ロードバイクの必須技術「コーナリング」の基本

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ロードバイクの必須技術「コーナリング」の基本

ロードバイクに乗るうえで「曲がる」「止まる」という技術は必須だ。以前、『うまく・速くなる ロードバイクのブレーキング』という特集を行ったが、今回はコーナリングの基本について特集しよう。

 

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あらゆる状況に通じる「定常円旋回」を身につけよう

今回教えてもらうのは、プロサイクリスト/UCIコーチの小笠原崇裕さんだ。

アドバイザーの小笠原崇裕さん

プロサイクリスト/UCIコーチの小笠原崇裕さん。全日本MTB選手権アンダー23優勝、エクステラ全日本選手権8年連続優勝など、アスリートとしても輝かしい成績を持つ。近年はコーチとして精力的に活動する

「ブレーキングの特集でも言いましたが、ロードバイクでスピードを出して走るためには、きちんと曲がれる・止まれる(スピードコントロールできる)ことが必要不可欠です。

曲がる、つまりコーナリングと言うと、例えば下り坂のコーナーを曲がったり、レースでサーキットコースを走る場合のコーナーをイメージすると思いますが、そうしたあらゆるコーナリングの状況に対応できる、基本中の基本となる“定常円旋回”という技術を身につけることが大切となります」と小笠原さん。

定常円旋回

定常円旋回

「定常円旋回というのは、一定の旋回半径を保ったまま曲がっていくコーナリングの方法です。ここからは、平地の舗装路面にマーカーコーンを並べ、コーナーを擬似的に作った状況で説明を行います。これは、どんなコーナーにも対応できる定常円旋回を身につけるために、こうした平地で曲がる練習をする必要があるためです。

そのうえで、ロードバイクのコーナリングで基本となるのは次の3つです。

①ブレーキング
②目線
③重心位置

この3つがうまくそろうと、安定して確実に曲がることができます」。

詳しく教えてもらおう!

 

POINT① ブレーキング

コーナリングのコツ:ブレーキング

「まず、コーナーを曲がりきれる速度までしっかりと事前に減速することが重要となります。特にここで気をつけたいのは、コーナーに入る手前の自転車がまっすぐ立った状態でしっかりとブレーキングし、コーナリングの最中に自転車が傾いた状態ではなるべくブレーキをかけない&絶対に強くブレーキングしないことです」。

ブレーキングの注意点

「自転車の性質として、自転車がまっすぐ進んでおり、かつまっすぐ立った状態だとブレーキング力とタイヤのグリップ力を最大限に発揮できます。一方、曲がっている最中で自転車が傾いた状態だと、ブレーキングでタイヤのグリップ力が失われやすくなります。これがスリップによる落車の原因になります」。

ブレーキングの位置

「上の図のコーナーを例にすると、青いマーカーコーンの部分まででブレーキングを終えるのが望ましいです。

斜度のきつい下り坂で、もしコーナーの入り口でしっかり減速してもコーナリング最中にまたどんどん速度が上がってしまうようなシチュエーションの場合は、コーナリング最中には適宜“当て効き”(絶妙にブレーキをかけてスピード調整すること)をしてください。詳しくは、『うまく・速くなる ロードバイクのブレーキング』の記事も参考にしてください」。

コーナリングの最中に曲がりきれなくなり、強くブレーキをかけてしまう人が大多数だと思われる。まずはこれを実践だ!

 

POINT② 目線

ロードバイクでコーナリングするときのコツ:目線

「次に重要なのは、常にコーナーの出口・曲がっていく方向へ目線を送っていくことです。こうすることで、目線をきっかけに肩から腰にかけての上半身全体もコーナーの出口・曲がっていく方向へと向き、安定して曲がることが可能になります。なお、これは次に紹介する“外足荷重”とも絡みます。

つまり、ハンドルを切って曲がるのではなく、目線をきっかけにして体を曲がる方向に向けることによって自転車が傾き、それによって曲がれるわけです。ハンドルを切るようにして曲がるとバランスを崩し、うまく曲がることができません。

多くの人は恐怖心から視線がすぐ下に向いてしまったり、曲がっていく方向とは違う方向、特にまっすぐ先の方向に向いてしまいがちです。

ちなみに、上の写真では赤いマーカーコーンがコーナーのちょうど中央の位置に当たりますが、このあたりに差しかかったら特に目線をコーナー出口へと送りだすと良いでしょう。

目線をコーナー出口・曲がる方向へ向けるのは意外と難しいです。慣れない人は、最初は“見てはいけない方向を見ないようにする意識を持つ”ことから始めてみてください。例えば、まっすぐ前の方向を見ない、すぐ下を見ない、というように意識すると良いでしょう」。

 

POINT③ 重心位置

ロードバイクのコーナリングのコツ:重心位置

「“自転車の中心に体の重心を持ってくること”、別の表現をすれば“自転車の中心に乗ること”が3つ目のポイントです。

自転車の中心とは部品でいうとBB(ボトムブラケット)にあたりで、ここからまっすぐ上への延長線上に自分の体の重心、だいたいへそのあたりをイメージすると良いですが、それがくるようにしましょう。なお、下り坂の場合はそこからやや後ろの位置に自分の重心をずらす必要があります」。

ロードバイクのコーナリングのコツ:重心位置

「また、正面から見たとき自転車の軸と自分の体の軸がまっすぐ合わさるようになっていることも大切です。コーナリング中に車体を倒していってもこの軸がずれないようになるのが良いです。ずれているとやはり重心位置がずれていること意味します」。

重心が後ろに行きすぎている悪い例

重心が後ろに行きすぎている悪い例

重心が前に行きすぎている悪い例

重心が前に行きすぎている悪い例

「よくやりがちな悪い例は、恐怖心から腰を後ろに引きすぎて、重心が後ろに行きすぎてしまう例です。また、同様にハンドルにしがみつくようにしてしまい、重心が前に行きすぎる例もよくあります」。

 

外足荷重も重要

外足荷重

「ここで適切な重心位置を保つために重要なことがもう一つあります。それがこの外足荷重(そとあしかじゅう)です。

コーナーリングするとき、内側に倒れる方(イン側)のペダルを上に上げ、その逆側(アウト側)の足を真下に下げます。この真下に下げた方の足にしっかりと体重を乗せるようにします。これが外足荷重です。反対のイン側の足がペダルから離せるくらい、外足側にしっかりと荷重しましょう。

こうすることでタイヤを地面に押し付ける力も働き、グリップをしっかりと稼ぐことができます。

また、先ほど紹介した目線をコーナー出口・曲がりたい方向に向け、肩から腰にかけてもその方向に向けることが重要と説明しましたが、外足荷重はこの動作にも大きな影響を及ぼします。実は、しっかりと外足荷重ができていないと、この肩から腰にかけてを曲がる方向に十分に向けることができないのです」。

良いコーナリングと悪いコーナリングの比較

小笠原さんと編集部員のコーナリング姿勢を比較した写真

「上の写真は、私がコーナリング中最も自転車を倒している瞬間と、サイクルスポーツ編集部・ジュンキさん(ロードバイク初級者)の同じ瞬間とを比べたものです。

ジュンキさんの方は8割がた良い動きができているのですが、よく見ると肩〜腰にかけてコーナー出口とは違う方向を向いているんです。私の方はしっかりと肩〜腰までコーナー出口を向いているのが分かるでしょうか。これは、ジュンキさんは外足荷重が十分でないからです。

外足荷重がしっかりできていると重心位置を適切に保つことができるうえ、かつ体全体をしっかりと曲がる方向に向けられ、タイヤのグリップも確保でき、安定して曲がることができるのです。

なお、初心者がやりがちな失敗例で、イン側に来る足を下に下げてしまい、地面にペダルをこすって落車してしまうことがあります。これは危険なので、注意してください」。

 

コーナリングの練習方法

良いコーナリングの基本は分かった。では、これはどうやって練習したらいいのだろうか?

ロードバイクのコーナリングの練習方法

「はじめにも説明しましたが、できるだけきれいな舗装路面の平地の広い場所を見つけ、そこに上の図のようにマーカーコーンを置いてコーナーを作り、助走して侵入しマーカーコーンをなぞるように定常円旋回で曲がる練習を繰り返してください。左右どちらも均等に行いましょう。

コーナーは広めに作ると安心です。また、最初はゆっくりとした速度で行い、上達してきたら速度を速めていってみましょう。

なお、当然のことですが公道ではなく、かつ自転車の乗り入れが禁止されていない場所で、周囲に人がいない状況で十分に安全には注意して行ってください。

こうしたシチュエーションで練習することで、どのような状況にも対応できる普遍的なコーナリング技術を磨くことができます」。

 

下ハンドル? ブラケット?

「今回、私は下ハンドルを持って実演していますが、最初のうちはブラケットを持つので結構です。下ハンドルを持つと高い速度域のときやきつい勾配の下り坂でより安定して曲がることができるというメリットがありますが、一方で姿勢が低くなるので恐怖心を覚えてしまいやすいというデメリットもあります。

ですので、慣れないうちは無理せずブラケットで安定してできるようになるまで練習してみるのでOKです」。

 

実際やってみるとけっこう難しい。そして、意外と飽きずに楽しんで練習できる! 適した場所を探すのに苦労するかもしれないが、やってみる価値はかなり大きいと思う。ぜひ取り組んでみてほしい。ロードバイクに乗るのが格段にラクで楽しくなるはずだ。