台湾一周サイクリング「フォルモサ900 2023」帯同記 第4章:台湾から学ぶ、サイクルツーリズムの明日

目次

フォルモサ900第4章

台湾一周約900kmを9日間のグループサイクリングで走破するツアーイベント「フォルモサ900」。その国家級のイベントへの参加窓口となるジャイアントジャパン公式ツアーが4年ぶりに開催された。筆者は参加者をサポートするサイクリングガイドとしてツアーに帯同し、台湾の先進的なサイクリング環境に触れることとなった。最終章となる本稿は、ツアー後半4日間のダイジェストと、フォルモサツアーが持つ独自の価値について考察を述べたい。

後半4日間のダイジェスト

フォルモサ900のマップ

5日目で島の南端に至り、旅は折り返し地点へ。後半の東沿岸部は、向かい風とアップダウンが待ち受ける

前回のレポートで、フォルモサツアーの優れた旅行体験について、そして前半5日間のダイジェストをお届けした。最終章となる本稿では、ツアー後半4日間の様子を振り返りつつ、フォルモサに対する筆者の思いを述べたい。

5日目で日本騎士團は台湾の最南端付近に至ると、6日目に東沿岸部へ向けて鋭角に折り返し、以降はゴールの台北へと北進する。アップダウン区間が増えてコース難度は僅かに上がるが、疲労困憊で1日を終えることは殆どないだろう。後半戦も1日ごとに際立った観光要素があり、最終日まで新鮮な気持ちでサイクリングを続けることができた。

以下に、後半4日分のダイジェストをお見せしよう。前レポートと同様、その全貌はぜひツアーに参加し、自らの目で確かめてほしい。

6日目 : 雨と峠と、無風の太平洋

寿峠の頂上へとヒルクライム

緑深いジャングルの合間を進み、寿峠の頂上へとヒルクライム

寿峠の頂上

寿峠の頂上には、サイクルステーションとフォトフレームが設置されていた

海沿いを進む

右手に見える景色は、台湾海峡から太平洋へと変わった。この時期には珍しい無風の海沿いを進む

スタート : 恒春
ゴール : 台東(台東富野)
走行距離 : 121km/獲得標高1183m

この日は9日間で最もキツい難関コース、のはずだった。

環島のルート上で最高地点となる「寿峠(ことぶきとうげ:標高460m)」を越えると、強い向かい風とアップダウンが続く太平洋が待っている。雨も加わって一層タフな1日が予想されたものの、幸いにして中盤から晴天に転じ、ほぼ無風のまま走り切ることができた。日本騎士團は天気運に恵まれていると実感した日で、穏やかな海に現地スタッフも驚いていた。

前半5日間で参加者のトレイン走行技術はみるみる向上し、ラクに走るコツを掴んだ様子だった。参加者の表情からは余裕が感じ取れ、グループの一体感も強くなっていった。

7日目:親しみある田園風景は日本に通ず

伯朗大道を進む

「緑の天国の道」と称される伯朗大道を進む一行。日本と似た田園風景はなんともノスタルジックだ

悟饕池上飯包

列車が目を惹く休憩スポット、悟饕池上飯包。車内の座席でランチタイムを楽しめる

お弁当ランチ

旅程で唯一のお弁当ランチ。日本統治時代から続く駅弁とあって親しみのある味わいだ

スタート : 台東
ゴール : 瑞穂(密滋賀温泉)
走行距離 : 117km/獲得標高897m

海岸線から20kmほど内陸の緩やかなアップダウンを進む1日。細かい登りを繰り返し、終わってみると900m近く稼いでいた。

中盤に訪れた伯朗大道の周辺は、日本の田舎を思わせる田んぼと山が一面に広がり、素朴な風景に癒された。この界隈はレンタサイクル拠点が多く点在し、日本とは一風変わった電動アシスト自転車がそこかしこを走り回っていた。

終日曇りでウィンドジャケットを着ても寒いほどだったが、ありがたいことにホテル各部屋に温泉の出る浴槽があり、身体を温めることができた。

8日目:サイクルトレインと台湾の頂(いただき)

大農大富平地森林園区

自然豊かな「大農大富平地森林園区」。こちらの一本道はSNS映えで人気を博すフォトスポット

太魯閣国立公園の入り口

太魯閣(タロコ)国立公園の入り口。標高3275mまで続く世界屈指のヒルクライムルートだ

サイクルトレイン

サイクルトレインで約80kmの移動。輪行袋なしで利用でき、この簡便さは日本の鉄道会社も導入してほしいほど

スタート : 瑞穂
ゴール : 新城→羅東(Landis Inn Lotung)
走行距離 : 92km/獲得標高471m

新城から羅東までの約80kmは自転車走行に不適のため、サイクルトレインへの乗車が公式に推奨されている。走行距離は全日程で最短の92kmだった。

サイクルトレイン乗車までの待ち時間で、希望者は太魯閣(タロコ)国立公園の入り口まで観光へ行った。ここで開催されるヒルクライム大会「Taiwan KOM Challenge」は、海抜ゼロから標高3275mまで駆け上る異次元のコースで有名だ。台湾の最高地点まで続くルートであり、筆者もいずれチャレンジしたいと思っている。

これだけの大人数で、しかも海外でサイクルトレインを利用する機会はそうないだろう。海沿いをゆく約1時間の車窓旅は、環島の終わりが近いことを感じさせた。

9日目:宝を胸に、台北へ凱旋

サインボード

毎日の楽しみであったサインボード。現地ガイドのメイさん(左)と愛媛隊の宮崎さん(右)

自転車専用トンネル

鉄道路を再活用して敷設された、全長約2kmの自転車専用トンネル

十份

十份(じゅうふん)はスカイランタンが人気の観光スポット。巨大な紙風船に願いを書いて飛ばす

スタート : 羅東
ゴール : 台北(松山駅→兄弟飯店)
走行距離 : 114km/獲得標高769m

総走行距離 : 967km/獲得標高5661m

空はスッキリと晴れ渡り、最終日にして最高のサイクリング日和に恵まれた。矢のように過ぎたツアーもいよいよフィナーレ、そんな感慨に浸りながら順調に距離を消化していった。

環島0km地点モニュメント

松山駅前の環島0km地点モニュメントで記念撮影。誰一人欠けることなく、自らの脚で環島を達成した

台北市街地に突入するとツアー初日の喧騒が思い出され、気を引き締めた。残り10kmで想定外の通行止めに遭遇したが、ガイドチームの機転により迂回ルートを組み直し、幹線道路伝いに松山駅(しょうざんえき)へと急いだ。駅前広場に辿り着くと巨大な環島0km地点モニュメントと対面し、環島走破の実感がじわりと湧いてくる。日本騎士團の全員が満面の笑みを浮かべながら、旅の成功を喜びあった。

9日間これだけの大人数で走れば大小トラブルが起きそうなものだが、蓋を開ければ終始平穏な空気に満ちた、大成功のツアーとなった。誰一人サポートカーに搬送されることなく、全行程を自らの脚で走り抜いたことは、素晴らしい快挙と言う他ないだろう。

夕暮れの松山駅でひとしきり余韻に浸ったあと、ツアー初日に宿泊した兄弟大飯店へと4kmほど走り、台湾サイクリングの全行程が終了。ここで筆者のガイド任務は完了となり、無事故で終えられたことに胸を撫で下ろした。

四国一周と環島のダブル達成

完走祝賀会

完走祝賀会で記念撮影。半数以上の19名が四国台湾ダブル一周を達成した

環島達成の余韻冷めぬうちに、ホテル最上階のレストランで完走祝賀会が開かれた。まるで古くからの友人のように打ち解けた参加者同士、そしてスタッフ一同で旅の思い出を振り返りつつ、思い出話に花を咲かせた。また、初日と2日目に続いてジャイアントグループのフィービーさんがプレゼンターとして同席し、完走証とメダルが一人一人に手渡された。

ここで、環島達成をさらに特別なものとする「四国一周サイクリング」についても紹介したい。台湾と四国、両方を一周走破したチャレンジャーには愛媛県から特別なジャージが贈呈されるのだ(※四国一周チャレンジへの事前登録要)。この祝賀会で筆者も驚いたが、なんと19名の参加者がダブル達成認定を受け、記念ジャージに袖を通すこととなった。

完走メダルと記念ジャージ

完走メダルと記念ジャージ。参加者の窪田さん直筆のメッセージカードもいただいた

環島と四国一周との協定は2019年からスタートし、共に約1,000kmの島一周ルートであることから、ある種の共通性を有している。これから環島に挑む方で、スケジュールに余裕があるならばぜひ四国一周にもチャレンジしてもらえたら、より一層参加のモチベーションが高まるだろう。国内ゆえに環島よりも挑戦しやすく、されど環島と同じくらいの達成感を味わえるはずだ。

ユーバイク

旅行者も気軽に利用できるシェアサイクル「Ubike」。市内観光に便利だ

完走の翌日、帰国便までの時間は自由行動となり、参加者はお土産購入やプチ観光を楽しんだ。なお、台湾出張に慣れた日本人スタッフ数名は、シェアサイクルを用いて市内グルメツアーに繰り出していた。

フロンティアスポーツウェアのショールーム

台湾アパレルブランド「Frontier Sportswear」のショールーム。日本では買えないアイテムが揃う

筆者は台湾のサイクリングアパレルブランド「Frontier Sportswear」のショールームを訪問し、ブランドマネージャーのブライアンさんと交友を温める時間とした(彼とは2023年の富山湾岸サイクリングイベントで知り合った)。フライト前に現地スタッフのチョウさん、ノビタさん、メイさんと別れの挨拶を交わし、夜22時に羽田空港へと帰着、ツアーはお開きとなった。

フォルモサがくれた贈り物

スカイランタン

最終日のスカイランタンでの1コマ。サイクリング一辺倒ではない“新体験”に満ちたツアーであった

それでは総括に入ろう。ここまで全4章に渡ってレポートした通り、フォルモサツアーは海外サイクリング挑戦を全力でバックアップしてくれる、“おもてなし”に溢れたツアーであった。爽快感溢れるサイクリング体験を筆頭に、グルメ、絶景、歴史探訪と、台湾の魅力を重層的に味わうことができる。加えて、走行ルート、宿泊、食事の手配は全てツアー任せで済むよう設計されており、全てがスムーズに運ぶ。この快適さを味わうと、世界中のサイクリングルートをガイドツアーで走りたくなること請け合いだ。

筆者はガイドとしてフォルモサツアーに初参加し、素晴らしい経験と学び、そして達成感を得ることができた。中でも1番の財産は、ツアー終了後も続くサイクリング仲間に恵まれたことであり、日本でも引き続きグループライドを楽しんでいる。読者にも、ぜひツアーを通じて素敵な台湾時間を満喫してほしいと心から願っている。11日間で総額50万円以上という参加コストは絶対額こそ高く見えるが、その充実度とサービスの厚さを考慮すれば、十分に見合うものだと言えよう。

沖縄ツアー

帰国後はツアー参加者の有志数名で沖縄ツアーを企画し、グループライドを楽しんだ

本ツアーをどんな方におすすめするかと言えば、サイクリングの楽しみを一通り味わい尽くしたベテランライダーや、サイクリングを通じた希少なチャレンジを欲する方、台湾を愛する方など様々だ。振り返ると自転車歴の長い参加者が多かったものの、一定レベルの走力と強い意志さえあれば、どんな方でも楽しめるツアーであることは保証したい。台湾での経験は目新しいものばかりなので、好奇心強めな方はより一層のめり込めるはずだ。

自行車文化探索館

2日目の自行車文化探索館での1コマ。サイクリングは日台交流の原動力となる

そして、フォルモサは単なるサイクリングツアーの枠に収まらない、特別な意義があると筆者は考えている。そのポイントは大きく2つある。

1つ目は、本ツアーがフォルモサの主日程に「日本代表(日本騎士團)」として公式参加できる、国内唯一の窓口である点だ。

環島サイクリング自体はフォルモサ期間を問わずいつでも可能だが、公式イベントで一周認定を受けられる点はツアーの魅力であり、強調しておきたい部分だ。日本騎士團の一員として熱烈な歓迎を受けることになり、台湾の虜になること間違いなしだ。また、台湾は世界屈指の親日国であり、台湾企業であるジャイアントが日本人向けツアーを催行する意味は、極めて大きいと思う。

観光産業が息を吹き返した今、ぜひ多くの日本のサイクリストに環島してもらい、台湾への理解を深め、友情を結んでもらいたいと願う。さらに、台湾人の間でも日本のサイクリング環境への関心がより一層高まっているとも聞く。彼らにも日本の道と風景を楽しみ、より一層日本を好きになってもらいたいものである。

台湾から学び、日本のサイクルツーリズムに活かす

ガイド+サポートカー付きのツアー

ガイド+サポートカー付きのツアーはまだマイナーな存在だが、今後のニーズの高まりに期待したい

フォルモサツアーの持つ2つ目の意義は、日本にサイクリングツアーを定着させる、よき手本となりうる点だ。

フォルモサツアーは10年もの年月と共に、台湾をサイクルツーリズム大国へと昇華させ、日本を遥かにリードする境地へと押し上げた。現地を走って実感したが、台湾はインフラ面も文化面も先行する“自転車天国”であり、世界中のサイクリストを惹きつける場所であった。また、サイクリングツアーの催行数も桁違いであり、環島に挑むサイクリストグループの姿は、もはや日常風景の一部となっている。

日本でも週末には多くのサイクリストたちが行き交うが、本ツアーのようなガイド+サポートカーとセットで走る姿はほとんど見ない。現状、日本において自転車特化型ツアーはまだまだマイナーな存在だ。ごく少数のツアー事業者が、一部の外国人富裕層向けに実施しているに留まる。インバウンド復活に沸く今であれば、同様のガイドツアーで日本を走りたいというニーズはあるだろうし、日本人サイクリストにも魅力を理解してもらえるだろう。

富山湾岸サイクリングルート

筆者の暮らす富山でも湾岸サイクリングルート整備が進み、ナショナルサイクルルートに指定されるに至った

台湾にない日本の強みは、四国一周を筆頭に絶好のサイクリングルートが、東西南北あらゆる地域に広がっている点だ。ブルーラインの敷設やサイクルステーションの設置など、インフラ整備が全国的に進んでいることも追い風となる。

読者の中にも、旅行先のウィッシュリストを温めている方は多いのではないだろうか。未踏の地でサイクリングを楽しみたい時、ガイドツアーはその望みを叶えてくれる存在だ。台湾から学び、ガイド付きサイクリングツアーの楽しさや価値が、日本でも広く認知される日が来るだろう。なお、サイクリングガイドの存在意義については、JCGAの解説を参照されたし。

ジャイアントジャパンのアドベンチャー事業部は、以降もフォルモサツアーを継続拡大させていくと共に、国内向けのツアー催行にも注力していく構えだ。今後に期待すると共に、筆者もサイクルツーリズム振興の一助になれればと願う。

 

「2024 フォルモサ900GIANTオフィシャルツアー」の販売がスタート!

 
 

今年の「2024FORMOSA900」は、例年より1か月ほど早い10月上旬に開催されることとなり、日本からの公式ツアーも前回より早い3月28日に販売が開始されている。

今回の公式ツアーでは、サイクリング日程の1日短縮も大きなポイントだ。台湾一周トータル約950kmを、FORMOSA900の標準日程の9日間ではなく8日間で走る「日本團」独自のツアー行程を採用し、以下の日程表通り金曜日出発〜翌週末の日曜日帰国とすることで、多忙な方でも参加しやすいように考慮したという。また、現地集合/解散プランも新設定されてスケジュール設定の自由度が増したこともプラス評価だ。

旅行条件の詳細はGIANTホームページの募集要項でご確認いただきたい。

2024フォルモサ900の行程表 2024フォルモサ900のマップ

 

筆者プロフ:中谷亮太
富山在住の自転車ライター。JCGA公認サイクリングガイドとして本ツアーに帯同した。