ロードバイクの消耗パーツとその交換時期の目安とは【前編】

目次

ロードバイクの消耗パーツとその交換時期の目安とは

さまざまなパーツから構成されるロードバイクだが、タイヤやブレーキパッド、ケーブル類などはどのくらいの頻度で交換したらいいのだろうか? そもそもロードバイクの消耗パーツってどこなんだろう? 前半では、特に交換頻度が高く重要なパーツについて説明する。後編では、頻度は高くないがいずれ寿命がくるパーツについて扱う(記事は近日公開)。

 

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ロードバイク、実は全部が消耗品

サイクルスポーツではおなじみのプロメカニック、濱中康輝さんに今回はレクチャーしてもらう。

濱中康輝(はまなかこうき)さん

濱中康輝(はまなかこうき)さん。自転車コーキ屋の代表・店長であり、東京サイクルデザイン専門学校講師/SBM講師としても活躍する。プロ自転車レーサーのメカニックも務めている

自転車コーキ屋

自転車コーキ屋。東京都青梅市のスポーツ自転車専門店。ロードバイクもMTBも得意で、一般車まで扱う。幅広いスポーツバイク愛好者が集まるお店だ

 

「ロードバイクの消耗パーツとは、言ってみればフレーム&フォークを含めた全部のパーツです」と濱中さん。

ぜ、全部!?

「はい。ロードバイクの本体にあたるフレーム&フォーク、そしてホイールに至るまで、全ては寿命がある消耗パーツです。買ったらそうしたパーツも一生使える、というわけではないことはまずは覚えておいてください」。

 

安全性と性能に直結しやすいパーツを優先的に交換しよう

「とはいえ、やはり交換頻度が高く、消耗しやすいパーツというものがあります。それをいわゆる消耗パーツととらえ、優先して交換していくと良いですね。

優先して交換するべきパーツとは、ずばり安全性と性能に直結しやすいパーツです。

まずはタイヤ。地面に接する唯一の部分で消耗も激しいですし、ここが摩耗してくると安全に走ることはできないのはもちろん、十分な走行性能も発揮できなくなります。

次にブレーキパッド(ディスクブレーキの場合)またはブレーキシュー(リムブレーキの場合)です。しっかりブレーキがかけられなければ危険ですし、ここも消耗しやすい部分です。

次に挙げるのはブレーキワイヤ&ケーブルです。油圧ディスクブレーキならケーブルの中に入っているのはブレーキフルードですね。ブレーキを制御する非常に重要な部分だからです。

その次は変速まわりのワイヤ&ケーブル類、そして駆動系ですね。駆動系とはチェーンやスプロケットといった部品です。変速がうまく決まらないと快適に走れませんし、頻繁に操作し負荷がかかる部分なので、ここも重要です」。

なるほど。そうしたパーツには、交換時期の目安や見た目で分かる判断方法はあるのだろうか?

「あります。ライダーの使用状況によって大きく変わりますが、目安となる大まかなことは言えますから、それをご紹介しましょう」。

 

タイヤの交換時期の目安

タイヤ

タイヤ。なお、このタイヤは側面にひび割れが入り始めている。ひび割れが大きくなってくるとタイヤが変形し、バーストの危険もある

 

●走行距離にすると3000km〜5000km
●期間の目安は1年〜1年半
●タイヤ側面にひび割れが入っている場合
●地面に接する部分が削れて扁平になってきている場合

タイヤが地面に接する部分

タイヤが地面に接する部分。このタイヤはまだ大丈夫だが、摩耗してくると扁平になってくる

 

「頻繁に長い距離を走る人なら、半年以内に交換です。雨の日にも走る場合はさらに劣化が進みやすくなります。

なお、自転車は後輪駆動なので後輪のタイヤが先にすり減りがちですが、そうなったら前後を入れ替えて使うのはやめた方が安心です。どのみちタイヤを交換する手間は一緒なので、タイヤのグレードを落としてでも、合わせて前後とも交換することをおすすめします」。

 

チューブ

チューブ

 

●理想はタイヤ交換のときに合わせて交換
●最低でも1年に1回

「タイヤと関連して、チューブドタイヤ、いわゆるクリンチャータイヤを使っている人は、中のチューブも交換が必要です。

タイヤと同じく常に高圧にさらされているので、消耗は早いです。見た目に状態が良くても、最低1年に1回の交換をしましょう。

なお、パンクしてチューブ交換してまだ新しい状態なら、タイヤ交換と一緒に交換しなくても大丈夫です。そこは臨機応変に交換時期を見定めましょう」。

 

シーラント

シーラント

 

●半年に1回は交換

「チューブレスレディタイヤの人は、中に入っているシーラントの交換が必要です。だんだん劣化したり減ってきたりします。

製品ごとに交換の目安や定期的に足すよう指定があったりしますので、そこは各製品の指定に合わせてください。

ただ、全体的に言える目安としては、最低でも半年に1回は古いシーラントを除去して新しいものを注入、です」。

 

ブレーキパッド(ディスクブレーキの場合)

ブレーキパッド

油圧ディスクブレーキの場合はブレーキキャリパーの中にブレーキパッドが入っている

 

●パッド残量がメーカー基準値を下回ったら
●3000km〜5000kmに1回が大まかな目安

「これはブレーキング頻度によって大きく交換頻度が変わってくるので距離や期間の目安を出しにくいのですが、タイヤと同じく3000km〜5000kmを目安に交換していくのが良いです。

間違いないのはパッド残量です。各メーカーごとに基準値が設けられており、分かりにくいのですがブレーキキャリパーの上から覗くと確認できます。が、なかなかご自身で判断は難しいと思いますので、スポーツ自転車専門店で定期的に点検を受けることをおすすめします」。

ブレーキパッドの残量

ブレーキキャリパーを上から覗くとブレーキパッドの残量を確認できる

 

「なお油圧ディスクブレーキの場合は、パッドが減ってきてもブレーキレバーの引き代が大きくなってくるなどのブレーキタッチの変化が起こりにくいです。悪い意味で高性能なんです。そうしたフィーリングでの判断が難しいので、フィーリングが変わらなかいからと放置しておくとある日突然パッドを使い切ってけたたましい音がなり始めた! なんて事態が起こり得ます」。

 

ブレーキローター(ディスクブレーキの場合)

ブレーキローター

 

●パッド2回の交換に1回
●すり減って段差ができたり歪んできて修正が困難な場合

「こちらもパッドと同じく使用状況によって変わりますが、目安としては上記のとおりです。ブレーキローターも使っているうちにだんだんと削れてきます。また、歪んでくる場合もあり、歪みの修正ができないなら交換です」。

 

ブレーキシュー(リムブレーキの場合)

リムブレーキのブレーキシュー

リムブレーキのブレーキシュー

 

●ブレーキシューの溝がなくなってきたら
●リミットラインが見えたら

「これはご自身でも目視で確認しやすいです。ブレーキシューには溝またはリミットラインが入っていて、それで残量が分かります。溝が減ってなくなりかけてきたり、リミットラインが見えてきたら交換です。距離や期間で判断しない方が良いです」。

カーボンホイール用ブレーキシュー

カーボンホイール用ブレーキシュー

 

「特に注意なのはカーボンホイール用のブレーキシューです。通常のアルミリム用ブレーキシューに比較して圧倒的に減りが早く、特に雨の日の下り坂で使うと目に見えて減ります」。

 

ブレーキケーブル類(油圧ディスクブレーキの場合)

油圧ディスクブレーキのブレーキケーブル

油圧ディスクブレーキのブレーキケーブル

 

●ブリーディングを1年に1回、最低でも1年半に1回

「油圧ディスクブレーキの場合はブレーキ(アウター)ケーブルの中にブレーキフルードという液体が入っています。これを交換するブリーディングという作業が必要です。なお、そのときに基本的に一緒にブレーキケーブルも交換となります。

使用頻度によって持ちは違ってきますが、頻繁に乗らない人でも最低1年半に一回は交換してください。逆に頻繁に乗る人なら10か月程度で交換しても早すぎることはありません」。

 

ブレーキケーブル類(リムブレーキの場合)

リムブレーキのブレーキワイヤとアウターケーブル

リムブレーキのブレーキワイヤとアウターケーブル

●1年〜1年半の間に1回

「リムブレーキの場合はブレーキケーブルの中にインナーワイヤーが入っています。これを1年〜1年半で交換してください。なお、やはりそのときにアウターも一緒に交換が基本となります」。

 

変速まわりのケーブル類(機械式の場合)

機械式変速の変速ケーブル

機械式変速の変速ケーブル

 

●1年に1回
●変速感が落ちたと感じたら

「頻繁に変速する人としない人で差はありますが、最低1年に1回の交換をしてください。

なお、変速をあまりしないからといって交換しなくて良いわけではなく、ワイヤには常にテンションがかかっているので、使わなくても劣化します。

また、フィーリングでも判断できます。変速感が落ちてきたな、いつもと感覚が違うなと感じたら危険信号で、そのまま放置するとある日突然ブチッとワイヤが切れてしまうことがままあります。ですから、違和感が出た・変速しにくいなと感じたらすぐスポーツ自転車専門店へ点検へ持ち込んでください」。

 

変速まわりのケーブル類(電動変速の場合)

電動変速の変速ケーブル

電動変速の変速ケーブル

 

「電動変速が世の中に登場してから、今のところ電動変速のワイヤが劣化したという事例は聞いたことがありません。それよりもバッテリーの劣化が先にくると思われます。

ですので、物理的に断線してしまった、という状況を除いては、電動変速のケーブルの劣化はないと考えていいです。“歴史上今のところは”ですが。なお、近年はワイヤレス化も進んでいますね」。

 

チェーン

チェーン

 

●3000km〜5000kmに1回程度
●チェーンの伸びが確認できて変速が悪くなってきたら

「メーカーによって推奨値があったりしますし、使用状況によって異なりますが、だいたい3000km〜5000kmに1回を目安としてください。え!? けっこう短い! と思われるでしょう。そうなんです。チェーンの交換頻度は皆さんがイメージされているより高いです。走行距離の長い人なら年に1〜2回は交換が必要です。

しかも、見た目に劣化しているかどうかは分かりづらいです。チェーン内部にあるローラー部分が鼓(つづみ)型に減ってきているようならもう交換です。また専門工具が必要ですが、チェーンの伸びが確認できても交換です。なお、そのような状態では変速感も悪くなっているはずで、かなり劣化した状態とも言えます」。

 

カセットスプロケット/チェーンリング/プーリーなどのギヤまわり

カセットスプロケット

カセットスプロケット

チェーンリング

チェーンリング

プーリー

プーリー

 

●チェーン2回の交換につき1回
●変速感が悪くなってきたら

「カセットスプロケット、チェーンリング、プーリーのギヤまわりも実は消耗品です。え!? ここも交換するものなの!? と驚かれる人もいるでしょう。

できればチェーン2回の交換につき1回の交換をした方が良いです。チェーン2回につき1回とは、走行距離にして6000〜1万kmなので、それなりの距離になっているのです。

これらの摩耗が進んでくると、まず変速感が鈍ってきます。ワイヤーを換えたりチェーンを換えても変速感が戻りにくくなります。さらに摩耗が進むと、ギヤの歯先が削れて見た目にとがってきます。こうなるとすぐにも交換が必要なレベルで、歯飛びと言ってペダルを踏むとチェーンが滑ってしまう症状が出る可能性もあります」。

カセットスプロケットの歯先とチェーンリングの歯先

カセットスプロケットの歯先(左)とチェーンリングの歯先(右・写真はアウター部分)。これはまだ大丈夫だが摩耗するとここが削れてとがってくる

 

バーテープ

バーテープ

バーテープも実は交換頻度の高い消耗品。黒だと汚れは目立ちにくいが……

 

●半年に1回
●ケーブル類を交換するときに一緒に交換

「バーテープは、私は3か月に1回、春夏秋冬ごとに交換をおすすめしています。気分転換にもなりますよ。それだと多いかなという人でも半年に1回は交換が必須と考えてほしいです。

意外な盲点ですが、バーテープは皮脂や汗などでかなり汚れます。衛生面に関わるし、見た目にも汚くなるので、これくらいの交換頻度が適切です。

黒いバーテープで汚れが目立ちにくいからといって、1年持たせてしまうのもやめた方が良いです。見た目に分からなくてもしっかりと汚れていますから。

また、ケーブル類を交換するときはバーテープも一緒にはがして作業しますので、そのときに一緒に交換してしまうのも良いです」。

 

【後編へ続く(近日公開予定)】