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安井行生のロードバイク徹底評論第11回 LOOK785 vol.4

昨今の新型車の中で一頭地抜く注目を集めたルックのヒルクライムスペシャル「785」。同じく登坂を得意としていた名車585に惚れ込んでいた安井は思わず785ヒュエズRS、しかもZED2クランク仕様を買ってしまった。本国技術担当者のインタビューを交えながらお送りする、久々の自腹インプレ。


vol.1はこちら
text:安井行生 photo:茂田羽生

ジオメトリ分析


ジオメトリはいかにも最新ロードフレームのもの。サイズはXS~XLの5種類で、リーチはサイズごとに10mm刻みで伸びている。リーチありきのジオメトリは近代ロードフレームの特徴である。
面白いのは、ヘッド角もシート角も2種類で、XSとSが共通(ヘッド角71.8度、シート角74度)、M~XLが共通(ヘッド角シート角ともに73度のパラレル)であることだ。
これは、もちろん製造上の都合もあるのだろうが、トレールをできるだけ全サイズで統一するための措置でもあるだろう(XSとSが58.5mm、M~XLが58.4mm)。785のハンドリングのよさ(後述)にはこれが効いているはずだ。
ルックは、695でフォークオフセットを全サイズで共通(43mm)にした結果、XSのトレールが70.9mmという長大な値になってしまったが、それでよしとしていたメーカーである。これはジオメトリ上の素晴らしい方針転換である。
 
と、ここで気付いた。このジオメトリは795と全く同じものだ。シートチューブ長は当然違うが、その他の数字は全く同じ。
695と795を比較した際、大きく進化したと感じられたのがハンドリングだった。695に比べると、795はとにかく操舵感が滑らかで自然で、フレームとの一体感が明確に高まっていた。直進から操舵に移行する際のスムーズさ、シッティング~ダンシングの滑らかさなど、ハンドリングの全てが上質になっていた。
操舵が正確になったとか直進性が高くなったとか、そういう単なる性能向上だけでなく、官能性能という、より上位の位相において進化していたのである。これはトレール適正化によるところが大きいのではないかと思う。
その795のジオメトリをそのまま使う。悪くないアイディアだと思う。

 

シンプルなフレーム形状


実物の形状に特徴的なところは少ない。トップチューブは横方向に扁平されており、ヘッド側は太いがシート側に行くにつれて徐々に細くなっていく。ダウンチューブは角を丸めた四角断面で、ルックにしてはかなり大径である。
シートステーは幅広のまま流れるようにトップチューブにつながる。先代エボあたりが始めて一気に広まった形状である。シートステーをできるだけ幅広にして踏ん張らせ、リヤ三角のねじれ剛性を上げるのが狙いだろう。
 
ワイヤ類はフロントブレーキ以外は内蔵である。空力なぞ関係ないヒルクライムマシンなのだから、いっそのこと全部外装にすればいいのに、と思う。チューブに穴を空けずにすむから、チューブのしなりや強度・剛性面でも有利になるはずである。全く腹立たしい流行だ。
気になっていたのが、リヤブレーキのアウターの出口である。ティーザーフォトでは、それはトップチューブの途中ではなくトップチューブ後端に設けられていたのだ。
正直言ってこれには大いに落胆した。大きいフレームサイズでは問題ないのかもしれないが、小さいサイズではワイヤ出口とブレーキキャリパーとの距離が近すぎて、「アウターが長すぎてキャリパーを押してしまう領域」と「アウターが短すぎてレバーを握ると長さが足りなくなる領域」が完全にオーバーラップする。数年前まで他社でも見られた作りで、大きいサイズで設計をして、それをそのまま縮小コピーするとこのような作りになってしまうのだろう。
 
実際、ルックのメーカーHPには丁寧にも「リヤブレーキアウター位置の関係で、カンパニョーロのシングルピボットタイプ等、リターンスプリングの弱いブレーキキャリパーはご使用になれません。前後デュアルピボットタイプをご使用ください」という注意書きがあった。
メーカーの言い分としては、アウターをできるだけ短くすることで軽くしたかったとのことだが、これには全く賛同できない。アウターを数cm短くすることで得られるたった数gの軽量化と制動性能のどちらが大切かは明々白々だと思うのだが。
リヤブレーキ直前のアウターだけ柔らかいカンパか日泉かノコンあたりにすればなんとかなるか……と気をもんでいたのだが、納車前に代理店担当者から「リヤブレーキのアウター出口が通常の位置(トップチューブ後端)に変更されたようです」と連絡があった。当然だ。最初からそうしてくれと思った。ついでにヘッドチューブ前端からリヤブレーキアウターを入れるのも考え直してほしいんですけど。
 
 
ヘッドは極々ノーマルな形状。上側:1-1/8インチ、下側:1-1/2インチの上下異径タイプで、フォークは全体的に細身。ベアリングが収まる下ワン部分にも鋭角なところが一切ない、いかにも最新フォークという感じ


 
シートポストは27.2mm径で、ハンドル&ステムもノーマル仕様、BBはプレスフィット。フレーム構造はオーソドックスなものだ。ただしRS ZED2のみ独自規格BB65を採用、専用のZED2クランクを使う。本文中にもある通り欠点は多いが、左右のアームとシャフトとスパイダー部をカーボンで完全一体成型した超軽量超高剛性クランクは、(おそらく)市場最高の剛性重量比を有する


 
モノステーだった585とは違い、シートステーは二股に分かれたままトップチューブ後端へとつながる。初期型はリヤブレーキのアウターが非常に短く、ミリ単位でアウター長を調整しないとブレーキの引きが悪化したが、中途改良でアウター出口は一般的な位置に戻された


 
横位置のカタログ写真では分かりづらいが、トッえプチューブにはデカデカとモデル名が入る。写真で見るより実物は3倍派手だ。デカールの上からかけられているクリア層はかなり薄く(塗料をケチったわけではなくおそらく軽量化のためだろう)、デカールのエッジがくっきり出ている。不用意にコンパウンドなどをかけたりするとエッジ部分でデカールが露出してしまうだろう(吸水→剥離)。オーナー諸氏は注意されたし


 

当連載名物フレーム内部写真

ダウンチューブ内部。オマエはヨネックスか?と言いたくなるくらいフレーム内部が綺麗で驚いた。固形芯材を使っているとはいえここまで内壁がスムーズなフレームは珍しい。いい工場で作っているのだろう
ダウンチューブ内部。オマエはヨネックスか?と言いたくなるくらいフレーム内部が綺麗で驚いた。固形芯材を使っているとはいえここまで内壁がスムーズなフレームは珍しい。いい工場で作っているのだろう
これはシートチューブから見たBBエリア。中央に見えるカーボンの筒の中をクランクシャフトが通る。形状が非常に複雑になるエリアだが、バリだのシワだのはほとんど見られない。
これはシートチューブから見たBBエリア。中央に見えるカーボンの筒の中をクランクシャフトが通る。形状が非常に複雑になるエリアだが、バリだのシワだのはほとんど見られない。
同様にシートチューブ内壁も素晴らしく平滑。左上に見えるのはボトルケージ用のボルトとフロントディレーラー台座を留めているリベット。当然フレーム内部はほとんどUDだが、プリプレグが繊維方向に割れるのを防ぐため、リベットを打つ場所やネジ穴を空ける場所にはクロスが貼られる


 




安井行生のロードバイク徹底評論第11回 LOOK785 vol.5に続く