猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第30回

目次

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第30回

PC1の東田沢郵便局。全部で9つのPCチェックがある。その通過時刻が完走の目安となり、スリルを味わえる。

RAA青森650に出場!前回のお話

RAA(Ride Across Aomori)青森当日、空はどんより曇り空。
これから650km、32時間の死闘が繰り広げられる……と、そういう事を考えてはいけない。
考えようと考えまいとそれは「起こる」のだ。

ロングライド女子部の面々も顔色はすぐれない。聞くとリレー組は余裕が9分しか無いらしい。
ワンミスで完走は厳しくなる。

650kmをミス無しで走れるとは思えない……それはソロ組の私と多喜氏にも同じ事だ。
無謀な……そしてその人生最長の壮大な冒険が朝6時にスタートした。

完走のコツは休まないこと!?

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第30回

レース前日。余裕が9分しかない事を知り、緊急会議をするロングライド女子部。

 

なるべくルートミスを防ぎたいので集団で走りたいが、RAAMの予選はドラフティングが禁止されているため、前の走者と10mの距離をあけて走る。

今回の作戦はズバリ「休まない!」
後半グダグダになり失速するし、ミスも起こるだろう。
だから休まず前半にタイムを稼ぐ。

そのためにロングボトル2本にアスリート粉飴が3000kcal分も入っている。
650km走るのには10000kcal必要だ。
残り6000kcalの大量の粉飴をサドルバッグに詰め込んだ。
後は山田師匠から教わったカロリーメイト5箱!補給はこれだけの予定だ。

青森市内を抜けると早速それは「起こる」。
自転車の重心が左右にフラフラと定まらない…振り向くとサドルバッグがフラフラ揺れているではないか!
粉飴だ!!
サドルバッグは重いものほど奥に詰め込むのが鉄則だが、私は1番使うであろう重い粉飴を手前に入れていた。

直したいが、ここで一人にはなりたくない。
揺れるサドルバッグのまま青森市内を抜け、むつ市方面へと向かう。

すると早速ひとつ目のPCが現れた!
PCでは看板の写真を撮り、本部に送信し、通過を知らせるのだが、常連の皆様のその手際の速いこと!
サドルバッグにもたつく私と多喜氏はあっという間に取り残されてしまった。

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第30回

電動アシストママチャリぐらいの重さになった愛車。その原因はもちろん大量の粉飴だ。

 

本番でいきなり実戦投入すると大変なことになる

スタートして僅か1時間で1人旅になる。
こうなると襲って来るのがルートミスの恐怖だ。
ルートから外れると外れた場所まで戻り再スタートしなければならず、かなりの時間ロスだ。

今回は時計回りに下北半島→七戸→八甲田→弘前→竜飛岬→青森市内。その交差点の数は膨大だ。
一番の大敵はルートミスだ!!

そう考えた私はGoogle MAPでRAA青森のコースを何周も脳内で完走してきた。
分かりづらい交差点はスクリーンショットでお店や看板などを撮影。
おかげで私のiPhoneは今でも青森のスクショだらけだ。

猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第30回

RRA青森のコース。青森は半島によって個性が異なり、走っていて飽きない楽しいコースだった……と思う。

 

スタートして4時間、むつ市に到着する。
距離でいうと100kmくらい。

その時、異変が起こった…いつも攣らない脚が攣り始めたのだ…何故だ!?
そんなに重いギヤは踏んでいない。

漕げば漕ぐほどその攣りは脚全体へと広がって行き、ペダルが踏めず失速し時速20kmを切りだした…今回(上りも含め)アベレージ21kmを出し続けないと完走できない…これはマズい!!

リタイアが脳裏をかすめ全身から冷や汗が流れ出す。
青森に向け一年頑張ってきた…何のための努力…何のためのスクリーンショットだったのだっ!?

こんな事は初めてだ…必死で思考を巡らす…「いつもと違う事をしていないか?」
いつもと違う事…いつもと違う事。

その時、サドルバッグがフラフラと揺れる…
粉飴だ!?今回初めて導入しているもの!
それは忌々しくサドルで揺れ続けるアスリート粉飴だ!!

私は水分補給を全て粉飴から取っていた。
恐らくそれだけでは水分が足らず、脱水から脚攣りを発症しているのだ。

「自販機!自販機はどこだ!?」
必死で周りを見渡すが、すでに むつ市を通過し何も無い海岸線に入っている…
スタートして僅か100kmで私のRRA青森は終わりを迎えようとしていた…

猪野 学 公式X(Twitter)