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最高峰のレーシングロードを軽量化したエヴォリューションモデル「ピナレロ・ドグマF10 Xライト」アサノ試乗します!その23

ピナレロ・ドグマシリーズのレーシングモデルの最高峰F10にはエヴォリューションモデルが存在する。F10をさらに軽量化したF10Xライトだ。その乗り味やF10との違いについて、試乗を通じて検証する。
 
text:浅野真則 photo:吉田悠太

F10をさらに軽量化。フレーム重量はドグマ史上最軽量の760g

ピナレロ・ドグマF10Xライト フレームセット価格/90万円(税抜)
ドグマF10シリーズには、先代のF8シリーズでも用意された超軽量モデルがラインナップされている。それがドグマF10Xライトだ。

このモデルはF10をベースにしたエヴォリューションモデルという位置づけ。ピナレロと長年パートナーシップを結んでいるUCIワールドチームのチームスカイがツール・ド・フランスの山岳ステージでクリス・フルームをはじめとするエース級の選手に供給したスペシャルマシンだ。

フレーム素材には、ドグマF8Xライトで使用されたトレカT1100G UDナノアロイカーボンを樹脂含量の低いプリプレグにし、新たに製造された専用の金型で最新のレイアップ方法を用いて成型。ドグマ史上最軽量のフレーム重量760g(塗装前、サイズ53)、フォーク340gという軽さを実現した。

主なテクノロジーはベースとなったF10を継承している。ダウンチューブのボトルケージ取り付け部を凹型にすることで空気の流れを最適化するコンケーヴデザイン、空力性能に優れた専用のシートポストとフレームに内蔵されるシートクランプ、フロントフォーク先端の空気の流れを整えることで空力性能を高めるフォークフラップ、空力性能に優れたエアロヘッドセットなど、超軽量ロードという位置づけでありながら空力性能もF10同様に重視している。

ドグマF10X-ライトは、フレームセット販売のみで、カラーは5色展開。フレームサイズは42〜62まで13サイズ展開で、いずれも受注発注となる。

 
フロントフォークの形状はF10のキャリパーブレーキモデルと同様。フォークエンド付近の整流効果を高め、空力性能を向上させるフォークフラップが採用される。重量は340gだ
上1-1/8"、下1-1/2"のテーパードヘッドチューブを採用。前から見たときに中央部にくびれがあるのは、フロントブレーキまわりの空気の流れを整えるための工夫だ
ひとつのフレームで電動変速・機械式変速の両方式に対応するTHINK2システムを採用。フォークとフレームのデザインをシームレスにすることで、整流効果を一段と高める
ダウンチューブのボトルケージ取り付け部周辺を凹型にし、空力性能を高めるコンケーヴデザインを採用。Di2のジャンクションを埋め込むEリンクシステムも搭載する
ドグマの他のモデルと同様、イタリアン規格のスレッド式BBを採用。近年主流になりつつある圧入式BBより音鳴りが発生しにくく、信頼性を重視していることがうかがえる
左右非対称のアシンメトリックリアステイを採用し、ドライブ側とノンドライブ側のフレームバランスを最適化。シートチューブの後端はフラットバック形状とし、剛性と軽さ、空力性能を高い次元で兼ね備える

ただ軽いだけではないが、乗り手を選ぶスーパーマシン

ここ数年、各社ロードバイクのラインナップは分業化が進み、オーソドックスな軽量レーシング系、快適性や安定性を売りにするエンデュランス系、そして空力性能を重視したエアロ系というようなジャンルが確立されている。このところエアロ系やエンデュランス系が熱く盛り上がっているが、2018年モデルでは軽量レーシングモデルの新作を発表するブランドも出てきている。

そんな中、ピナレロもドグマF10をベースにした超軽量モデル・F10Xライトを発表した。

F10Xライトはジオメトリーや外観こそF10と同じだが、素材や製法を見直すことでフレーム重量を760gにまで軽量化したモデル。カタログデータのフレーム単体重量で比較すれば、F10との重量差はわずか60gだが、両者を持ち比べるとアッセンブルされているパーツの差を差し引いてもXライトの軽さは際立っている。

走りも当然軽い。車重の軽さだけでなく、剛性もF10と遜色ないレベルで高く、踏力がダイレクトに推進力に変わっていく感覚がある。ヘッドまわりの剛性感やフォークの安定感も高く、軽量バイクにありがちなか細さはあまり感じさせない。

登坂性能やコーナーの立ち上がりでの加速の鋭さはF10をしのぐ。チームスカイの中でも限られた選手にしか供給されなかったと言うが、上りではこの軽さは大きな武器になる。ヒルクライムであれば間違いなくXライトを選びたくなる。

一方で、軽さが不安定さにつながる部分も見られた。強い横風の中を走るときには、F10では全く気にならなかったのに、Xライトでは風にあおられる感覚が強かった。また、コーナーリングでもフレームが軽いために腰高感があり、挙動がナーバスに感じられた。おそらくヒルクライムで使いたくなるような軽量な40mmハイトクラスのホイールを組み合わせると、横風の中であおられやすくなったり、コーナーでの腰高感が強調されてしまう可能性が高い。そういう意味では乗り手を選ぶバイクではある。

実は今回、5台のドグマを一気に乗り比べるにあたって、事前の予想では個人的にF10Xライトが大本命だった。プライベートでは他社の超軽量レーシングロードに乗っているので、おそらく最も相性がいいだろうとにらんでいたのだ。

しかし、実際に試乗してみると、自分にはF10のほうがしっくりきた。コーナーや下り、強風が吹くコンディションなど、あらゆる場面で総合的に速く走れると感じたからだ。F10のインプレでは「あらゆる性能を高い次元で兼ね備えた奇跡のバランスを実現している」と評したが、この絶妙なバランスがXライトで軽量化を突き詰めることにより、微妙に崩れてしまったように思えてならない。

今回の試乗車の印象で判断する限り、Xライトは優れたポテンシャルを秘めたスーパーマシンであるが、万人に勧められるバイクとは言えない。ライディングスキルの高いサイクリスト向けのレーシングマシンだ。もしF10XライトとF10を好きなように乗れるとしたら、自分はヒルクライムにはXライトで出てみたいと思うが、高速ダウンヒルのあるようなロードレースならF10を選ぶだろう。

とはいえ、自分の好みのパーツで組み上げて、ポジションも厳密に出すことができれば、また違った印象になるのかもしれない。クランクベースのパワーメーターを付けてBBまわりを少し重めにするだけでも、重量バランスが改善されて腰高感が緩和され、ずいぶん印象が変わるような気がする。

 

spec.

「ピナレロ・ドグマF10 XLIGHT」
フレームセット価格/90万円(税抜)

フレーム/カーボン 
フォーク/カーボン 
コンポーネント/シマノ・デュラエースR9150 Di2
ホイール/シマノ・デュラエースR9100 C40
タイヤ/ヴィットリア・コルサ  700×25C
ハンドル/モスト・タロン
シートポスト/ピナレロ・オリジナル
サドル/モスト・セライタリア
カラー/922チームスカイ、923レッドライン、925ブラックマット、927ブラックTDFリノ、930ブラックTDF
サイズ/42SL、44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
試乗車重量/6.89kg(50サイズ・ペダルなし)


■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、海外のグランフォンドにも参加経験がある。愛車はスコット・アディクトとキャノンデール・キャード10。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。
 

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