千葉TIPSTARドーム拠点とする学生競技者向けトラック競技アカデミー「T-PROJECT」がスタート

2022年、千葉県に新たにできた250mバンクにて、学生競技者向けのトラック競技アカデミー「T-PROJECT」の開催が予定されている。
 
4月の本スタートを前に2月5日~6日の日程でショートキャンプが実施される。このショートキャンプで指導役の一部を担うJPFの中村妃智選手、そしてゲスト講師を予定しているブリヂストンサイクル飯島誠氏に話を聞いた。
 
ブリヂストンサイクル トラック競技アカデミー 「T-PROJECT」

千葉県・千葉市にできた250mバンク、TIPSTARドーム

 
 
2021年10月に千葉県千葉市にオープンした新たな250mバンク、TIPSTARドーム。ここでは、国際基準のルールに基づいて行われる日本初の自転車トラックトーナメント「PIST6」が毎週末開催されている。
このTIPSTARドームを拠点として、次世代を担う自転車競技選手の育成・輩出を目的とした新たなプロジェクト「T-PROJECT」が2022年4月よりスタート予定だ。
 
「T-PROJECT」の頭文字「T」には、3つの意味が込められる。頂点の「TOP」、挑戦の「TRY」、粘り強さを意味する「TENACITY」である。
このプロジェクトでは、実際に学生や若手選手を集め、頂点を目指し、日々粘り強く挑戦を続ける現役トップレーサーがトレーナーとなり、次世代の選手たちにトレーニング指導などをしていく予定だ。
 
4月の本格始動にさきがけて、2月5日(土)~6日(日)の1泊2日でショートキャンプを実施する。このショートキャンプは、TIPSTARドームでのフリー走行ならびに、千葉支部競輪選手会の選手、ブリヂストンサイクルの飯島誠氏らによる短期トレーニング指導が行われる。ここには、JPFの中村妃智選手も参加予定だ。
 
ブリヂストンサイクル トラック競技アカデミー 「T-PROJECT」

2016年にJPFに入社し、ナショナルチームで選手活動を行っていた中村妃智選手。2021年12月14日、静岡県・伊豆ベロドロームで行われた全日本選手権トラックを最後にトラックナショナルチームそして現役を引退した

 
 
自転車トラック競技の世界標準である250mバンクだが、国内で学生選手や若手選手たちが実際に250mバンクで自由に練習できる機会というのは、ほぼ皆無と言ってもよいのではないだろうか。学校や部活によっては400mや500mバンクの競輪場で練習することもあるだろうが、日本国内に250mバンクは、静岡県の伊豆市に伊豆ベロドローム、日本競輪選手養成所のJKA250、そしてこの千葉のTIPSTARドームの3つしかない。
 
中村は今回の機会についてこう話す。
「250mの競技場が静岡県の山奥にあって、気軽に使える環境ではなかったので、千葉に250mバンクができたというのはすごく大きいことだと思います。強化や育成といったことで有効に使わなければいけないと思いますし、大学生など学生が走る環境が今まで少なかった状態なので、まずは250mバンクを走れるようになってもらいたいです。
 
かつ、草レースのようなものはバンクが空いている時間に開けるようになるので、そういったものを経験していくうちにレース感覚も養われていくと思います。まずは走ることで学べることも多いと思うので、私が特別何かすごいことを教えるというよりは、まずは来てもらって走ってもらって、その中で学んでいけるのがいいんじゃないかなと思います」
 
ブリヂストンサイクル トラック競技アカデミー 「T-PROJECT」

ブリヂストンサイクルの飯島氏も今回のショートキャンプで指導を予定している

 
 
ゲスト講師としてショートキャンプでの指導を予定している元ナショナルチーム中距離コーチでもある飯島氏は、この取材日に初めてTIPSTARドームを訪れた。
 
「伊豆ベロドロームよりもカント(コーナーの傾斜の角度)が低いように見えますね」(実際の角度はセンター位置で42.3度。伊豆は45度)とバンクを確認しながら、ショートキャンプでやることについてこう語った。
「まずはベーシックなことを学んでもらって、そこから発展していってもらったほうが、目標までより早く到達できると思うので、基本的には基礎をしっかりと体験してもらう形ですね」
 
短距離種目、中距離種目かかわらず、まずは基本的な250mバンクの走行をできるようになってほしいと話した。
 
ブリヂストンサイクル トラック競技アカデミー 「T-PROJECT」

中村も出場した2021年の全日本トラックでの女子マディソン種目の出場組はわずか3組だった。「5年後くらいには女子のマディソン種目で7チームとか10チーム近く走れる状態を目標として活動していきたい」と中村は話す

 
 
今回のショートキャンプは、高体連での競技参加経験者かつ、自身でトラックバイクや走行時のウェアを準備できる人のみが参加対象となる。まずは、現在の競技者の強化という面に力を入れ、指導者側もノウハウが蓄積してきた暁には、ゼロから競技をスタートしたいという人のサポートも視野に入れる。
 
自転車競技に関わらず裾野を広げていくことは、長期的に見ればその競技発展における一番の特効薬となりえることも多い。
選手を引退した中村は今後、大学院に進学し、トレーニング科学等も学びながら、そういった若手選手たちの発掘や育成、強化に力を入れる予定だ。
 
「大学や高校で引退した選手は、やはりトラック種目だとなかなか続ける環境もないので、それでナショナルチーム入りなどを諦めてしまうことが多いです。理想としては、そこを何か繋げてナショナルに入っていけるような、全日本などのレースにも、もっと挑戦していけるような選手を育成というか、関わって育てていきたいなと思っています」と全日本のレースを終えて口にしていた。
 
首都圏内に250mバンクがあるメリットを生かしたアカデミーのスタートをまずは見守っていきたいところだ。
 
 
担当窓口:(一財)日本サイクルスポーツ振興会
担当:宮下
mailmiyashita@jpf.co.jp