ツール・ド・フランス2022 第16ステージはウルが逃げ切り区間初優勝

  • movie A.S.O./Pauline BALLET/Charly Lopez / ©SprintCycling

フランスで開催中の第109回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、休養日明けの7月19日にカルカッソンヌからフォワまでの178.5kmで、丘越え区間の第16ステージを競い、カナダのユーゴ・ウル(イスラエル・プルミエテック)が独走で逃げ切り、区間初優勝を果たした。
 

ツール・ド・フランス2022

■10年前に事故で亡くなった弟のために、悲願の区間優勝を成し遂げたウル (©SprintCycling)

 
区間2位はフランスのヴァランタン・マドゥアス(グルパマ・FDJ)、3位はカナダのマイケル・ウッズ(イスラエル・プルミエテック)だった。マイヨ・ジョーヌはデンマークのヨーナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)が守った。
 

ツール・ド・フランス2022

■マイヨ・ジョーヌはヴィンゲゴーが守った (photo : A.S.O./Pauline BALLET)


3選手が新型コロナで不出走

最後の休養日を終え、ツールはいよいよ最終週に突入。第16ステージは147選手が出走した。第15ステージ終了後に主催者が行った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一斉検査で陽性になったAG2R・シトロエン チームのミカエル・シェレル(フランス)とオレリアン・パレパントル(フランス)がスタートできなかった。すでに3選手がレースを棄権しているAG2R・シトロエン チームは、これで残り3選手になってしまった。

さらに、前日にチームが行った新型コロナの検査で陽性になったドイツのマックス・ヴァルシャイド(コフィディス)もツールを去った。今年のツールは、開幕後に新型コロナの検査で陽性になった選手がこれで11人になった。第15ステージの落車で肋骨を骨折していたデンマークのヤコブ・フルサン(イスラエル・プルミエテック)と、風邪を患ったドイツのレナート・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)もスタートしなかった。
 

29人の逃げ集団

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■逃げ集団にはマイヨ・アポワのゲシュケが加わっていた (photo : A.S.O./Pauline BALLET)

 
第16ステージは丘越え区間に分類されていたが、後半にカテゴリー1の峠を2カ所越えるレイアウトになっていた。スタートして3kmでニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)がスピードを上げ、29人の大きな逃げ集団が形成された。そこにはマイヨ・ベールのウァウト・ヴァンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、マイヨ・アポワのシモン・ゲシュケ(コフィディス)、そしてウールも加わっていた。

総合成績が最も上位だったのはアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)で、10分32秒遅れの総合11位だった。逃げ集団は28km地点でユンボ・ヴィスマがコントロールする集団に5分40秒差を付けていた。30km地点でアレクシー・グジャール(B&Bホテルズ・KTM)が単独で先行したが、51km地点で逃げ集団に吸収された。

67.8km地点の中間スプリントはニールス・エーコフ(チームDSM)が先頭で通過し、マイヨ・ベールのヴァンアールトは2位通過だった。ここで集団とのタイム差は6分45秒になっていた。集団の後方では、胃腸炎を患っていたマルク・ソレル(UAEチーム・エミレーツ)が遅れ始めた。

カテゴリー1のポルト・ド・レール峠のふもとで、逃げ集団からオリヴィエ・ルガック(グルパマ・FDJ)とダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)がアタック。カルーゾは単独で峠を上り続けた。頂上まで残り5kmでマイケル・ストーラー(グルパマ・FDJ)とウッズがカルーゾに追いつき、さらにヴァンアールト、ゲシュケ、マッテーオ・ジョーゲンセン(モビスターチーム)、ブランドン・マクナルティ(UAEチーム・エミレーツ)も合流。山頂はマイヨ・アポワのゲシュケが先頭で通過した。

集団では、ポルト・ド・レール峠でマイヨ・ブランを着たタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)が2回攻撃を試みたが、マイヨ・ジョーヌのヴィンゲゴーは難なく反応した。ポガチャルは山頂を通過する時に3回目の攻撃を試みたが、成功はしなかった。
 

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■総合争いを続けるマイヨ・ジョーヌとマイヨ・ブラン (photo : A.S.O./Pauline BALLET)

 
先頭の逃げ集団は、ポルト・ド・レール峠の下りで遅れていた選手たちが合流し、12人になっていた。そこからゴールまで残り40kmでウルがアタックし、単独で最後のミュール・ド・ペゲール峠(カテゴリー1)を上り始めた。ウルはジョーゲンセンとウッズに26秒差を付け、ゴールまで残り27.2kmの山頂を通過した。

ウルはそのまま逃げ切り、空を指差してゴールした。彼は昨年のツール第10ステージで逃げて敢闘賞を獲得した際、2012年に事故で亡くなった弟のために、ツールで区間優勝するのが目標だと語っていた。そして事故からちょうど10年目の今年、ウルは遂に悲願を達成したのだ。カナダ出身の選手がツールで区間優勝したのは、1988年のスティーブ・バウアー以来2人目で、フランス語圏のケベック州出身の選手が優勝したのは初めてだった。
 

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■機材故障でマイカを失ったポガチャルは最後の峠で攻撃のチャンスを失った (©SprintCycling)

 
後方のマイヨ・ジョーヌ集団は、ミュール・ド・ペゲール峠でラファウ・マイカ(UAEチーム・エミレーツ)が先頭を引き始め、ポガチャル、ヴィンゲゴー、セップ・クース(ユンボ・ヴィスマ)、ナイロ・キンタナ(チームアルケア・サムシック)だけになっていた。ところが、坂の途中で先頭を引いていたマイカは自転車のチェーンが切れて止まってしまった。

UAEチーム・エミレーツは主導権を失い、マイヨ・ジョーヌ集団はクースが引き始めた。ポガチャルは攻撃のチャンスを失ったまま、ヴィンゲゴーと一緒に頂上を通過した。上りで遅れた英国のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアズ)は、下りでマイヨ・ジョーヌ集団に合流し、総合3位を維持できた。しかし、フランスのロマン・バルデ(チームDSM)はこのステージで3分半遅れ、総合4位から6分37秒遅れの総合9位にまで順位を下げてしまった。

この日、早々に遅れたソレルは結局制限時間内にゴールする事ができず、失格になってしまった。これでポガチャルはピレネー山岳区間を前にまた1人チームメイトを失ってしまった。
 

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■バルデは3分半遅れ、総合9位へと後退した (photo : A.S.O./Pauline BALLET)

 
■遂に悲願のツール区間優勝を果たしたウルのコメント
「ウッズのためのお膳立てでアタックして、エンジン全開で行った。急峻な上り坂ではしがみついて、苦しんだ。山頂で30秒か40秒リードしていれば、それ(区間優勝)ができると分かっていた。たった20秒のアドバンテージでは、残りはまだ長かったが、決して諦めなかった。技術面で、ボクはいくらかタイムを稼いだ。最後の20kmでサポートカーがいなくて、いくらかの食糧を逃していたから、脚が攣ってしまうのが怖かった。

レースで勝つのは、10年前に亡くなった弟のために持っていた夢だった。彼のために何年も努力してきた。信じられないよ。何と言えば良いのか分からない」
 

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■区間優勝したウルが敢闘賞も獲得した (photo : A.S.O./Pauline BALLET)


■第16ステージ結果

[7月19日/カルカッソンヌ~フォワ/178.5 km]
1. HUGO HOULE (ISRAEL-PREMIER TECH / CAN) 4h 23’ 47’’
2. VALENTIN MADOUAS (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 01’ 10’’
3. MICHAEL WOODS (ISRAEL-PREMIER TECH / CAN) + 01’ 10’’
4. MATTEO JORGENSON (MOVISTAR TEAM / USA) + 01’ 12’’
5. MICHAEL STORER (GROUPAMA – FDJ / AUS) + 01’ 25’’
6. ALEKSANDR VLASOV (BORA – HANSGROHE / RUS) + 01’ 40’’
7. DYLAN TEUNS (BAHRAIN VICTORIOUS / BEL) + 01’ 40’’
8. SIMON GESCHKE (COFIDIS / GER) + 02’ 11’’
9. MATHIEU BURGAUDEAU (TOTALENERGIES / FRA) + 05’ 04’’
10. DAMIANO CARUSO (BAHRAIN VICTORIOUS / ITA) + 05’ 04’’
15. JONAS VINGEGAARD (JUMBO – VISMA / DEN) + 05’ 54’’
36. ROMAIN BARDET (TEAM DSM / FRA) + 09’ 30’’

■第16ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. JONAS VINGEGAARD (JUMBO – VISMA / DEN) 64h 28’ 09’’
2. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 02’ 22’’
3. GERAINT THOMAS (INEOS GRENADIERS / GBR) + 02’ 43’’
4. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 04’ 15’’
5. DAVID GAUDU (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 04’ 24’’
6. ADAM YATES (INEOS GRENADIERS / GBR) + 05’ 28’’
7. LOUIS MEINTJES (INTERMARCHE – WANTY – GOBERT MATERIAUX / RSA) + 05’ 46’’
8. ALEKSANDR VLASOV (BORA – HANSGROHE / RUS) + 06’ 18’’
9. ROMAIN BARDET (TEAM DSM / FRA) + 06’ 37’’
10. THOMAS PIDCOCK (INEOS GRENADIERS / GBR) + 10’ 11’’

[各賞]
■ポイント賞:WOUT VAN AERT (JUMBO – VISMA / BEL)
■山岳賞 : SIMON GESCHKE (COFIDIS / GER)
■新人賞:TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
■チーム成績:INEOS GRENADIERS (GBR)
■敢闘賞 : HUGO HOULE (ISRAEL-PREMIER TECH / CAN)
 


第17ステージはピレネーのカテゴリー1頂上ゴール

ツール・ド・フランス2022

●第17ステージのコースプロフィール(MAP : A.S.O.)

 
7月20日はサン・ゴーダンスから標高1580mでカテゴリー1のペイラギュード頂上までの130kmで、ピレネー山岳区間の第17ステージが行われる。コースは途中、アスパン峠(カテゴリー1)とヴァル・ルロン・アゼ峠(カテゴリー1)も通過する。
 

ツール・ド・フランス2022

(photo : A.S.O./Charly Lopez)

 

ツール・ド・フランス 公式サイト

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