グラベルタイヤの定番「BOKEN」シリーズインプレッション

目次

取材協力 アイ・アール・シー 井上ゴム工業

トレッドパターンの違いが走りにどれほど影響するか? iRCのグラベルタイヤ「ボウケン」シリーズ4タイプを実走比較する。

ボウケンシリーズ

iRCのボウケン4タイプを、実際に走り比べてみた。スムーズな舗装路、石畳風の段差が多い舗装路、小粒で整った砂利の路面、やや荒れた砂利の路面、土質が多い滑りやすい路面、そして芝などで、それぞれの印象を確かめてみた。空気圧は比較しやすいよう3気圧に統一した。なお、筆者の体重は63kgで乗車技術はさほどでもないが、林道やトレイルなどの走行経験だけは豊富である。

もし一本選んで旅に出るならどれか? 単刀直入に答えればダブルクロスTLR一択だ。これまでのツーリングで体験してきた9割以上の道は、ダブルクロスTLRで不満や不安を覚えることはほとんどないと思える。ブロックが大柄で特に両サイドはシクロクロスタイヤのように屹立しているが、センター部の配置が密で間隔が狭いため、舗装路の転がりが想像以上に軽やかだ。未舗装路でのグリップ感も十分にあり、砂が浮いた路面でもトラクションが抜けにくい。コーナリング中は自然とサイドのブロックが接地する印象があり、不意にタイヤがスライドする感覚は皆無だった。33C、38C、42Cがあるが、38Cで悪路の走破性は十分すぎるほどだ。下りで楽をしたければ42Cが心強い。

予定ルートのほとんどが舗装路なら、ボウケンプラスTLRを選ぶだろう。センタースリックの見た目どおりスムーズな転がりだ。幅のバリエーションが多いので、42Cを選べばドライ路面なら少々荒れた林道なども不安はないだろう。ノーマルボウケンのほうが砂利路面でのグリップ力は期待できるが、ダブルクロスとプラスに挟まれて、印象は薄めだった。汎用的なダイヤモンドトレッドはあらゆるシーンで安心感があるので、通勤などふだん使いの街乗りとの相性もよさそうだ。

スロップチョップは、設計の狙いどおり濡れた土路面、つまり泥に特化した印象だ。とにかく滑らず、前へ自転車を押し出してくれる。ツーリングで選ぶ道は、林道であっても泥が続くことはまれなので(降雨時の林道ツーリングはNG)、真価を発揮できるのはシクロクロス系のイベントに限られるだろうか。ただし、見た目に反して舗装路の転がりもさほど悪いとは感じなかった。

いずれのタイヤでも実感したのが、組み付けのしやすさだった。タイヤレバーなしで取り付けることができ、ビードもほとんど一発で上がった。このあたりはチューブレスのパイオニアであるiRCらしい信頼感であり、チューブレスレディも安心だ。なお、フックレスリム対応と記されていないが、規定空気圧の範囲であれば、フックレスリムでもなんら問題なく使うことができる。

ボウケンシリーズ比較グラフ

異なる路面において各モデルの印象を可視化。迷ったらダブルクロス、でいいかもしれない

荒れたグラベルも思いのまま BOKEN DOUBLECROSS TUBELESS READY

ボウケンダブルクロス チューブレスレディ

ボウケンダブルクロスチューブレスレディに乗る

舗装路での軽い転がりを実感させる高密度なセンタートレッドと、間隔が空いたサイドトレッドを併せ持つ。スムーズな舗装路ではトレッドと路面の摩擦感がわずかに伝わるが、足に重さを感じさせるほどではない。悪路ではサイドのトレッドが自然と路面に触れるようで、グリップ感が一気に高まる。実際にオンオフ入り混じるツーリングで丸一日使ったが、欠点は見当たらない。

ボウケンダブルクロス チューブレスレディ

ラインナップ
700×33C 重量410g
700×38C 重量495g
700×42C 重量530g
参考価格:6820円

シーンを選ばない万能タイヤ BOKEN TUBELESS READY

ボウケン(ノーマル) チューブレスレディ

ボウケンチューブレスレディに乗る

グラベルバイクに似合うダイヤモンドトレッドをまとったボウケン。シリーズの原点にふさわしく、オンオフともに優等生といった印象。パターンの高さが控えめなので、舗装路で存在を過度に感じさせることはなく、オンロードタイヤと同じ感覚だ。それでいて砂利道ではトレッドが路面をつかんでくれ、加速時に空転したり、急制動でタイヤが滑ったりする心配は少ない。万能。

ボウケンチューブレスレディ

ラインナップ
700×36C 重量470g
700×40C 重量505g
参考価格:6820円

ふだん使いと未知の道を結ぶ BOKEN PLUS TUBELESS READY

ボウケンプラス チューブレスレディ

ボウケンプラスチューブレスレディに乗る

センターはスリック、その両サイドは杉目、サイドは矩形(くけい)のノブが並ぶ。ボウケンの中ではオンロード指向が強く、その快適性によってロングライドを苦もなく体験させてくれるようなタイヤだ。ロードバイクに混じってのグループライドも余裕だろう。砂が浮いた路面ではやや滑りやすいが、38Cや42Cならエアボリュームが十分にあるので、怖い思いをするほどではない。

ボウケンプラスチューブレスレディ

ラインナップ
650×42B 重量535g
650×47B 重量595g
700×32C 重量435g
700×38C 重量545g
700×42C 重量590g
参考価格:6820円

マッド路面で真価を発揮 BOKEN SLOPCHOP TUBELESS READY

ボウケンスロップチョップ チューブレスレディ

ボウケンスロップチョップチューブレスレディに乗る

一点突破型で幅は36mmのみ。高さがあるブロックのおかげで、他のボウケンではずるっと滑りそうな泥や水たまりシーンで真価を発揮する。降雨後のMTBパークを走ったり、雨でも開催されるイベントなどでは心強いだろう。細身なのでMTBタイヤよりは舗装路のこぎも格段に軽いので、オフロードまでのアプローチもさほど苦ではない。

ボウケンスロップチョップチューブレスレディ

ラインナップ
700×36C 重量520g
参考価格:6820円

 

路面状況における推奨タイヤ表

路面状況における推奨タイヤ 資料提供:iRC 井上ゴム工業

Brand Info〜iRCについて

iRC TIRE(井上ゴム工業株式会社)は、名古屋に本社を置く二輪専門のグローバルタイヤメーカー。
世界最大級のグラベルイベント「UNBOUND GRAVEL」にスポンサーを行い、グラベルタイヤ「BOKEN」はそういった本場のグラベル環境、トップライダーと共に開発が行われている。