注目グラベルタイヤ 9ブランド徹底比較

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グラベル&アドベンチャーバイクにおいて、フレームと同じかそれ以上に走行性能を左右するのがタイヤであることは言うまでもない。むしろ、目を見張るようなタイヤの性能アップが、オン・オフ両用という理想の自転車を高いレベルで実現したとも言える。ここでは選んで間違いない9ブランド18銘柄プラスアルファのタイヤを乗り比べてみたので、あなたの走りに合わせたセレクトの参考にしてほしい。

注目グラベルタイヤ

タイヤ選びの基本

太いタイヤを履く理由

グラベル向けと銘打つタイヤは幅が32mm以上ある。太いほど空気容量が増えるので振動吸収性が格段に高まり、荒れた路面でも安心だ。太ければ、空気圧を下げてもリム打ちパンクのリスクも低い。タイヤが細ければ加速感は向上するが、安定性は薄れる。荷物を積むことも考えれば、35〜40mm幅のタイヤがグラベルバイクにはふさわしいだろう。悪路の走破に特化したMTBでは幅2インチ(約50mm)以上のタイヤが標準的だが、そこまで太いと舗装路での軽快さが損なわれる。

注目グラベルタイヤ

万能性が求められるグラベルバイク向けのタイヤ。舗装路の軽快さと悪路の走破性を両立させるため、センター部と両サイドでノブの形状や高さ、間隔を変えたタイヤが多い。写真はパナレーサーの新作、グラベルキングSSのトレッド

トレッドパターンと走行路面

タイヤが路面に接する面をトレッドと呼ぶ。平滑な舗装路を走るだけなら、ほとんど溝がないスリックタイヤでグリップ力を得られるが、グラベル向けのタイヤでは多様なトレッドパターンが用いられる。ノブ(ブロック)が高い(溝が深い)ほど悪路でも滑りにくく、自転車を前へ進ませることができる。しかし転がり抵抗は増えるので、平滑な路面では重く感じる。自分の走り方やコースの状況に応じて、最適なトレッドを備えたタイヤを選びたい。

注目グラベルタイヤ

グラベル(砂利道)はノブの高さ(溝の深さ) はさほど要求されないが、砂利が大きいほど幅が太く低圧なタイヤが望ましい。砂利が深い場合はサイド部のノブが効く

注目グラベルタイヤ

交通量が少ない林道やトレイル(遊歩道、登山道)は土の路面が多い。勾配区間はノブが低いと滑る

注目グラベルタイヤ

雨上がりや日当たりの悪い林道で遭遇するぬかるみ。ノブの間隔が狭いと泥が詰まる。シクロクロス用のタイヤは、こうした路面を考慮した製品が多い

注目グラベルタイヤ

舗装路であっても路肩には段差が多い。ある程度の幅とトレッドパターンを備えたタイヤが安心だ

コンパウンド・構造

トレッドに用いられる合成ゴム(一部は天然ゴム)をコンパウンドと呼び、その硬さや耐摩耗性が走行フィールに大きな影響を与える。タイヤメーカー各社が技術を競う重要事項だ。ケーシング(タイヤ本体)に用いられる繊維の素材や量、耐パンクベルト層を設けるといった構造の違いも走りの印象を左右する。コンパウンドやケーシングが薄くしなやかなほど荒地での安定感は高い傾向にあるが、空気圧と同様に、乗り手の好みや体格、そして走行路面の状況による印象の違いも大きい。

注目グラベルタイヤ

ヴィットリア「テレーノ」の構造。トレッドにグラフェン2.0という転がりとグリップ力に優れたコンパウンドを用い、サイドウォールにはサイドカット防止層を追加している(画像提供:ブイ・ティー・ジェイ)

チャレンジ

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かつてロードレース界を席巻したイタリアの伝説的なタイヤブランド「クレメン」の技術を継承しているチャレンジ。他社の多くのタイヤはトレッドとケーシングを一体成型する工法と合成ゴムを採用しているが、チャレンジは両者を個別に成型して接着するハンドメイド工法と天然ゴムにこだわり続けている。そして最新モデルではチューブレスレディに対応。独自のチューブレスチューブラーやチューブラーモデルも評価が高い。
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ドネリー

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ドネリーもクレメンと関わりの深いブランドであり、2017年のブランド創設ながら既に多くの完成車に採用されつつあり、シクロクロスなどのレースシーンでも実績を上げている。特にグラベルバイク向けのラインナップが豊富で、トレッド・幅ともに多くの選択肢が用意されている。北米のブランドだが、日本の林道やグラベルシーンにも驚くほどマッチする。
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ハッチンソン

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1853年、米国から渡仏したハイラム・ハッチンソンが創業した総合ラバーメーカーがハッチンソン。靴から航空機まで、およそ移動・交通手段に関わる全てのゴム製品を手がけており、自転車用タイヤでは現在主流となったチューブレスレディにいち早く対応した。その卓越した技術力が作り出す独自のコンパウンドを採用したタイヤは、転がり抵抗の低さやグリップ力に定評があり、コストパフォーマンスが高いことも見逃せない。
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マキシス

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1967年に台湾で創業し、当時から自転車とモーターサイクルのタイヤを生産。現在は北米で製品開発を行う国際的なブランドがマキシスだ。もともとオフロード系のタイヤに強く、MTBやシクロクロス用の多様なラインナップを誇っているが、その経験を生かしてグラベル向けのタイヤも他社に先駆けて複数を投入している。独自の耐パンク層やケーシング全体を覆うプロテクション技術の採用が特徴だ。
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パナレーサー

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日本が世界に誇るタイヤブランド、パナレーサー。伝統的にツーリング用タイヤが豊富で、ランドナーの足元を長年支えてきた。新技術の投入も積極的で、ZSGコンパウンドを採用したツアラープラスは太めロードタイヤの先駆けとなった。その耐パンク性を高めながら軽量化も果たしたのがグラベルキング。基本モデルはおとなしいうろこ+杉目トレッドだが、SK(セミノブ)に加えてSS(セミスリック)も登場し、あらゆるシーンに対応する。
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ピレリ

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140年以上の歴史を持つイタリアのタイヤブランド。2017年に自転車タイヤを登場させたが、実は創業時も自転車のタイヤを作っていたのは知る人ぞ知るエピソード。そして早くも2019年にグラベル向けタイヤ「チントゥラート・グラベル」を投入。先行したロードタイヤで築いたプロテクション技術と、MTB用タイヤのトレッドパターンを組み合わせた意欲作だ。ブラウンサイドの「クラシック」とスタンダードなブラックを選べるのも嬉しい。
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シュワルベ

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タイヤは老舗が強いが、シュワルベを展開する独・ラルフボール社の設立も1922年と古い。そして、自転車と車椅子だけに特化したタイヤ作りで知られている。ツーリストにはタフな「マラソン」シリーズが長く支持されており、ロードや小径タイヤのラインナップも群を抜いている。そのレースグレードである「ワン」のグラベルバージョンに新モデルが加わり4タイプに。ここでは最も悪路向きのウルトラバイトと、中間的なオールラウンドを取り上げる。
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ヴィットリア

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1953年の創業時からレースシーンをリードするイタリアのヴィットリア。ロードレーサー御用達の「コルサ」シリーズの印象が強いが、シクロクロスやMTB用タイヤでも輝かしい戦績を誇る。最新モデルは独自の炭素ナノ技術「グラフェン2.0」で強化したコンパウンドを採用し、軽い転がりと確かなグリップ力とともに耐カット性能も大幅に底上げ。同技術を採用したグラベルタイヤも登場し、ドライ・ミックス・ウエットなど用途で選べる。
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WTB

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1982年にカリフォルニアで創業したWTB。時期と場所から察せられるとおり、MTBの興隆とともに歩んできたタイヤ・パーツブランドだ。グラベルバイク向けタイヤへの取り組みも他社に先んじ、現在は10シリーズに及ぶ多彩なラインナップを展開する。そのほとんどがTCS(チューブレスコンパーチブルシステム)対応だ。完成車への採用も多いので、WTBがグラベルタイヤのデファクトスタンダードと言っても過言ではないだろう。
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