注目の最新モデルを試乗&紹介 カレラ・SLエア プロ

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生粋のロードバイクブランド「カレラ」のニューモデルとなれば、乗る前から期待してしまう。カレラにはSL7という軽量モデルや、かつてラインナップしていたエラクルエアというエアロロードがある。それらの“いいとこどり”をしたのが、このSLエアプロだ。

SLエアプロ

CARRERA
SL AIR PRO

カレラ・SLエア プロ
フレームセット価格/66万円〜

カレラらしさにこだわったトップモデル

とはいえ、単に2つのモデルを組み合わせたわけではなく、新規に図面を引き直した完全なる新型。CFD解析によって、空力性能を求めた形状を導き出し、3Dプリンターでプロトタイプを作って細部を修正。軽さも追求して、そのフレーム重量は800gに仕上がっている。

こういったデータ的な部分に加えて、カレラが大切にしたのは走行感覚だ。平坦をシッティングで踏み込んでいったときの加速感。上りでダンシングに切り替えたときに、素直にバイクが前に出ていく感覚。そして安定した下り性能。試乗可能なプロトタイプで、こういった性能を磨いているし、長年カレラが蓄積したジオメトリが、その根底に流れているのだ。

チェーンステーには「ライド・ディファレント」というメッセージが書かれている。この意味を問い合わせたところ「経営者が世代交代したカレラが、改めて自分たちの立ち位置を考えるなかで見つけたフィロソフィー。フレーム設計、グラフィックなど大手ブランドとは違う、独自性のあるバイクを作り続ける」とのことだった。このバイクはもちろん、今後の展開が楽しみになる言葉だ。

DETAILS

サドルクランプ

サドルのクランプは、角度の調整がフレキシブルに可能なタイプ。細かいことだが、こういう小物パーツ選びは大切。シートポストの先端まで塗装されているのも特別感があっていい

ヘッドチューブ

ケーブル類はフル内装。ヘッドパーツの規格にはFSAのACRシステムを採用しており、ヘッドパーツは上下1.5インチ径。この規格はハンドルの舵角に制限がないのがいい

シートステー

細身のシートステーは、振動吸収性能を狙っている。また、軽量化にもつながっている。タイヤクリアランスは30mm幅まで

特別な塗装

試乗車は、アップチャージ5万5000円の特別な塗装が施されている。シルバーミラーに輝くカレラのロゴと、フレームは一見すると黒のようだが、光の角度によって控え目に虹色にきらめく

BBまわり

BBはプレスフィットタイプ。カレラのスタンダードな規格を維持する、という理由により採用されている。周辺のフレーム径もコンパクトで、空力のためにゴツくするような意匠はない

スピードリリース対応フォーク

ホイールの固定方法はもちろん12mmのスルーアクスル。フォークエンドは切り欠きがあり、マヴィックのスピードリリースに対応する設計になっている

SPEC

フレーム╱カーボン
フォーク╱カーボン
メインコンポ╱シマノ・デュラエースDi2 R9270
ホイール╱ヴィジョン・メトロン45SLディスク
タイヤ╱ハッチンソン・フュージョン5チューブレスレディ 700×28C
ハンドル&ステム╱ヴィジョン・メトロン5D ACR
サドル╱サンマルコ・ショートフィット2.0レーシング
シートポスト╱カレラ・CM87 SP
サイズ╱XS、S、M、L、XL
カラー╱A23-127(+5万5000円)、A23-121、A23-122、A23-123
試乗車重量╱6.91kg(ペダルなし)

GEOMETRY

SLエアプロのジオメトリ図

SIZE

SLエアプロのジオメトリ表

IMPRESSION「機能だけに溺れないバランスが魅力」

SLエアプロに乗る中島編集長

まず、一目見て思ったのは、外見がつつましやかということだ。昨今、ロードバイクはエアロや軽量化など、機能と数値に支配されている。もちろんそれ自体を否定するつもりはないけれど、しかしたたずまいのシンプルさ、バランスというところに魅力があるバイクというのは少なくなってきている気がしている。機能は形に宿ることは間違いないけれど、機能ばかりを追い求めて、どでかいリヤウイングを付けたスポーツカーのようなバイクが増えた今、造形の美しさといった部分は、ともすれば損なわれている。その点、このSLエアプロはいいあんばいなのだと思う。

走りはフレーム重量どおり軽い。けれど快適だ。かっちりしたフレームではあるけれど、そこまで切羽詰まっているというか、ライダーをせっついてこない。個性的なハンドリングのバイクは、乗っていて楽しいけれど、長いこと付き合おうと思うと、ライダー側が頑張らないと付いていけないことがある。SLエアプロはとても扱いやすく、自分が曲がりたいだけ曲がれるし、直進時も安定している。バイクの癖を見つけて、それに自分を合わせる必要がない。素直なロードバイクだ。ライド・ディファレントと書いているけれど、カレラらしい乗り味はちゃんと見失っていないと思う。

RIDER 中島丈博

本誌編集長。海外の試乗会やサイクルショーにも足を運び、情報収集に余念がない。