ジロ・デ・イタリア2025 グラベル区間の第9ステージはヴァンアールトが初優勝し、デルトロがマリア・ローザ

2025.05.19
レース

text sasachini
photo LaPresse

イタリアで開催中の第108回ジロ・デ・イタリア（ＵＣＩワールドツアー）は、5月18日に中部ウンブリア州のグッビオからトスカーナ州のシエナまでの181kmでグラベル（未舗装路）区間の第9ステージを競い、ベルギーのワウト・ヴァンアールト（チームヴィスマ・リースアバイク）が、メキシコのイサーク・デルトロ（ＵＡＥチーム・エミレーツ・ＸＲＧ）を一騎打ちのゴールスプリントで打ち負かし、30歳で区間初優勝を果たした。

ベテランのヴァンアールトがプロ2年目のデルトロをまんまと出し抜いて区間初優勝をもぎ取った (photo : LaPresse)

この日、初めてマリア・ローザを着て地元を走ったイタリアのディエゴ・ウリッシ（ＸＤＳ・アスタナチーム）は、5分以上遅れてゴール。メイングループも1分遅れだったため、デルトロが総合首位になり、メキシコ出身の選手として初めてマリア・ローザに袖を通した。

今年の総合優勝候補の１人であるスロベニアのプリモシュ・ログリッチ（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）は、グラベルで落車に巻き込まれた後、後輪のパンクでさらに遅れ、2分22秒遅れの区間19位でゴールし、総合3位から10位へと後退してしまった。

デルトロがメキシコ人初のマリア・ローザ着用者になった (photo : LaPresse)

後半にグラベルを走るストラーデ・ビアンケ区間

第9ステージは172選手が出走。3月に開催されるストラーデ・ビアンケ（ＵＣＩワールドツアー）で使用されるグラベルを、後半に5カ所通過するコースだった。ゴールまで残り67.7kmで、序盤に逃げ出した6人のグループが最初のグラベルに到着した時、集団とのタイム差は2分近くあった。

グラベルが始まるとマリア・チクラミーノを着たマス・ピーダスン（リドル・トレック）が先頭を引き始めた集団はバラバラになった。マリア・ローザを着て地元トスカーナを走るウリッシは、最初のグラベルで集団から遅れてしまった。先頭の逃げも最初のグラベルでアルペシン・ドゥクーニンクのケイデン・グローヴズとクインテン・ヘルマンスの２人になり、集団とのタイム差も大きく縮まっていた。

ログリッチが落車とパンク

小さくなったメイン集団では、ゴールまで残り51kmの２カ所目のグラベルで、前方を走っていたルーカス・ハミルトン（イネオス・グレナディアズ）が転倒し、ログリッチ、トム・ピドコック（Q36.5 プロサイクリングチーム）、ブランドン・マクナルティ（ＵＡＥチーム・エミレーツ・ＸＲＧ）が巻き込まれてしまった。この落車でメイン集団は混沌となり、幸運にも落車を逃れたコロンビアチャンピオンのエガン・ベルナル（イネオス・グレナディアズ）、デルトロ、ヴァンアールトらが抜け出し、先頭の2人に合流した。

その一方で、落車で遅れたログリッチは後輪のパンクにも見舞われてしまい、さらに遅れてしまった。ゴールまで残り20.6kmで４カ所目のグラベルが始まった時、メイングループは1分遅れ、ログリッチのグループは1分37秒遅れだった。先頭では4カ所目のモンテアペルティはグラベルの丘でデルトロがアタックし、付いていけたのはヴァンアールトだけだった。

上りのグラベルでアタックしたデルトロに付いていけたのはヴァンアールトだけだった (photo : LaPresse)

ベテランのヴァンアールトは21歳のデルトロの後方を走り続け、シエナの街を目指した。ストラーデ・ビアンケでおなじみの最後の市街地の上り坂でも、ヴァンアールトはデルトロに置いていかれるどころか、彼を牽引車として利用したようだった。ストラーデ・ビアンケでシエナのゴールを熟知していたヴァンアールトは、坂を上り終えた隙をついてデルトロを追い抜いて先頭に出ると、そのままカンポ広場のゴールまでスパートし、まんまと区間優勝を手中に収めてしまった。

プロ2年目でまだ21歳のデルトロは、区間初優勝のチャンスを逃してしまったが、前日まで26秒遅れの総合5位だったため、このステージで総合首位に立ち、祖国メキシコに初めてのマリア・ローザをもたらす事ができた。メキシコ出身の選手がグランツールでリーダージャージを獲得したのも初めてだった。

バルカン半島南東部のアルバニアで開幕した今年のジロは、１週目を終えてメキシコのデルトロが総合首位に立ち、彼のチームメイトであるスペインのフアン・アユソ（ＵＡＥチーム・エミレーツ・ＸＲＧ）が1分13秒遅れの総合2位になり、グラベル区間で不運に見舞われたログリッチが2分25秒遅れの総合10位に後退する展開となった。

5月19日は２度目の休養日となり、20日は中部トスカーナ州のルッカからピーザまで28.6kmで、個人タイムトライアルを競う第10ステージが行われる。

■メキシコ人初のマリア・ローザになったデルトロのコメント
「信じられない。自分の気持ちを言葉にするのはとても難しいよ。グランツールをリードするのは子供の頃の夢だった。落車の後もただ走り続けた。ベルナルのグループに入ったが、チームメイトが後ろにいるから協力できないと彼らに伝えた。無線ではそこに留まって待てと言われた。他のチームメイトたちがアユソが戻るように助けようとしているとも無線で聞いた。

ヴァンアールトも後ろにサイモン・イェーツがいるから引けなかった。ベストを尽くした。後悔はないし、最後の上りでは全力で行った。でも彼を蹴落とす事はできなかった。アユソとアダム・イェーツは３週間のレースで素晴らしい仕事ができる事をすでに証明している。彼らをとても尊敬している。ボクは良い状況にいるが、今自分がリーダーだとは思わない。次のステージで走るような長いタイムトライアルはやった事がない。でも、このジロでまた何かクレイジーな事ができるかどうか考えてみるよ」

シエナ市街地の坂はデルトロが先頭で駆け上がったのだが… (photo : LaPresse)

■第９ステージ結果
［５月１８日／グッビオ～シエナ／181 km］
1. VAN AERT Wout (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / BEL) 4:15:08
2. DEL TORO ROMERO Isaac (UAE TEAM EMIRATES XRG / MEX)
3. CICCONE Giulio (LIDL-TREK / ITA) + 0:58
4. CARAPAZ Richard (EF EDUCATION – EASYPOST / ECU) + 0:58
5. YATES Simon Philip (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / GBR) + 1:00
6. TIBERI Antonio (BAHRAIN VICTORIOUS / ITA) + 1:00
7. AYUSO PESQUERA Juan (UAE TEAM EMIRATES XRG / ESP) + 1:07
8. ARENSMAN Thymen (INEOS GRENADIERS / NED) + 1:10
9. BERNAL GOMEZ Egan Arley (INEOS GRENADIERS / COL) + 1:10
10. YATES Adam Richard (GBR) + 1:10
19. ROGLIČ Primož (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 2:22
42. ULISSI Diego (XDS ASTANA TEAM / ITA) + 5:10

■第９ステージ後の総合成績（マリア・ローザ）
1. DEL TORO ROMERO Isaac (UAE TEAM EMIRATES XRG / MEX) 33:36:45
2. AYUSO PESQUERA Juan (UAE TEAM EMIRATES XRG / ESP) + 1:13
3. TIBERI Antonio (BAHRAIN VICTORIOUS / ITA) + 1:30
4. CARAPAZ Richard (EF EDUCATION – EASYPOST / ECU) + 1:40
5. CICCONE Giulio (LIDL-TREK / ITA) + 1:41
6. YATES Simon Philip (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / GBR) + 1:42
7. BERNAL GOMEZ Egan Arley (INEOS GRENADIERS / COL) + 1:57
8. MCNULTY Brandon (UAE TEAM EMIRATES XRG / USA) + 1:59
9. YATES Adam Richard (GBR) + 2:01
10. ROGLIČ Primož (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 2:25

［各賞］
■ポイント賞（マリア・チクラミーノ）: PEDERSEN Mads (LIDL-TREK / DEN)
■山岳賞（マリア・アッズーラ）: FORTUNATO Lorenzo (XDS ASTANA TEAM / ITA)
■新人賞（マリア・ビアンカ）: DEL TORO ROMERO Isaac (UAE TEAM EMIRATES XRG / MEX)
（※第10ステージは AYUSO PESQUERA Juan (UAE TEAM EMIRATES XRG / ESP) が着用）