2023全日本トラック4日目　最後のレース種目世界への足掛かり

2023.05.20
レース

text 滝沢佳奈子
photo 滝沢佳奈子

静岡県伊豆市・伊豆ベロドロームにて5月12日～15日の日程で開催される第92回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース。最終日の4日目は、短距離、中距離ともにタイムトライアル種目。それに加えて、最後に男女ポイントレースが行われた。

男子ポイントレース

大会最後の種目として行われたのはポイントレース。
勝利を挙げたのは、前日の男子オムニアムで松田祥位（チームブリヂストンサイクリング）と激戦を演じた兒島直樹（チームブリヂストンサイクリング）だった。前日と同じく松田とのデッドヒートが繰り広げられた。
「昨日走ったオムニアムでは調子は本当に良かったんですけど、最後の詰めの甘さが出たので今日は絶対に最後まで諦めないように頑張って走りました」
兒島はそう話す。

集団でスタートした男子ポイントレース

スタートから逃げようと数名の選手が飛び出すが、集団が吸収し、そこから飛び出した最初のポイント周回を今村駿介（チームブリヂストンサイクリング）がトップ通過。
次のポイント周回では、松田がトップ通過し、その後、大仲凛功（JCLチーム右京）と佐藤健（Team SSP/愛三工業）が飛び出し、それに松田が合流して、松田と佐藤のみがポイント周回を取る。
そのポイント周回が終わったタイミングで一人飛び出した松田。残り83周の段階で一人で早々に1ラップを決めると、首位に浮上した。

佐藤と松田でポイント

その後、集団一つのところから今村がかけていき、それに兒島と松田が合流。
5回目のポイントは、兒島が先頭通過し、後ろから橋本英也（チームブリヂストンサイクリング）が3人に合流。4人の逃げと4人の集団というチームパシュートのような構図となった。
6回目のポイント周回に兒島がトップ通過した勢いでそのまま単独で飛び出し、後ろの4名に一気に追いつき、1ラップを成功させた。その後ろから松田も合流し、松田は2回目のラップとなった。

4対4の構図となった

残された橋本と今村が先頭となると、7回目のポイントは、橋本がトップ通過。
後ろからはラップしたばかりの兒島がさらに飛び出し、今村と橋本のところへと合流。トップの集団は今村、兒島、橋本の3人に。
8回目のポイントを橋本が先頭通過。その間に後ろを走っていた松田は兒島らにラップされ、-1ラップとなった。この時点で-20ポイントされた松田と兒島のポイント差は1ポイントと接戦に。

ポイントを取りにいく兒島

先頭は松田を含めた4人のまま9回目のポイント周回。橋本が先頭通過。
10回目のポイント周回を前にさらに今村が単独で先行するが、兒島が一気に捲り、ポイント周回をトップで通過した。
前のメンバーがお互いを見合って牽制している間に、後続の4名も合流し、8名の集団に。
11回目のポイント周回の鐘がなると、兒島がまたしても捲り切ってのトップ通過し、首位でポイントを重ねる。

ガッツポーズでフィニッシュする兒島

橋本と今村が二人で飛び出し、集団では兒島がラップされまいと積極的に前を引く。
最後の周は、橋本が先頭通過し、次点今村。
その後ろからはフィニッシュラインを前に兒島と松田が握手をかわし、優勝を決めた兒島がガッツポーズでフィニッシュラインを切った。

2023全日本トラック４日目ポイントレース

最後の追い上げで3位となった橋本はこう振り返る。

「最後のポイントだけ見ると、松田くんを行かせたのは大丈夫だったとして、兒島くんを逃がしちゃったのが僕の今回の敗因かなと思います。最後、逆転を狙ったんですけど届かなかった。でも良いトレーニングできたなと思っています」

2023全日本トラック４日目ポイントレース

2位の松田は早めに2ラップを成功させたが、後から振り返ると、「ちょっと急ぎ過ぎたかなって感じはしますけどね。個抜き（個人パシュート）の勢いでもう最初から行っちゃって」と話す。

兒島が一人で抜け出した後は、もう兒島の後ろにつくことはできなかった。「つければ良かったんですけどね。ちょっとカウンター気味で行かれたんで」

前日のオムニアムに続いてのレース種目でのメダル獲得について、「本当は1位が良かったんですけど、彼（兒島）も強いので。全然もう全く文句がない」と話した。

2023全日本トラック４日目ポイントレース

昨年に続けてこの種目で連覇となった兒島は、「僕の中では全日本選手権はオムニアムとポイントレースの優勝を狙っていて、前日のオムニアムは2位という結果に終わってしまった。今日のポイントレースでは去年に続いて2連覇になるので絶対勝ちたいなと思って、そこはもう気合いを入れて今日に臨みました」と話す。

序盤に松田に2ラップを取られたときにはこう思ったそうだ。

「本当に松田選手強かったんで、本当にやばいと思ってたんですけど、周りの選手が、特に橋本選手が僕に勝たせたくないのかわかんないんですけど、ずっとマークされていて。まずい！と思って。でもそこで他の人に頼っちゃ駄目だと思って、自分から積極的に前に行って松田選手を出し抜くことができたので、そこはすごい良かったかなと思います」

4日間レースが続き、ほとんどの選手が疲労困憊状態。兒島は”後半に強い”と周りから言われていたことを自覚したという。

「実際走った中で僕も実感したので。それが本当に自分の持ち味なんだなっていうのも、改めて実感できたレースだったので、すごく収穫になりました。長所を伸ばしつつ、まだまだ弱い部分も全然あるので、そこもこれから伸ばしていけたらなと思ってます」

2023全日本トラック４日目ポイントレース

今シーズン、世界大会であるネイションズカップにも出場してきた兒島だが、今後に向けていい感触を得たそうだ。
「第2戦のエジプト大会、そこでオムニアム出させてもらったんですけど、そこで予選落ちしてしまったので、そんな中でもコーチがもう1回、第3戦目でチャンスをくれた。そこは絶対にいい走りをしないと思って臨みました。しっかり予選も上がって、決勝ではやっぱりすごくレベルが高かったんですけど、その中でも自分の持ち味を出して、ポイントレースで2ラップ決められたり、世界との差を縮められてる感じがしたので、本当にこれからに繋がるいい大会になったなと思います」

昨シーズンにイギリスで走ったネイションズカップからの成長も感じられた。
「あのときはもう本当についていくのですら、きついぐらいレベルの差があって。ポイントレースではもう何もできずに確か1ポイントも取れずに終わったぐらい本当にレベルの差がありました。そこからすごく進歩しているなと思うので、ここ1年でまたもっとレベルが上がればなと思ってます。いや、上げていきます」

今回の全日本トラックに出場した強化指定Aのメンバーは全員ツアー・オブ・ジャパンへと出場する。アジア選手権に向けて、弾みをつけたいところだ。

男子エリートポイントレース（120ラップ・30㎞）　リザルト

2023全日本トラック４日目ポイントレース

1位　兒島直樹（チームブリヂストンサイクリング）　45pts
2位　松田祥位（チームブリヂストンサイクリング）　40pts
3位　橋本英也（チームブリヂストンサイクリング）　38pts

女子ポイントレース

2023全日本トラック４日目ポイントレース

男子ポイントレースの前に行われた女子ポイントレース。
最初のポイント周回を集団内で梶原悠未（TEAM Yumi）がトップ通過すると、2回目は池田瑞紀（チーム楽天Kドリームス／早稲田大学）が早めから仕掛け、単独で先行。そのままポイントを一位通過した。
同じように今度は3回目のポイント周回に向けて垣田真穂（チーム楽天Kドリームス／早稲田大学）が飛び出し、トップで通過。4回目は、内野艶和（チーム楽天Kドリームス）がトップ通過したが、その全てで梶原は2位通過。さらに5、6回目もトップ通過し、7回目は周りを囲まれる形となって4位通過。
最終フィニッシュを抜け出した池田が取り、3位。垣田が2位で、優勝は安定してポイントを取り切った梶原。

2023全日本トラック４日目ポイントレース