三重県「津ぅ」の極上ルートを楽しむ1泊2日サイクリング 2日目
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三重県の県庁所在地で日本一短い地名の津市。同市出身のライターアサノは、海も山も近く、食べ物もおいしく、極上のサイクリングルートを作れるサイクリストの天国のような場所だと思っている。
そこで津の魅力を1泊2日で満喫してもらうべく、ツール・ド・津というべきサイクリングコースを作ってみた。レポートの2日目は、津の山岳エリアを走るルートを紹介する。
2日目
走りごたえ満点の山岳エリアを満喫! 下り基調のボーナスステージを経て〆にうなぎ
雲出川を遡り、君ヶ野ダムへ
2日目は山岳エリアを含む100kmオーバーのルート。山岳エリアは交通量が少なめで走りやすく、さらに景色もよい。サイクリングを楽しむには最高のエリアだ。
榊原温泉をスタートし、県道28号に沿って進む。最初は2車線の広い道路だが、丘を超えるあたりから道幅が狭くなり、下りは見通しの悪いカーブもあるので注意しよう。近鉄大阪線の高架下をくぐり、国道165号を渡り、農村の集落と田園地帯の中を走る。このあたりは特に何かがあるわけではないが、信号が少なく、走っていて気持ちいい。
県道662号から県道29号に入り、橋を渡ってすぐにある信号交差点を美杉方面へ左折。この先、雲出川(くもずがわ)にかかる橋の上はちょっとしたビューポイントで、進行方向右手の上流方向の風景はなかなか美しい。白山高校を過ぎると、家城の集落がある。レトロな雰囲気の個人商店がところどころに残っていて、非常に味わい深い。
県道15号に出ると、今回のルートでは20kmほど先まで信号がない。交通量はさらに減り、信号に足止めされることなく走れて爽快だ。やがて右手に雲出川が見えてくる。このあたりの川の対岸はリバーパーク真見という滞在型自然農園で、春は桜、秋は紅葉が川沿いを彩る。
リバーパーク真見をを過ぎて2kmほどのところにある三叉路を左に曲がると、君ヶ野ダムへの上りが始まる。上りはじめは勾配は緩やかだが、道幅が狭くなるあたりで勾配が一気にきつくなる。ピークのダム管理事務所前までは距離は1.5km弱だが、平均勾配6%、部分的に勾配10%を越える箇所もある。まだ先は長いので、ボチボチ行こう。
「太平記」ゆかりの北畠(きたばたけ)神社へ。伊勢本街道をたどって宿場町の風情を楽しむ
君ヶ野ダムを過ぎると、コーナーとアップダウンを繰り返す細い道を八手俣川(はてまたがわ)を遡るように進む。下りのタイトターンも何か所かあって、ギヤチェンジやブレーキ操作、コーナーリングを楽しめるので、走っていても単調さを感じることがない。基本的に右側に川を見ながら谷筋を走るのだが、目の前には山が稜線を描き、周囲には木々が茂って時々野鳥の鳴き声も聞こえてくる。森林浴とサイクリングを楽しめる素晴らしい道だ。
ダムから10kmほどでT字路にさしかかる。左手に行くと道幅が広く走りやすいが2.4kmで平均勾配9%弱の多気峠越えのヒルクライム。右手はほぼフラットだが道幅が狭い箇所や路面が荒れた箇所がある道だ。おすすめはヒルクライムだが、どうしても上りたくない人はエスケープするのもありだ。
多気峠を下ってT字路を左折すると再び八手俣川沿いに出る。ここからさらに3kmほど進むと右手に北畠神社が見えてくる。北畠とは南北朝時代を舞台にした物語「太平記」にも登場する北畠氏のことで、同神社は国の史跡・多気北畠氏城館跡に鎮座している。境内の庭園は、秋には紅葉の名所として人気だ。
北畠神社からさらに南に進むと、伊勢本街道との交差点に出る。左に曲がると多気宿で、街道らしい格子戸の古い家が建ち並んでいる。
集落を東に進むと、左手に東屋という明治時代から続く手作りの練りようかん専門の老舗がある。北海道産のうずら豆を使い、かまどで薪を使って炊きあげる昔ながらの製法を守っていて、注文を受けてから1本ずつ切り分け、経木(きょうぎ)で巻いてくれる。うずら豆の優しい味わいが楽しめる緑色ようかん、柚子の香り豊かな紅色ようかんの2種類あるが、この日はあいにく緑色のようかんのみ。1本から購入でき、お店の軒先で食べることもできる。
お土産用とは別にすぐ食べるために1本追加で購入し、軒先で一服することにしたら、奥様がお茶を持ってきてくださった。ようかんの素朴で優しい甘さと温かいお茶が心にしみた。
ここで少し奥様と雑談。どこから来たの?と聞かれて「津の海の方からこの辺りに走りに来ながら写真を撮っている」と話すと、
「そういえば、竹原の薄墨桜がちょうど見ごろみたいですよ」と教えてもらった。場所を聞くとちょうど帰りに通れそうだ。これは立ち寄らねば!
しっかり食事をとりたい場合は、この近くにある道の駅美杉へ行こう。季節によってはあまごの炊き込みご飯や山菜おこわが売られているほか、食堂ではカレーやラーメンなども食べられる。ちなみに道の駅美杉にはサイクルラックがあるので、ロードバイクで行っても安心だ。
伊勢本街道奥津宿、三多気(みたけ)の桜を経て奈良県境へ
道の駅美杉を出て国道368号を西へ向かう。上多気の信号交差点までは下りだが、信号から先は飼坂トンネルまでの1kmほどの区間、平均勾配8%近い上りが続く。上多気交差点の信号が青になったら下り始め、信号が青のうちにスピードに乗せて交差点を通過し、その勢いで途中まで上ってしまうと少しはラクだ。飼坂トンネルは、それほど交通量は多くないが、中の方は結構暗い。ライトとテールライトを必ずつけよう。
トンネルを抜けると、今度は1.5kmほど平均勾配9%の下り坂。ギヤを重くして脚を回すとかなりスピードを出せるが、くれぐれも安全走行を心がけよう。
この先は国道を上ってもいいのだが、あえて旧伊勢本街道をたどりながら奥津宿を目指し、街道を旅した人の気持ちに思いをはせてみよう。奥津宿の周辺には古い町並みが残っている。今も地元の人の住居として活用されている建物が多く、一部の建物はリノベーションされてギャラリーなどに生まれ変わっていて、町ににぎわいが戻りつつある。まだまだ観光地化されているわけではないが、地元の人の生活が根付いていて作り物ではない生きている町という感じがする。
奥津宿にはJR名松線の終着駅・伊勢奥津駅もある。終着駅というだけでもロマンがあるが、鉄道遺産とも言うべき蒸気機関車が走っていた時代の給水塔が残っていて、他の駅にはない独特の風情がある。給水塔は蔦が絡まっていることからも分かるようにすでに現役は退いているが、駅周辺のランドマーク的な役割を担っている。
国道に合流したり旧街道に入ったりしながらさらに西へ。「三多気(みたけ)の桜」の案内標識があるので、それにしたがって右折し、三多気の桜を目指す。
三多気の桜は、真福院の山門に至る1.5km余の参道に山桜500本ほどの並木がある県内有数の桜の名所。桜の開花時期は参道が山桜のトンネルのようになる。国の名勝に指定され、さくら名所百選にも選ばれている。
真福院の参道の桜並木道は平均勾配10%近い上りが続く。特にきついのは序盤の500mほど。この区間だけの平均勾配は12%を越える。途中に駐車場があり、自動車はそこまでしか上れない。この付近にも山桜が咲き誇るが、三多気の桜の見どころはその先の道幅の狭い参道にも続く。自転車なら頑張れば上れるが、かなりの急勾配で、桜の時期は人通りも多い。駐車場付近に自転車を駐輪して歩くか、自転車を押して歩いて桜を楽しもう。
おすすめの花見スポットは、駐車場から少し上ったところにあるかやぶき屋根の家がある付近と、そこからさらに上って桜と水田に写る桜を見下ろすように遠望するポイント。特に後者は、山道を上ってでも見る価値がある絶景だ。
三多気の桜は、三重・奈良県境の近くにある。せっかくなので、自転車で県境を越境した記念撮影ができるポイントも紹介しておこう。国道368号に降りたところは、もう奈良県の御杖村(みつえむら)だ。そこから少し国道を下り、最初の脇道を左折して旧道に入って700mほど下ると右手に県境を示す標識と並んで大正時代に立てられた石の道標がある。
この先はフィニッシュまでほぼ下り基調のボーナスステージのようなものだ。とはいえ、まだ見どころは多い。途中津市美杉支所への分岐で左手にジャンボ干支の卯があるので要チェックだ。2023年の卯のほか、12年前のものも並んで置かれていて、いずれも間近で見ることができる。
下り基調の“ボーナスステージ”の途中に桜の名所がいっぱい
この先も下り基調の道が続く。奥津交差点を左折すると、ここからしばらく雲出川とJR名松線に沿って走る。雲出川上流域には、渓流をバックにJR名松線の列車が撮影できるポイントがいくつかあるのだが、名松線の運行本数が少ないので列車を見ることができたらラッキーだ。仮に列車が走っていなくても景色そのものが美しく、森の中を走るため空気もすがすがしく、走っているだけで癒される。個人的にもこの辺りはお気に入りのルートで、よく走りに行っている。
さらに県道15号に沿って雲出川沿いを下っていく。右手にプールやホテルなどがある美杉リゾートを見ながら道なりに進むと、目の前に鎌倉トンネルが現れる。直進してももちろんいいが、右の細い道に入って川沿いを行くと、トンネルを迂回でき、景色もいいのでおすすめだ。続く須渕トンネルも脇道を使って迂回できる。
続く立ち寄りスポットは、ようかん屋の奥様に教えていただいた竹原の薄墨桜。2つのトンネルを過ぎて2.5kmほどで右手にバス停と橋が見えるので、右折してこの橋を渡る。踏切も渡って通り沿いに進むと、左手の丘の上にひときわ大きな桜の木が見える。桜の木の近くは車両立ち入り禁止なので、自転車を押して歩いて丘の上に続く道を上っていこう。
竹原の薄墨桜はエドヒガンという品種で、一般的なソメイヨシノより開花時期が早い。東屋の奥様が言うように、取材当日はまさに満開だった。夕方近くで、光線状態もとてもいい感じだった。これから毎年見に来なくては!
竹原の薄墨桜をあとにし、再び県道15号を下っていく。JR名松線の踏切を渡ると、今朝君ヶ野ダムに行くのに曲がった三叉路に戻ってくる。リバーパーク真見を左手に見ながらさらに道なりに進む。今回のルートデータでは交通量の少ない裏道を案内しているが、そのまま県道を進んでもよい。
次の重要な分岐ポイントは、竹原の薄墨桜から10km以上先の一志白山トンネルの先。「亀ヶ広公園」と書かれた白い標識があるので、それに沿って左折。小さな橋で雲出川の対岸に渡り、右に曲がる。このあたりが亀ヶ広公園で、ここは川沿いにソメイヨシノが植えられている。満開の時期には桜のトンネルを走るようで素晴らしい。
雲出川沿いにはこの先も所々に桜並木がある。個人的におすすめなのが亀ヶ広公園から8kmほど先にある石橋の潜水橋周辺。桜の巨木と桜並木があって、ここも満開の時期は見事だ。ちなみに石橋の潜水橋は、自転車で渡ることもできる。車1台がかろうじて通れるほどの幅だが、近くの団地の人が抜け道として利用している。また、この橋に並行するように近鉄大阪線が走っており、タイミングがよければ潜水橋の奥の近鉄の鉄橋を列車が走る姿を撮影できる。運がよければ近鉄の最新の特急ひのとりが通過するのを見られるかも?
ベビースターラーメンをはじめ、有名なお菓子メーカーの本社が津にある
国道165号を渡ってしばらく走ると、森工業団地に入る。その一角にあるのが、ベビースターラーメンでおなじみのおやつカンパニーの久居(ひさい)工場だ。工場は「ちびっ子が工場を作ったら……」という発想で作られていて、黄色い外壁にキャラクターのホシオくんが大きく描かれているので、離れたところからも分かる。久居工場の向かいには、ベビースターのテーマパーク・おやつタウンもある。実はおやつカンパニーは津に本社があるのだ。
余談だが、あずきバーでおなじみの井村屋も津に本社がある。おやつカンパニーと井村屋の工場見学は、津の小学生の社会見学の定番コースのひとつなのだ(2023年3月現在、おやつカンパニーは新型コロナウイルス感染症拡大防止のため工場見学を中止している)。
旅の〆に津ぅのうなぎをご賞味あれ!
ここまで来たら1泊2日のサイクリングも残りわずか。田園地帯を抜け、前日も通った安濃川サイクリングロードを通って津駅を目指す。
最後にとっておきのお楽しみ、津ぅのうなぎを食べに行って〆としよう。津はかつてうなぎの養殖が盛んだったことから、市内に20件以上のうなぎ屋があり、うなぎの消費量で2005年に日本一になったこともある知る人ぞ知るうなぎどころ。それでいて価格は東京や大阪などと比べると半額程度で、津市民は何かというとうなぎを食べる。
そんなわけで、津市民には各家庭に行きつけのひいきのうなぎ屋があるのだが、わが家の行きつけ&おすすめは津市役所の近くにある新玉亭(しんたまてい)だ。この店は1890年創業の老舗。醤油、みりん、氷砂糖などを煮詰めて一週間以上寝かせた秘伝のタレを使い、注文を受けてから炭火で焼く。うなぎも運ばれてすぐのストレスがかかったものを使うのではなく、井戸水で元気な状態にしてから調理することで、おいしさを引き出すこだわりぶりだ。
うなぎは関西風の蒸さずにパリッと焼き上げる調理法で、醤油の風味がやや勝った辛めのタレとの相性が最高。ひいき目もあるかもしれないが、個人的にはこの店よりおいしいうなぎを食べたことがない。
【ライターアサノおすすめの津ぅグルメ その2】
●新玉亭のうな丼
新玉亭
三重県津市丸之内養正町5-1
059-224-0008
11:00〜14:30(LO 14:00)、16:00〜20:30(LO 20:00)
月曜、第1・第3火曜定休(1月・8月除く)
まだまだあるぞ、津の魅力! 続きはまたいつか
さて、津のサイクリングはいかがだっただろうか? 「津=何もないところ」という印象が少しでも変わって「走りに行きたい」と思っていただければ幸いだ。
今回のルートには津の魅力をなるべく凝縮したつもりではあるが、今回は紹介できなかった魅力的なポイントもあるし、もっと距離が短めのポタリング向けのコースも作れる。機会があればまた紹介したい。
■今回のコースはこちら(「津ぅ」の海、山、グルメと極上ルートを楽しむ1泊2日サイクリング 2日目)
■前回のコースはこちら(「津ぅ」の海、山、グルメと極上ルートを楽しむ1泊2日サイクリング 1日目)