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安井行生のロードバイク徹底評論第11回 LOOK785 vol.6

昨今の新型車の中で一頭地抜く注目を集めたルックのヒルクライムスペシャル「785」。同じく登坂を得意としていた名車585に惚れ込んでいた安井は思わず785ヒュエズRS、しかもZED2クランク仕様を買ってしまった。本国技術担当者のインタビューを交えながらお送りする、久々の自腹インプレ。


vol.1はこちら


 
text:安井行生 photo:茂田羽生

RS ZED2にしかない美点

剛性感にも驚きを覚えた。端的に言って785はかなり硬いのだ。
チューブtoチューブやラグドフレームの真ん中に芯がある剛性感でもなく、肉薄モノコックフレームの卵の殻のような表面パリパリの剛性感でもない。身の詰まった男らしい剛性感。脚を正直に締めあげたフレームに特有の直接的な硬さ。実直。愚直。そんな言葉で表現したくなる、ひたすら骨っぽい剛性感である。これを買ってから、試乗や取材で様々な最新モデルと同条件で比較してみたのだが、785の剛性感は明らかに特異だった。
それがもたらすものは、目の覚めるようなダイレクト感だ。タイヤと路面が歯車で噛み合っているかのような、凄まじく高いトラクションだ。
 
ペダルを踏んづけていると、この鬼のような硬さはZED2クランク起因のものだと分かる。
もちろん、走行中に体のセンサーが検出する自転車の剛性感は、フレーム、クランク、ホイール、タイヤ、ステム、ハンドル、バーテープ、サドルなどを全てひっくるめたものだが、入力に対するたわみの大小、速度、方向、タイミング、そしてたわみ方(最初から最後まで一様に硬いのか、最初にグダッとしなって最後に耐えるのか、最初はパリッと硬いのに負荷を高めるとなし崩し的に変形してしまうのか……など)を総合的に判断して、どこがどのように硬いのかがどことなく気取れるものだ。
 
785ヒュエズRS ZED2の場合は、明らかに「クランクだけが突出して硬い」と分かる。実際、雑誌のインプレでチョイ乗りした非ZEDの785ヒュエズRSはここまで硬くなかったように思う。
確かに、これによる加速の鋭さは素晴らしい。登坂路で踏み増したときの鮮烈な挙動はちょっと他のフレームでは味わえないレベルのものである。ガキンと脳天に響くような強烈な加速感、これは785、しかもRS ZED2にしかない美点である。
 
ただし、分かっていたことだが、やはりQファクターは気になる。純正クランクとの差、たったの4mmほどなのだが、筆者のような短足ではそれでもガニ股でペダルを踏んでいるような感覚が拭いきれないのだ。構造上、Qファクターを狭められないというのは分かるが、ならばペダル取り付け部のナットとワッシャーを凹ませるとか、シャフトの短いKEOペダルを作るくらいはしてもいいのではないかと思う。まぁそれが分かってんならZED仕様買うなよという話ではあるのだが。

 

フォークの性能はトップレベル

快適性は、今の基準で言えば、取り立てて良くもないが悪くもない、と言ったところ。衝撃吸収性も、振動減衰性も、そこそこのレベルに留まる。上り専用車なのだからそこに文句を言うべきではないが、質の高いチューブラーもしくはチューブレスにすれば、タイヤシステムの優秀に助けられて減衰能力が高まり、バランスは改善される。785RSを気持ちよく走らせたくば、足元をケチらないことだ。間違っても安物クリンチャーなどを履かせてはいけない。
 
ハンドリングにおいて素晴らしいのは、高負荷下での正確さである。
最新モデルであっても、中には下ハンを握ってハンドル荷重にしてバイクを振って思い切り加速してみると、進路が安定せずふらついてしまうものがある。しかし785はそんな不始末は見せない。フレームのみならずフォークもガッチリと硬いのだが、どんなにハンドルを振り回してもバイクは不安定になることがない。
あれだけ過敏に感じたハンドリングも、上りのダンシングではセッティングがピタリと合ったかのように不自然さがなくなる。登坂路のダンシングで頑として舞おうとしないバイクもあるが、これは腕の下でバイクが文字通り軽快なダンスをして見せる。しかも、バイクの挙動を完全な支配下に置いたまま。
HSC~という従来のネーミングを捨て、ウルトラエキストラライトカーボンフォークという味気ない名称となったフォークだが、性能はトップレベルにある。一旦慣れてしまえば、バイクを思い通りに振り回せてめちゃめちゃ楽しい。
 
そのハンドリングに関して残念な点が一つある。その素晴らしい正確さをワイヤリングが邪魔をするのだ。トップチューブ前端からワイヤを入れるフレームは、アウターの弾性がステアフィールを混濁させるのだ。ステムが短くハンドルが低い(ワイヤの入り口とハンドルの距離が近い)となおさらである。ただし、これはアウターを日泉ケーブルのプレミアムアウターにしたら気にならないレベルにまでもっていくことができた。
 
 



安井行生のロードバイク徹底評論第11回 LOOK785 vol.7に続く