猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第3回

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猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第3回

合宿を行った片品村。お水や食べ物が美味しく。坂も多い!坂バカのオアシスだ。

2022年が幕を明けた!

今年こそは、今年こそは何としても良い年にしたい!と⼼に誓う。何故なら昨年の私のヒルクライムの成績は散々だったからだ。

昨年2021年は、コロナ禍のヒルクライムを盛り上げるために新たにチャリダー☆では「坂バカ部」が発⾜された。集まってくれたのは「階段王」、「 ママチャリ坂バカ」、「 ぼっちゃり芸⼈」。⼀⾒なんの集まりだか分からないが、彼等はとんでもないポテンシャルを秘めている…と思われる。

私もこの坂バカ部の勢いにあやかり好成績を残す……筈だった。

 

「坂バカ部」合宿で、個性爆発

2021年3⽉ 坂バカ部の3⼈のポテンシャルを確かめるために、本番のレースが開催される⽚品村で合宿を⾏う事になった。特別コーチは坂バカ界のアイドル筧五郎⽒だ。

まずはチームの結束⼒を⾼めるために、3⼈それぞれの特徴、「階段」、「 ママチャリ」、「体重100kg」を皆で共有しようという事になった。

まずは階段王の凄さを体感するために皆で神社の階段を駆け上がる!
階段王の渡辺良治⽒は階段垂直マラソンで世界3位の実⼒を持つ。
彼の挨拶は「階段王に成る男 渡辺良治です」と独特だ。⾃ら⾔い切る潔さは素敵だと思うが、会う度に⾔われると少ししんどい。しかし⾔葉は⾔霊。いつか本当に世界の階段王になって貰いたい。そんな⾵に思えるピュアな男だ。東京タワーの階段を2分で登ってしまう良治⽒は、やはり神社の階段でもダントツで速かった。

驚いたのが乗鞍チャンピオンの筧五郎⽒が誰よりも遅かった事だ。
体重100kgのロマンス河野よりもだ。

階段は⾃転⾞のペダリングと共通すると思われたが、これまた階段も奥が深そうだ。

 

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第3回

宿舎に使った廃校。階段王は早朝からこの階段を「これがホントの学校の階段」と叫びながら登り皆のひんしゅくをかった。

 

お次は体重100kgのお笑い芸⼈・ロマンス河野の凄さを体感する。皆で自分の体重が100kgになる量の重りを付けて⾃転⾞に乗る。 驚いたのは⾞上で体を⽀えるだけで体中の筋⾁が悲鳴をあげるという事だ。 もちろんお尻は激しく痛い。

これは先が思いやられる。
しかし私はロマンス河野に⼀番期待しているのだ。
それはポッチャリダーが痩せると速くなるという都市伝説を、⾝をもって体現して欲しいからだ!
あのアレハンドロ・バルベルデやクリス・フルームもかつては太っていた。

ロマンス河野の太ももには100kgの体重を⽀える埋蔵筋が埋まっている!
痩せて速くなり、その名の通りロマンスを叶えて貰いたいものだが、痩せるとオーディションが受からないという側⾯もあるらしい。ぽっちゃりというキャラクターが売りだからだ。芸をとるか?速さをとるか!なかなか悩ましいところだ。

お次はママチャリ坂バカの⼾丸⼤地だ。
皆で短めの坂で⼾丸の愛⾞のママチャリでタイムトライアルをする事になった。

まずは階段王!誰よりも⼼肺機能が強い良治⽒はクルクルと⾼いケイデンスでもがき5分5秒でゴールした。
お次は五郎さんだ!階段王と乗鞍チャンピオンの対決! 固唾を呑んでゴールで待っていると五郎さんが必死の形相で現れた!ママチャリの重いギヤをシッティングで踏んでいる。凄い!そして速い!
タイムは5分2秒!

乗鞍チャンピオン!流⽯のパフォーマンス!
しかし「今年こんなに上げたのは初めてや!」と倒れ込んだ。
コーチとして来て頂いてるいるのに、ここまで本気で⾛ってくれて有難い。そして五郎さんも本物の坂バカだ。

思いの外のデッドヒートで盛り上がる現場とは裏腹に、⼾丸の顔⾊が優れない。
そして何やらずっとブツブツ呟いている。
⼾丸「これヤバい……俺が⼀番じゃなかったらヤバい……クビになる」
⼾丸にとってチャリダーは憧れの番組らしい。
事あるごとに「マジ、出れて嬉しいっす!」と嬉しそうに私に⾔ってくる。
憧れの番組の合宿で、いきなりの試練。好事魔多しという奴だろうか。

ママチャリ坂バカの実⼒や如何に!?
⼾丸の進退をかけたTTが始まる!

いくら⼾丸でも流⽯に五郎さんと階段王には勝てないだろうと、ゴールで待っていると狂ったようなダンシングで⼾丸が現れた!よく⾒ると涎を垂らし⽩⽬をむいている!少し怖い!
しかし誰よりも速い!
タイムは4分27秒!ダントツで速いではないか!
⽕事場の⾺⿅⼒という奴か!?⼈間追い込まれるととんでもない⼒を発揮するものだ。

 

ママチャリで童心に帰る

お次は初⽼坂バカの私の番だと思っていたら、 ディレクターが「猪野さんはレースが近いからやめときますか?」と打診してきた。
恐らく年齢的に5⽇後に控えているレース本番までに回復しないと思っての事だろう。

しかし坂バカ部監督として、やはり⼾丸のママチャリがどんな物なのか体験しておきたい。
私はスタートを選んでしまった。
(今考えればこれが良くなかったのかも知れない)

スタートしてすぐに悟る。これは無理だ!
何だこの乗り物は!
ママチャリはトルクがかかる位置が僅かしか無く全然進まない。おまけにギヤは3段しかない。

慌ててダンシングに移⾏するがママチャリの重⼼が⾼く⾮常に難しい。
この⾃転⾞で⼾丸はヒルクライムで好成績を残しているのか!?
初⽼の無酸素運動は続き。意識がぶっ⾶ぶほど苦しかったが、何とかゴール!タイムは5分55秒。

これが初⽼の現実だろうか。しかし何んだろこの楽しさは…⼀台のママチャリで⼤の⼤⼈がここまで⼀喜⼀憂する。

⼦供の頃、⽥んぼの畦道で⾃転⾞レースした記憶が蘇る。
やはり競い合う事は結果も⼤事だが楽しくなければならない。
競技の本質を再確認できた良い合宿となった。
因みにロマンス河野は8分くらいだった。体重100kgで⼤健闘だ。

チームの結束⼒も⾼まり⼤成功に終わった合宿。
5⽇後に⾏われたレース本番でもこの勢いのまま⾏くと誰もが思っていた。しかし読者の皆様はお気づきだろう。

ヒルクライムの神はそんなに⽢くない。
私と坂バカ部は初戦で⾒事に奈落の底に叩き落とされる事に成るのである。

猪野 学 公式Twitter

 

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第3回

ヒルクライム後の温泉ほど格別なものはない。片品村のお湯はとても柔らかい。