダウンをこなすと、目の前に鳴門海峡と大鳴門橋が見えてくる。奥まで行くと、折り返し地点にあたるチェックポイント「道の駅うずしお」に着く。鳴門海峡を見たり、ご当地グルメの淡路島バーガーを楽しんだりしながら、しばし休息。現在は自転車で直接渡ることができない鳴門海峡だが、大鳴門橋の道路下にある未使用の鉄道用スペースを使って、自転車道を設置する計画が進んでいるそう。実現したら、ぜひとも四国まで縦断してみたい!

サイクルボール・アワイチ

鳴門海峡に到着。橋の向こうは徳島県! 自転車でこの先まで走って行ける日が近々やってくるかも?

さてアワイチ後半戦。最初は少しアップダウンをこなすが、実は本格的な登坂はここがラスト。この先は緩いアップダウンや、若干急でも短い上りばかり。まさに「峠は越えた」と言っていいだろう。

サイクルボール・アワイチ

折り返して西岸はおおよそ平坦基調。気持ちを楽にペースを保ってしっかり走り抜こう

チェックポイント「緑の道しるべ慶野公園」から「緑の道しるべ角川公園」へと、海沿いの淡路サンセットラインを北上していく。島の西側を走るこのルートは、その名のとおり夕暮れ時には美しい景色を眺めることができる……はず。サイクリングはなるべく日没前にゴールしたいところ。

サイクルボール・アワイチ

ヨットのモニュメントがある「緑の道しるべ慶野公園」

サイクルボール・アワイチ

「緑の道しるべ角川公園」。島の各所にサイクルラックやトイレ、ベンチなどを備えたサイクルオアシスが点在している

中間チェックポイントとしては実質ラストとなる「多賀の浜海水浴場」は島随一の海水浴場だそうだが、昨今の情勢もあって駐車場は閉鎖中。やや寂しい風景が広がっていた。サイクルボールがフィナーレを迎える来年3月には、元の景色が戻っていることを願いたい。

サイクルボール・アワイチ

丸山の海の展望広場は、海を挟んで鳴門海峡と大鳴門橋がきれいに見えるスポット。チェックポイントではないが立ち寄りにお薦め

サイクルボール・アワイチ

海の展望広場は海側の景色も美しいが、山側も風車と切り立った丘の上の町並みが不思議な風景を作り出している

大橋が見えたらいよいよゴール

いよいよアワイチも終盤戦。コースの難易度は高くないが、疲労もピークに来ているので、落車や接触などのトラブルを起こさないよう、集中力を切らないように気を付けたい。あと、最後の20km弱はコンビニがないエリアなので、ハンガーノックを起こさぬよう、今一度自分のエネルギー残量と補給食残量を確認しておこう。

海沿いをひた進むと、やがて海の向こうに明石の対岸がハッキリと見えてくる。小さな岬をいくつか過ぎると、ついに明石海峡大橋がその雄大な姿を現した。ゴールはもうすぐだ。橋のたもとにあるチェックポイント「道の駅あわじ」は、ゴール地点の岩屋港からわずか2kmの位置。景色や売店などの“ごほうび”はこちらの方が豊富なので、ゆっくり休んでアワイチの思い出を語り合う。橋の真下での記念写真も忘れずに!

サイクルボール・アワイチ

ついに明石海峡大橋が見えた! ゴールはもうすぐ

サイクルボール・アワイチ

明石海峡の真下で記念撮影。天気は結局あまり良くないままだったが、天気が悪いときは悪いときなりに、ちょっと幻想的な風景を眺めることができる

最後はエピローグのように2kmゆっくり走ると、スタート地点の岩屋ポートビルへと帰り着いた。アプリの完走画面を観光案内所で見せると、サイクルボールのカードをもらうことができる。願いをかなえるまでには、同じような冒険をあと6回こなす必要がある。困難に一人で立ち向かうか、仲間とともに挑むかは自由。幸い、各ボールは1つずつだけ、なんてことはない。サイクリスト皆の願いが、どうかかないますように!

サイクルボール・アワイチ

無事アワイチ150kmをゴール! ロングライドイベントの開催が少ない今だけど、サイクルボールを探しに旅立とう!

問い合わせ先

ツール・ド・ニッポン事務局
https://tour-de-nippon.jp/cycle-ball/