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どうやってチームに? 大宅陽子が聞く、みんなで走るストーリー 第7回 『No Peak No Life』編

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サイクルスポーツ本誌はもちろん、NHK BS1の番組「チャリダー★」にも「坂バカ女子部」として登場した大宅陽子さんの連載記事。仲間と走る楽しさを伝えるべく、各地のチームライドにおじゃま。チームの活動内容や、チーム結成のいきさつ、メンバーの素顔にせまる。

記事の最後には、チームへの連絡方法も乗っているので、「1人で走っていて仲間がほしいな」という人は近くのチームに連絡してみて!
1人で走るのも楽しいサイクリングだけれど、仲間がいれば人数分だけ魅力は倍増する。その門戸は開かれているのだ!

 

第7回 『No Peak No Life』編

今回ご一緒させていただいたチームは『No Peak No Life』(NPNL)だ。

取材日は平日の水曜日。朝9時30分、寄居駅に鮮やかな赤いウエアをまとったサイクリスト達が集まった。
仕上がった脚をしているクライマー体形のメンバーもいれば「最近仕事が忙しくて全然乗ってなかったんだよ」、「腹が出ちゃって」と笑顔を見せるメンバーもいる。輪行袋を担いだ女性サイクリストもてきぱきとバイクを組み立て、会話の輪に加わった。

メンバーがそろったところで自己紹介をしてライドスタート。玉淀ダムを眺め、円良田湖の側を通過する。緩いアップダウンを進むうちに景色が里から山へと変わっていく。ボトルに水分を補給し、本日のメインコースである林道陣見山線へ向かった。

 


林道の起点で一時停止し、コースレイアウトの確認をした。メンバーの様子を見ると、ちょっと嬉しそうな表情を見せたり、気合いを入れてシューズのワイヤーを締めたりしている。坂を目の前にして喜ぶ、上ることを心待ちにする。これぞ本当の“坂バカ”だ。

ここから約11km、上り基調の道が続く。走るペースは皆それぞれだが、先頭グループも息を切らすほどもがくこともなく、仲間との会話を楽しんでいる。決して緩慢なペースではないものの、みな余裕のある走りをしながら先へ進んでいく。遅れているメンバーも一人になることはなく、誰かが必ず一緒に走っている。

「仲間と会話と共に山を楽しむ。楽しみながら走っていると獲得標高が積み上がっている」という感じだ。
陣見山を越え、榎峠に到着した。先着したメンバーに先を急く様子は全くなく、林道の木陰でまったりと会話を楽しみながらくつろいでいる。全員が合流したところで間瀬峠へ向かった。ここは見晴らしがよく、ガードレールにずらっと立てかけた愛車と長瀞の景色が絵になるスポットだ。しばし撮影大会となった。

本来であればさらに坂を上る予定だったが、取材した日は真夏日で気温が非常に高く安全のためにルートを短縮することになった。林道を外れ、山を降りて長瀞のコンビニで休憩をした。そこから葉原峠を越え、風布館でランチタイム。波久礼方面へ下り寄居駅へ戻り解散となった。

 
チームライドは寄居駅集合が多い Photo:サイクルスポーツ編集部
チームライドは寄居駅集合が多い Photo:サイクルスポーツ編集部
玉淀ダムから荒川を眺める Photo:サイクルスポーツ編集部
玉淀ダムから荒川を眺める Photo:サイクルスポーツ編集部
アップダウンを経て山へ入っていく Photo:サイクルスポーツ編集部
アップダウンを経て山へ入っていく Photo:サイクルスポーツ編集部
山の緑に赤いジャージが映える Photo:サイクルスポーツ編集部
山の緑に赤いジャージが映える Photo:サイクルスポーツ編集部
「きつー!」と言いつつどこか嬉しそうな様子をみせる Photo:サイクルスポーツ編集部
「きつー!」と言いつつどこか嬉しそうな様子をみせる Photo:サイクルスポーツ編集部
上り切った地点では、まったりしながら仲間の到着を待つ Photo:サイクルスポーツ編集部
上り切った地点では、まったりしながら仲間の到着を待つ Photo:サイクルスポーツ編集部
景色のよいところでは愛車撮影会 Photo:サイクルスポーツ編集部
景色のよいところでは愛車撮影会 Photo:サイクルスポーツ編集部
一人ぼっちになることはなく、仲間と走る Photo:サイクルスポーツ編集部
一人ぼっちになることはなく、仲間と走る Photo:サイクルスポーツ編集部


チームを立ち上げたのは池田さん。友人の引間さんがフェイスブックに山をサイクリングをしている時の画像を投稿しているのを見て、ロードバイクに興味をもった。昨年の9月、池田さんはロードバイクを購入。池田さんも引間さんも仕事の休みは主に水曜日。休みが合ったため、すぐにサイクリングをすることになった。

埼玉県の丸山林道を走っていると向かいからやってきたサイクリストの女性が元気に「こんにちは!」と声をかけてくれた。その晩の引間さんの投稿に「今日ライドしてましたよね!」とコメントがついたという。それが現在の運営メンバーである岡村さんとの出会いだった。

すっかり坂を走ることに夢中になった池田さんは自転車仲間を増やすために「やっぱり坂が好き(仮)」という非公開のフェイスブックグループを立ち上げ、11月にチーム結成記念のファーストライドを行った。この時のメンバーは池田さん、引間さん、岡村さん、共通の友達の宮本さんの4人。ここから今年8月までの期間を経て現在のメンバーは43人。1年足らずの間に多くの仲間が集まった。

「俺ら2人だけだったら、今もずっと2人だったと思う。実際のリーダーは俺たちではなく岡村さんだよ」と池田さんは笑う。彼女の積極的にサイクリストと関わる姿勢や求心力がチームを成長させている。メンバーはサイクリング中に声をかけたり、自転車乗りのフェイスブックグループでの交流から意気投合し加入することがほとんどだという。

「ライドの途中や最後にはご褒美必須」という引間さん。「水曜日は岡村さんが先導してくれることが多い。自分でルートを引くのが苦手なので新しいところに連れて行ってもらえて楽しい」と話した。

 
葉原峠を抜け、風布へ向かう Photo:サイクルスポーツ編集部
葉原峠を抜け、風布へ向かう Photo:サイクルスポーツ編集部
風布から山を下り、波久礼方面へ Photo:サイクルスポーツ編集部
風布から山を下り、波久礼方面へ Photo:サイクルスポーツ編集部
寄居町日本の里 風布館で昼食を囲む Photo:サイクルスポーツ編集部
寄居町日本の里 風布館で昼食を囲む Photo:サイクルスポーツ編集部
炭火焼のみそ豚丼がおすすめ Photo:サイクルスポーツ編集部
炭火焼のみそ豚丼がおすすめ Photo:サイクルスポーツ編集部
風布で採れたみかんを使ったかき氷が人気 Photo:サイクルスポーツ編集部
風布で採れたみかんを使ったかき氷が人気 Photo:サイクルスポーツ編集部
峠の標識を集めるのが趣味だという岡村さん Photo:サイクルスポーツ編集部
峠の標識を集めるのが趣味だという岡村さん Photo:サイクルスポーツ編集部
宮本さんに教えてもらい標識を発見 Photo:サイクルスポーツ編集部
宮本さんに教えてもらい標識を発見 Photo:サイクルスポーツ編集部
初参加の細川さん Photo:サイクルスポーツ編集部
初参加の細川さん Photo:サイクルスポーツ編集部


バイタリティ溢れる岡村さん。実はお子さんを迎えに行くためライドをできる時間が限られている。「水曜日は仕事が休みやすいので、ほぼ毎週走っている。私にとっては景色と獲得標高がご褒美。ストラバを使って走ったことのない道をつないでルートをひくのが楽しい」と教えてくれた。

「仲間と一緒に走りルートを教えてもらうことで、今までたどり着けなかった場所へ行けたときは本当に嬉しかった」。「ルートをひいてグループにアップすると宮本さんがアドバイスをくれるので安心」と笑顔を見せた。

峠マイスターの異名を持つ宮本さんは埼玉近辺のマイナーな林道も知り尽くしている。取材当日はチーム全体の様子を見てゆっくり走るメンバーのフォローに回る姿が見られた。走力は折り紙付きで、今まで開催されたPeaksを全て完走している。彼のトリプルクラウンジャージを見た池田さんは「俺もいつかはPEAKSのフィニッシャージャージを獲りたい」と息巻いているとか。

今回チームライドに初めて参加した細川さんは、ファットバイクで登場した。なんと都内の自宅から自走で来たという。「埼玉の峠で一人PEAKSをしていて、有馬峠を上ったところでチームのメンバーと出会った。下山した後cafe KIKIで再会しチームに誘ってもらった。NPNLは毎回景色のいいところを走っているのがとてもいい。景色を楽しむために山を上っている自分の趣味嗜好ともぴったり合った。今日初めて参加したが、メンバーの方々が親しみやすく、壁のない雰囲気が心地よかった」と語った。

現在のメンバーの構成は女性が6名。30代から50代までのメンバーが揃う。埼玉の東秩父の峠をメインとしたライドを開催することが多いため、メンバーは埼玉を中心に、東京、群馬在住者が多いそう。仕事が水曜休みのメンバーが立ち上げたチームだが、現在集まっているメンバーの休みはバラバラとのこと。ライドは月曜、水曜、日曜に開催されることが多い。

チームの掟として、平地は禁止とのこと。禁止というよりは、坂が好きなので、平地をライドするコースをひくことはないということだそう。運営メンバーいわく「走っているうちに、とりあえず3000m上りたいと思うようになった。50kmのコースなら2000m。100kmのコースなら3000mは上りたい。こんなコースばかりひいているので、坂を走れるサイクリストが自然と集まってくる」とのこと。

一緒に走るために来たのに「えー」とか「こんなに上るんですか?」と不満を言うのはNGだ。それほど速く走れなくても大丈夫だが、1日中坂道が続くコースであることは理解したうえで参加しよう。兼部ももちろんOK。チームライドに参加したい方は、フェイスブックページにてメッセージを添えて参加申請をしよう。

 


【走行距離】40km  獲得標高787m

【立ち寄りどころ】『寄居町日本の里 風布館

【ペース】平地はウォームアップとクールダウン程度しかない。上りは各自が楽しく上れるペース、下りは安全走行で。

【フレンドリー度】Facebookページでの交流が中心。大人同士の穏やかな会話がメイン。


 

ライドコースはこちら!





背中に描かれた山は“坂バカの心の中にある山”とのこと Photo:サイクルスポーツ編集部
背中に描かれた山は“坂バカの心の中にある山”とのこと Photo:サイクルスポーツ編集部
主宰4人。左から池田さん、岡村さん、宮本さん、引間さん Photo:サイクルスポーツ編集部
主宰4人。左から池田さん、岡村さん、宮本さん、引間さん Photo:サイクルスポーツ編集部

『No Peak No Life』という名の通り、坂を上り山を越えることをこよなく愛するサイクリスト達が集まっていました。

「坂が好き。みんなで坂を上るのが楽しい!」という気持ちが伝わってくるチームライドでした。

平日休み・休日休みのどちらもライドが開催されているのが嬉しいですね。埼玉県の東秩父の峠を一緒に走りたいという方はチームに声をかけてみてはいかがでしょうか。

No Peak No Life フェイスブックページ
 

大宅陽子(おおやようこ)

この連載のレポーター。ヒルクライムをこよなく愛するサイクリスト。各地のヒルクライム大会で入賞、ジャパンカップオープン女子完走の経歴をもつ。また、ヨガインストラクターとして自転車競技の特性に合わせた「サイクリストヨガ」のレッスンを各地で開催中。


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