ジャパントラックカップII 初日/スプリントで太田海也と佐藤水奈が快勝、女子中距離で垣田真穂の活躍が光る
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ジャパントラックカップII が、2024年5月11日から2日間にわたっての開催となった。初日はパリ2024五輪種目である男女スプリントと男子マディソンが開催され、加えて同じく五輪種目オムニアムのうちの3種目、女子スクラッチ、女子エリミネーション、女子ポイントレースが開催された。
この日はパリ2020オリンピックへの出場を狙う強豪選手の活躍が目立ったなか、若手の活躍が光ったレースがあった。女子スクラッチでは垣田真穂(チーム楽天Kドリームス)が内野艶和(チーム楽天Kドリームス)に競り勝った。男子マディソンでは今村駿介・兒島直樹のペアが窪木一茂・橋本英也のペア(全て日本ナショナルチーム)に勝利した。五輪種目を中心にレポートする。
【女子スプリント】佐藤が対戦相手との駆け引きを巧みに制した
女子スプリントは、佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)が昨日に続き、圧巻の走りで優勝を勝ち取った。
「昨日の疲労が溜まっていた」としながらも決勝まで負けることなく勝ち進んできた佐藤、大きな差をつけるのではなく、フィニッシュで相手を差すという形での勝利で決勝まで勝ち進んできた。
1・2位決定戦の第1回戦では、後方からのスタートとなった佐藤。対戦相手の梅川風子(チーム楽天Kドリームス)に一旦大きく間を開けた距離を保つ。その距離差を利用して梅川がフィニッシュまで逃げ切りをかけるが、佐藤は最終周回での加速で差を詰めて、フィニッシュにて先行してこれを勝利。
第2回戦では先行スタートとなった佐藤。間合いを測って後ろに付く梅川を常に気にしながら、距離感を測りつつ速度を少しずつ上げていく。最終周回に入り、スプリントの速度になりながらも後ろを目視する佐藤。梅川との距離を着実に確認しながら速度と距離を保ち、最後は梅川に諦めさせる程度の距離でフィニッシュ、2戦先勝で勝利した。
佐藤のスプリントでの実力は、これまでの実績から世界トップレベルにあると言って良い(本人はそれを否定するが)。その確かな脚力と戦略、そして精神力の強さを垣間見れるレースとなった。パリ2024オリンピックの代表候補選手はまだ発表されてはいないが、もし佐藤が選ばれたなら、勝利を大きく期待できる走りだと感じさせられた。
*女子スプリント リザルト
1. 佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)
2. 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)
3. 太田りゆ(日本ナショナルチーム)
【男子スプリント】五輪を見据える太田が地脚の強さを活かす
男子スプリント、勝負に進んだ小原祐太と太田海也(共にチーム楽天Kドリームス)は、共にここまでを全勝で勝ち進んでいる。また予選の200mフライングタイムトライアルでは、小原がトップタイム、太田が2位のタイムとその実力は均衡。前日も同じ対戦での1・2位決定戦だったが、前日は小原が1勝負多く走っての対戦であったため、この日の2人のコンディションは同等。前日にも増した緊張が走る勝負となった。
第1回戦、小原が先行スタート。それに太田がついていく形からの勝負となる。全3周回のレース、スタート後半周ほどで間合いを図っていた小原が、動きにフェイントをかける形で突如先行スパート。一瞬反応が遅れた太田に大きく差をつけてフィニッシュを目指す。
太田はバンクを駆け降りる速度も使って小原を追う。最終周回に入るまでは後ろを気にしていた小原は、ラスト周回では後ろを見ることなく全力で前に進む。太田は最終周回で大きく加速し一気に小原との差を詰め、フィニッシュでの競り合い、僅差で勝利を収める。
第2回戦、太田が先行する形でスタート。今度は太田が先に仕掛け、一気に速度を増す真っ向勝負。それに挑んだ小原だったが、そこでついた差を大きく縮められることはなく、太田が先行のまま優勝を勝ち取った。「予選のタイムが2位だったことの悔しさが、バネになってくれたと思います」(太田)
*男子スプリント リザルト
1. 太田海也(チーム楽天Kドリームス)
2. 小原祐太(チーム楽天Kドリームス)
3. 山崎賢人(チーム楽天Kドリームス)
【男子マディソン】今村・兒島が中盤にラップで大量ポイント獲得し勝利
2人の選手がペアを組んで交代しながら、10周ごとに獲得できる順位ポイントの合計を競うマディソン。オリンピック種目の一つである。チームの一方が走る間は脚を休めて回復できるので脚はほぼフレッシュ、常に高い速度でレースは進行する。
順位ポイントは4位まで、5、3、2、1ポイントの順で獲得できる(最終周回では倍ポイント)のだが、ラップ=周回先行を成功させると一気に20ポイント加算される。そのため現在の世界シーンでは、この抗体による高い速度と周長250mというトラックの加速力を利用し、ラップで大幅にポイントを獲得して勝負を決めるという方式が主流となっている。
そのためレースはさらにスピーディなものになってきており、このレースでもそのラップポイントが勝負を決める鍵となった。
序盤から1位ポイントを重ねていったのは日本ナショナルチームA(窪木一茂・橋本英也)。昨日に圧倒的な強さを見せた窪木が同じく競輪選手である橋本英也とペアを組み、特にポイント周回スプリントでの強みを見せ、1位ポイントを何度も獲得。続くのが日本ナショナルチームB(今村駿介・兒島直樹)。ただスプリントでの巧みさにはAチームのこなしには敵わず、2位ポイントを重ねていく。
流れを変えたのが、チームブリヂストンサイクリングA(山本哲央・河野翔輝)。山本が一気に飛び出すアタックで、数集会をかけてラップを成功。20ポイントを稼いで一気に暫定2位に。
その動きで全体は一気に活性化し、さらに日本ナショナルチームBがラップを狙い飛び出す。それを阻止すべく日本ナショナルチームAが速度を上げるも、交代でミスをしてしまい失速。その隙にチームBはさらに加速してラップを成功、20ポイントを獲得。結果このポイントが勝利を決めるものとなった。今村、兒島の若手2人による、体力をフルに活かした走りが勝利を手繰り寄せた。
*男子マディソン リザルト
1. 日本ナショナルチームB(今村駿介・兒島直樹)61ポイント
2. 日本ナショナルチームA(窪木一茂・橋本英也)46ポイント
3. チームブリヂストンサイクリングA(山本哲央・河野翔輝)38ポイント
【女子スクラッチ】若手の垣田が内野の追撃を振り切る
ロードレースと同じように、先着の選手が勝利するルールのスクラッチ。序盤からペースはそんなに上がらない展開でレースは進む。先頭付近の選手は次々に変わり、それでもアタックがかかるような場面はない。最終周回の位置どりに向けて体力を温存するような様相だ。
そして終盤、フィニッシュを前にした5周回ほど前からペースが上がり、先頭付近が大きく加速し始める。ラスト3周回で集団を先行し飛び出したのが垣田だった。集団を引き離しながら加速する垣田を、内野がしっかりと追う。
残りの2周回をかけて内野は垣田の前に出るべく加速を続けるが、垣田は粘り続けて速度を落とさずイン側のラインで内野には譲らない。最終周回の最終コーナーにかけてさらに踏み直した内野が勝負をかけるも、一歩の譲らなかった垣田がフィニッシュへ向けてさらに加速。内野も認める垣田の優れたスプリント力が、垣田の勝利を呼び込んだ。
*女子スクラッチ リザルト
1. 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス)
2. 内野艶和(チーム楽天Kドリームス)
3. リー・ジーウィン(チーム香港)
【女子エリミネーション】捲り上げた内野がフィニッシュで競り勝つ
最後尾の選手が1人ずつ除外され、最後まで残った選手が勝利するエリミネーション。序盤から柿田が積極的に出て集団をリード。人数が減ってくるまで先頭付近で安定の走りを見える。中盤になると垣田、内野、そして池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス)の日本選手3人は後ろに下がりながら最終局面に向けての脚を貯めていく様相だ。
選手は少しずつ減り、残った選手はその内野、垣田、池田の3人。速度を上げながら3人の中から池田がまず除外された。内野と垣田の戦いとなった時点で垣田が加速してアタック、内野を大きくリードするも、最終1周をかけて内野がスプリントを開始、外側から垣田に並び、さらに先行する。
その内野の加速に垣田はさらに粘り、最終コーナーで踏み直して内野を追い越す。まさに勝負はフィニッシュラインでの攻防となり、スプリントの僅差で内野が勝利した。
【女子ポイントレース】終盤でのポイントを巧みに計算した内野の勝利
10周に1度のポイント周回で獲得できるポイントの合計を競うポイントレース。序盤はリー・ジーウィン(チーム香港)がリード。ポイント周回でのスプリントでも確実に先頭付近の着順で、ポイントを重ねていく。
中盤になって、内野と垣田の動きが活発になる。ポイント周回で着実に先頭に出て、1着と2着ポイントを分け合う形で進んでいく。ただ垣田は2位のリーにはポイント数が届かない。
終盤のポイント周回で池田が加速し1着ポイント、その池田についていったリーが2着ポイントを獲得し、勝負はダブルポイントとなる最終周回での獲得ポイント次第、ということになる。
その最終周回で内野と垣田は盤石の走りで先行し、垣田がスプリントを競り勝ち1着10ポイントを獲得、総合順位を大きくあげて2位に。2着ポイントを獲った内野が勝利を確定させた。
*女子ポイントレース リザルト
1. 内野艶和(チーム楽天Kドリームス)24ポイント
2. 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス)21ポイント
3. リー・ジーウィン(チーム香港)15ポイント
【女子ジュニアスプリント】井関が安定した走りで優勝
女子ジュニアスプリント、決勝に進んだのは井関文月(高松工芸高校)と松崎光優(松山学院高校)。第1回戦、2回戦共に井関が落ち着いた駆け引きで松崎を先行、共に安定した走りで勝利を獲得している。
*女子ジュニアスプリント リザルト
1. 井関文月(高松工芸高校)
2. 松崎光優(松山学院高校)
3. 鶴葵衣(祐誠高校)
【男子ジュニアスプリント】力強い加速でチェがジュニア男子を制する
男子ジュニアスプリント、決勝はチェ・テホ(Te Awamutu Sports Cycling Club)と高橋奏多(日本ナショナルチーム)との対戦。1・2位決定戦の第1回戦ではチェが先行し、中盤からかけたスプリントで高橋と差を大きく開いて勝利。
第2回戦ではスタンディングで完全停止の駆け引きから高橋が先行、残り2周回での勝負をかけるも、それを後方から力強いストロークで抜き去ったチェがまたも大きな差をつけて勝利、2戦先勝で優勝を決めた。
*男子ジュニアスプリント リザルト
1. チェ・テホ(Te Awamutu Sports Cycling Club)
2. 高橋奏多(日本ナショナルチーム)
3. 丸山留依(日本ナショナルチーム)
2024ジャパントラックカップ I/II 開催概要
開催日時:
ジャパントラックカップI :2024年5月9日(木)、10日(金)
ジャパントラックカップII:2024年5月11日(土)、12日(日)
開催場所:
伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)
出場選手:
トラック強化指定選手、海外4カ国以上の選手を含む世界のトップ選手たち
実施種目(男女共通):
スプリント/ケイリン/オムニアム/マディソン/スクラッチ/エリミネーション/ポイントレース
有観客:
5月9日(木)、10日(金)入場無料
5月11日(土)、12日(日) 有料/エントランスにて500円(現金のみ)
※高校生までは11日も12日も無料
ライブ配信:
More CADENCE YouTubeチャンネルにてLive Streaming予定あり
大会情報ページ:
https://japantrackcup.com/
▪️サイスポ・ニュース:
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▪️サイスポ・トピックス:
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