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どうやってチームに? 大宅陽子が聞く、みんなで走るストーリー 第4回 『0530711』編

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サイクルスポーツ本誌はもちろん、NHK BS1の番組「チャリダー★」にも「坂バカ女子部」として登場した大宅陽子さんの連載記事。仲間と走る楽しさを伝えるべく、各地のチームライドにおじゃま。チームの活動内容や、チーム結成のいきさつ、メンバーの素顔にせまる。

記事の最後には、チームへの連絡方法も乗っているので、「1人で走っていて仲間がほしいな」という人は近くのチームに連絡してみて!
1人で走るのも楽しいサイクリングだけれど、仲間がいれば人数分だけ魅力は倍増する。その門戸は開かれているのだ!

 

第4回 『0530711』編

トレインを組んで周回コースへ
トレインを組んで周回コースへ
上りは各自のペースで走り、後続の仲間を待つ
上りは各自のペースで走り、後続の仲間を待つ
本格コーヒーが楽しめる
本格コーヒーが楽しめる
朝5時30分。まだ薄暗い宇都宮市田野町のセブンイレブンに集まるサイクリスト達がいるという……。

集まったメンバーのウエアはまちまち。他チームのウエアを着用しているサイクリストもいる。定刻までに集まった者同士で挨拶を済ませ、ライドスタート。小来川(おころがわ)方面へ向かう。トレインは徐々にペースを上げながら淡々と進んでいく。文挾(ふばさみ)を越え、一旦水汲み場で休憩。ここまで約30分。「お疲れ様ー!」と早々に折り返して帰宅していく仲間もちらほらいる。


ホームコースである小来川周回には信号がほとんどない。田畑や集落、林の間を縫うように走る緩やかなアップダウンのあるコースだ。長い上りや休憩ポイントの手前では、集団はばらけ、各自のペースでの走行となる。参加しているメンバー全員がただ懸命に走る。休憩ポイントにたどり着いたメンバーは息を切らせながらも清々しい笑顔を見せていた。

小来川周回を終え、ゴール地点手前で近隣チームの「FM730」とすれ違う。530に参加していたメンバーのうち数人は仲間に挨拶をすると折り返してFM730に合流し、再度小来川方面へ走っていった。

7時40分頃に集合場所のセブンイレブンに戻り、解散となった。ライド後は帰宅する人、「もうひと走り」とジャパンカップのコースへ向かう人、他のチームの練習に向かう人とそれぞれだ。 今回はライド後、ジャパンカップの際にチームスカイの選手も立ち寄ったという『Elska+heart coffee』へ。仲間たちとラテやスコーンを楽しんだ。

 
小雨の中、多くのメンバーが集まってくれた Photo:Yoko Oya
小雨の中、多くのメンバーが集まってくれた Photo:Yoko Oya
創始者の齋藤さん
創始者の齋藤さん
若井さん(左)と薄井さん(右)
若井さん(左)と薄井さん(右)
「0530711」結成のきっかけは2007年。齋藤さんが古賀志林道を走っている時、サイクリストの渡辺さんとの出会いにはじまる。約束をせずとも走りに行けばすれ違う存在が励みとなった。

徐々に同じ時間帯に走るサイクリスト達がインターネット上の掲示板でのやり取りを始め、小さなコミュニティが生まれた。2010年に「0530711(ゼロゴサンゼロナナイチイチ)」通称530(ゴーサンマル)と命名。「5時30分に田野町のセブンイレブン前に集合」という意味だ。

名前の付け方は個性的だが、集合時間と集合場所を表しただけのある意味淡泊な名称でもある。その裏にはこの集まりに固定化されたイメージを付けたくない、という思いがあったという。

実は530はチームではない。チームジャージには「racing unit」と記載されている。チームという言葉には共通の目的や目標を持つ、といったある種の拘束力を表す意味があるが、ユニットは複数人で構成される集団、程度の緩やかなニュアンスだ。実際に参加していても、530からはチームとしての色合いは全く感じられない。現在530ジャージを持っているメンバーは50人ほどいるが、オリジナルのジャージを作ることにも抵抗があったという。

「方向性を決めて排他的な集団にするのは嫌だった。誰でも出稽古のように参加できる集まりにしたかった」

「530はコミュニティ。他のチームに所属していても全く問題ない、ごった煮みたいな集まり。サイクリスト達が集まって走るための接着剤的存在にしたかった」

と薄井さんは語る。

 
ラテとお店おすすめのスコーン
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宇都宮は「ライドオン!ポーズ」が流行り
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芦沢さん親子
芦沢さん親子
参加者は30代の子育て世代を中心に、中学生から60代までそろう。走力も実業団登録選手レベルからホビーライダーまで様々だ。走行スピードは速いが、途中数カ所の休憩ポイントで仲間を待ちながら走るため、完全に置いていかれることはない。

「本当に速く走りたい人からすると効率は悪いかもしれない。でも、仲間と走りたい人に向いている」

チームの中心人物を聞くと「時代ごとに変わるからなぁ」との返事。530の活動が続いていく中で、その時熱心に練習しているメンバーが仲間に声をかけ、走りたい人が集まる。その時のメンバーのカラーに染まり、柔軟に活動が続いているのも530の特徴だ。

3月と11月には「古賀志8耐」というチームイベントを行っている。ジャパンカップのコースでもある古賀志周回を8時間サイクリングし続けるというハードなイベントだ。ひたすら走るもよし、途中休憩しながら仲間を応援するもよし、という自由さもまた530らしい。 創始者である薄井さんの門限は朝7時。

「子どもの朝食づくりがあるから」

と笑顔を見せ早々に帰宅した。

「来た人が530。1回来たらその人が530」と門戸は大きく開かれている。 菅谷さんは年に数回530に参加している。

「特に古賀志8耐を楽しみにしている。当日そこに集まった仲間を大事にする雰囲気や、集まった人が意気投合して盛り上がれる緩やかな環境がいい」

とにこやかに語る。今回も仕事の都合で途中離脱をしたが、それもまた当然のこととして受け入れられる雰囲気に530の懐の深さを感じた。若井さんは一昨年530のメンバーに誘われ参加するようになった。

「途中離脱や参加もOKの自由なチーム。宇都宮は自転車仲間も多く、どのチームに所属していてもしがらみなく楽しく走れるのがいい」

と語った。

薄井さんは古参メンバーの一人。

「朝530で走ると『自分のしたいことをしたから、帰ってから家事をやらないと』って思える」

と笑顔で話す。

ライフスタイルに合わせながら530を通じて仲間との交流や自転車に乗ることを楽しんでいる様子が印象的だった。 お父さんと参加していた芦沢汐悠君は小学6年生。小来川周回を完走した。「きつかった。いつかみんなについていけるように頑張りたい」と笑顔を見せた。 日中仕事のある人や家族が起きる前に帰りたい人、速くなりたい人、誰でも参加歓迎とのこと。

Facebookページへ加入申請をしてもいいし、土曜か日曜の5時半に宇都宮市田野町のセブンイレブンへ行き、メンバーに声をかけて直接参加してもよいそう。

平日も有志メンバーがfacebookページで書き込みをして仲間を募り練習をしている。



 
チームではなく、ユニット
チームではなく、ユニット
古賀志山からの日の出をイメージしたロゴ
古賀志山からの日の出をイメージしたロゴ
小来川周回コースが示されている
小来川周回コースが示されている
集合場所のセブンイレブンを仰いだ時に見える星の配置をトレースしている
集合場所のセブンイレブンを仰いだ時に見える星の配置をトレースしている
色は3色展開
色は3色展開
「美味しいネクターがある」と誘われ豪脚メンバーに山へ連れていかれた、という伝説があるとかないとか
「美味しいネクターがある」と誘われ豪脚メンバーに山へ連れていかれた、という伝説があるとかないとか

0530711は、走りたい思いをもったサイクリストを広く受け入れてくれるユニットでした。その柔軟さと自由の裏には、創設メンバーの熱い思いが感じられました。宇都宮近辺のサイクリストを受け入れてくれる器のような存在で、出稽古に行きたい、早朝に仲間と走りたい、というサイクリストにおすすめのチームでした。休憩ポイントではこれから参戦するレースや最近の練習量についての情報交換が行われていたのも印象的。


 

【走行距離】50㎞ 獲得標高500m

【立ち寄りどころ】『Elska+heart coffee』

【ペース】交通量の多いところはトレインを組んで進む。上りは各自のペースで走行し、途中の休憩ポイントで仲間を待つスタイル

【フレンドリー度】当日揃ったメンバーで走る。休憩ポイントではこれから参戦するレースや、最近の練習量についての情報交換が行われていた



 

ライドコースはこちら!





大宅陽子(おおやようこ)

この連載のレポーター。ヒルクライムをこよなく愛するサイクリスト。各地のヒルクライム大会で入賞、ジャパンカップオープン女子完走の経歴をもつ。また、ヨガインストラクターとして自転車競技の特性に合わせた「サイクリストヨガ」のレッスンを各地で開催中。


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